神鳴流の男は鬼殺隊に預け、俺は産屋敷家から出る。
神鳴流と鬼殺隊がどうなるのかは、それこそこれからどういう関係になるのかによって変化するのだろう。
そうであるなら、俺はこれからそこに関与するつもりは……まぁ、今のところはない。
産屋敷家を出た俺が向かったのは、蝶屋敷。
エヴァによって炭治郎達も訓練をしているのだから、その様子を見てみたいと思った為だ。
機能回復訓練の方も一体どうなっているのか、見てみたいし。
善逸も女にモテる為に頑張っている筈だし。
そう思っていたのだが……
「何をやってるんだ?」
蝶屋敷の庭に姿を現すと、そこでは炭治郎、善逸、伊之助の3人がひょうたんに向かって思い切り息を吹き込んでいるという光景だった。
一体何を遊んでいるんだ? と思ったが、蝶屋敷で働いている3人の子供達が炭治郎達を応援している。
その真面目な様子を見ると、これが遊びでも何でもないのは間違いない。
「アクセルか。どうした?」
俺がやって来たのに気が付いたエヴァが、茶々丸と共に俺のいる方に近付いてきた。
「神鳴流の剣士と耀哉の初顔合わせをしてきたんだよ。今頃は鬼殺隊の剣士と一緒に何らかの話し合いをしたり、腕比べをしたりしている筈だ」
「神鳴流か」
微かに嫌そうな表情を浮かべるエヴァ。
エヴァにとって、人外の相手を倒す為に発展されている神鳴流はあまり愉快な存在ではないのだろう。
とはいえ、刹那やムラタとはそれなりに友好的な関係を築いているのは間違いないので、決定的に嫌っているといった訳でもないんだろうが。
「ああ。上手い具合に手を組んでくれればいいんだけどな。……で、それはともかくとして、炭治郎達は一体何をしてるんだ?」
「常中とかいう呼吸についての訓練だな」
「……あれがか?」
炭治郎達が持っているひょうたんの大きさは、それなりに大きい。
それに思い切り息を吹き込むのが一体どんな練習になるのか。
「うむ。ああやって思い切り息を吹いてひょうたんを破裂させるらしい」
「それはまた、随分と変わった訓練だな」
そう呟くも、俺達にしてみれば呼吸という技術についてはまだあまり知識がないのだ。
だからこそ、もしああしてひょうたんを破裂させるのが正規の訓練だと言われれば、納得するしかないのも事実。
エヴァがこの訓練を黙って見ているのも、俺と同じような理由からだろう。
「そうだな。変わった訓練だとは思うが、実際にそれを行う事によって常中が習得出来るのなら、この訓練は大きな意味を持つ」
「ちなみに、エヴァはやらないのか?」
「馬鹿者。私があのような訓練をやって何になる。それこそ、私があのような真似をすれば、ひょうたんは即座に破裂するぞ。それはアクセルも同様だろう」
「……そうだな」
実際、俺やエヴァがあのような訓練をやっても意味がない。
それこそ即座にひょうたんが破裂して、それで終わる筈だ。
「なら、あの訓練はともかくとして、炭治郎達の訓練はどうなっている?」
「それなりに順調といったところか。アクセルが見つけてきただけあって、あの3人は高い才能を持つ。……坊やには及ばないがな」
坊やというのはネギの事だろう。
ネギは天才であり、努力も怠らない。
そういう意味ではエヴァの比較対象が悪いのは事実だ。
もっとも、エヴァにしてみればネギくらいに才能がある人物でもなければ鍛えていて面白くないのかもしれないが。
そんなエヴァが大人しく炭治郎達の訓練を引き受けているのは、俺の頼みだからというのもあるが、何より……
「大正時代の日本はどんな感じだ? 観光を十分に楽しんでるか?」
「うむ。かなり充実しているのは間違いないぞ。もっとも、大正時代だけあって私のように明らかに日本人ではない者が日本にいるのは珍しいらしく、ジロジロと見られるのはあまり愉快ではないけどな」
「それは時代的にしょうがないだろ」
勿論大正時代にも外国人が日本にはそれなりにいる。
だが、エヴァのように観光旅行をするといった者になると……やっぱりそう多くはないのだろう。
また、これでエヴァが大人であれば話は別かもしれないが、今のエヴァは10歳ちょっとの子供だ。
年齢詐称役でも使って大人の姿になれば……そうなればそうなったで、また別の面倒を引き寄せそうな気がする。
「まぁ、茶々丸がいるから、実際に問題がある訳ではないんだがな」
「さすが茶々丸だな」
「お褒めにあずかり光栄です」
褒められた茶々丸は、俺に向かってそう一礼する。
すると、そのタイミングを待っていたかのように誰かの足音がこちらに近付いてきて声が上がる。
「先生!」
俺を先生と呼ぶのは、善逸だけだ。
つまり、声を掛けてきたのは善逸なのだろう。
……若干不満そうにしているエヴァの姿が眼に入る。
エヴァは師匠と呼ばれているので、俺が師匠と呼ばれるような事はなくなった。
以前は師匠と先生が混ざっていたりしたのだが。
それは別にそういうものだと認識しているので、特に困るような事はないのだが。
ただ、エヴァにしてみればやはり善逸は自分の弟子であるにも関わらず、俺を先生と呼んでいるのが面白くないらしい。
あるいは女の扱いで俺を先生と呼んでいるのが、師匠の自分も同じように思われるのが嫌だという事もあるのかもしれないが。
「善逸、機能回復訓練もエヴァの修行も頑張ってるようだな」
「はい、これも夢の為ですから!」
夢という単語を使っているのはともかく、実際に善逸が目指しているのは女にモテる事、そしてハーレムだ。
実際にハーレムを作っている俺がどうこう言うような筋合いではないのだろうが。
それに実際にハーレムを目指しているので、機能回復訓練やエヴァとの修行を真面目にやっているというのも、間違いのない事実。
もし善逸がハーレムを目指していなければ、機能回復訓練やエヴァとの修行が続いたりはしなかっただろう。
何だかんだと善逸は精神的に弱い。
楽な方へ、楽な方へと逃げてしまいかねないのだ。
炭治郎は真面目だから、そういう風には考えないのだが。
そして負けず嫌いの伊之助は、炭治郎と善逸が訓練をしているのに自分だけサボるというような真似はまずしない。
多分野生の勘で、ここでサボっていると自分だけが置いていかれると思ってしまうのだろう。
あるいは善逸が機能回復訓練をサボっていれば、伊之助もそちらに引きずられた可能性は十分にあったが。
「そうか。その調子で頑張れ。お前が強くなれば、それだけ鬼との戦いで活躍出来る。そして活躍すれば女にモテるようになる。とはいえ、強ければそれでいいって訳でもないけどな」
世の中には男は強ければそれでいいというような者もいないではなかったが、普通に考えて強いからといって粗暴で、女に暴力を振るうような者がモテるかと言われれば、大抵の者は首を横に振るだろう。
とはいえ、善逸の性格を考えればそんなタイプになるとは思わない。
寧ろハーレムを作っても女達の尻に敷かれるといった感じになるだろう。
善逸にしてみれば、そのような状況でも十分幸せなのかもしれないが。
「分かっています。先生のようになる為に頑張ります!」
「アクセルのようにか。そんなのは100年早い。今のお前では、まだアクセルの足下にも及ばん。それくらいは理解していると思ったのだがな」
「し、師匠……そこまで言わなくても……」
エヴァの鋭い説法に善逸がショックを受けた様子を見せる。
そんな善逸を眺めつつ、他の面々はどうしたのかと思うと、炭治郎は蝶屋敷で手伝いをしている3人の少女達と話しており、伊之助は未だにムキになってひょうたんに息を吹き込んでいた。
猪の被り物をしてるから分からないが、何となく息を吹き込みすぎて顔が赤くなってるような気がする。
何だかんだと、強くなるのは伊之助が一番熱心なんだよな。
「エヴァ、伊之助はどんな具合だ?」
「奴か。……野生の獣といった表現が相応しい評価だな。とはいえ、だからこそ普通に戦っている中では思いも寄らない動きをして、相手の意表を突くといったような真似も出来るが」
へぇ、第一印象は決してよくなかった筈なんだが、エヴァもきちんと鍛えている弟子の事は正確に評価してるんだな。
「な、何だその目は……私の弟子である以上、正確な評価をするのは当然だろう!」
俺の視線に何かを感じたのか、エヴァは取り繕うようにそう言ってくる。
別にからかうつもりはなかったんだが。
エヴァがそのように思うのは、自分の行動に色々と思うところがあるからだろう。
それを指摘すれば、間違いなくエヴァは暴れるのでそんな真似はしないが。
「それで、具体的にどのくらい強くなった?」
「どのくらいと言われてもな。そうだな、私と初めて会った時が10だとすれば、12かそこらといったところか」
10から12……つまり、1.2倍の強さになったという事か。
この数値を低いと感じる者は基本的にいないだろう。
エヴァが訓練を初めてから、まだそんなに時間は経っていない。
その短期間でこの数字なのだから。
とはいえ、エヴァの訓練は実戦形式の模擬戦だ。
その厳しさから、一定の才能がない者は受けても怪我をしたり……下手をしたら死んでもおかしくはない。
そんなスパルタなエヴァだけに、このくらいの強さを持つのは当然か。
「とはいえ、今のままだと伸び悩むな。それぞれに基礎は出来ているのだが……」
「素人って訳でもないしな」
炭治郎と善逸は、育手にしっかりと鍛えられている。
伊之助は……育手がおらず、自分の才能だけであそこまで強くなったのだから、ぶっちゃけ才能という一点では多分あの3人の中で伊之助が一番だと思う。
そうして独学で強くなった為に、先程エヴァが野生の獣で相手の意表を突く動きをするといった感じになっているのだろうが。
ともあれそんな3人だけに、しっかりと基礎は鍛えられているのだ。
「うむ。しかし、素人ではないが、実戦経験の少なさは大きい。この辺は実戦を経験するしかないだろうな」
「エヴァとの訓練は実戦そのものだろうに」
俺とエヴァの会話を聞いていた善逸は、言葉には出さないものの激しく頷いて俺の言葉を肯定する。
「何だ? 私の訓練に何か不満でもあるのか?」
そんな善逸にエヴァが視線を向けて尋ねる。
「いえいえ、そんな事はないです。師匠の訓練のおかげで強くなれたのは間違いないですから。感謝しています、はい!」
うーん、この態度の変わり具合はさすが善逸といった感じだな。
こんな善逸を情けないと思うか、あるいは自分がついていないと駄目だと思うか。
後者のように思う女がいれば、善逸にもチャンスはあるんだけどな。
「ふん、今日の訓練ではお前には特別充実したものにしてやろう。その分強くなれるのだから、嬉しいだろう」
「はいぃ……」
エヴァの言葉に今日の訓練の厳しさを悟ったのか、善逸はがっくりとした様子で言葉を返す。
そんな善逸の肩を軽く叩き、俺は炭治郎達のいる方に向かう。
エヴァや茶々丸、善逸といった者達と話していたのだから、当然ながら炭治郎達も俺の存在には気が付いていた。
それでも声を掛けてこなかったのは、少女達と話していたからだろう。
「こんにちは、アクセルさん」
『こんにちは』
炭治郎が俺に向かって挨拶をすると、3人の少女達も揃って俺に挨拶をしてくる。
この3人とは、あまり接したことがないんだよな。
アオイの方がまだそれなりに接した事がある。
蝶屋敷で一番接したことがあるのは、しのぶだろうが。
「久しぶりだな。……ほら、これはお土産だ」
そう言い、3人の少女に空間倉庫から取り出した板チョコを渡す。
最初はそのチョコが何なのか分からなかった様子だったが、包み紙を破って三等分して渡すと、香りから甘いお菓子だと理解したのだろう。
3人揃って一口食べると、キャーッと歓声を上げる。
……ふと、ここでカカオ成分95%のチョコとか渡したらどうなるんだろうなと悪戯心を抱くが、そんな真似をすればこの3人に嫌われてしまいそうなので止めておく。
ちなみに、俺個人としてはカカオ成分88%のチョコであれば普通に美味いと思って食べられる。
ただし、95%はちょっと食べられたものではない。
千鶴なんかは、カレーの隠し味としては使いやすいといったような事を言っていたが。
その辺は人それぞれといったところか。
カカオ成分95%のチョコを美味いと感じるのはちょっと理解出来ないが。
ともあれ、少女達……きよ、すみ、なほとかいう名前の3人は、嬉しそうにチョコを食べては喜んでいた。
このチョコが平成の時代のチョコだとすれば、きよ達がこのチョコを食べる事は不可能という訳ではないだろうが、それでもかなり難しいのは間違いないだろう。
そういう意味では、きよ達は時代を先取りしてチョコを食べていると言ってもいいのかもしれないな。
『ありがとうございます!』
きよ達3人が、揃って頭を下げてくる。
別にタイミングを合わせた訳ではないのだろうが、頭を下げる動きは一糸乱れぬといった表現が相応しい。
そんなきよ達を微笑ましく思いながら、俺は炭治郎達と会話をするのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730