今、何て言った?
一瞬、自分は言葉を聞き間違えたのか? と思いつつも、改めてエヴァの方を見る。
しかし、エヴァには冗談か何かを言ってるようには思えない。
それどころか、真剣な表情を見る限りでは本気で言ってるのは間違いなかった。
それを示すように、エヴァが暴走した時のストッパー役……もしくは保護者とでも呼ぶべき茶々丸は、今のエヴァを止める様子はない。
つまり、エヴァの言ってる内容は事実なのだろう。
「え……」
エヴァの言葉を聞いた炭治郎が、しのぶを見る。
だが、そんな炭治郎の視線を向けられても、しのぶは特に気にした様子はなかった。
笑みを浮かべているしのぶだけに、もし動揺してもそれを隠すといった様子は容易だ。
とはいえ、炭治郎は嗅覚が非常に鋭い。
そして善逸の聴覚もまた人並み外れた能力を持っている。
そうである以上、もししのぶが嘘を隠そうとしても、そう簡単に出来るとは思えないのだが……
「何のことでしょう?」
エヴァの言葉に、しのぶは特に動揺を示す様子もなく、笑みを浮かべてそう言う。
これは実際のところどうなってる?
エヴァの言葉だけに、それが嘘とは到底思えない。
だが同時に、しのぶの様子を見る限りではこちらもまたエヴァの言うようにそう長くないとは思えない。
というか、普通に考えてそう長くないと言われるようなしのぶが、鬼殺隊で柱として行動出来るのか? と考えると、その答えは否だ。
とてもではないが、そんな状況で鬼と戦うといった真似は出来ないだろう。
「ふんっ、そうか。ならそういう事にしておく。私は別にお前がどうなっても構わんからな」
「どのような意味なのかは分かりませんが、今はありがとうございますと言っておきますね。……では、失礼します。こう見えて、色々と忙しいもので」
しのぶはエヴァにそう言うと、その場から去っていく。
少しだけ……そう、本当に少しだけだが、歩く速度が速いように思えたのは、俺の気のせいか?
「エヴァ」
しのぶがいなくなったところで、短くエヴァの名前を呼ぶ。
そんな俺の言葉を聞いたエヴァは、特に何を言う様子もなく視線をこちらに向けてくるだけだ。
これは、俺が何を言っても口を割らないな。
エヴァがこんな様子を見せると、今は何を言っても意味がない。
しのぶの様子に何か思うところがあったのか。
「はぁ。……まぁ、いい。取りあえず炭治郎達の事は任せてもいいんだな? エヴァの事だから大丈夫だとは思うが、無理をするなよ」
「誰に言っている?」
しのぶの件は忘れたかのように自信ありげにそう言ってくるエヴァだったが、さてこの誰に言っているというのは一体どういう意味を持ってるんだろうな。
自分がそのような真似をすると思うのか? といったような意味か、それとも無理をして潰れるのならそれまでの相手でしかないと言ってるのか。
色々な意味がありそうな気はするが、かといって今の状況では何を言っても話を聞く様子はない。
「エヴァにだよ。……じゃあ、俺はそろそろ行く。ここについては本当に任せてもいいんだな?」
「え? ちょ……先生!? 何でこの流れでいきなり帰る事になるんですか!?」
俺の言葉を聞いていた善逸がそう叫ぶものの、実際俺の役目はあくまでもエヴァをここまで連れて来て、炭治郎達に会わせる事だけだ。
それが終わった以上、もう俺が蝶屋敷にいる必要はない。
いたらいたで、何か面倒に巻き込まれるような気がするし。
しのぶの件は若干気になるが……エヴァが頼りにならないとなると、レモン辺りに任せる為に柱は全員健康診断をするようにした方がいいか?
「お前達を鍛えるのは、エヴァに任せてある。何度も言うようだが、エヴァの訓練を生き残れたら、お前達は間違いなく強くなるだろう」
「待って下さいよ、先生! これ、今の話の流れで言う事ですか!? 何だか、思い切り不穏な様子になってるじゃないですか!」
叫ぶ善逸だったが、俺はそれを聞き流しながら茶々丸に声を掛ける。
「茶々丸、後は任せた。茶々丸がいるから問題ないと思うけど、もしエヴァが蝶屋敷を凍り付かせようとしたら、すぐに止めてくれ」
「分かりました。マスターのお世話はお任せ下さい」
エヴァを止めるのもお世話という言葉にする辺り、さすが茶々丸だよな。
正直なところ、エヴァって茶々丸がいないとろくに生活が出来ないんじゃないかと思う時もあるんだが……それは多分、間違いという訳じゃない。
もしエヴァに茶々丸がいなかった場合、恐らくエヴァは数日もまともな暮らしをするといったような真似は出来ないだろう。
「おい、そこ」
エヴァが指摘する声が聞こえてきたが、俺と茶々丸はそれを無視して言葉を交わす。
「茶々丸も、いつもエヴァの世話は大変だろう?」
「いえ、もう慣れていますので。それに……マスターはああ見えて可愛いところもあるのですよ?」
「エヴァの可愛いところ? ちょっと想像出来ないな」
「残念です。かなり面白……いえ、可愛らしいのですが」
「茶々丸っ! お前、面白いと言いそうにならなかったか!?」
そう叫んでジタバタするエヴァは、先程までの絶対的な強者といった雰囲気は既にない。
既にないが、それでもエヴァが強者であるのは間違いなく、今のようなやり取りをしつつも、倒れている伊之助の背中から足を動かす様子はない。
それどころか、そんな真似をしつつも伊之助を踏む足の強さは一定らしく、伊之助が痛みに呻いたりといった様子はない。
代わりに、伊之助は何とか現在の状況から脱出しようと暴れ続けていたが。
この辺り、多分エヴァも楽しんでやっているのだろうと思う。
「いえ、マスターの記録をするのは私の役目ですから」
「面白いのと、記録するのが一体どういう関係がある!? ええい、後でゼンマイをしっかりと巻いてやるからな! 覚えておけ!」
ゼンマイという表現に、炭治郎と善逸は不思議そうな表情を浮かべる。
まぁ、普通に考えて茶々丸がゼンマイで動いているとは思わないよな。
実際にはただ単純にゼンマイで動いている訳ではなく、魔力を込めたゼンマイで動いているのだが。
ともあれ、これ以上ここにいると色々と面倒な事になりそうなので、そのまま俺は去っていくのだった。
蝶屋敷を出ると、俺は適当に周囲を見て回る。
正直なところ、しのぶにエヴァとの会話の真相を聞きたいという思いはあったのだが。
だが、しのぶの性格を考えれば、俺が何を聞いても素直にエヴァの言葉の意味を話すとは思わない。
だとすれば……この件は、やっぱりレモンに話した方がいいのか?
あるいは木乃香か。
しのぶがどのような状況にあるにせよ、今はその状況を確認する方が先だ。
にしても、以前ホワイトスターでしのぶに会った時はエヴァも特に何か言う様子がなかったのに、何で今日に限って?
考えられるとすれば……耀哉の呪いと同じように、この鬼滅世界でしか効果が発揮しない何かとか?
もしくは、ホワイトスターで会った時は耀哉を含めて大勢いたので、そこまで気にする様子がなかったという可能性も否定は出来ない。
ともあれ、しのぶが何らかの危険を持っているのは間違いない。
一度レモンに柱の全員を健康診断でもさせるか?
精密検査をすれば、色々と分かる事もあるだろうし。
特に実弥の稀血。
この世界特有の、鬼を惹き付けるその血はレモンにとっても興味深いだろうし。
とはいえ、鬼は鬼でも吸血鬼のエヴァには効果がなかったんだよな。
ちなみにリョウメンスクナノカミを吸収した俺にも効果はなかった。
これは鬼滅世界の鬼以外には稀血の効果はないのか、それとも単純に魔力の差を含めて実力差が大きすぎて効果がなかったのか。
その辺についてもしっかりと確認する為には、一度他の世界の鬼、それも実力はそこそこの鬼に稀血を使ってみた方がいい。
問題なのは、一体どこの世界に鬼がいるのかという問題だろう。
確実なのはネギま世界か。
関西呪術協会に所属する陰陽師に頼んで鬼を召喚して貰い、稀血を使ってみるとか。
神鳴流との交渉の際に、その辺についても頼んでみるか。
関西呪術協会にしても、鬼滅世界は鬼を相手にするという意味で、神鳴流と違う興味を持つ可能性もあるし。
陰陽師が召喚する前鬼や後鬼の類は、陰陽師が倒して降伏させた鬼とかも入っている……というか、以前はそれが普通だったらしい。
ネギま世界では、何故か着ぐるみの前鬼や後鬼とかがいたけど。
「ともあれ、その辺は後で色々と相談するとして、今日は適当にその辺を見て回るか」
そう呟き、俺はその場を後にするのだった。
「アクセルさん!」
色々と鬼殺隊の隠れ里を見て回っていた俺は、のんびりとした風景を見ながら桜餅を食べていたのだが、不意にそんな声を掛けられる。
幸にも誰かが近付いて来る気配は感じていたので、食べていた桜餅を落とす事はなかったが。
ちなみにこの桜餅は、鬼滅世界で買ったものではなく、以前ペルソナ世界にいた時に、スーパーで買ったものだ。
スーパーで買った桜餅だけに、和菓子屋で売っている職人の手作りの品に比べれば劣るが、それでも日本のスーパーで売ってる桜餅だけに十分美味い。
この辺、チョコに限らず日本の食に関する執念というのはもの凄いよな。
「どうした? 見ての通り、俺は今のんびりしてるところなんだが」
声を掛けてきた相手が誰なのかというのは、その顔を見ればすぐに分かった。
何しろその顔には、ひょっとこのお面を被っていたのだから。
「お館様から今日こちらに来ていると聞いて、捜してたんですよ」
「俺をか? 宇宙で拾ってきた岩石は、もうそっちに預けてあるだろ? それで俺に何か用があるのか? もしかして、もっと岩石を持ってこいとか? あれだけだと足りなかったのか?」
「いえ、違います」
俺の言葉に、ひょっとこのお面を被った男……刀鍛冶は即座に首を横に振る。
どうやら俺の予想とは違ったらしい。
刀鍛冶達は何となく技術班の面々に近い雰囲気があったので、そんな風に依頼をしてくるのかと思ったんだが……どうやら違ったらしい。
「なら、どうしたんだ?」
「はい、実はアクセル王が日輪刀を握った時に、赤くなった……それも炎の呼吸の使い手が持った時の赤とは明らかに違う赤い刃になったと聞きました」
「ああ、そう言えばそういうこともあったな」
その件についても、色々と調べる必要があると思っていたんだが、すっかり忘れていた。
「何故そんなに暢気なんですか! 日輪刀が今までと全く違う反応を見せたということは、アクセル王は未知の呼吸の使い手ということになるんですよ!」
「いや、ならないだろ。そもそも俺は呼吸そのものを使えないぞ」
そもそも、俺は人間ではなく混沌精霊だ。
人の形はしているものの、人間ではない。
そんな俺が呼吸を習得出来るかと言われれば、正直難しいとしか言いようがない。
俺が何をしても、人間でないのは変わらないのだから。
それなら寧ろ、エヴァの方が呼吸を使える可能性は高いと思う。
俺とは違い、吸血鬼のエヴァは人間をベースにしているのだから。
……いや、一応俺も人間をベースにしてるという点では同じなのか?
とはいえ、リョウメンスクナノカミの頭部を吸収し、闇の魔法でモンスター化して精霊を手当たり次第に吸収したのが人間と同じと言えるかどうかは分からないが。
「そんな筈はありません! ……いえ、まずは実際にその赤い日輪刀というのがどのような物なのか見たいので、一緒に来て貰えますか? 他の刀鍛冶達も、是非見たいといってますし」
そんな刀鍛冶の言葉に、どうするか迷う。
日輪刀の件ははっきりとさせたかったし、そういう意味では日輪刀の専門家とも呼べる刀鍛冶達に見せるのは悪くないと思う。
唯一の難点は、ここでゆっくりとしながら桜餅を食べる時間がなくなる事だが……まぁ、ここはやっぱり日輪刀の方を見て貰った方がいいか。
「分かった。なら行くか。日輪刀の件については、俺もどうにかする必要があると思ってたんだ。お前達ならそれが分かるんだろう?」
「分かるかどうかは、実際に見てみないと。少なくても、刀鍛冶達の中でそのような新しい赤に刀身が変わるというのは、見たことがないという事でしたので」
日輪刀を作っている刀鍛冶達でも分からないか。
あるいは、この件が鬼殺隊の新しい力になるのかもしれないな。
とはいえ、実際に俺が握った事によって変わる日輪刀がどのような力を持っているのかを調べるには鬼と戦ってみせるのが一番手っ取り早いんだが。
問題なのは、鬼がそう簡単に姿を現さないことなんだよな。
それに鬼が出て来るのは基本的に夜だ。
太陽が苦手である以上、日中は建物の中にいるとか、洞窟に隠れたりとか、あるいは地中に隠れたりとかしてるのかもしれないが。
というか、鬼殺隊にしてみれば鬼を殺すのに鬼が万全の力を発揮出来る夜に戦うよりも、日中に隠れている鬼を見つけて太陽の下に連れ出すといったような真似をした方が手っ取り早いような。
鬼殺隊にしてみれば、太陽で殺すのではなく自分の力で鬼を殺したいと思っているのかもしれないが。
この辺、鬼によって身内を殺されている者が多いからこその特徴だな。
そんな風に思いつつ、俺は呼びに来た刀鍛冶の案内に従って移動するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730