「ぐぬううううううっ!」
善逸が力一杯日輪刀の柄を握るものの、その刀身の色は変わらない。
善逸が使う雷の呼吸本来の、黄色のままだ。
円達が握った赫刀のように、赤く染まったり熱を持つ様子はなかった。
「どうした、頑張れ。お前さんは女にモテたいんだろう? なら、この程度の事も出来ないでどうする? アクセル王はあっさりと日輪刀の色を変えて見せたぞ」
「そういう強い姿に女は惚れるんだろうな。まさか、力一杯やっても全く刀身の色を変えられないなんて……はぁ」
ひょっとこのお面を被った刀鍛冶達が、善逸にそんな声を掛ける。
俺とのやり取りから善逸の性格を理解し、そんな善逸のやる気を少しでも上げる為の言葉なのだろう。
そんな刀鍛冶達の言葉に乗せられるように善逸は思い切り日輪刀の柄を握るも、その刀身の色が変わる様子は全くない。
「アクセル、大丈夫なの? あの様子を見ると、とてもじゃないけど赫刀にはならないでしょ?」
凛が必死に日輪刀を握っている善逸を見ながら、そう尋ねてくる。
善逸の必死さを見て、何か思うところがあったのだろう。
「そう言われてもな。実際にそれを確認する為に善逸達を呼んだんだ。そうである以上、出来るか出来ないかはやってみないと……」
「ぜはああああああ! もう無理ぃっ!」
俺の言葉の途中で善逸の集中が切れたのか、そんな声が周囲に響く。
最初こそはやる気満々だった善逸だったが、今こうして見ている限りでは体力が限界に達したらしい。
あるいは、限界を迎えたのは体力ではなく精神力かもしれないが。
「先生、本当にこれが赫刀? っていうのになるんですかぁ?」
「円が握ったのを見ただろう? その善逸の握っている日輪刀を、円の馬鹿力で握った結果、赫刀になったんだ」
「ちょっとアクセル君?」
円がジト目でこっちを見てくるが、取りあえずそれは無視しておく。
「つまり、思い切り柄を握れば日輪刀は赫刀に変わる」
「赫刀に変わるって……そうなったら、普通の日輪刀とどう違うんですか?」
「分からない」
「ちょっ、先生!?」
責めるような目でこちらを見てくる善逸だったが、実際に赫刀がどんな効果を持つのかというのは、実際に試してみないと何とも言えないのは間違いない。
赫刀という存在については認識されたものの、その赫刀が鬼に対してどのような効果を発揮するのかは、実際に鬼と戦ってみないと分からない。
そういう意味では、現在行冥の担当地区で鬼と戦っているムラタに任せれば……いや、ムラタが使うのは神鳴流である以上、赫刀であるかどうかというのはあまり関係がないよう気がする。
神鳴流の強さは、それこそ赫刀云々とか関係なしに強いし。
実際、神鳴流は極めた場合、混沌精霊の俺にもダメージを与えるといったような真似が可能だろう。
そんな訳で、もし赫刀がどのような効果を発揮するのか試すのなら、ムラタではなく獪岳か。
問題なのは獪岳が赫刀を発現出来るかどうかだろう。
赫刀は発現させてからも暫くは赫刀のままだし、そういう意味では最悪ムラタが赫刀を発現させてから、それを獪岳が使うといった方法でも構わないんだよな。
ムラタがそこまで手間を掛けて獪岳の為にどうにかするといったことをするかは分からないが。
ああ、でも赫刀がどういう効果を発揮するのかを調べたいからと言えば、ムラタも多少は手を貸してくれるか?
「あの……多分、鬼との戦いの中で凄く役に立つんじゃないかって、そう思うんですけど」
「炭治郎?」
何故か炭治郎がそんな事を言ってくる。
炭治郎の性格を考えれば、何の根拠もなくそんな事を言ってきたりはしない。
つまり、このような事を言う以上は何か理由があるのだろう。
「その、アクセルさんに助けて貰った十二鬼月との戦いで、多分……本当に多分ですが、アクセルさんが言う赫刀? というのに近いのを使ったような、使ってないような……意識が朦朧としていたので、確実な事は言えませんけど」
言葉通り、本当に炭治郎が自分で言ってるのが赫刀なのかどうかは、本人にも分からないのだろう。
若干朧気な様子で呟く。
炭治郎の言葉が事実なのかどうかは分からないが、ともあれそんな炭治郎の言葉は刀鍛冶達に興味を向けられるには十分だった。
「それは本当か!? 具体的にはどのようなものだった!?」
「え? えっと、すいません。半ば限界状態だったのを考えれば、はっきりとは言えません」
「があああっ、何で分からないんだよ!」
ひょっとのお面を被っていても、刀鍛冶が苛立っているのはすぐに分かった。
とはいえ、炭治郎も本当にうろ覚えに近いのか、何とか言葉を発しようとするも、刀鍛冶達はひょっとこのお面を被った相手に何も言えなくなる。
「ほら、落ち着け。戦いの中でとはいえ、赫刀が発現した可能性があるというだけで、大きな意味があるだろ」
実際、うろ覚えとはいえ炭治郎がもしかしたら赫刀を発動したのだとしたら、それは非常に大きな意味を持つ。
「ぐ……分かりました」
刀鍛冶は俺の言葉に取りあえず大人しくなる。
刀鍛冶から助けて貰った炭治郎はこちらに感謝の視線を向けてきた。
「善逸は無理だったが、次は炭治郎の出番か? 実際に一度赫刀を発現させたのなら、もしかしたら今回も出来るかもしれないしな」
「それは……どうでしょう。あの時は本当に限界だったから出来たかもしれませんし」
いわゆる火事場の馬鹿力でどうにか出来た……かもしれないという事らしい。
「とにかく試してみればいい。炭治郎、お前の言う通り赫刀が鬼に対して効果的だった場合、それは鬼殺隊にとって非常に大きな意味を持つ。それは、禰豆子を人に戻すという意味でも大きな意味を持つ」
炭治郎のモチベーションの大きな理由は、禰豆子を人間に戻すというものだ。
そうである以上、炭治郎をやる気にさせるのは禰豆子を持ち出すのが一番いい。
善逸の女にモテるというとの、同じような感じだな。
そういう意味だと、伊之助は……やっぱり強くなるというのがモチベーションになるのか?
ただ、強くなるという意味ではエヴァがもう訓練してるしな。
「分かりました。頑張ってみます!」
俺の言葉にそう頷き、炭治郎は日輪刀を握る。
そして伊之助を睨み付けているだろう鍛冶師のことは気にした様子はなく……あるいは意図的に無視して、日輪刀の柄を思い切り握り締めた。
「ぐぬううううううううううっ!」
炭治郎の口から唸り声が上がるものの、日輪刀が赫刀になる様子はない。
俺と会う前に赫刀にした……あるいはなったかもしれないとい言っていたが、やっぱりそれは気のせいだったのか、あるいは火事場の馬鹿力だったのか。
炭治郎は必死になって日輪刀を握っていたものの、最終的には大きく息を吐く。
「ぶはぁっ! ……駄目です、すいません」
炭治郎の両手は、あまりに力を入れすぎた為か微かに震えている。
そこまでやって駄目だったという事は、本当に限界まで試してみて、それでも駄目だったのだろう。
「駄目か」
刀鍛冶の1人が残念そうに呟く。
とはいえ、善逸が駄目だったので炭治郎も駄目な可能性が高いと思っていたのか、そこまで残念そうな様子ではない。
「そうなると、最後は……」
「俺だな、任せろ!」
がはははは、とそんな笑い声を上げながら、伊之助は炭治郎から受け取った日輪刀を握る。
その瞬間、刀鍛冶達からの視線が鋭くなったのは、決して俺の気のせいではないだろう。
伊之助の場合、日輪刀の扱いで刀鍛冶達から目を付けられてるしな。
炭治郎から受け取った日輪刀も、適当に扱うのではないかと、そんな風に思われていてもおかしくはない。
しかし伊之助は自分がそのような視線を向けられているというのに全く気が付いた様子もなく、何故か嬉しそうに日輪刀を握り……
「猪突猛進、猪突猛進、猪突猛進!」
そんな風に叫びながら、日輪刀を強く、強く、強く握る。
にしても、何で猪突猛進?
猪の被り物をしている伊之助が言うには相応しい言葉なのかもしれないが、猪突猛進というのは当然ながら褒められるような言葉ではないと思うんだが。
伊之助にとってはそうでもないらしいので、特に突っ込むような真似はしないが。
……刀鍛冶達も、何故か猪突猛進といった言葉を口にする伊之助を見て、驚いている雰囲気だ。
そのおかげで日輪刀を粗末に扱っているのが気にくわないといった様子がなくなったのはどうなんだろうな。
ともあれ、必死になって日輪刀の柄を握った伊之助だったが、そんな伊之助であっても日輪刀を赫刀にする事が出来ない。
「うーん……無理か。やっぱりまだ機能回復訓練を終えていないってのも、関係あるのか?」
この世界の主人公である炭治郎やその仲間なら、あるいはどうにかなるかもしれないと思ったんだが。
そう思って炭治郎を見ると、ふと禰豆子の事を思い浮かべる。
「炭治郎、禰豆子は鬼になった事で高い身体能力を持ってるんだよな? そうなると、もしかして禰豆子が日輪刀を握ったら赫刀になるとかないか?」
「それは……でも、出来れば禰豆子に日輪刀は持たせたくないんです。鬼を殺す為の刃ですから」
炭治郎の言葉を聞けば、納得出来た。
確かに日輪刀というのは、鬼を殺す為の武器だ。
それを鬼の禰豆子に持たせるというのは危険かもしれない。
ましてや、禰豆子は鬼になったことによって精神的に幼くなっている。
下手をして日輪刀で自分の身体を傷つけてしまうという可能性は十分にあるだろう。
勿論、鬼であっても日輪刀で死ぬには首を斬る必要があり、禰豆子がそのような真似をするとは思えない。思えないが、精神的に幼い以上は何らかのミスでそんな事になってしまうといった可能性は否定出来なかった。
「となると、もっと別の奴か。……やっぱり行冥に任せるべきか?」
鬼殺隊の中で一番高い力を持っているのは行冥だ。
そんな行冥だけに、日輪刀を思い切り握れば赫刀になる可能性は十分にあった。
普段から行冥が日輪刀を使っていれば、あるい赫刀が発見されていた可能性もあるが、行冥の場合は鎖つきの鉄球を使ってるしな。
……あの鉄球も、柄を思い切り強く握れば赫刀みたいに赤く染まって熱を持つのか?
そんな疑問を抱くも、そっちに関しては後回しにした方がいい。
そうなると、次点では……誰だ?
行冥と同じく、大正時代の平均からは大きく外れた身長を持つ天元を連れてくるか?
いや、けど天元は力というよりは速度の方に特化した身体の鍛え方をしていたし……そうなると、実弥か?
実際に実弥はかなり身体を鍛えているのは間違いない。
鬼は絶対殺すマンであるだけに、実弥は十分に身体を鍛えているのだろう。
ただ、実弥は……うん。
俺個人としては、イザークと似ている雰囲気もあって嫌いじゃない。
けど、炭治郎にしてみれば禰豆子を刺そうとした奴だけに、かなり嫌っているんだよな。
そして俺はこの世界の主人公という事もあってか、炭治郎とはそれなりに親しくしたいと思っている。
いや、それを抜きにしても素直な性格の炭治郎は決して嫌いになれるような相手ではない。
そんな中で俺が実弥と一緒にいるのを見れば、それなりに頻繁に会う炭治郎がどう反応するか。
そうなると……そう言えば蜜璃はかなり筋力が高いという話を聞いたな。
甘い物が好きらしいし、チョコとかケーキとかで協力して貰えないか?
「力が重要なら、蜜璃に協力して貰うというのはどうだ?」
「恋柱に?」
俺の言葉に、刀鍛冶の1人が驚いたように言う。
まさか、ここで柱を連れてくるといった事は想像していなかったのか?
赫刀というのが具体的にどのような効果を持ってるのかは分からないが、それでも鬼に対して強い効果を持つ可能性がある以上、試してみる必要がある。
「ああ。蜜璃はかなりの剛力だと聞いた。なら、炭治郎達は無理でも蜜璃ならもしかしたら赫刀になるかもしれない」
本当にそうなるかどうかは、試してみないと分からない。
分からないが、それでも駄目なら駄目で、そういうデータが増えるということを意味していた。
蜜璃という言葉に一瞬善逸の目が光ったように思えたが、多分気のせい……じゃないんだろうな。
「それはいいけど、確か恋柱って女よね? アクセルが行くと、また妙な問題が起きないとも限らないから……私がアクセルと一緒に行くわ」
「あ、抜け駆け!」
凛の言葉に美砂が不満そうに言うものの、言われた凛の方は美砂の様子は全く気にしていない。
いや、それどころか、どこか勝ち誇ったような笑みすら浮かべている。
「こういうのは早い者勝ちよ。それに……美砂だと、相手との交渉は出来ないでしょう?」
「そ、それは……」
ここで出来ると言うのは簡単だったが、仮にも政治班の凛を相手にそのような真似が出来る筈もない。
結果として、美砂は凛の言葉を不承不承受け入れる。
「えっと、アクセル殿。恋柱に頼むのはいいですけど、お館様には前もって言っておいた方がいいかと」
刀鍛冶のアドバイスを受け入れ、俺は凛と共に産屋敷家に転移するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730