転生とらぶる   作:青竹(移住)

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3136話

 隠に案内された地域に行くと、そこで隠と別行動となり、俺とマリューは炭治郎と――ついでに木箱に入って背負われている禰豆子と――共に移動していたのだが……

 

「ここです」

 

 不意に一軒の家の前で、炭治郎がそう言う。

 その言葉に改めて家を見ると、確かに何か妙な力が家を覆っているような、そんな違和感があった。

 なるほど。こうして鬼舞辻無惨に見つからないようにして行動していたのか。

 その辺の対策は万全らしい。

 いやまぁ、炭治郎から聞いた話によれば、以前鬼舞辻無惨と遭遇した後で珠世の家に匿われた時、鬼舞辻無惨の放った追っ手に襲われるといったようなことがあったらしいので、鬼舞辻無惨に見つからないというのも絶対という訳ではないのだろうが。

 

「そうか。なら、さっさと中に入った方がいい。こうして家の外にいるのを鬼に見つかると面倒な事になりかねない」

「何かあっても、それこそアクセルが鬼を倒してしまうだろうから、その辺はあまり心配する必要はないと思うけど」

 

 そんな風に言ってくるマリューだったが、戦わないのなら戦わない方がいい。

 いやまぁ、鬼が攻撃してくればその鬼を確保して研究材料に出来るかもしれないが。

 ちなみに、俺が確保した堕姫と妓夫太郎の死体……頭部以外の死体は、ホワイトスターの技術班に預けてある。

 鬼滅世界から出てホワイトスターに行ったからか、それとも一度空間倉庫に収納したのが影響してるのかは分からないが、頭部と一緒に崩れるといったような事はなかった。

 ただ、鬼としての能力は頭部の方が重要なのか、胴体からはあまり重要な情報を入手は出来なかったが。

 それは考えてみれば当然の話ではある。

 鬼は頭部を日輪刀で切断されれば死ぬのだから。

 そう考えると、鬼にとって頭部が非常に大きな意味を持つのは間違いなかった。

 

「では……失礼します。珠世さん、いますか?」

 

 家の中に向かってそう呼びかける炭治郎。

 それでも何度か続けて呼びかけていると……不意に扉が開き、1人の男が姿を現す。

 

「うるさいぞ! ……お前か。で、そっちの男と不細工は誰だ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は男の……マリューを不細工と口にした男の側に瞬動で移動すると、日輪刀を首に突きつける。

 

「な……」

 

 刀身が赤く染まっている日輪刀の刃を見ながら、男は何があったのか理解出来ないといったように視線をこちらに向けていた。

 

「言葉に気を付けろよ。……炭治郎、本当にこんな雑魚を飼っている珠世とかいう奴は使い物になるのか? この男を見る限り、珠世とかいう女はとても有能だとは思えないんだが」

「き……貴様!」

 

 俺が炭治郎に尋ねた内容に、半ば無意識に拳を振るってくる。

 自分の首に日輪刀を突きつけられ、首筋が傷ついた状態であっても構わないらしい。

 鬼らしく、その一撃は普通の人間よりも鋭いのは間違いないが……それでも特に戦いの訓練を積んでる訳でもなければ、戦い慣れている訳でもない男の拳を回避するのは難しくない。

 男の一撃を回避すると、そのまま足を引っ掛けて地面に倒し、その顔を踏みつける。

 

「少し大人しくしてろ」

 

 暴れる男の顔に力を入れ、そのまま動けないようにしてから視線を炭治郎に向ける。

 

「で、炭治郎。改めて尋ねるが……本当にこんな奴と一緒にいるような奴が使えるのか? 無能に足を引っ張られるのはごめんだぞ」

「あ……その、アクセルさん。愈史郎は口は悪いですが、悪気はないんです。だから……」

「初対面の相手……それもこいつや珠世にしてみれば、俺は鬼舞辻無惨の血を入手したという意味で恩人……とまではいかないかもしれないが、感謝されてもいい筈だ。そんな俺に対してあんな態度を取る奴が悪気がない? ……こんな鬼はここで滅ぼした方がいいんじゃないか?」

 

 そう言い、刃が赤く染まった日輪刀を男……愈史郎だったか? そいつの首に改めて突きつける。

 愈史郎は顔面を踏んで身動きが取れない状態になっているので、当然のように視界も半ば塞がれている。

 現在自分がどんな状況になってるのかは分からないのだろうが、それでも今の状況を考えると危ないというのは理解しているのだろう。

 人間離れした力で暴れようとするものの、顔面を踏みつけられた状態では特にどうこうするような真似は出来ない。

 

「待って下さい!」

 

 と、不意に周囲に響く声。

 その声の主は、炭治郎……でもないし。当然のようにマリューでもない。

 愈史郎の出て来た家から姿を現した、1人の女だ。

 そして女を見た瞬間、それが珠世なのだろうと判断する。

 判断するが……この愈史郎という奴の事を考えると、これから俺達が珠世と手を組んで上手くやっていけるとは思えない。

 正直なところ、珠世は放っておいて鬼殺隊の里に戻って、そこで独自に研究をした方がいいような気すらしてきた。

 どうしても時間が足りなかったり、研究が進まなかったりした場合は、ホワイトスターの方で技術班に協力を要請してもいいし。

 

「お前が珠世だな。……正直なところ、いきなり喧嘩を売るような相手に迎えられるとは思わなかったが」

「愈史郎が申し訳ありません」

 

 俺と愈史郎の状況から、何故こうなったのかは理解したのだろう。

 珠世は深々を頭を下げてくる。

 

「んーっ! んんんー!」

 

 微かに見える視界から、珠世が頭を下げているのが見えたのだろう。

 愈史郎は今まで以上に強く暴れる。

 

「愈史郎だったか? 顔を会わせるなりいきなり喧嘩を売ってくるような奴をそのままにしてるという時点でお前を信用してもいいのかどうか迷うんだがな」

「……申し訳ありません。愈史郎の態度はあくまでも私を守る為のもので、それによって不快な思いをさせてしまったことを謝罪いたします」

 

 さて、ここからどうしたものか。

 愈史郎の一件を考えると、珠世も即座に喧嘩を売ってくるのかと思ったが、見た感じでは本当に申し訳なさそうに頭を下げている。

 こうなると、これ以上責めるのもちょっとな。

 

「アクセル、私はいいわよ。彼女もここまで謝ってるんだし、許してあげたら?」

 

 不細工と呼ばれたマリューが、そう言う。

 マリューがそう言うのなら、珠世が頭を下げている事もあって取りあえず怒りを収める必要があった。

 愈史郎の顔面を踏みつけていた足を動かす。

 

「珠世だったな。お前が何を思ってこの愈史郎とかいう男を自由にさせているのかは分からないが、きちんと教育しろ。いきなり喧嘩を売ってくるような奴を飼っているのは、それだけでお前の格を下げるぞ」

「気を付けます。本当に申し訳ありませんでした」

「珠世様! そんな真似をしなくても……」

「黙れ」

 

 愈史郎が珠世に言うのを、無理矢理止める。

 自分の言葉を止められた……そして何より珠世を謝らせたというのが許せなかったのか、愈史郎が睨み付けてくる。

 しかしそんな愈史郎が何かを言うよりも前に、俺が口を開く。

 

「そもそも珠世がこんな風に謝っているのは、お前がいきなり俺達に喧嘩を売ってきたからだろう。自分がいきなり喧嘩を売って、それを買われて負けたら自分の保護者に謝罪をして貰い、そうして謝罪して貰ったのが許せない? みっともないにも程があるぞ」

「ぐ……」

 

 俺の言葉に愈史郎は悔しげな声を上げる。

 ……実際、シャドウミラーの中で最初に愈史郎と接触したのが俺とマリューだったのは、愈史郎にとっても幸運だったんだろう。

 エヴァに不細工なんて言ったら、どうなるか。

 断罪の剣辺りを使われてもおかしくはない。

 凛の場合はガンドのつるべ打ちで、綾子の場合は……もしかしたら物干し竿を使ってツバメ返し辺りを使ってもおかしくはない。

 その場合は、愈史郎が受ける痛みはこんなものではなかっただろうし、珠世も頭を下げるだけですんだのかは分からない。

 

「お前の不始末は珠世の恥だ。実際、今回のお前の行動から、俺は珠世という鬼を信じるべきかどうか、本当に頼れるべき相手なのかどうか、疑っている。それこそ炭治郎を通じて鬼舞辻無惨の血を渡してもよかったのかと思うくらいにはな。正直なところ、今後入手した鬼舞辻無惨の血を渡しても意味がないような気がしている」

「待って下さい!」

 

 俺と愈史郎の会話を聞いていた珠世は、切羽詰まった様子で顔を上げてこちらに視線を向けてくる。

 その目にあるのは、真剣な色。

 炭治郎から聞いた話によると、珠世は鬼舞辻無惨を倒す機会を窺っているという話だ。

 それだけに、鬼舞辻無惨の血というのはどうしても研究するべき存在なのだろう。

 そのように重要な物である以上、珠世にしてみれば鬼舞辻無惨の血というのはあればあっただけいい。

 とはいえ……猗窩座の俺に対する態度は大分柔らかくなってきているし、心をへし折るというのも順調に進んでいる。

 何度か戦いを重ねているが、猗窩座は全く俺に敵わない。

 そして戦いが終われば、俺が渡す料理に舌鼓を打っている。

 絶対にとは言わないが、俺の感覚だとそう遠くないうちに俺の召喚獣となる契約を結び、より強者になるという選択をする可能性は高いと思う。

 そうなると、当然だが鬼舞辻無惨の血を入手する機会はなくなる。

 ……そもそも、現在耀哉が進めている作戦。

 レモンが作った青い彼岸花を囮として貿易商に接触するというのは、上手くいけば鬼舞辻無惨が出て来る可能性が高い。

 それを考えると、鬼舞辻無惨の血を研究する意味はなくなるかもしれないが。

 

「愈史郎のしでかした事は、私が謝罪します。ですので、その件はお考え直し下さい」

「……珠世は頭を下げてるが、お前はそのままなのか?」

 

 珠世が頭を下げているというのが屈辱なのだろう。

 俺を睨み付けてくる愈史郎にそう言うと、怒りで顔を真っ赤にしながら……それでも頭を下げる。

 

「初対面なのに、あのような事を言ってしまい、申し訳ありませんでした」

 

 俺に対しては強烈な怒りを感じているのだろう愈史郎だが、それが珠世の迷惑になると知れば、こうして素直に頭を下げる事が出来る、か。

 1人の女に一途という意味では、凄いとは思うんだよな。

 

「アクセルさん、その辺でどうか……」

 

 今までのやり取りを黙って見ていた炭治郎が、そう取りなしてくる。

 炭治郎にしてみれば、珠世や愈史郎は恩人にして知人といった扱いなのだろう。

 だからこそ、この辺で許してやって欲しいと思ったのだろうが……

 

「マリュー、どうする? 俺はもうこのまま許してやってもいいと思うが。もっとも次に同じような事をしたら、珠世にはしっかりと責任を取って貰うけど」

 

 愈史郎の様子を見る限り、自分に何か罰があるといった程度では、喧嘩を売ってくる態度はとてもではないが治らないだろう。

 だが、愈史郎の罪は珠世に償って貰うと言えば、珠世命といった愈史郎は自分の態度に気を付けるようになる。

 それを示すかのように、愈史郎は俺の言葉を聞いて苛立ちを露わにしていた。

 

「そうね。いきなり不細工と言われたのはちょっと驚いたけど……」

 

 そう言いながら、マリューは笑みを浮かべて愈史郎に近付いていく。

 そんなマリューの様子に何か感じるものがあったのだろう。

 数秒前まで俺を睨み付けていた愈史郎は、思わずといった様子で数歩後退る。

 

「いい? 初対面の女の人に向かって、いきなり不細工と言うのはとても失礼な事なの。分かったかしら?」

 

 力の差を見せつけたにも関わらず、俺を睨み付けるのはやめなかった愈史郎。

 だが、マリューに間近で見られながら注意されると、反論するような真似は出来ずにただ頷くだけだ。

 マリューは一体どういう表情を浮かべてるんだろうな。

 元々、マリューは穏やかな性格をしている。

 だが同時に、やるべき時はやるといった判断力も持っていた。

 マリューの所属は技術班だが、シャドウミラー幹部陣の強さランキングでは実働班にいる者達を上回ってギリギリではあるが上位に位置するだけの実力を持つ。

 そんなマリューの迫力に、愈史郎も立ち向かえなかったのだろう。

 ……純粋な強さという点では俺の方がマリューよりも上なんだが、それでもこうして愈史郎がマリューを怖がっている……あるいは畏怖を抱いているのは、強さ云々よりもその人の本質とでも呼ぶべき部分が関係しているのだろう。

 

「わ……分かった……すまなかった……これからは注意する……」

 

 マリューの迫力に押されながらも、愈史郎は何とかそれだけは口にした。

 実際的な俺の力よりも、マリューの表情の方が愈史郎にとっては怖いと思えるのだろう。

 ……普段優しい者程、怒ると怖いという話はよく聞く。

 実際にマリューが怒るとそれがどれだけの怖さを持っているのかは……うん、何となく予想出来る。

 ホワイトスターにいる面々、それ以外だとSEED世界でアークエンジェルに乗っていた者なら、そんな俺の気持ちに同意してくれそうな気がするが……どうだろうな。

 ともあれ、愈史郎の一件は取り合えず無事に何とか終わり、俺達は珠世に家に上がるように言われるのだった。




アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1730

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