珠世の家に上がると、俺達は居間に通される。
そして居間にあるテーブルの前にそれぞれが座るが……珠世はそこで炭治郎に声を掛ける。
「禰豆子さんを出してはどうですか? ここなら、問題ありませんし」
「え? あ、そうですね」
珠世の言葉に、炭治郎は俺に視線を向けてくる。
禰豆子を出してもいいかどうかを俺に視線で尋ねてるのだろうが、別にその件は俺に尋ねる必要があるとは思えないんだが。
「別にいいんじゃないか? この部屋の中なら、太陽の光も入ってこないし」
この家は珠世や愈史郎が使っているのを見れば分かるように、太陽の光が入ってこないようになっている。
そういう意味では、同じ鬼の禰豆子がこの中で自由に移動するのは悪い話ではなかった。
「ありがとうございます。……禰豆子、外に出てもいいぞ」
そう言うと炭治郎は、床に置いた木箱を開ける。
するとそこから幼児状態に縮んだ禰豆子が姿を現す。
「むー! むー、むー!」
相変わらず禰豆子が何を言いたいのかは、俺にも分からない。
だが、珠世の周囲で嬉しそうにしているのを見れば、珠世に会ったのが嬉しいのだろう。
「あら、可愛いわね」
マリューがそんな禰豆子を見て、小さく呟く。
実際に今の禰豆子はかなり愛らしく、マリューがそんな風に言うのも納得出来る。
……ただし、そんなマリューの言葉を聞いて珠世の後ろで待機している愈史郎は一瞬ビクリとしたが。
家の前での一件により、愈史郎はマリューに苦手意識を持っているらしい。
トラウマ……とまではいかないが。
「ふふ」
そんな珠世は、禰豆子の様子を見て笑みを浮かべる。
家の前で起きた一件により、俺達の間に流れている雰囲気はどこか微妙なものだった。
だが、禰豆子の存在がその微妙な雰囲気をどこかに吹き飛ばす。
「それで、炭治郎さん。今日は一体どのような用件でいらしたのでしょうか? 禰豆子さんを人に戻す薬に関しては、研究が進んでいますがまだ完成は……」
「いえ、違います。そちらについても話を聞きたいと思っていますが、今日はアクセルさんを珠世さんに紹介する為に来たんです」
「アクセルさん……貴方でしょうか?」
「ああ、そう言えば今更だが自己紹介していなかったな。俺はアクセル・アルマー。こっちはマリュー・ラミアス。名前を聞いて分かると思うが、日本人でもないし、鬼殺隊に所属している訳でもない。全くの別組織だが、鬼殺隊に協力している組織の者だ」
異世界の国の代表である……といったような事を教えてもいいのかもしれないが、愈史郎の存在を考えると、詳細な話をするのは気が進まない。
今はその件については言わない方がいいだろう。
「鬼殺隊とは別の組織の……? それは一体どういう……?」
「俺達の事を教えるには、今の珠世達はちょっと信じられないから、黙秘させて貰う」
愈史郎を一瞥してからそう言うと、それに対して愈史郎が何かを言おうとするも、先程の一件から何も言わずに黙り込む。
珠世も自分の部下……という認識でいいのかどうかは分からないが、とにかく自分の仲間である愈史郎の言動に原因があると言われれば、無理に聞いてくるような真似はしない。
「アクセル、私達の詳細については教えなくてもいいけど、鬼殺隊にどんな協力をしているのかは教えてもいいんじゃない?」
珠世の様子を見て、マリューがそんな風に言ってくる。
マリューにしてみれば、珠世とは鬼の研究について友好的に接したいという思いがあっての言葉だろう。
俺達がいなければ、炭治郎から話を聞くだろうし、炭治郎の性格を考えれば隠し事は決して得意な訳じゃないし……ある程度は話してもいいか。
「そうだな。……なら、こう言っておくか。俺達の組織が仲介をする事により、神鳴流という、呼吸を使うのとは別の特殊な能力を持つ剣士達を雇わせている」
別の特殊な能力と言ってはいるものの、俺……というか実際に鬼殺隊の剣士と関わっているエヴァやムラタとかも同じ結論になっているが、呼吸というのは気の亜種という認識だ。
そういう意味では呼吸と別の特殊な能力というのは、表現的に間違っているんだが……まぁ、それは置いておくとしよう。
「他にも、俺達の組織で使われている量産型Wとコバッタ……特殊な人形に近い存在だが、それを多数鬼殺隊に貸し出して、色々なところで補助をしている。他にもドロという空を飛ぶ乗り物を貸したりもしているな」
「……」
珠世は俺の言葉を完全には理解出来なかったのか、無言で驚く。
鬼滅世界しか知らない珠世にしてみれば、俺の言葉はそれこそ夢物語に聞こえるだろう。
それでも嘘だといったような事を口にしないのは、炭治郎が俺の言葉に異を唱えていないからだろう。
炭治郎が嘘を吐くのが苦手だというのは、当然ながら珠世も知っている筈だ。
炭治郎の性格を少し知れば、それは当然だろう。
その炭治郎の様子から、俺の言葉は事実だと珠世が認識してもおかしくはなかった。
「ちなみに、俺の協力のお陰……ってのはどうかと思うが、十二鬼月のうち下弦の鬼を2匹、それと上弦の陸を倒したぞ」
「それは……事実なのですか? 私が知ってる限りでは、鬼殺隊が倒す事が出来るのは下弦の鬼までで、上弦の鬼を倒すといったような事は出来なかった筈です」
倒せないというか、そもそも遭遇するのが難しいというのもある。
そして偶然上弦の鬼と遭遇しても……堕姫や妓夫太郎との戦いを思えば、柱であろうと1人で倒すのは難しいだろう。
まぁ、あの時は天元以外に小芭内も来て、更にはムラタや獪岳、神鳴流や鬼殺隊の剣士も多数来て……色々な意味で特殊な戦いだったからな。
ある意味で、俺達にとってこれ以上ない程に最高の状態で戦えた。
もしあの場に俺がおらず、天元と炭治郎達だけだったら、一体どうなっていたか。
それこそ炭治郎達は……いや、炭治郎は主人公で、善逸と伊之助は主人公の仲間なので怪我はしても死ななかっただろうが、天元辺りは死んでいてもおかしくはない。
「それをどうにかするだけの力が、俺達の中にはある。そして……俺達の協力のおかげで、もしかしたらだが鬼舞辻無惨を誘き寄せる事が出来るかもしれない」
「……え?」
完全に意表を突かれたといった様子で声を上げる珠世。
「鬼舞辻無惨かどうかは分からないが、とある貿易商には鬼が深く関わっている。強烈な鬼の匂い……気配のする壺を売っている貿易商があるんだが、その貿易商が青い彼岸花を……」
「青い彼岸花!?」
俺が最後まで言うよりも前に、珠世はそう叫ぶ。
この様子からすると、青い彼岸花について知ってるのか?
「知ってるのか?」
「……はい。青い彼岸花というのは、鬼舞辻無惨が太陽を克服する為に探し求めているものです」
「なるほど。まさか、ここで青い彼岸花を探している理由を知る事が出来るとは思わなかったな。そうなると、やっぱりあの貿易商に関与しているのは鬼舞辻無惨か」
「青い彼岸花を探しているのであれば、ほぼ間違いなく」
珠世が俺の言葉を聞いてそう言ってくる。
珠世にしても、鬼舞辻無惨が貿易商に関与して青い彼岸花を探しているというのは予想外だったのだろう。
「ともあれ、俺達はその青い彼岸花を用意出来る。……ああ、安心しろ。鬼舞辻無惨が探している青い彼岸花じゃなくて、別の青い彼岸花だ」
「それは、一体どういう事でしょう?」
珠世にしてみれば、俺の言ってる言葉の意味が理解出来ないのだろう。
大正時代の人間に遺伝子操作がどうとか、そういうのを言っても通じるとは思えない。
「俺達の組織にはそういう事が出来る奴がいるんだよ。こっちのマリューもそうだ。藤の花の毒を強化する事に成功している」
「そうなの……ですか?」
珠世にしてみれば、マリューの作った藤の花の毒というのは決して他人事ではない。
珠世もまた鬼なのだから、当然のように藤の華の毒は効果があるのだから。
「ええ、本来の専門は素材工学……例えば、鉄の研究とかそういうのなんだけどね」
PS装甲と鉄を一緒にするのはちょっと無理があるような気がするが……それでも珠世に分かりやすく説明するとなると、それが最善なのだろう。
「そうなのですか。それで……確認するようですが、貴方達の用意する彼岸花は鬼舞辻無惨の欲している青い彼岸花ではないのですよね?」
「ええ。レモン……青い彼岸花を作る人だけど、レモンが作る以上は外見は青い彼岸花であっても、実際には鬼にとって猛毒となっていてもおかしくはないわ」
断言するマリュー。
実際、俺もマリューのその言葉を否定する事は出来ない。
それこそ、レモンなら青い彼岸花を鬼舞辻無惨が持った瞬間に意思を持って襲いかかるといったような生物兵器を作っても驚きはしない。
いやまぁ、レモンの事だから本当にそういうのを作ろうと思えば作れそうだが。
「青い彼岸花を作る……? そうなると、実際に鬼舞辻無惨を倒すのは数年は後ということになるのでしょうか?」
数年としたのは、珠世にとって控えめに言ったつもりなのだろう。
実際、もしこれがレモンではなく普通の……この鬼滅世界の者であれば、品種改良とかそういうので青い彼岸花を作るのに数年どころか、十数年……場合によっては数十年掛かってもおかしくはい。
しかし、今回青い彼岸花を作るのはレモンなのだから、そんなに時間が掛かる筈もない。
ましてや、魔法球の中でとなると……
「場合によっては、数日くらいで作るかもしれないな」
「……は?」
今のは自分の聞き間違いではないか。
そんな様子を見せる珠世だったが、この鬼滅世界の人間であると考えれば、それは決して間違いではない。
「お前の常識では考えられないと思うが、俺達はそういうのが出来る力を持った組織だという事だよ。だからこそ耀哉……鬼殺隊を率いてる産屋敷家の当主だが、その耀哉も俺達と手を組む事を了承した」
産屋敷家という言葉に、珠世が微かに反応する。
まぁ、鬼である以上は鬼殺隊を率いる産屋敷家に対して色々と思うところがあってもおかしくはないのだろうが。
「お話は分かりました。それで……私にどうしろと?」
「簡単な事だ。鬼殺隊に合流しろ。これはお前にとっても悪い話じゃないと思うぞ? 聞いた話によれば、お前もまた鬼舞辻無惨を倒そうとしていたんだろう? 現在、俺達はもう少しでそこに手が届くところまで来てるんだ。なら、お前もそれに協力してもいいんじゃないか?」
「……何故、私を? 話を聞く限りでは、私がいなくても十分に鬼舞辻無惨を倒せる準備をしているように思えます」
「だろうな。その件については俺も素直にそう思うよ」
これは冗談でも何でもなく、俺達の戦力は鬼舞辻無惨を殺す事が出来るレベルにあるのは間違いない。
だが、それでも耀哉が珠世を引き入れようとしたのは……
「理由は幾つかあると思う。珠世が昔から鬼舞辻無惨を倒そうとしているのを耀哉が……というか、産屋敷家の当主が知っていて、その気持ちを汲んで。あるいは珠世が知っている鬼に対する知識を欲して。そして鬼を人に戻す為の薬を研究している件」
特に最後の鬼を人に戻す薬については、鬼について詳しくないと作るのは難しい。
技術班でも、鬼を何匹か確保して生態を調べたりはしているのだが、それでも長年研究してきた珠世と比べれば蓄積してきた経験の点で劣る。
……勿論、技術班に任せておけば、今すぐには無理でも、時間を掛ければ人に戻す薬も作れるとは思う。
思うが、それでも早く出来るのなら珠世から協力して貰った方がいいのは間違いのない事実だ。
「そう、ですか。……色々と気を遣わせてしまったようですね」
「耀哉は自分の代で鬼舞辻無惨を殺すつもりだ。……でなければ、解呪した産屋敷家の呪いが、息子や娘でまた復活する可能性もあるしな」
「解呪……呪いを解呪したのですか!?」
どうやら、珠世も産屋敷家の呪いについては知っていたらしい。
鬼として長い時間を生きているのを思えば、そこまでおかしな話ではないのかもしれないが。
「ああ。その辺も俺達の組織……シャドウミラーの力だな」
「シャドウミラー……正直なところ、今まで聞いてきただけでもアクセルさんの所属している組織については理解出来ない事が多いです」
「だろうな。まぁ、今は無理でも……」
そこで一旦愈史郎を見て、そこで改めて珠世を見る。
「鬼殺隊に合流すれば、いずれ俺達についても知る事が出来るのは間違いないと思うぞ」
今は愈史郎の一件もあって珠世を完全に信じるといった真似は出来ないが、鬼殺隊と行動していれば当然のようにシャドウミラーについて色々と知る事になるだろう。
それを止めるといったような真似は出来ないし、珠世にとっても俺達の秘密については少しでも多く知りたいと、そう思ってもおかしくはない。
そうなれば、俺達の秘密をこれ以上隠すといったような真似をしても意味はなく……愈史郎の一件で問題がなくなったら色々と素直に話してもいいと、そう思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730