ドロの移動速度は、空を飛んでいるだけあってかなりの速度だった。
本来なら隠に背負われて移動しても結構な時間が掛かるのだろうが、空を飛ぶドロでの移動となると、1時間も掛かっていない。
……そう言えば、基本的には隠が背負っていくという話だったのだが、行冥のような筋骨隆々な大男を刀鍛冶の里に連れていかなければならない場合、一体どうなるんだろうな。
もしかして、その場合でも隠は行冥を背負っていくのか?
いや、行冥の体重を考えれば、多分数人で神輿的な感じ、もしくは時代劇に出て来る篭的な存在で運ぶ可能性の方が高いか。
「あれが、刀鍛冶の里か。……予想していたよりも、大分大きいな」
ドロの上から、視線の先に見える刀鍛冶の里を見てそんな風に呟く。
個人的には、刀鍛冶の里ってもっと小さいと思っていたんだが。
あ、でも実際にはそうでもないのか?
鬼殺隊の隠れ里にもそれなりの人数を派遣してきており、そのような状況でも刀鍛冶の里は問題なく動いていたのだから。
「凄いな。まさか、こんなに早く到着するとは思わなかった」
少し前まではドロの中にいた無一郎が、ドロの上にやって来て視線の先に見える刀鍛冶の里を見ながら感心したように言う。
「ドロが色々と便利な能力を持ってるのは間違いないが、それでも街中で堂々と使えないのは痛いしな」
「……ふーん。そうなんだ」
一応俺の言葉に答えてはいるものの、その言葉は本当にただ返しているだけといった感じだ。
無一郎にしてみれば、大事なのは柱の仲間であったり、耀哉であったりするんだろう。
「それにしても、出発前に聞いた話だと強くなる為に刀鍛冶の里に行くんだよな?」
「え? うん。そうだけど」
「強くなるなら、別に刀鍛冶の里に行かなくても、炭治郎達のようにエヴァから訓練を受ければいいんじゃないか?」
ホワイトスターで実弥との模擬戦をやった時も、エヴァはあっさりと勝っている。
勿論、あの戦いで実弥が全力を出したのかと言われれば、その答えは否だろう。
だが、それはエヴァもまた同様で、当然ながら全力を出してはいなかった。
そうである以上、エヴァに模擬戦をして貰えば無一郎も強くなれると思うんだが……それでも、何故か無一郎はエヴァとの模擬戦ではなく刀鍛冶の里にやってきた。
これが実弥や小芭内のように鬼に対する強硬派であれば、エヴァに頼みたくないからという事で、その理由も分かるんだが。
「鬼よりは、刀鍛冶の里の方で訓練するのがいいと思っただけだよ」
あっさりとそう言ってくる無一郎。
鬼に対して強硬派という訳ではないが、穏健派といった訳でもないらしい。
この様子を見る限り、中立といったところか。
……実際には中立というか、興味がないといった感じなんだと思うが。
「エヴァと訓練をすれば、刀鍛冶の里で訓練するよりも強くなると思うぞ。それを示すように、さっきお前と話していた炭治郎も大分強くなっているし」
「炭治郎……」
ん? 炭治郎の名前を呟く無一郎の様子は、ちょっと違うな。
炭治郎と何かあったのか?
さっき話していたけど、無一郎の性格を考えれば炭治郎の名前をすぐに忘れてもおかしくはないと思う。
ただ、炭治郎はこの世界の主人公だ。
そう考えれば、無一郎が炭治郎に対して何かを感じてもおかしくはなかった。
「何かあったのか?」
「炭治郎は日の呼吸を使うんでしょう? 僕は日の呼吸の使い手の子孫らしいんだ。その件を知って、話し掛けてきたんだけど……」
「それは……でも、無一郎は確か霧? いや、違うな。霞の呼吸の使い手だったよな? 日の呼吸の子孫なのに、霞の呼吸なのか?」
「別に僕が日の呼吸を使った剣士の子孫だからって、日の呼吸に適性があるとは限らないと思うけど。それに日の呼吸についての情報は殆どなかったんだし」
「なるほど」
そういう意味では、炭治郎の家にはヒノカミ神楽として日の呼吸についての型が残っていたのは、大きな意味を持つと言ってもしい。
それを継承しているからこそ、炭治郎は中途半端ながらも日の呼吸を使えるのだから。
「なら、無一郎はこの先も日の呼吸を使わないのか?」
「そうだね。中途半端に日の呼吸を……いや、日の呼吸じゃなくても自分が使っているのとは別の呼吸を使うというのは、かなり難しいんだ。それなら、使い慣れている霞の呼吸を使った方がいいよ」
「そうなのか? 炭治郎は水の呼吸と日の呼吸を使ってるみたいだが」
「さぁ? その辺は僕にも分からないよ。そういう才能があるんじゃない?」
炭治郎に若干の興味はあるようだが、言ってみればそれだけでしかないか。
そんな風に無一郎と喋っている間に、ドロは着陸姿勢に入る。
着陸するのは刀鍛冶の里の中でも比較的広い場所。
操縦する隠はドロの扱いも相応に慣れたのか、特に迷ったりする様子を見せず地上に向かって降下していき……やがて無事に着地する。
わぁ、と。
それを見た刀鍛冶の里の者達が歓声を上げるものの、やっぱりというか、予想通りというか……うん。刀鍛冶の里にいる者は、全員がひょっとこのお面を被っていた。
もしかしたら、刀鍛冶の里から出る時だけお面を被るのかと思っていたのだが、この様子を見る限りではどうやらあのお面は普通に使われているらしい。
それでもそこまで驚きを露わにしなかったのは、刀鍛冶達がひょっとこのお面を被っているのを何度も見て慣れていたからだろう。
「さぁ、到着ですので降りて下さい」
隠に促され、俺を含めてドロに乗っていた者達は全員が降りる。
そんな中、1人が俺に向かって近付いてきた。
「初めまして、アクセル様。里長の鉄地河原鉄珍といいます」
そう言い、男……いや、老人か? ひょっとこのお面を被ってるので顔は分からないが、かなり小柄な男が俺に向かってそう頭を下げてくる。
鉄珍と名乗った男は、どうやら本当にこの刀鍛冶の里長らしい。
小柄だが、それでも耀哉から刀鍛冶の里を任されているのだから有能な人物であるのは間違いないのだろう。
「アクセル・アルマーだ。今回は世話になる」
「はい。お館様から聞いています。ただ、ここには見て面白い物はそう多くはないと思うのですが……ただ、温泉はお勧めです」
「湯治の場所としてはいいんだな。それだけでも来た甲斐があった」
温泉……出来ればレモン達と一緒に来たかったが、考えてみれば誰か他の奴が来る可能性がある以上、貸し切りにしないと面倒な事になるな。
「それでは、まずはアクセル様の泊まる場所に案内します。ただ、ここにあるのはそこまで大きな宿ではないのですが……」
「別に気にしない。それと、公の場じゃなければ別に様付けをしなくてもいいぞ」
「……では、アクセルさんと」
「ああ、それでいい」
公の場ならともかく、何でもない普通の場所で様付けされるのは、あまり好まない。
いやまぁ、どうしてもそれでなければならないのなら、それはそれでしょうがないと思うんだが。
「では、この者がアクセルさん達が今日泊まる宿に案内します。既に何人かがいますので、貸し切りとはなりませんが」
「それは構わない。別に俺も、この状況で貸し切りにしろなんて事は言わないしな」
そもそも、ここは刀鍛冶の里だ。
観光旅行に来るような場所ではないのだから。
来るにしても、日輪刀の関係で用事のある者達だけだろう。
新しく打って貰ったり、研いで貰ったり、もしくは無一郎のように強くなる為に修行に来たり。
そんな者達が泊まる為の宿泊施設は用意されているのかもしれないが、だからといって豪華な宿が用意してあるとは思えない。
ああ、でも刀鍛冶の里は鬼殺隊にとって非常に大事な場所だけに、耀哉……とまではいかないが、産屋敷家の者が様子を見に来たりとかはあるのかもしれないな。
そういう時の為に豪華な宿とかはあってもおかしくはない、のか?
まぁ、耀哉とかの性格を考えれば、そういう宿を用意するのならもっと別の事に力を使って欲しいと言うように思うんだが。
ともあれ、刀鍛冶の里の里長をしている鉄珍との会話が終わると、俺達はそれぞれ自分の好きなように行動を開始するのだった。
「では、失礼します。ごゆっくりどうぞ」
そう言うと、俺をここまで案内した男は一礼して部屋を出ていく。
俺に用意された部屋は、何気にいい部屋だった。
多分柱とかの身分が高い者が使うような、そんな部屋なのだろう。
だとすれれば、無一郎とかもこういう部屋に泊まってるのかもしれないな。
さっさといなくなったので、今は何をしているのかは分からないが。
それにしても……刀鍛冶の里に興味があったのは事実だが、だからといってこの状況で何をすればいいんだろうな。
やっぱりゆっくりと湯治でもしていればいいのか?
温泉はそれなりに楽しみではあるが。
そうだな。このままここで何かをしてるのも暇だし、適当に刀鍛冶の里を見て回ってから温泉に向かうとするか。
そう判断すると、部屋に来てから10分もしないうちに出掛ける事にする。
もしこれが他の奴なら、部屋に持ってきた荷物を整理するとか、そういう真似をする必要もあるのだろう。
だが、俺の場合は基本的に全ての道具が空間倉庫に収納されている。
荷物の整理とかがいらないというのは、俺にとってかなり便利な事であるのは間違いなかった。
そうして建物から出ると、温泉があると聞いていた方に向かう。
ただし、別に急いで温泉に行きたい訳でもないので、適当に周囲の様子を眺めながらだ。
一見すると、長閑な田舎と呼ぶに相応しい。
だが、刀鍛冶の里だけあってか、複数の場所で刀鍛冶達が仕事をしているのだろう。煙が立ち上っているのが見える。
とはいえ、こうも煙があると、火事とかになった場合に判断するのが難しそうだな。
「あ、こんにちは!」
道を歩いていると、向こうから歩いて来た数人の子供達が俺を見て挨拶をしてくる。
子供……子供だよな?
背の小ささから子供だとは思うんだが、子供であってもひょっとこのお面を被っているので、実は鉄珍が紛れ込んでいても見つけるのは難しい気がする。
とはいえ、走っているのをみればやっぱり全員が子供達なんだろうが。
「ああ、こんにちは。この刀鍛冶の里で、何か面白い物はあったりするか?」
鉄珍からは、特に何も面白い物はないと聞いてはいる。
だが、それはあくまでも鉄珍にとってはの話で、もしかしたら子供達にしてみれば何か面白い物があるかもしれない。
そう思って尋ねたのだが、子供達は見るからに悩んだ様子を見せる。
「うーん……面白いところって……川とか? 魚がいるし」
「馬鹿、この人は偉い人だろ。なら、川なんか見ても面白いとは思わないぞ」
子供達のそんな会話が聞こえてくるが、別に川はつまらないとは思わない。
こういう山の中にある川だし、まだ汚れていない川なのは間違いないだろう。
あ、でも刀鍛冶とかをやってるとなると、何か身体によくない物質が川に流れ込んでいる……って可能性もあるのか?
いやまぁ、俺は刀鍛冶については殆ど知らないし、そもそも日輪刀を打つのは普通の日本刀を打つのとは違っていたりするのかもしれないが。
「いや、ちょっと川に興味があるな。連れていってくれるか? ほら、これはお駄賃だ」
そう言い、10円チョコを渡す。
子供達は最初何を貰ったのか分からなかったが、俺がそのチョコを口に運ぶと、きちんとした食べ物だと判断したのだろう。
恐る恐るといった様子だったが、ひょっとこのお面をずらして口に運び……次の瞬間には歓声が上がる。
やっぱり子供はチョコとかそういう甘いのは好きだよな。
そうしてお駄賃に満足した子供達は、俺を川まで案内する。
途中で何人かの刀鍛冶に遭遇したものの、俺が誰なのかは知っているのだろう。頭を下げ、そして子供達と一緒にいる事に驚かれる。
とはいえ、別に子供達を連れ去ったりしている訳ではないし、チョコのおかげか俺は子供達に懐かれている。
……こういう場合って、知らない人が何かあげると言われても迂闊に貰ったりしないように注意するべきか?
あ、でもここにいるのは刀鍛冶達や鬼殺隊の面々と、言ってみれば身内だけなんだし、そういう意味では心配しなくてもいいのか?
そんな風に考えていると、やがて川に到着する。
「へぇ」
その川は、見るからに綺麗な川だった。
水が透き通っており、川の中をしっかりと見る事が出来る。
もしかしたら鍛冶によって何らかの汚染があるかも? と思ったが、見る限りではそういうのがあるようには思えない。
もっとも、その手の汚染というのは見て分かるようなものだけではなく、見ても全く分からないという事も珍しくない。
だが、魚も普通に泳いでいるのが見える以上、あまり心配はいらないだろう。
……魚も気が付いていない汚染という可能性も否定出来なかったが。
「どう? この川は深さもちょうどいいし、あそぶのに丁度いいんだよ!」
1人の子供がそう言い、他の子供達もそれに同意し……少しだけ川遊びを楽しむ事にするのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730