転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0298話

 大河内に案内されて訪れた大浴場。……とは言っても、俺の部屋にしても大浴場にしても女子寮の中なんだからそれ程離れている訳ではない。

 

「来たか」

 

 大浴場の中へと入ると、上の方から声を掛けられる。声の主は言うまでもなくエヴァだ。ただ、いつもと違う所があるとすれば外見が大人になっている事だろう。休憩所のような一画の屋根の上に、ネギと一緒に夢で見たサウザンドマスターと相対していた時の容姿で座っていた。そしてその周りには明石と和泉、茶々丸がメイド服を着て侍っている。

 

「あー、どこから突っ込んだらいいものやら」

「ん? この姿は私の夢を覗いたんだから知ってるだろう?」

「夢を覗いた?」

 

 エヴァの言葉に、ピクリと反応するあやか。え? 反応するのはそこなのか?

 

「何だ、知らなかったのか。アクセルはぼーやと一緒に私の夢を魔法で覗いて恥ずかしい秘密を知ったのさ」

「って、おいっ!? 何だその誤解させる気満々な文脈は」

 

 ズゴゴゴゴ、とでも表現できそうな迫力を隣で醸し出しているあやかに、冷や汗を浮かばせながらエヴァに抗議する。

 

「アクセル君。後で一緒にきちんとお話しましょうか。もちろん千鶴さんも一緒にね」

「……了解」

「くくっ、私を甘く見るからそういう事になるんだ」

「はいはい、悪かったよ。で、明石達を使うのはともかくなんで全員が全員メイド服なんだ?」

 

 いやまぁ、逆に大河内だけがメイド服だったりしたらそれはそれで違和感あるけどな。

 

「何を言う。私に従う者達なのだから、それなりの格好をするのは当然だろう」

「マスターの趣味です」

「おいっ、茶々丸!?」

 

 相変わらずの2人を眺めていると、俺達をここに案内してきた大河内がフワリとでも表現できるかのような身軽さで屋根の上へと跳躍する。

 

「……さすが吸血鬼といった所か」

「ちょっと、エヴァンジェリンさん!? 本当に皆には後遺症のような悪影響は無いんでしょうね!」

「ふん、私がそんなドジな真似をする訳がなかろう。安心しろ、明日にはいつも通りに戻ってるさ」

「で、俺達はどうしていればいいんだ? 折角の観客なんだし特等席で見せてくれるんだろう?」

「ふむ、そうだな。まぁ、適当にその辺にいろ。ぼーやが勝手に深読みしてくれるだろう」

「それはまた、随分と適当ですわね」

 

 あやかの呆れたような言葉に苦笑しながらも、大浴場の端、ネギとエヴァの戦いの邪魔にならない場所へと移動する。

 

「エヴァンジェリンさん、ネギ先生に非道い真似をしたら許しませんからね!」

 

 あやかもまた、エヴァにそう言ってから俺の側へと移動する。

 

「っ!?」

 

 そして俺の隣に来るや否や、何故か俺の顔面をその手で押さえつけた。同時に、タッと何かが着地するような音が聞こえる。

 

「ちょ、ちょちょちょ……ちょっと、エヴァンジェリンさん!? 何でまき絵さんが裸なんですの!?」

「……いや、何でだろうな」

 

 金切り声を上げるあやかに、どこか困惑したような声を上げるエヴァ。と言うか、何故裸? いやまぁ、ここは一応風呂なんだしそうおかしな話でもない……のか?

 

「エヴァ様、ネギ君に伝言伝えてきたよ」

「……取りあえず、お前は服を着ろ。誰が裸で行けと言った」

「だって、エヴァ様が大至急っていうから」

「ええいっ、貴様は本当にバカピンクだな」

 

 その後、数分して俺の目隠しをしていたあやかの手が退けられると、そこには他の面々と同じようなメイド服を着た佐々木の姿があった。

 

「まぁ、その……なんだ。何があったのかは聞かなかった事にしておく」

「ああ、そうしてくれ」

 

 折角の大人バージョンなのに、どこか情けない溜息を吐いたエヴァだった。

 

「ん? 来たか」

 

 耳を澄ませていたエヴァが気を取り直してニヤリとした笑みをその口元に浮かべる。

 エヴァの言葉に耳を澄ますと、確かにこの大浴場へと近付いてくる足音が聞こえて来る。その音が次第に大きくなっていき……

 

 バァンッ!

 

 と大きな音を立てて1人の人影が大浴場へと突っ込んで来たのは、言うまでもなくネギだった。

 

「エヴァンジェリンさん!」

 

 大浴場へと入ってくるなり大声で叫ぶネギ。だが、エヴァや大河内達は休憩所の屋根の上にいる為、ネギには見つけられない。そして俺とあやかもまた、2人の戦いの邪魔にならないように大浴場の隅で密かに息を殺しているのでネギには気が付かれなかったようだ。

 

「……どこですか? まき絵さんを解放して下さい」

 

 そのネギの声に応えるかのように、休憩所の屋根で1つの明かりが灯る。

 その明かりに照らされる大人姿のエヴァと、メイド服を着た大河内、明石、佐々木、和泉、茶々丸。

 

「ふふ、ここだよぼーや。しかし、パートナーはどうした? 1人で来るとは見上げた勇気だな」

「あ、あなたは……!?」

 

 怒りで赤く染まったネギの顔を愉快そうに見るエヴァだったが、次の瞬間にネギから放たれた言葉は意外なものだった。

 

「ど、どなたですか!?」

「おいっ!」

 

 ネギのその台詞に、思わず突っ込んでしまった俺は悪くないだろう。そして俺と同じく突っ込みを入れる所だったエヴァもまた、幻影を解いて元の姿へと戻っている。

 

「え? ア、アクセル君!? ……それに、エヴァンジェリンさん!?」

「……しまった」

 

 そしてその突っ込みが原因で早々に俺とあやかに気が付くネギ。

 

「アクセル君……いえ、突っ込みたくなる気持ちは分かりますが、シリアスな場面が台無しですわよ?」

「いや、ついな」

「……やっぱり、アクセル君はエヴァンジェリンさんと繋がってたんだね」

 

 エヴァの方をチラリとみてから、こちらへと視線を向けてくるネギ。その様子をエヴァはどこか面白そうに眺めている。

 

「何でそう思う?」

「エヴァンジェリンさんのお見舞いに行った時、自分の血は魔力量が多すぎて劇薬に近いから通常の時ならともかく病気で弱っているエヴァンジェリンさんには飲ませられないって言ってたじゃないか」

「……」

 

 無言であの時の事を思い出すと、確かにそう漏らしてしまっている。しくじったな。

 

「あの話を信じるのなら、アクセル君はエヴァンジェリンさんが吸血鬼だと知っていて血を飲ませた経験があるって事だよね?」

「……まぁ、血を飲ませた事があるのは否定しない」

「つまり、アクセル君が僕に対して協力するとかなんとかいうのもエヴァンジェリンさんが仕掛けてきた作戦の1つだった」

 

 微妙に違うが、事実だけを並べればそう見えない事も無い……のか?

 内心で俺が考え込んでいると、俺をフォローするつもりなのか単に俺達のやり取りに飽きたのか、エヴァが口を開く。

 

「ぼーや、アクセルはあくまでも傍観者で、今日の相手は私だ。私との戦いに手を出させないというのは闇の福音の名において約束しよう。……満月の前で悪いが、今夜で決着を付けてぼーやの血を存分に吸わせて貰うぞ」

「分かりました、取りあえずアクセル君の事は置いておきます。そしてエヴァンジェリンさんとの勝負は受けて立たせて貰います。そして今日は僕が勝って悪い事をするのはやめて貰います!」

「ふっ、良く言ったな。……行け!」

 

 指をパチリと鳴らすと、その合図に合わせるようにして茶々丸以外の4人がネギの側へと降り立つ。

 

「クラスの皆を使うなんて卑怯ですよ!」

 

 その4人に囲まれつつもネギがそう叫ぶが、エヴァは口元に嘲笑を浮かべつつ口を開く。

 

「今更何を言う? 私は悪の魔法使いだって言った筈だろう? やれ、我が下僕達よ」

 

 エヴァのその声と共に、ネギに襲い掛かる……というよりも、服を脱がせて武装を解除させていく大河内達。

 と言うか、何でネギは銃らしきものとかあんなに大量に持っているんだろうな。

 

「エヴァンジェリンさん、卑怯ですわよ! 正々堂々とネギ先生と戦って差し上げてはどうですか!」

 

 俺の隣でそんなネギを見ながらあやかが非難の声を上げているが、エヴァはネギに向けていたのと同じような嘲笑を浮かべながら口を開く。

 

「雪広あやか。搦め手が有効な相手に、何故わざわざ正面からぶつからないといけないのだ?」

「まぁ、確かに」

 

 思わず同意の声を漏らす俺。

 

「アクセル君!?」

 

 あやかが驚きの表情で俺の方へと視線を向ける。その視線には珍しい事にどこか咎めるような色が混ざっていた。

 その様子に苦笑しながらも、その背をポンポンと軽く叩く。

 

「落ち着け。そもそも今回のエヴァとネギの戦いは模擬戦のようなものだと理解はしているな?」

「え? ええ。それはもちろん」

「模擬戦というのは読んで字の如く、実戦を模した戦いだ」

「そうですわね」

 

 俺の言葉に頷くあやか。そこに決定的な一言を告げてやる。

 

「なら聞くが、いざ実戦となった時に敵の全員が全員正面から戦ってくれると思うのか?」

「……それは」

 

 言葉に詰まるあやか。エヴァはどこか面白そうな顔でこちらの様子を見ている。

 ちなみにネギは大河内達4人を相手に武装解除……というより脱がされないように頑張って抵抗していた。

 

『風化 武装解除』

 

 そんな話をしていると、突然ネギの声が響き渡り魔法が発動する。同時にその魔法の効果で服の大半を脱がされる4人。……そしてすかさず俺の目を覆うあやかの手。

 

『ラス・テル・マ・スキル・マギステル 大気よ、水よ、白霧となれ。彼の者らに一時の安息を。……眠りの霧!』

 

 続いて放たれたその魔法により、恐らく大河内達4人は眠らされたのだろう。……俺は未だにあやかの手で目を隠されている為に聴覚で判断するしかないが。いや、念動力の結界を作れば分かるか?

 そんな風に考えた時、再びエヴァの声が聞こえて来る。

 

「やるじゃないか、ぼーや。なら本番と行こうか。茶々丸!」

「イエス、マスター」

 

 茶々丸のその声と共にスラスターの噴射音が聞こえ、同時にエヴァが呪文の詠唱を始める。

 

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 氷の精霊17頭、集い来たりて敵を切り裂け。……魔法の射手・連弾・氷の17矢!』

 

 魔法の射手が発動し、その矢が大浴場の窓を破壊する音が聞こえてくる。

 

「ふふふ。その調子だ、ぼーや。行くぞ茶々丸」

「その、大河内さん達はこのままでよろしいのでしょうか?」

「ん? ちぃっ、そうだな。じじぃと約束をした以上はこのまま放っておく訳にも行かないか……いや、そこに丁度いい奴がいるじゃないか。アクセル、雪広あやか。そこに倒れている2人を頼んだぞ。私はもう少しぼーやと遊んでくるからな!」

「ちょっ、待て。おい! 俺達は観客じゃ……」

 

 エヴァの我が儘な注文に文句を言おうとしたが、隣で相も変わらず俺の目を隠しているあやかが溜息を吐きながら口を開く。

 

「もう遅いですわよ。エヴァンジェリンさんと茶々丸さんはネギ先生を追って外に出て行ってしまいましたわ。……これから大河内さんと和泉さんの介抱をしますが、現在の2人はあられもない姿をしています。私の言いたい事を分かってくれますわね?」

「りょーかい。目を閉じていればいいんだな?」

「ええ。……一応、念の為ですが」

 

 そう言い、どこからか取り出したハンカチでスイカ割りをする時のように俺の目を塞ぐあやかだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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