転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0303話

 学園長室での話が終わり、部屋から出た所でネギが口を開く。

 

「すいませんが、修学旅行の準備とかで色々と忙しいので僕はこの辺で失礼させて貰います。今日はありがとうございました。アクセル君、修学旅行ではよろしくね」

 

 素早くそれだけ言って、ペコリと頭を下げて走り去る。

 その瞬間ネギの懐からカモが出て肩の上に乗ったのを見て、そう言えば学園長室でカモが何も発言していなかった事に気が付いた。

 ……まぁ、今はもうネギに雇われたとは言っても元々は刑務所を脱走してきたらしいのだから、ネギのペットや使い魔としての許可を貰ったとしても、この麻帆良のトップである近右衛門の前には迂闊に姿を晒せないというのも分からないでもない。

 

「アクセル、今日の放課後は用事が無いな? 早速別荘でお前の修行を見るぞ」

 

 そう言ってズンズンと進んでいくエヴァ。茶々丸もペコリとこちらに一礼してその後を追う。

 

「……ま、エヴァの別荘にある書斎にも用はあるしな」

 

 誰とも無くそう呟き、俺もまたエヴァの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

「……で、何で貴様等までいるんだ?」

 

 どことなく不満げな様子のエヴァの声が周囲へと響く。俺達が現在いるのは、以前俺とエヴァが戦った城の前庭だ。そこにいるのはエヴァ、茶々丸、俺。ここまではともかく、その後にはあやか、千鶴の姿もあった。教室で荷物を纏めて出ようとした俺を発見した千鶴があやかを呼んで、結局は一緒に別荘に来る事になってしまったのだ。エヴァ的にはそれが気に入らないらしい。

 

「もちろんエヴァンジェリンさんがアクセル君に非道な行いをしないように監視する為ですわ」

 

 あやかが当然とばかりに口を開くと、その隣にいる千鶴も笑みを浮かべながら頷く。

 

「それに、この別荘の中では魔法が使いやすいのでしょう? なら私達が魔法の修行をするのにも丁度いいし」

 

 持っていたバッグから練習用の杖を取り出す千鶴。

 その様子を見ながら数秒程考えていたエヴァだったが、やがて溜息を吐く。

 

「まぁいい。ただし、こちらの邪魔をするなよ」

 

 その言葉に黙って頷く2人だった。

 その後、虚空瞬動の練習という事でそこから少し離れた位置まで移動する。あやかと千鶴の2人はこちらの様子を多少気にしながらも、初心者用魔法教本を見ながら簡単な魔法を試しているようだ。

 

「いいか、虚空瞬動でまず注意が必要なのはあくまでも瞬動を空中で使用出来るという事だ。これがどういう意味か分かるか?」

 

 瞬動を空中で使う意味? 瞬動。即ち足に魔力や気を集中させて高速で移動する技術だ。それを虚空、すなわち空で使う。つまりは……

 

「虚空瞬動はあくまでも跳躍的な意味で、別に空を飛べるという訳じゃない」

「その通りだ。やはり貴様は戦闘に関する事だと頭の回転が良くなるな」

「……一応、テストの成績とかでは学年トップクラスでエヴァよりも上なんだが」

「ふん、それは私が単にやる気がなくて適当にやっているからだ。考えても見ろ、私は15年近く学生をやっているんだぞ? 確かにサボりも多いが、それにしたってそれだけ学生をやっていればいやでも中学生程度の勉学なんぞ覚えてしまうさ。今のテストの成績は目立つと面倒事になる可能性もあるからな。わざと平均辺りをうろちょろしているに過ぎん」

 

 ……確かに。15年も学生を、しかも中学生をやっているだけにエヴァの言葉にはある種の重みを感じられた。

 

「まぁ、それはいいとして。お前の言った通りに虚空瞬動とはあくまでも擬似的に空を飛ぶ……いや、跳ぶ術であって、私の浮遊術やぼーやのように杖で空を飛んでいる訳ではない。まず、それをきちんと覚えておけ。そしてそれを認識しながら虚空瞬動を発動すれば、昨日のように発動ミスを起こす可能性はそれなりに減るだろう」

「認識の違いでそこまで変わるか?」

「そうだな。……今、私が言った事を認識しながら虚空瞬動を使ってみろ」

 

 エヴァの言葉に頷き、足に魔力を集中させて跳躍。そのまま空中で足に魔力を纏わせ、空中を飛ぶでは無く跳ぶという意識を持ちながら……虚空瞬動を発動!

 

「ふん、呆れるくらいに呑み込みがいい奴だな。教える方としては物足りなさを感じるよ」

 

 エヴァの賞賛とも愚痴とも取れる声を聞きながら、移動先で再び足に魔力を集め虚空瞬動を発動、発動、発動、発動。

 

「いい加減に降りてこい、この馬鹿が!」

「うお!?」

 

 発動ミスが無くなったのに気を良くし、連続で虚空瞬動を使っていると、唐突に下から魔法の矢で放たれた氷の矢が1本こちらへと向かって来る。

 それを再度虚空瞬動で回避し、エヴァと茶々丸の隣へと降り立つ。

 ……ちなみに、チャチャゼロはあやかと千鶴の側で魔法のアドバイスをしていたりする。意外に面倒見がいいのだろうか。

 

「今のはちょっと非道くないか? 当たってたら洒落じゃ済まんぞ」

「ふん、当たるつもりも無いくせに。とにかく数分で済んでしまったが、虚空瞬動はもう使いこなせるな?」

「ああ、もう大丈夫だろう。助かった」

 

 微妙に詰まらなさそうなエヴァに軽く礼を言う。向こうとしては俺の物覚えが良くて逆に張り合いが無いのだろうが、魔法の才能を転生特典として貰っている上にアクセルの肉体だ。戦闘技術に関する事ならその習熟度は非常に高い。

 

「まぁ、使えるようになったと言っても熟練度的にはまだまだだ。より高度に使いこなせるようになると、入りと抜き。即ち虚空瞬動の発動と終了がスムーズに出来るようになる。お前の今の状態ではある程度以上の実力の持ち主にはあっさりと見破られるだろうがな」

「なるほど、その辺は要訓練って所だな」

 

 確かに『使える』というのと『使いこなす』というのは似ているようで全然違う。俺の瞬動や虚空瞬動はエヴァにしてみればまだまだ使えるというレベルなのだろう。

 

「まぁ、もっとも……お前のあの無詠唱の身体強化術を併用すれば大抵の相手は対処のしようがないだろうがな」

 

 苦笑を浮かべるエヴァだったが、俺もその言葉に内心で頷く。

 基本的に精神コマンドはこの世界の技術ではないので、普通の魔法使いにとっては対処の方法がないのだ。それこそ高畑クラスにでもなれば初見でもある程度の対処は可能かも知れないが。

 

「さて、虚空瞬動についてはこれでいいだろう。書斎を使いたいのだったか?」

「ああ。魔法の手札は多いに越したことはないからな」

「ふん、なかなかに貪欲だな。その辺は私好みだ。書斎は好きに使っても構わん。場所は分かるな?」

「何度か使わせて貰ってるからな」

 

 エヴァにそう答え、書斎へと向かう。

 

 

 

 

 

「……火精召喚、か」

 

 エヴァの別荘にある書斎。そこで今俺が見ているのは炎の魔法についての魔法書だ。その中でも興味を引かれたのが、今俺が口に出した火精召喚という魔法だった。

 この魔法は文字通りに火の精霊であるサラマンドラ――サラマンダーの方が分かりやすいが――を一時的に召喚して使役するという魔法だ。ただ、召喚とあるが俺のスキル覧にある召喚魔法とは違って召喚対象を力で屈服させるというようなエヴァの言っていた契約のようなものはいらないらしい。

 

「これは使えそうだな」

 

 魔法書を見る限りでは自分の分身のようにサラマンドラを形成するなんて真似も可能なようだし、色々と使い勝手の良さそうな魔法だ。習得しておいて損は無いだろう。

 

「……ん?」

 

 その時、ふと視界に入ってきた本があった。タイトルは『闇の魔法』とある。

 闇の魔法か。影と闇。似ているようで違うものではあるが、似ているだけに操影術に応用が可能な技術や魔力コントロールの方法が載っているかもしれない。そう判断し、その本を手に取る。

 

「闇の魔法。それは闇の福音の異名を持つ真祖の吸血鬼が生み出した固有スキルで……何?」

 

 最初の方を読んだだけで違和感に気が付く。闇の福音の異名を持つ真祖の吸血鬼と言えば、それは当然エヴァ以外にはいない筈だ。つまり、エヴァが闇系統の魔法を開発したのか? ……いや、違う!? 確かエヴァのスキル覧には『闇の魔法』と『魔法(闇)』の2つがあった筈だ。つまりこの本に書かれている闇の魔法というのが前者で、エヴァが魔法の射手とかでよく使っている闇の矢が後者なのだろう。

 その内容に興味を覚えた俺は、その本を読み進める。……が、すぐに本を閉じる事になった。何しろ内容が薄い。と言うか、使えるのが闇の魔法を開発したエヴァだけなので推測に推測を重ねたような内容になっているのだ。

 

「取りあえず攻撃魔法を自分自身に吸収するというのは間違っていないようだが」

 

 だが、攻撃魔法を自分自身に吸収する? 普通攻撃魔法というのは対象を攻撃する為にあるものだ。それを自分自身に使うとなれば、当然自分にダメージを受ける。

 

「どうやらその辺に闇の魔法とやらの秘密がありそうだが」

 

 何故この闇の魔法というものに興味を持ったのかは分からない。あるいは、俺の中に存在する念動力が何らかの影響を及ぼしている可能性が高いのかもしれない。ただ間違い無いのは、俺が攻撃魔法を己の身に吸収するという闇の魔法に対して強く、強烈に惹かれたという事実だけだ。

 だが、この本の頼りない内容を読み進めるよりは闇の魔法を編み出した本人であるエヴァに直接聞いた方が早いだろうと判断し、本を元の場所へと戻して城の前庭へと向かう。

 

 

 

 

 

「あら、アクセル君。どうしたの? エヴァンジェリンさんの書斎でお勉強中だったんでしょ?」

 

 休憩しているのか、タオルで汗を拭きながらスポーツドリンクを飲んでいる千鶴に声を掛けられる。周囲には他に誰の姿も無く、完全に千鶴1人だった。

 

「他の面子は?」

「エヴァンジェリンさんはあやかを連れて……ほら」

 

 千鶴の視線を追うと、この前庭から壁を挟んだ向こう側で小規模な爆音が聞こえて来る。

 

「魔法の射手を使えるようになってきたから、それを使った訓練をしてるのよ。まだあやかも制御は完璧とは言えなから、私を巻き込まないようにね」

「なるほど。で、千鶴は少し離れた所で練習中な訳か」

「そうね。でも、初心者用の魔法は確実に発動するようになってきたからそろそろ私も他の魔法を練習してみようと思ってるんだけど……何かお薦めはあるかしら?」

 

 千鶴にお薦めの魔法か。性格的に千鶴はあまり攻撃魔法と相性が良くないだろう。となると……

 

「回復魔法や補助魔法といったのがお薦めかもしれないな。ただ、攻撃魔法に適性が余り無いとは言っても最低限魔法の射手は使えるようになっておくようにな」

「やっぱりそうかしら。ありがとう、アクセル君。参考にさせて貰うわ」

「ああ。俺はエヴァに用があるからもう行くが、余り根を詰めすぎないようにしてくれよ」

「ええ。けど、この前のように置いて行かれるのはちょっとね。少なくてもアクセル君の足手纏いにならない程度には……」

 

 千鶴の言っているのは、エヴァとネギの模擬戦の時にあやかのみを連れて、千鶴を置いていった事か。確かにあの時は自衛が出来ないという理由で千鶴を置いていった。それが意外にショックだったのか。

 

「そうか。千鶴がこちら側に来るのを楽しみにしてる」

 

 それだけ言って、その場からあやか達の方へと向かった。

 

 

 

 

 

『氷の精霊3頭、集い来たりて敵を切り裂け……魔法の射手・連弾・氷の3矢!』

 

 そう呪文を唱え終わると、あやかの周囲に氷の矢が3本作り出されて標的として置かれているのだろう10m程先にある鎧へと命中する。

 本来なら氷の精霊云々というのは省略される事が多い詠唱部分なのだが、魔法初心者で始動キーもまだ作っていないあやかとしてはそれがまだ出来ないのだろう。

 

「お見事。それにしても氷とはな」

「あ、あら。アクセル君。見てらしたんですの?」

「ああ、丁度今来た所だ。あやか的に相性がいいのは氷なのか?」

「そうですわね。エヴァンジェリンさんに言われて使ってみたのですが、確かに他の属性よりは相性がいいようです」

「くくっ、まさかお前が氷属性と相性がいいというのは私としても予想外だったがな。意外な盲点という奴だ。で、アクセル。何か用か?」

 

 あやかの隣で、どこか満足げに氷の矢が命中した鎧を見ていたエヴァだったがそう言って俺へと視線を向ける。その視線を受け止め、口を開く。

 

「ああ。闇の魔法についてちょっと教えて欲しくてな」

「……何?」

 

 闇の魔法。その言葉を聞いた途端、エヴァからの迫力が増したように見えた。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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