予想通り、量産型Wが来るというのを知った善逸はかなりショックを受けた様子を見せていた。
この感じだと、アオイのマッサージがそれだけ気に入ってたんだろうな。
それは分かるのだが、だからといって善逸に配慮して量産型Wを派遣しないという選択肢はない。
アオイには量産型Wに色々と指示を出して貰って、それによって量産型Wには経験や知識を蓄積していく必要があるのだから。
もっとも、その辺に関してはそこまで大きな理由ではないが。
ぶっちゃけた話、量産型Wに習得して貰いたいのは呼吸関連の技術もそうだが、何よりも蝶屋敷の……正確にはしのぶの調薬技術なのだから。
それを思えば、アオイの指示出しの技術とかそういうのは……こう言ってはなんだが、おまけに近い。
「師匠、どうにかならないんですか……?」
しのぶとエリナが俺達の前から立ち去ると、善逸はそんな風に言ってくる。
いや、それは最早懇願という表現の方が相応しいだろう。
「何とか、か。……ならないな。諦めろ」
実際には、本当に何とかしようと思えば、俺の権限で何とか出来なくもない。
だが、それでも今のこの状況で、わざわざそんな事をしても意味がないのは間違いない。
これで善逸が実は鬼殺隊の中でも重要人物で……とか、そんな風だったら、何とかなったかもしれないが。
勿論、個人的に善逸は重要人物だと思ってはいる。
何しろ善逸はこの世界の主人公たる炭治郎の仲間だ。
そうである以上、俺に取っては……それこそ下手な重要人物よりも大きな意味を持つ。
不幸中の幸いというか、ダンバイン世界と違うのは、炭治郎が鬼殺隊を抜けて鬼側につくといった可能性はまずない事だろう。
ダンバイン世界では、ショウがドレイク軍を抜けてギブン家に亡命し、最終的には敵となった。
それもただの敵ではなく、原作の主人公が最大限の実力を発揮するような敵なのだ。
事実、ハイパービルバインはかなりの強敵だったし。
そういう意味で、炭治郎は安心して見ていられる。
「そんなぁ……」
量産型Wの導入がどうやっても避けられないと知った善逸は、思い切りショックを受けた様子を見せる。
善逸にしてみれば、機能回復訓練で女と密着出来る機会がなくなるというのは、最悪の結果なのだろう。
「何度も言うが、そういう様子を見せるからこそ、女にモテないんだぞ?」
「ぐ……それは……でも、薬を飲む時は騒がなくなりましたよ」
「それは最低限だろ」
苦い薬を飲まなければならなくなったからといって、それで泣き喚くといったように騒ぐのは、見ている方にとって決して愉快なものではない。
特にアオイのように生真面目な性格をしている者にしてみれば、そんな男にくっつくのは勿論、話すのも遠慮したいだろう。……それでも委員長気質のアオイにしてみれば、話さないという選択肢は存在しないのだろうが。
「アオイからマッサージを受けてる時も、だらしなく鼻の下を伸ばすような真似はしないで……そうだな、炭治郎を見習え」
アオイの好感度という意味では、炭治郎、善逸、伊之助の3人の場合、間違いなく炭治郎が最高だ。
次が……伊之助と善逸だと、どっちだろうな。
伊之助はかなり傍若無人な性格をしているだけに、あるいは善逸よりも好感度が低いという可能性もある。
あ、でも落ち込んでいた時の伊之助は、かなり物わかりがよかったし、大人しかった。
そう考えると、善逸よりも伊之助の方がアオイの好感度は高いかもしれないな。
ちなみにアオイの手伝いをしている3人の少女達の場合は、かなり炭治郎に懐いている様子を見せていた。
そういう意味では、蝶屋敷にいる面々から一番好感度が高いのは炭治郎だろう。
さすがこの世界の主人公だけの事はあるな。
「ほら、それより獪岳についての話も終わったし、エリナとしのぶもいなくなった。そうすれば、いつまでもここにいると機能回復訓練をサボってると思われて、アオイに叱られるぞ。そうなれば、またアオイから嫌われる事になる」
「うぐ……そ、それは……分かりました。すぐに戻ります」
善逸に言う事を聞かせるには、やはりこうして女から嫌われるといったような形で誘導するのが一番いいな。
本人がそれをどう思っているのかは、正直なところ俺にも分からないが。
ともあれ、善逸が戻ると言ったので、俺も一緒に機能回復訓練をやっている場所に向かう。
そうして部屋に向かった俺が見たのは……落ち込んだ様子の、炭治郎と伊之助だった。
「弱クテゴメンネ」
うわ、また伊之助が弱気モードになってる。
まぁ、ああいう性格の伊之助だ。
それがカナヲによっていいようにやられてしまえば、それでショックを受けてもおかしくはないのだろう。
炭治郎の方は、それでショックを受けるのは間違いないものの、それで負けてもすぐに立ち上がれるだけの精神的な強さを持っていた。
炭治郎と伊之助の決定的な差は、この辺だよな。
「あ、遅いですよ。さぁ、機能回復訓練を始めますよ!」
部屋に戻ってきた善逸を見て、アオイがそう告げる。
善逸はそんなアオイの誘いの言葉に、嬉しそうに向かった。
これから起きるのが実力差を徹底的に知ってしまうといったようなことであっても、善逸にしてみれば女からの……それもアオイのような美人からの誘いという事だから、それで十分なのだろう。
「うーん……おかしいな。カナヲが幾ら凄くても、それでもここまで負けるなんて……」
炭治郎は時々伊之助を励ましながらも、何故自分がカナヲに勝てないかといった事を考えていた。
自分で考えて、自分で結果を出す。
それはありふれた事ではあるが、重要な意味を持つのも間違いない。
「善逸も連れて来たし、俺はそろそろ帰るよ。……今はかなり大変だろうけど、頑張れよ」
「ありがとうございます」
炭治郎が俺の言葉を聞いて、やる気に満ちた様子でそう言ってくる。
隣で弱気になっている伊之助とは違うな。
この辺も炭治郎が主人公だからこその性格……というのはちょっと違うか?
そんな風に思いつつ蝶屋敷を出る。
さて、そうなるとこれからどうするかだな。
ムラタの件はともかく、他の連中の訓練がどうなってるのか、ちょっと見てみるか。
特にペルソナを使う荒垣の場合は、それこそかなり特殊な感じになってそうだし。
そんな風に考え、俺は蝶屋敷から出るのだった。
「あのペルソナとかいう奴には構うな! それを操っている荒垣に攻撃を集中させるんだ!」
その指示に従い、模擬戦を行っている者達は荒垣に向かって攻撃をしかける。
水の呼吸や風の呼吸といった呼吸を使う者が多いが、何人かは炎の呼吸を使っている者もいた。
だが……荒垣のカストールはそんな相手の行動を阻止すべく動きながら、その上で相手を吹き飛ばしてダメージを与えていく。
それでも何人かはカストールの攻撃を掻い潜って荒垣に近付いたのだが……ペルソナ使いというのは、ペルソナを使っている間、身体能力も上がる。
呼吸の技を次々と回避しては、拳や蹴りによって相手を吹き飛ばす。
それでいながら、相手を殺さないように、そして致命的なダメージを与えないように、しっかりと手加減はされていた。
「うん、これはまた……凄いな」
カストールの存在感が大きいのは勿論だが、以前はカストールを暴走させたりしていたとは到底思えない程に、荒垣は自分のペルソナをコントロールしていた。
この辺は荒垣の成長の証とも言えるか。
ペルソナ世界の件が終わった後、何気に俺は荒垣と会う機会はあまりなかった。……ゆかりや美鶴とはそれなりに会っていたのだが、それはあくまでも恋人との逢瀬だし。
ともあれ、ペルソナについての研究であったり訓練であったりは、技術班や実働班に任せていたのだ。
勿論任せきりという訳ではなく、どういう訓練をしているのかといった内容や、どれだけ能力が上がったのかといったような報告は受けていたが。
それでもこうして荒垣が直接暴れているのを自分の目で見ると、感慨深いものがある。
「おい、アクセル。どうしたんだ? 俺に何か用件か?」
俺の存在に気が付いたのだろう。
荒垣がそう尋ねてくる。
ちなみに模擬戦はもう終わっており、カストールの攻撃によって全員が倒されていた。
「いや、特に何か緊急の要件があった訳じゃない。ただ、ちょっと訓練をしている様子が気になってな」
そう言うと、荒垣は安堵したように息を吐く。
「そうか。アクセルが来たから、何か起きたのかと思ったじゃねえか」
「俺を何だと思ってるんだ?」
まるで俺が動けば、それが何か騒動を引き起こすような……いや、うん。
今まで巻き込まれてきた数々の騒動を思えば、微妙に荒垣に対して反論しにくいな。
俺がトラブルを引き寄せる性質……特性と表現した方がいいのかもしれないが、そういうのがあるのは間違いのない事実なのだから。
「聞きたいのか? なら、正直なところを言ってもいいが」
「いや、別にいいよ。……ああ、そうそう。ムラタから話は聞いてるか?」
「ああ? ……ああ、聞いてるよ。今はあの人が行ってるから、多分俺の出番は回ってこないと思うが」
行冥が義眼の手術を行ってリハビリ中の今、行冥の担当地区で鬼を殺しているのは、ムラタだ。
正確にはムラタと獪岳の2人だが。
本来なら、ムラタと他の連中が交代で行うという予定にはなっていたのだが……それをやっているのがムラタとなると、交代する予定がなくてもおかしくはない。
無理矢理に好意的に考えると、ムラタは少しでも多くの鬼を獪岳に倒させて実戦を経験させ、それによって行冥との約束通り十二鬼月や鬼舞辻無惨と戦う準備を整えさせている……といったようにも思える。
とはいえ、実際には獪岳云々よりもムラタが鬼と戦ってみたいという思いの方が強いのだろうが。
何しろムラタは神鳴流を習得している。
免許皆伝になったのか、それともまだ習っている最中なのか。その辺については俺も分からないが、とにかく神鳴流というのは妖怪とかと戦う為に発展してきた剣術だ。
それだけに、鬼と戦っても十分に対処出来るだろう。
問題なのは日輪刀でしか殺せないと言われている鬼を、神鳴流で殺せるかどうかだろう。
ゲイ・ボルクを使って殺せたのを考えると、日輪刀以外でも十分に殺せる方法はあると考えてもいいのだろうが。
先遣隊として鬼滅世界に来ている面々は、それを試す為でもある。
神鳴流を使うムラタ。
魔術を使う凛。
半サーヴァントの綾子。
ペルソナ使いの荒垣。
ネギま世界の魔法を使う円と美砂。
そのどれもが、鬼を殺せる可能性があるという事で選ばれた面々だった。
そういう意味では、ムラタだけが鬼と戦っているというのは……少し問題なんだよな。
「荒垣も出来るだけ早く鬼と戦えるようにしたいんだがな。……どこかに派遣して貰えるように、耀哉に頼んでみるか?」
「そこまで無理はしなくてもいいだろ。それに……山の中とかならともかく、大正時代の街中で俺は間違いなく目立つしな」
「それは否定しない。荒垣は身体も大きいし」
大正時代というのは、平均身長がまだかなり低い。
そんな中で荒垣のようなでかい奴がいれば、目立つだろう。
とはいえ、でかいということなら天元や行冥といった面々は荒垣よりも更に大きい。
そう考えると、荒垣の場合は目立つのは身長よりもその服装かもしれないな。
「でも、大正時代に興味はないか? 生きていて昔の時代を見るなんて事は、まずないだろ? 未来ならともかく」
ペルソナ世界と比較して、未来の世界というのはそれなりに多い。
過去の世界は……一応マブラヴ世界がそうなのか?
とはいえ、荒廃具合が大きすぎて過去も未来もない異世界って感じだよな。
「それは……否定出来ないな。だが、それなら別に俺じゃなくても、他の奴も見たいんじゃないか? エヴァとか」
荒垣もシャドウミラーに来て戦闘訓練を受けている以上、当然ながらエヴァの存在は知っていた。
そしてエヴァにとって大正時代が興味深いというのも、間違いのない事実だろう。
「そうだな。エヴァなら来たいと言うかもしれないな」
荒垣の言葉を聞き、そう返す。
そんな風に荒垣と話している間に、模擬戦をしていた鬼殺隊の剣士達が準備を終えたのか、立ち上がる。
大正時代だけに、効率とかよりも根性論とかが重要視されていてもおかしくはない。
ただ、実際にその根性論とかでも十分に効果が出ていると考えれば、ある意味でそれは効果的ではあるのだろうが。
「荒垣さん、もう一度お願いします!」
鬼殺隊の剣士がそう声を上げると、他の剣士達も同様にやる気を見せる。
そんな相手を見て、実は面倒見のいい荒垣が放っておける筈もなく……大きく息を吐くと、模擬戦を行うべく戻っていく。
この面倒見のよさが、その強面にも関わらず多くの者から慕われる理由なんだよな。
本人は決してそういうつもりはないと言うんだろうが、その態度が荒垣の人間性を表していた。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730