転生とらぶる   作:青竹(移住)

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3061話

 行冥が全身麻酔から目覚めたのは、レモンにとっても驚いた様子だった。

 レモンにしてみれば、もう数時間くらいは眠ったままだと思っていたのだろう。

 実際、もし手術をしたのが普通の相手なら、そんなレモンの予想は間違っていなかっただろう。

 だが、相手は普通の人間ではなく行冥だ。

 ……いやまぁ、これだと行冥が人間ではないと言ってるように思えるな。

 行冥は間違いなく人間ではある。

 人間ではあるものの、それでも鬼殺隊の中でも最大戦力である柱、しかもその柱の纏め役というべき人物だ。

 そういう意味では、行冥を普通の人間と呼ぶのは少し難しいだろう。

 

「アクセル殿……?」

 

 起き上がった行冥は、俺の気配を察したのか、俺のいる方を見てそう言ってくる。

 

「目が覚めたようだな。……手術は成功した。現在目が見えないのは、目の周囲を隠しているからだ。いきなり目が見えるようになったら、行冥の脳が混乱するかもしれないからな」

「……なるほど」

 

 俺の言葉に納得したのか、行冥は頷く。

 行冥にしてみれば、自分の手術が成功したというだけで、十分に納得出来たのだろう。

 

「手術が成功したとはいえ、すぐに周囲の様子を見るといったような真似は出来ないってのは聞いてるな」

「うむ。少しずつ慣らしていく必要があると」

「そんな感じだな。他にもレーザーを使いこなす訓練とかも必要になると思うけど、とにかく行冥が頑張ればそれだけ早く鬼殺隊に復帰出来るのは間違いない。……頑張れよ」

 

 そう声を掛けるのと、介護をする為の量産型Wが部屋に入ってくるのは同時だった。

 それを見て、これ以上ここにいても行冥の邪魔になるだけだと判断し、俺は部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

「で? 行冥の様子はどうだったの? 手術が終わって混乱しているとか、そういう感じはあった?」

「いや、なかったな。行冥らしいと言えばらしいが」

 

 レモンの問いにそう答える。

 行冥の主治医はレモンなのだが、俺の方が行冥と親しいということで、行冥が現在どんな様子なのかを見に行くのを任されたのだ。

 その結果として、行冥は特に問題ないと判断したのだ。

 

「そう。なら、今日は休んで明日から早速リハビリでしょうね」

「……本人は、それこそ今からでもすぐにリハビリをやりたがっていた様子だけどな」

 

 これは冗談でも何でもなく、純粋な事実だ。

 実際、行冥は全身麻酔の効果が切れたばかりとは思えない程、元気な様子を見せている。

 これもまた、呼吸の影響なのだろう。

 

「それはさすがに却下ね。本人の自覚の有無はともかく、行冥の身体には疲れがあるのよ。……本来なら、リハビリをやるにしても明日すぐにという訳ではなく、何日か様子を見たいというのが正直なところなんだけど」

 

 だが、その辺については妥協しているという事だろう。

 実際、レモンはこう言ってるものの、行冥が本気であれば本当に今からすぐにでもリハビリは始められると思う。

 

「あの様子だと、行冥がリハビリを終えるのはそんなに時間は掛からないかもしれないな」

 

 行冥の能力を思えば、リハビリは最短で終わらせるといったようなことも出来るだろう。

 レモンがそれでリハビリ終了の許可を出すかどうかは、別問題だが。

 

「リハビリはしっかり、確実にやる必要があるわ。ここで無理に急いでリハビリを終わらせても、結局最終的にはそれが致命的な問題となる可能性も否定出来ないもの」

「慣れてない状況で無理をするって事か?」

「そういう可能性も否定は出来ないでしょうね。だからこそ、しっかりとリハビリをする必要があるのよ」

 

 レモンのその言葉に納得して頷く。

 

「分かった。その辺も含めて、ちょっと耀哉に話をしてくる。……あるいは行冥のリハビリが耀哉のリハビリの練習といった感じになるかもしれないな」

「それは……そういう可能性もあるけど、ちょっと難しいわね。義眼の手術しかしていない行冥と比べると、耀哉の状況はかなり重傷よ。それこそ、すぐにでも治療を始めた方がいいだろうくらいに」

「本人がもう少し待って欲しいって言ってるからな」

 

 正直なところ、耀哉の治療や解呪は可能な限り早くやった方がいい。

 だが、耀哉は現在の状況が一段落するまでは治療をしないと言っている。

 それでいて、鬼滅世界に戻ると耀哉の体調は呪いの影響で悪くなってしまう。

 不幸中の幸いなのは、一度ホワイトスターに来た事によって耀哉の体調が悪いのは間違いないものの、それでも以前よりは幾分かマシになっているといったところか。

 

「まぁ、私はそれでも別に構わないんだけど……それでも早くした方がいいわよ? アクセルは耀哉と友人関係にあるんでしょう? なら、その辺についてしっかりと言った方がいいわ」

「そうだな。一応言ってみるけど、耀哉がそれを受け入れるとは思えないんだよな」

 

 それでも友人である以上、耀哉にその辺の話をした方がいいのは間違いのない事実だ。

 

「その辺はアクセルに任せるわよ。木乃香の方はいつでも準備が出来ているし、私の方も準備は出来ているから、気にしないでちょうだい」

 

 そうしてレモンとの会話は一段落するのだった。

 

 

 

 

 

「そうかい。それは嬉しい事だね」

 

 レモンとの会話が終わってから、俺はすぐにまた鬼滅世界にやって来て、耀哉に行冥の手術について話していた。

 

「ああ。リハビリ……機能回復訓練が終われば、すぐこっちに合流すると思う。そうなれば、行冥は今まで以上の強さを持つのは間違いないと思う」

 

 盲目だからこそ視覚以外の五感が発達し、それが行冥の強さを支えていたといった可能性も否定出来ない。

 そこで急に行冥に視覚が戻ってきた関係で、他の感覚が鈍るといった可能性は否定出来ないだろう。

 この辺は実際にやってみるまでどうなるのかは分からない。

 最善なのは、視覚を得てそれでいて他の感覚も劣化しない。そしてレーザーを使いこなすといったような真似をしてもおかしくはない。

 逆に最悪なのは、行冥が視覚を得た事で他の感覚が劣化し、行冥も急に手に入れた視覚に慣れる事が出来ず、レーザーを使いこなせない……といったような感じか。

 とはいえ、行冥の性格や能力を考えれば、使えないといったようなことはない……と思う。

 

「耀哉はどうするんだ? 鬼滅世界の方がある程度落ち着いたら解呪を受けるって話だったが。今はまだ受けないのか?」

「そうだね。幸いなことに、今はそこまで身体の調子は悪くないんだ。少なくても、アクセルと会う前に比べたら段違いに楽だよ」

 

 そう言って笑う耀哉の言葉は、誤魔化しでも何でもなく本音を言ってるように思える。

 思えるが、だからといって呪われて身体の調子が悪いのは間違いないのだから、少しでも早く解呪を受けた方がいいと思うんだが。

 行冥と違って解呪する前に身体の治療をする必要があるし、解呪が終わった後でも行冥と同じように視覚を取り戻した事でリハビリをする必要もあるのだが。

 それに……解呪をしてこの鬼滅世界に戻ってきたら、また呪われるといった可能性も否定は出来ない。

 鬼舞辻無惨による呪いではなく、言ってみれば世界による呪いなのだから。

 何とか呪いを弾くとか防ぐとか、場合によっては吸収するとか……そんなマジックアイテムがあればいいんだが。

 そんな風に思いながら、俺は行冥の件でまだ話しておくべき事があるのを思い出す。

 

「行冥の過去について知ってるか?」

「過去? ……いきなり何だい?」

 

 耀哉のその様子を見れば、行冥の過去……具体的には鬼と遭遇して自分と1人の子供以外は全員喰い殺されたというのは知ってるらしい。

 

「誤魔化す必要はない。行冥本人から聞いたからな」

「……本人から……? アクセル、一体何が?」

「単純に言えば、鬼殺隊の中に行冥の一件を起こした元凶がいたんだよ」

「それは……」

 

 俺の言葉に、耀哉はショックを受けた様子を見せる。

 それが本当にそのように思っているからこそ、そんな態度なのか、あるいは誤魔化す為にそんな態度なのか。

 耀哉の性格を考えれば前者だろうが、後者という可能性も捨てきれない。

 

「その上、ムラタが気に入って鍛えていた奴だったから、かなりの騒動になった。……まぁ、ムラタとその人物、獪岳しかいなかったから、他の者達にその騒動は知られなかっただろうが」

「それで、その件は具体的にどうなったのかな?」

「行冥が獪岳を殺そうとしたから、止めた。獪岳はムラタに気にいられるだけあって、かなりの才能を持っている」

 

 そう言い、獪岳が雷の呼吸の使い手という話や、壱ノ型は使えないものの、他の技は全て使えるという説明をする。

 

「そんな訳で、ムラタに鍛えて貰って鬼を多数殺し、十二鬼月や鬼舞辻無惨を殺せたら助けてやるという事にした」

「それは……かなり厳しい内容だね。十二鬼月を倒したら柱になる資格を持つんだ。それだけ十二鬼月を倒すというのは厳しい事なんだけどね」

「だろうな。だが、だからこそ行冥を納得させるには、そのくらいの手柄が必要になる」

 

 行冥にしてみれば、そこまでやっても獪岳を許せるかどうかは微妙なところだろう。

 あるいはそこまでやっても許せず、鬼舞辻無惨との戦いが終わった後で獪岳を殺すといったような真似もしかねない。

 行冥にとって、獪岳というのはそこまで許されない相手なのだろう。

 獪岳がどこまで強くなるか。

 ムラタとの訓練をして生き延びれれば、強くなれるのは間違いない。

 獪岳が本気で生きていたいのなら、それこそ何があっても生き延びるだろうが……あるいはこのまま行冥に怯えて生きるよりはと、死を望む可能性も否定は出来ないか。

 

「とにかく、そんな一件があったというのは報告しておく。鬼殺隊の事だし耀哉もその辺は知っておいた方がいいだろ」

「そうだね。知らせてくれて嬉しく思うよ。ありがとう」

 

 感謝の言葉を口にする耀哉。

 そんな耀哉と少し話していると、あまねがお茶を持ってやって来る。

 

「お茶をどうぞ。今日は随分と楽しそうですね」

「ふふっ、アクセルと話すのは楽しいからね。それに身体の調子も悪くない。本当にアクセルと会えた事は、私達にとって幸運だったと思うよ」

 

 あまねに渡されたお茶を飲みながら、耀哉は嬉しそうに笑う。

 俺もまた、あまねの持ってきてくれたお茶を飲む。

 基本的に紅茶派の俺だが、こういう日本のお茶も悪くはない。

 コーヒーは相変わらず苦手だけどな。

 ちなみに、一応コーヒーそのものは既に日本でもそれなりに知ってる者はいるらしい。

 何でも日本に最初にコーヒーが来たのは、江戸時代らしいから、それも当然だろう。

 とはいえ、それでもあまり広まっておらす、好んで飲むような者は少ないとか。

 フェイトやバルトフェルド辺りが聞けば不満を露わにしそうだが。

 

「俺もこの世界に来てよかったと思うよ。最初は色々と複雑だったが」

 

 マーベルとシーラの2人と別れたのは、正直なところ俺にとっては面白くはない。

 だが、そのおかげでこの鬼滅世界にやってきて、色々と興味深い技術や素材を見つけられたのも事実。

 

「ああ、そうそう。今日明日って訳じゃないけど、近いうちに宇宙に行って太陽の近くを漂っている岩塊を大量に確保してくるから、それに日輪刀を作る鉱石……猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石だったか? それがないかどうかを、確認して欲しいんだが」

 

 ぶほっ、と。

 俺の言葉を聞いていた耀哉が、飲んでいたお茶を吹き出す。

 そのお茶の吹き出た方向が俺のいる方ではなかったのは、幸運だったのだろう。

 

「げほっ、ごほっ……ア、アクセル。今……私の聞き間違いかな? 宇宙に……太陽に行くと言ったように聞こえたんだが」

 

 数度咽せた後で、耀哉がそう言ってくる。

 その表情は、明らかに自分の聞き間違い……もしくは、聞き間違いであって欲しいといったように思えた。

 

「いや、別に聞き間違いって訳じゃないぞ。俺は宇宙に行くと言ったんだ」

「そんな真似が……出来るのかい?」

「シャドウミラーの技術力があれば、その程度なら問題ない」

 

 あっさりとそう返すと、やはり耀哉は改めて俺の方を見てくる。

 いや、実際には盲目なので、俺の声のする方に顔を向けたといった表現の方が正しいのだろうが。

 

「それは……本当にそのような真似が出来るのかい?」

「ああ。問題ない。そうだな。俺が宇宙に行く時は、どうやって行くのか見せるよ。あまり人目につくのは危ないけど、この辺りでなら問題ないだろうし」

 

 ニーズヘッグの大きさを考えれば、それこそ街中で出すといったような真似は出来ない。

 もしそのような真似をすれば、間違いなく大きな騒動になるのだから。

 それこそ場合によっては鬼殺隊の存続に関わるような事になってもおかしくはない。

 そうである以上、ニーズヘッグのシステムXNを使うのなら、やはりこの辺りか……もしくは人が来ないような山奥とかでやる必要があった。

 

「そう、だね。……もしよかったら、それを見せて貰えるかな? 許可は出すから」

 

 耀哉の許可も得て、話は決まるのだった。




アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1730

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