猗窩座は俺の言葉にかなり魅力を感じていたようだったが、最終的にその誘惑に打ち勝つ。
そうして俺の渡した試験管に鬼舞辻無惨の血を入れると、そのまま立ち去った。
おにぎりで勧誘が出来るとは思っていなかったが、それでも今回の一件は悪い話ではない。
何よりも大きいのは、鬼が異世界の料理なら食べられると判明したことだろう。
あるいは禰豆子も鬼滅世界以外の世界の料理なら、普通に食べられるのかもしれないな。
後で炭治郎にその辺を話してみるのもいいかもしれない。
それに、また入手した鬼舞辻無惨の血。
ぶっちゃけ、取りあえず入手はしたものの、この血をどうするのかというのは決めてないんだよな。
勿論、技術班に持っていけばこの血を喜んで調べるだろうし、炭治郎が協力しているという珠世とかいう相手にとっても、鬼舞辻無惨の血というのは幾らあってもいい。
それにこれから俺は猗窩座の心を折るつもりだ。
つまり、それだけ何度も猗窩座と戦う事になり、それだけに猗窩座から鬼舞辻無惨の血を入手出来る可能性は多くなるだろう。
そうなれば、この血を炭治郎に何度も渡す事になるかもしれない。
もっとも、鬼舞辻無惨が今回の件を知った時、また猗窩座に血を渡すかどうかは微妙なところだが。
そんな風に考え、俺は産屋敷家に戻るのだった。
「それは、また……信じられないことをしますね」
輝利哉が呆れたように言う。
その理由は、俺が猗窩座を仲間に引き入れるというのを聞いたからだろう。
正確には仲間ではなく、召喚獣なのだが。
鬼舞辻無惨の血をどうにかする為には、俺の血で猗窩座の中にある血を上書きするしかない。
それによって、猗窩座は鬼からの呪いから解き放たれる……かもしれない。
とはいえ、それはあくまでも最大限に上手くいった時の話だ。
そこまで上手くいかなかった場合は、最悪猗窩座が俺の血に耐えきれずに死んでしまう可能性も否定は出来ない。
あるいは俺の血と鬼舞辻無惨の血が妙な感じで混じり合い、それによって俺にも全く予想が出来ない結果となる可能性もあった。
その辺に関しては、実際に試してみないと何とも言えない。
「そうだな。鬼殺隊としては信じられないかもしれないが……敵に血を使って召喚魔法の契約を結ぶというのは、これが初めてって訳じゃない」
グリも最初は敵だったし、刈り取る者もそれは同様だ。
そういう意味では、猗窩座を召喚獣にするのはそうおかしな話ではない。
ただし、それはあくまでも俺の認識での話であって、鬼滅世界の者にしてみれば素直に納得は出来ないだろう。
また、グリや刈り取る者とは違い、猗窩座は完全に人型――鬼だが――となる。
……いやまぁ、刈り取る者も一応人型と言えるような気もしないではないが。
「それにしても、鬼が他の世界の食料であれば普通に食べられるとは。これは驚きですね」
「ああ。俺にもこれは驚きだったよ。とはいえ、これが役に立つ事はそう多くないけど」
鬼殺隊の剣士はその多くが鬼に対して強い恨みを持っている。
そうである以上、鬼に食べ物を渡すといったような真似を鬼殺隊の剣士がするとは思えない。
あ、でも捕らえて尋問をする時に少しだけ食べさせるといったような真似をすれば、鬼もその美味さから色々と情報を吐いてくれるかもしれないな。
「そうですね。恐らく鬼殺隊でその情報はあまり役には立たないでしょう」
「炭治郎にこの件を教えれば、もしかしたら禰豆子に食べさせるといったような事にはなるかもしれないけど」
「それは……」
禰豆子の件は輝利哉にとっても予想外だったのか、少しだけ驚いた様子を見せる。
だが、すぐにその驚きの表情を消すと、納得した様子を見せる。
「そうですね。試してみてもいいかもしれません」
「明日にでも、ちょっと顔を出してみるよ」
今はもう夜中だ。
鬼殺隊の剣士にしてみれば、それこそ今この時間こそ鬼と戦うという意味でかなり忙しく動いている時間だろう。
炭治郎も依頼を受けていれば鬼と戦っているだろうし、依頼を受けてなければ……うん。エヴァとの訓練とかで死んでなければいいけど。
「そうして下さい。それで、アクセルさん。その……出来ればまた近いうちにUC世界でしたか? あの世界に行ってみたいんですけど、どうでしょう?」
「どうって言われてもな」
輝利哉にとって、UC世界というのはそれだけ魅力的なのだろう。
鬼滅世界の人間にとって、月にある都市というのは何度でも行きたいと思ってもおかしくはない。
それを抜きにしても、クリスの件がある。
以前UC世界に行った時に、輝利哉はクリスに一目惚れしている。
それが本当に恋なのか、あるいは年上の姉さんに対する憧れなのか。
その辺りは正直なところ俺にも分からない。
しかし、それでも輝利哉がクリスに懐いているのは間違いのない事実だった。
「そうだな。耀哉の解呪とリハビリが終わって、無事に鬼滅世界に戻ってくる事が出来たら、耀哉がいない間、鬼殺隊を纏めていたという事でUC世界に連れていってもいいな。……ちなみにUC世界以外にも色々な世界に行けるぞ?」
一応そう言ってみるが、輝利哉の目当てがクリスである以上、他の世界には興味はないだろう。
実際、俺の言葉を聞いた輝利哉は首を横に振っていたし。
「いえ、UC世界でお願いします。あの世界を十分に満喫したら、別の世界にも行くかもしれませんが」
「それは随分と先の事になりそうだな」
クリスに対する初恋か憧れか、それが一段落するか、あるはクレイドルを完全に見て回るか。
ただし、後者は何気に非現実的だろう。
しっかりと見て歩くだけでも、クレイドルは一体どれだけの時間が掛かる事やら。
クレイドルは北海道と同じくらいの大きさを持つ。
そう考えると、見て回るのにどれだけ時間が必要かが分かりやすいだろう。
ましてや、クレイドルは発展著しい。
一度見た場所が、数週間後には全く違う店になっているというのは、そう珍しい話ではない。
ましてや、輝利哉はずっとUC世界にいられる訳でもない。
そんな輝利哉がクレイドルの全てを見て回るとなると、冗談抜きで一生が必要になってもおかしくはなかった。
「そうなんですか? とにかく、UC世界に行くのを楽しみにしていますよ。妹達や母もUC世界のお土産は楽しみにしていましたし」
「喜ぶのは間違いないだろうな。……というか、お土産を楽しみにしてるのなら自分達が直接行きたいとかないのか?」
クレイドルにはケーキとかの食べ放題とかもあった筈だ。
そういう場所はあまね達にとっては楽園だろう。
とはいえ、食べ放題というのは好き放題に食べる事は出来るものの、実際には元を取るといったような真似は非常に難しいらしい。
それでも俺達の場合は金銭的な問題は気にしなくてもいいが。
何しろシャドウミラーはルナ・ジオンに対してかなりの貸しがある。
「そうしたいとは思っているようですが、やはり他の世界に行くというのは少し怖がっているようです。ホワイトスターには何度か行ってるので、そこまで怖がったりする必要はないと思うんですけど」
「俺もそう思わないでもないけど、その辺の認識はやっぱり個人によって違うんだろうな」
自分の育った世界から出るのは怖い。
あるいは未知の場所に行くのが怖い。
そのように思う者がいても、それは別にそこまで責められることではないだろう。
そもそもの話、この鬼滅世界は大正時代だ。
これが昭和や平成とかになれば、異世界に行って冒険するといったような物語が漫画やアニメ、小説、ゲーム、映画……そんな感じでかなり人気が出るので、異世界に行くのにもそこまで忌避感はないんだろうが。
「とにかくUC世界の件については考えておくよ。猗窩座の件の報告はしたし、他に用事がないのならそろそろ行くけど、構わないか?」
「はい。問題はありません。何かあったら……また猗窩座が現れるような事があったら、すぐに連絡をすればいいんですよね?」
「そうしてくれ。俺が遭遇すれば、それだけ猗窩座の心をへし折りやすくなるしな」
そんな風に会話を交わしてから、産屋敷家を出るのだった。
「むー!」
影のゲートを使ってゲートの近くに姿を現すと、そんな声が聞こえてくる。
その特徴的な声が誰のものなのかは、考えるまでもなく明らかだ。
ある意味、丁度いい。
禰豆子がいるという事は……
そんな風に考えながら進むと、やはりそこには俺の予想通り禰豆子と炭治郎の姿があった。
特に何かをしているという訳ではなく、ただ兄妹揃って歩いているだけだ。
散歩か?
「アクセルさん、どうしたんですか?」
嗅覚の鋭い炭治郎だけに、近付いてくる俺の存在に気が付いていたのだろう。
特に驚いた様子もなく、そう尋ねてくる。
なお、そんな炭治郎の側では幼児……幼女? と化した禰豆子が、嬉しそうに周囲を駆け回っていた。
ここは俺も禰豆子に対抗して10歳の姿になるべきか?
そう思うも、今の状況でわざわざ俺がそんな真似をする必要もないだろうと思い直す。
「ちょっと猗窩座と戦ってきたんだよ」
「……え?」
一瞬、俺が何を言ってるのか分からないと意表を突かれた様子を見せる炭治郎。
炭治郎はあの汽車の一件で直接猗窩座を見ている。
そして俺と猗窩座の戦いもその目で見ているので、猗窩座が……上弦の参という鬼がどれだけの実力を持ってるのかはしっかりと理解しているのだろう。
そんな鬼を相手に戦ってきたと、あっさりと俺が言うのだから驚くなという方が無理か。
「あの時、発信器……相手がどこにいるのか分かる機械を猗窩座につけただろ? その反応が今日出たという事で、ちょっと戦いにな」
「大丈夫でしたか!?」
「ああ、問題なく俺が勝利した。……ちなみに、今回も勝利したという事で鬼舞辻無惨の血を貰ってきたんだが、いるか? 炭治郎の場合、この血はあればあっただけいいだろ?」
そう言い、鬼舞辻無惨の血が入っている試験管を取り出す。
炭治郎はそんな試験管を見て、真剣な表情で恐る恐ると口を開く。
「欲しいかどうかと言われれば欲しいですが、本当に貰ってもいいんですか?」
「構わない。俺達が研究する分には、この前貰った奴で十分だしな。それに……これからも猗窩座の心を折る為に、何度も戦う事になる筈だ。その度に、猗窩座からは鬼舞辻無惨の血を貰うことが出来ると思う。そう考えれば、これを渡すくらいは何の問題もない」
そう言い、炭治郎に試験管を渡す。
それを受け取った炭治郎は、深々と頭を下げる。
「ありがとうございます!」
「気にするな。それと、今回の猗窩座と戦いでちょっと……いや、人によってはかなり驚くべき事が判明したぞ」
「驚くべき事ですか? 一体何です?」
「そうだな。鬼ってのは禰豆子のような例外を除いて人を食わないといけない……いや、普通の食べ物を食べる事が出来なくなって、その結果として人を食っている一面もあるというのは知ってるか?」
「はい、ちょっと前までは知りませんでしたが、煉獄さんから聞きました」
煉獄家は代々産屋敷家に仕えているだけあって、鬼の情報も大量にあるのだろう。
「そうか。なら話が早い。今日判明したのは、鬼は食べ物を食べられないという事だが、その食べられないというのはあくまでもこの鬼滅世界の食べ物だ。この鬼滅世界以外の、別の世界にある食べ物なら、鬼も普通に食べる事が出来る」
「……え?」
俺の口から出た言葉は、炭治郎にとっても意外なものだったのだろう。
最初は俺が一体何を言ってるのか理解が出来ないといった様子でこちらを見てくる。
そんな炭治郎に対し、俺は改めて口を開く。
「異世界の食べ物なら、鬼も普通に食べられる。……勿論、鬼という事は禰豆子も普通に食える筈だ」
俺の言葉に、炭治郎の視線が禰豆子に向けられる。
禰豆子は自分が見られているのに気が付いたのだろう。
月光の中を走り回っていた足を止め、不思議そうに小首を傾げる。
「むー?」
幼女だという事もあり、今の禰豆子はかなりの愛らしさを持つ、
だが、炭治郎はそんな禰豆子の様子を気にしたりせず、じっと禰豆子を眺めていた。
そして、改めて俺に視線を向けると口を開く。
「それは、本当ですか?」
「ああ、本当だ。猗窩座も俺が渡したおにぎりを美味そうに食べていたしな。……ほら」
そう言い、空間倉庫の中から猗窩座に渡したのと同じ鶏ゴボウ炊き込みご飯のおにぎりを取り出す。
「この透明なのは何ですか?」
「ビニールだな。おにぎりとかを持ち運びやすくしたり、汚したりしない為の物だ。その赤いのを引っ張ると綺麗に取れるぞ」
そう説明すると炭治郎はすぐにビニールを引っ張っておにぎりを口に運ぶ。
「美味い……」
「だろう? 禰豆子にもこのおにぎりを食わせてみればどうだ? もっとも、その場合は口の竹を外す必要があるけどな」
禰豆子は万が一にも人を食わないように、竹によって猿轡をされている。
当然の話だが、もし禰豆子がおにぎりを食うとしたら、それを外す必要があるのだが……
「いえ、今はまだ禰豆子に余計な刺激を与えたくありませんので、止めておきます」
そう、炭治郎は告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730