「本気か?」
そう尋ねる俺に、耀哉は当然といった様子で頷く。
耀哉が鬼滅世界に戻ってから、既にそれなりに時間が経つ。
その間に、耀哉は自分がホワイトスターにいた時に鬼殺隊で起きた出来事の全てを理解し、そしてとある計画を進めてきた。
その計画を聞かされた俺が口に出したのが、今の言葉。
当然だろう。耀哉から聞いた計画はかなり危険が大きい。
それだけではなく、下手をすれば鬼殺隊にとって大きな意味を持つだろうが、同時に下手をすれば鬼殺隊に大きなダメージがあってもおかしくはないだろう、そんな計画だったのから。
つまり、ハイリスクハイリターンだな。
「勿論本気だよ。ただし、この計画を行う以上は、しっかりと根回しをしてやる必要がある。それこそ、下手をすれば街中に大きな被害が出るとも限らないのだから」
「……だろうな。上手くいけば、本当に上手くいけばだが、その場合は鬼舞辻無惨が直接出て来る可能性もあるし」
そんな俺の言葉に、耀哉は真剣な表情で頷く。
「餌が餌だ。釣れる魚は、とびきりの大きさだろう」
「青い彼岸花という餌だしな」
俺と耀哉はそんな風に言葉を交わす。
そう、耀哉が考えたのは、鬼舞辻無惨と……あるいは鬼と関係があるかもしれないが、関係のある貿易商と接触する事だった。
貿易商の会社に忍び込んだ時に、貿易商が青い彼岸花を探すのに大きく金を使っているのは判明している。
壺の一件もあり、青い彼岸花の件は鬼と関係のある事なのは間違いないと、そう考えられた。
「そうだね。そんな訳で、上手くいけばこれで鬼舞辻無惨を倒せるかもしれない。そうである以上、慎重に行動する必要がある。……アクセルには、青い彼岸花を用意して貰う事になると思うけど、構わないかい?」
「レモンに聞いてみないと何とも言えないけど、多分問題はないと思う」
レモンの様子からすると、青い彼岸花を作ろうとした場合、すぐにでも作れるといった様子だった。
……まぁ、量産型Wについての技術があれば、青い彼岸花を作るのはそう難しい話ではないのだろう。
「ただ、言うまでもないけどレモンが作るのは鬼が探している青い彼岸花じゃない。……もしかしたら、青い彼岸花であるという時点で鬼が探している可能性は高いけど」
彼岸花を赤ではなく青にする何かが鬼にとって必要な場合、鬼が探していた本当の意味での青い彼岸花ではなくても、同じ効果を持つ可能性はある。
そう考えると、青い彼岸花を作ってもそのまま鬼が入手する可能性があるのは危険かもしれないな。
「もしレモンの作った青い彼岸花でも鬼にとって有益だった場合の事を考えると、レモンが作った青い彼岸花には何か仕掛けをしておいた方がいいかもしれないな」
「なるほど。私としては、交渉に来た時点で鬼舞辻無惨……もしくは鬼を殺そうと思っていたんだが、それが失敗した場合のことを考えておいた方がいいのかもしれないね」
「問題なのは、罠であると知った上で青い彼岸花を持っていくかどうかだけどな」
「あそこまで必死になって探している以上、目の前に本物の青い彼岸花があれば、間違いなく奪っていくと思うよ。いざという時の事を考えると、そうした真似はしておいた方がいいかもしれない。アクセル、その辺については頼めるかな?」
「任せろ。レモンなら特に苦労なくやってくれると思う。……問題なのは、具体的にいつ仕掛けるかだが。その辺はどう考えてるんだ?」
「そこが少し難しいところなんだよ」
緑茶を飲みながら、耀哉は息を吐く。
視力を取り戻したことは、耀哉にとって間違いなく大きな意味があったと、そう思えるような行動だ。
「今まで必死になって鬼が探していた青い彼岸花だ。それをまずこちらが持っているというのを向こうに知らせる必要がある。しかし、向こうにしてみれば大規模に探してはいるものの、自分達が青い彼岸花を探しているというのは知られていないと思っている筈だ」
「そこに急に青い彼岸花を持っているといったような事を言った場合、喜ぶ……よりは怪しむか」
「そうだね。だから、まずはそのような話をしても問題がないくらいに、その貿易商と友好的な関係を築く必要がある」
そう告げる耀哉だったが、微かに眉を顰めている。
普段はあまり表情を変える事のない耀哉なのだが、やはり鬼と関係している貿易商と友好的に接するというのには色々と思うところがあるのだろう。
とはいえ、鬼を……鬼舞辻無惨を誘き出せるかもしれないと考えれば、多少の不便は我慢する必要があるだろう。
「そうだな。だが……問題なのは、一体どうやってそのような相手と接触するかだ」
まさか鬼殺隊だと言って接触する訳にはいかないだろう。
青い彼岸花を入手したという設定となると、当然ながら商人として接触する必要がある。
出来れば海外から青い彼岸花を入手した方がいいので、貿易商として接する事が出来れば一番いいんだろうが……相手も貿易商となると、こっちが下手に貿易商と名乗れば聞いた事がない相手だと怪しまれる可能性は十分にあった。
「貿易商として接するつもりだよ。あまねの実家の方で手を回せば、ある程度はどうにかなる筈だ」
「……いいのか? 同じ貿易商って事で怪しまれる可能性が高いぞ?」
「かもしれない。だが、青い彼岸花を探しているのが鬼舞辻無惨であった場合、日本は全てを探したと考えてもおかしくはない筈だ」
「まぁ、それは……」
鬼舞辻無惨は1000年以上を生きる鬼だ。
そんな相手が青い彼岸花を探しているとなれば、当然のように日本全国を探していてもおかしくはない。
もっとも、日中は出歩けなかったり、用心深い……寧ろ臆病と呼ぶのが相応しい存在だ。
それを考えれば、もしかしたら日本でも探していない場所は結構あるかもしれないが。
そんな鬼舞辻無惨の警戒を解く為には、やはり海外から入手したといった設定の方がらしいだろう。
いつから青い彼岸花を探しているのかは分からないが、場合によってはそれが矛盾となる可能性も否定は出来ないけど。
もし鬼舞辻無惨が鬼になった当初から青い彼岸花を探していたと仮定した場合、1000年以上もの間、青い彼岸花を探し続けているという事を意味している。
……1000年以上も探していて見つけられないとなると、日本にはないと考えてもおかしくはないが。
「ともあれ、まずは先程も言ったがあまねの実家の伝手を使い、どこかの貿易商と繋がりを作る必要がある。そうしてから、鬼舞辻無惨の影響下にある貿易商と接触するとなると……今日明日に作戦をどうこうするといったような事にはならないだろうね」
「そうなると、遊郭の方が先になるのか?」
現在天元が調べている遊郭。
とはいえ、俺が聞いてる話では特に何らかの重要な情報を入手したという話は聞いていない。
だとすれば、遊郭の件もそこまで進んではいないんだよな。
いっそ俺が行くか? と思わないでもないが、遊郭というのは酒がつきものだ。
そんな場所に俺が行った場合、最悪遊郭が壊滅してもおかしくはなかった。
「どうだろうね。遊郭を調べて貰っているけど……今のところこれといった手掛かりはないし。ただ、考えてみれば遊郭というのは客はともかく、そこに住んでいる者にしてみれば、閉鎖されている環境だ。鬼が潜むには悪くない場所だと思うよ。……ただし、相応に理性のある鬼なら、の話だけど」
「だろうな。普通の鬼なら、周辺に人が大量にいれば幾ら喰い殺しても問題ないといったように考えて動いたりするだろうし」
鬼になった事によって知性が劣化する奴……あるいは理性的に動けず欲望の赴くままに動く奴というのは、決して少なくない。
そんな奴がもし遊郭に中にいたりしたら、それこそすぐにでも見つかって騒動になるだろう。
「そうなると、やっぱり遊郭に鬼が潜んでいる場合、その鬼は十二鬼月か……あるいは十二鬼月に近い実力を持ってる鬼の可能性が高いのか」
「恐らくは。……それだけに、遊郭にいるかもしれない鬼の情報を集めるのは大変なんだと思うよ」
ただでさえ遊郭という、色々な意味で特殊な場所だ。
そのような場所で情報を集めるのが難しいというのは理解出来た。
「出来れば、貿易商と遊郭の件の同時進行といったような事にはなって欲しくないんだけどな」
当然の話だが、同時進行ということになれば鬼殺隊も戦力を分散させる必要がある。
神鳴流やシャドウミラーの戦力がいるので、分散してもそこまで致命的ではないだろう。
だが、それでも何かあった時の為には、戦力は纏めておいた方がいい。
……最悪、俺だけが貿易商の方に参加して、それ以外は遊郭といったようにするのはありかもしれないが。
自分で言うのも何だが、俺は戦力としては非常に強力な駒だ。
それこそ、俺だけで1つの作戦をどうにか出来ると思うくらいには。
ただ、戦力としては十分であっても、あくまでも1人である事は変わらない。
まぁ、グリや刈り取る者、炎獣といったような手段はあるのだが。
「そうだね。ただ、この件はあくまでも鬼の方で色々と影響を受けるだろう。そうなると、こちらの都合だけでどうこう出来る……といった訳ではないだろうね」
そんな風に話を続けていると、不意に耀哉が話題を変える。
「そう言えば、近いうちにしのぶがホワイトスターで治療を受けるといったように聞いたんだけど……本当かい?」
「誰から聞いた?」
「本人だよ」
「ならいい」
耀哉の言葉から、もしかしたらしのぶの身体が藤の花の毒によって侵されているのを、他の奴が知ってるのかと思った。
だが、本人が耀哉に直接言いに来たという事なら問題はない。
「アクセル、私はしのぶの話を聞いた時、自分が情けなくなったんだ」
「……情けなく? 何でまた?」
「しのぶが自分の身体に藤の毒を使うといったような真似をしたのは、私が鬼殺隊の子供達の力を十分に引き出す事が出来なかったからだろう」
ああ、治療をするというのは聞いていたが、その理由についても聞いていたのか。
しのぶのことだから、治療をするというのは話しても、実際には他にも何も言わないのかと思ったんだが。
「俺から見れば、耀哉は十分に鬼殺隊を運営していると思うけどな」
「アクセルにそう言われると嬉しいけど……ただ、本当にそうなのかと言われると、自分で自信がない。しのぶがそこまで思い詰めているとは、思わなかったんだ」
俺がしのぶの件で疑問を持ったのも、以前のエヴァの言葉があったからだ。
もしそれがなければ、しのぶの身体の事は分からなかっただろう。
とはいえ、俺はまだしのぶと会ってからそう時間が経っていない。
そんな俺と比べると、耀哉は以前からずっとしのぶの事を知っていたのだ。
だからこそ、しのぶの身体のことを分からなかったのが悔しいのだろう。
あるいは、俺の場合ならしのぶが藤の花の毒を摂取するよりも前なら、体臭が変わった事によってそれに気が付いたかもしれない。
だが、俺がしのぶと会った時には既に藤の花の毒を使っており、その結果として俺は最初から藤の花の毒の香りを伴ったしのぶの体臭が、そういうものだと理解していた。
「俺は会った事がないけど、しのぶの姉は優秀な柱だったんだろう?」
「ああ。優秀だったしそれに優しい性格をしていて、人に好かれてもいた。……もっとも、鬼と共存出来るかもしれないといったような事を言うから、嫌う者がいたのも事実だけどね」
「だろうな」
鬼殺隊に所属している者の多くは、鬼に家族や恋人、友人を殺された者達だ。
そんな者達にしてみれば、鬼と共存するなどというのは到底受け入れられない話だろう。
それでも意思を曲げなかったのは普通に凄いと思うが。
禰豆子の件を見れば、柱の中でも鬼を受け入れるといったような者はまずいない。
「しのぶも姉を慕っていたよ。……それだけに、今の状況には色々と思うところもあるのだろうが。それでも、禰豆子の件で鬼と仲良く出来ると証明出来たのは、いい事だろう」
「そうだな。時々禰豆子がしのぶに遊んで貰っているのを見る事があるし」
精神年齢が幼くなった禰豆子だが、それだけに自分と遊んでくれる相手には懐く。
……しのぶの身体から、藤の花の毒の臭いはしないのか? と若干疑問に思わないでもなかったが。
ともあれ、禰豆子がしのぶに懐いているのは間違いない。
しのぶにとっても禰豆子は鬼との共存という姉の夢を叶えてくれるかもしれない存在なのだろう。
禰豆子は自分がそのように思われているとは考えてもいないだろうが。
「それは微笑ましいね。私も一度、その光景を見てみたいとは思うよ」
「見ようと思えば、それこそいつでも見られるんじゃないか?」
「私が出ていくと、緊張したりする子もいるようだしね」
あー、なるほど。
耀哉のその言葉は、俺を納得させるには十分だった。
鬼殺隊の中には、妙な考えをしている者もいるだろうし……耀哉が表に出るのは、出来るだけ少なくした方がいいのは間違いないと、そう判断するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730