転生とらぶる   作:青竹(移住)

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3106話

「そろそろ負けを認めたらどうだ?」

 

 そう呟く俺の視線の先には、声の聞こえた方に向かって構える猗窩座の姿。

 目が見えなくなってから、10分程。

 たった10分と考えるか、10分もと考えるか。

 その辺りは個人によっても違うだろうが、猗窩座にしてみれば10分もといったところだろう。

 今の猗窩座は、外見上は特に傷はない。

 だが、この10分の間に常人なら何度死んでもおかしくないような、そんなダメージを受けている。

 それでもこうして傷1つないのは、猗窩座が上弦の参という地位にいる鬼で、それによって高い再生能力を持ってるからだ。

 高い再生能力を持っていても、俺の鬼眼によって盲目になった状態は回復しないんだな。

 鬼の再生能力は、あくまでも物理的なものだ。

 それに対して、鬼眼は魔眼の一種。あるいは呪いに近い状態だ。

 そうである以上、猗窩座が高い再生能力を持っていても眼が見えるようになるにはある程度の時間が経過し、鬼眼の効果が切れてからという事になる。

 

「まだだ……俺はまだ負けん!」

 

 そう言いつつ、俺の声や気配のある方に向かって一気に突っ込んでくる。

 盲目になっても、卑怯だなんだといったようなことを言わない辺り、さすがだよな。

 というか、普通に考えれば猗窩座は破壊殺とかいう血鬼術を使ってるんだから、俺が鬼眼を使っても卑怯だといったようなことにはならないだろう。

 鬼殺隊の剣士も呼吸を使ってるし。

 そんな風に考えながら、次々に放たれる猗窩座の拳や蹴り、肘、膝といった攻撃を回避していく。

 目が見えないとは思えない、そんな連続攻撃。

 羅針とかいう血鬼術の有用性がよく分かる。分かるんだが……

 

「その程度の攻撃が俺に通用すると思ってるのか!」

 

 俺に命中せず、苛立ちから少しだけ大振りになった一撃の隙を突き、そのまま相手の胴体に拳を振るう。

 

「ぐぶっ!」

 

 拳は猗窩座の腹部を貫く。

 そうして拳を引き抜くと、次の瞬間には猗窩座は痛みを感じていないかのように後方に跳躍して俺との距離を取る。

 一撃を与えた一瞬では痛みを感じるものの、その痛みはすぐにでも消えてしまっているらしい。

 この辺り、本当に厄介だよな。

 いっそ赫刀とかを使って攻撃をすれば、もっと強烈な痛みを感じるのか?

 そう思うも、俺は現在猗窩座との戦いにおいては素手で戦うということを決めている。

 猗窩座が得意としている戦闘スタイルで戦い、それによって猗窩座の心をへし折るのが目的なのだから。

 そうすることによって、俺との召喚の契約を結ばせるのが目的なのだから。

 

「ただでさえ俺の姿を見る事が出来ないのに、俺から距離を取ってもいいのか? ほら、行くぞ? 行くぞ、行くぞ、行くぞ」

 

 そう言いつつ、無造作に猗窩座との間合いを詰めていく。

 瞬動を使って即座に間合いを詰めるのではなく、普通に歩きながら。

 

「舐めるなぁっ!」

 

 そんな俺の行動を理解し、そして気にくわなかったのだろう。

 猗窩座は鋭く叫ぶと、一気に間合いを詰めてくる。

 羅針の範囲内に入った俺に向かい、再度連続攻撃をしてくる猗窩座。

 

「破壊殺、鬼芯八重芯!」

 

 連続攻撃に加え、その動きのまま血鬼術を使ってくる猗窩座。

 左右4発ずつ、合計8発の攻撃を一瞬にして放つも、その全てを受け止め、受け流し、回避し……

 

「破壊殺、乱式!」

 

 鬼芯八重芯の連続攻撃に繋げるように放たれるその攻撃は、一撃一撃の威力もそうだが、その攻撃によって周囲に衝撃波による攻撃まで行われる。

 

「っと」

 

 その衝撃波そのものを、俺は殴って破壊する。

 

「何? ……今、何をした?」

 

 まさか衝撃波を破壊されるといったような真似をされるとは思わなかったのだろう。

 猗窩座は驚きで動きを止め、そんな風に言ってくる。

 

「別にそこまで驚くような事じゃないだろ。この程度、一定の技量があれば誰でも出来る」

「誰でも、だと?」

「ああ」

 

 正確にはシャドウミラーの実働班なら……いや、実働班ではなく、エヴァとの戦闘訓練をやっている者なら大抵は出来ると思うというのが正しい。

 とはいえ、わざわざそれを教えたりといったような真似をするつもりはなかったが。

 

「どうする? お前の攻撃がもう終わりなら……そろそろ負けを認めたらどうだ? 今回は俺の鬼眼によって、お前の方がかなり不利だしな」

 

 にしても、鬼に対して鬼眼を使うか。……皮肉だな。

 

「ふざけるな! まだだ! まだ終わらん!」

 

 今の言葉にプライドが傷ついたのか、猗窩座は再び俺に向かって来るが……今日はそろそろ終わりにしよう。

 発信器がある限り、俺はいつでも猗窩座と戦える。

 そうである以上、猗窩座の心をへし折るにはまた別の機会を儲けよう。

 そう考え、こちらに向かって放たれた拳の一撃を回避すると、猗窩座の顎先を掠めるように拳を振るう。

 それも一撃ではなく、ボクシングでいうワンツーのコンビネーションにより、猗窩座の顎先を二度に渡って殴り……それにより、猗窩座の脳は激しく揺れると意識を失って地面に倒れ込む。

 とはいえ、普通ならこうして気絶させればそう簡単に目が覚めたりしないのだが、猗窩座のように高い再生能力を持っているのなら、恐らく……そんな風に思いながら、俺は少し離れた場所に生えていた木の根元に座り込み、その幹に体重を預ける。

 そのまま空間倉庫から取り出した缶紅茶を飲んでいると……やはりと言うべきか、数分もしないうちに猗窩座は目を覚ます。

 即座に起き上がり、周囲の様子を窺い、俺と視線が合う。

 うん? 視線が合う?

 ……どうやら猗窩座に使った鬼眼の効果、盲目は切れたらしい。

 元々短時間で鬼眼の効果が切れたのか、それとも一度意識を失ったのが理由なのか。

 その辺は俺にも分からないが、俺はどうせならという事で空間倉庫から缶紅茶をもう1本取り出すと猗窩座に投げてやる。

 

「何だ?」

 

 それを受け取り、訝しげな様子を見せる猗窩座。

 大正時代だと、缶ジュースとかそういうのもないのか。

 

「お茶だよ。外国のお茶。紅茶だ」

「……これがか?」

「そうだ。ほら、こうしてプルタブを開ければ飲める」

「鬼の俺は、人の肉しか食えん」

「肉だけじゃなくて、飲み物も無理なのか?」

 

 人の肉しか食えないのは分かっていたが、水を含めて飲み物も駄目なんだろうが。

 そうなると人の血を飲んで喉の渇きを癒やしてるのか?

 鬼……吸血鬼と考えれば、そんなにおかしな話ではないか。

 あるいは鬼である以上、空腹や喉の渇きはそこまで強くないのか?

 そんな風に考えていると、猗窩座が缶紅茶をこちらに放り投げてくる。

 それを受け取り……ふと気が付く。

 耀哉の呪いは、この世界から出てホワイトスターに行ったら効果を発揮しなくなっていた。

 だとすれば、他の世界で入手した食べ物や飲み物はどうだ?

 

「取りあえず飲んでみろ。もしかしたら、この飲み物や俺が持っている食べ物なら普通に摂取出来る可能性がある……かもしれない」

「おい、それはどういう意味だ? そんな不確かな事を試させようというのか?」

「俺は勝者。お前は敗者。……何か文句は?」

「ふんっ! 貸せ!」

 

 猗窩座は武人である事を重要視しているだけに、ある意味で扱いやすい。

 自分が敗者である以上、勝者に従うのは当然であると、そう考えているのだろう。

 そうして缶紅茶のプルタブを開けて口に運び……

 

「美味い……だと……?」

 

 缶紅茶を飲んだ猗窩座の口から、そんな驚きの声が漏れる。

 そうして缶紅茶を飲んでるのを見れば、どうやら俺の予想は当たっていたらしい。

 鬼舞辻無惨によって鬼にされた者は、人間の血肉しか口に出来ないと言われており、普通の人間の食事は食べられないという事になっていたが、それはあくまでもこの世界の食事であって、ホワイトスター……いや、この缶紅茶はホワイトスター産ではなくどこか他の世界で購入した奴だった事を考えると、鬼滅世界以外の食料や飲み物は大丈夫って事なのか?

 飲み物はともかく、食べ物も試してみた方がいいな。

 

「ほら、次はこれだ。食ってみろ」

 

 そう言って渡したのは、スーパー……いや、コンビニか? ともかくそういう場所で買えるおにぎりだ。

 鶏ゴボウ炊き込みご飯のおにぎり。

 100円ちょっとの値段ではあるのだが、個人的にはかなり好きなおにぎりの1つだったりする。

 他にもおにぎりは何種類もあるが、これを選んだのは何となくだ。

 

「これは……一体?」

「おにぎりだ。……ああ、取り出せないのか」

 

 考えてみればここは大正時代なのだから、スーパーやコンビニで売ってるようなビニールに包まれたおにぎりが売ってる筈もない。

 仕方がないので、もう1つ同じおにぎりを取り出して、ビニールを剥いでみせる。

 それを参考に、猗窩座はビニールを外す。

 ……ふと我に返って思うんだが、俺は一体何をやってるんだろうな。

 鬼を相手に、何故このような事をやってるのかと考えるが、今の状況を思えばそれはそれで問題ないだろうと判断する。

 

「美味い……これは……」

 

 鶏ゴボウ炊き込みご飯のおにぎりを口に運んだ猗窩座は、そんな風に感想を漏らす。

 やっぱりな。

 缶紅茶と同じく、この世界以外の食べ物であれば鬼であっても普通に食べることが出来るらしい。

 ただ、猗窩座におにぎりを食べさせておいてなんだが、鬼になった状況で異世界の食べ物を食べて、身体に異常が出ないといいんだが。

 そんな風に思うも、今の状況でその辺を考えても仕方がないと思っておく事にする。

 

「猗窩座、お前がいつ鬼になったのか、そして鬼になってからどれくらいの時間が経っているのかは、正直なところ分からない。だが、久しぶりに食う人間の食べ物は美味いだろう?」

 

 いつ猗窩座が鬼になったのかは分からないが、上弦の参……十二鬼月の中でもトップクラスの実力を持つ者の1人だ。

 当然のように、ここ数年で鬼になったという訳ではないだろう。

 あ、でも柱の中にも無一郎のように2ヶ月で柱になったような天才がいるんだから、鬼でも数ヶ月……とまではいかないものの、数年くらいで十二鬼月になった奴がいてもおかしくはないのか?

 そう思うが、上弦の鬼を殺した記録は殆どないらしいから、その辺はやっぱり違うのか?

 十二鬼月について考えていると、その間にも猗窩座はおにぎりを食べていく。

 とはいえ、おにぎりはそこまで大きなものではなく、男なら二口か三口で食べてもおかしくはない。

 そうしておにぎりを食べきってしまった猗窩座は、微妙に残念そうな表情を浮かべる。

 顔どころか、身体全体に入れ墨が彫られているような猗窩座が残念そうな顔をしているのは、どこか面白い。

 そんな面白い顔に免じて、タラコのおにぎりを取り出す。

 ……ちなみに、タラコのおにぎりには生のタラコと焼いたタラコを使った2種類があるが、俺は断然生派だ。

 焼いたタラコのおにぎりも不味いという訳ではないのだが、生の柔らかい触感を持つタラコの方が好きだった

 タラコパスタの時でも、中にはタラコに和えるのではなく、完全にタラコに火を通すというタイプのものもあるが、こちらもまた生の方が好みだ。

 

「アクセル、これは……どうすればいい?」

「ん? ああ。そうか。鶏ゴボウの方は海苔がなかったからな」

 

 スーパーやコンビニで購入するおにぎりは、おにぎりと海苔をビニールで分けている物がそれなりに多い。

 それはビニールを向いてから海苔でおにぎりを巻く事より、パリパリの海苔の食感を楽しむ事が出来る。

 中にはしっとりとした海苔の方が好みだという者もいるが。

 こちらに関しては、タラコと違って俺はどっちでもそれなりに問題なく食べられるタイプだ。

 同じタラコのおにぎりを取り出し、先程と同様にビニールを解き、おにぎりに海苔を巻く。

 何気にこれが難しかったりする。

 ちょっと力加減を間違えば、海苔が破れたりするしな。

 とはいえ、別に人に食べさせる訳でもなく、自分で食べる分だ。

 そうである以上、おにぎりを巻く海苔が多少破れたとしても問題はないだろう。

 

「海苔が……これは凄い……」

 

 猗窩座が人間の時に、海苔を食べたことがあったのかどうかは分からない。

 いや、こうして海苔がといったような事を言ってるんだから、多分食べた事はあるんだろうが。

 

「鬼のままでいれば、もう二度とそういうのは食べられなくなる。それはお前も分かってるよな?」

「ぐ……」

 

 鶏ゴボウ炊き込みご飯とタラコのおにぎり、それと紅茶……これらは猗窩座にとってもかなり美味いものだったのは間違いない。

 普通の敵なら、コンビニやスーパーで買えるおにぎり程度で誘惑など、とてもではないが出来ないだろう。

 だが、猗窩座は……というか、鬼は違う。

 自分で望んで鬼になったのは間違いないだろうが、それでも人しか食べられなくなるというのは、厳しいものがあるだろう。

 ましてや、江戸、明治、大正といったように時代が時代だ。

 俺にとってはその辺で食べられるようなおにぎりの類であっても、そのような時代を生きていただろう猗窩座……それに他の鬼にとっても、かなり魅力的なのは間違いなく、俺は猗窩座の様子を眺めるのだった。




アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1730

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