無一郎と戦った日の夜……俺は夕食を終えると適当に刀鍛冶の里を見て回っていた。
特に何か目的があった訳ではない。
……いや、ある意味では念動力によって導かれたのかもしれない。
そうして歩いた先にいたのは……
「来たか、アクセル」
そう言い、戦意を漲らせた猗窩座。
何故猗窩座がここにいる?
一瞬そう思ったが、考えてみれば当然だろう。
以前も考えた事だが、鬼殺隊というのはあくまでも日輪刀があってこその存在なのだ。
もし日輪刀がなかった場合、鬼殺隊の剣士は鬼を殺す事が出来なくなる。
いや、正確には神鳴流の剣士がいるので、絶対に鬼を殺せないという事はないのだろうが……それでも鬼に恨みを抱く鬼殺隊の剣士にしてみれば、自分で鬼を殺せないというのは無念だろう。
そのように鬼殺隊を無力化……とまではいかないが、大分戦力を減らす方法の一つとして、日輪刀を供給している刀鍛冶達を殺すというのは十分に理解出来る。
量産型Wやバッタ辺りを護衛として配備するという話もあったが、そちらについてはまだ殆ど進んでいない。
そんな中、こうして猗窩座が刀鍛冶の里に現れたというのは、非常に大きな意味を持つ。
「一応聞いておこう。今日この場所にやって来たのは、猗窩座だけ……って事はあるか?」
「いや、違う。俺以外に3人の上弦の鬼と、雑魚共がやって来ている」
上弦の鬼が3人……いや、3匹か。
雑魚というのは、十二鬼月でも何でもない鬼の事だろう。
ただ、疑問なのは何で十二鬼月の中でも上弦しかいないのかという事だ。
雑魚というのは、つまり数合わせで連れて来たのだろう。
だがそれなら、別にそのような有象無象の雑魚ではなく、下弦の鬼を連れてくればいい。
現在判明しているだけで、殺された下弦の鬼は2匹。
つまり、最低でもまだ残り4匹下弦の鬼がいる筈だ。
だというのに、何故わざわざ雑魚を連れてきたのか。
単純に今回は質より量という事で雑魚を連れて来た可能性もあるが。
そして他にも聞き逃せない内容が、猗窩座以外に上弦の鬼が3匹いるという事だろう。
この前の遊郭の件で上弦の陸は倒した。
そうなると、現在残っている上弦の鬼は5匹になる。
つまり、壱から伍だな。
そして猗窩座が参という事は、最低でも猗窩座より格上の2匹のうちのどちらかがやって来ているという事か。
「なるほどな。今回は本気という事か。……いや、でもそれとは関係なくお前の戦意は高い。勿論俺と戦うのを望んで戦意が高くなっているという可能性も十分に理解出来る。しかし、それとはもっと別の理由で……それこそ、今日の戦いが最後だと思っているように見える」
ピクリ、と。
俺の言葉を聞いた猗窩座は、微かにだが反応する。
その反応が何を意味してるのか、何となく理解出来た。
何だかんだと、俺は猗窩座との付き合いはそれなりにある。
既に10回くらいは戦っている筈だ。
拳を交えて友情が芽生える……昭和のヤンキー漫画にありがちな展開ではあるが、拳を交える事で相手を理解出来る一面があるのも事実。
そういう意味では、猗窩座と俺はそれなりに分かり合っているのは間違いない。
そんな俺から見て、現在の猗窩座は間違いなく本気だ。
勿論いつも戦う時は本気だが、今回はそれに比べてさらに切羽詰まった様子がある。
そして猗窩座の性格からして、こんな状況になるのは……
「鬼舞辻無惨、か」
ピクリ、と。
再び猗窩座が反応する。
そんな猗窩座を見れば、俺の予想が当たっていたのは考えるまでもなく明らかだ。
なるほど。鬼舞辻無惨にこれ以上の敗北は許容出来ないと言われた訳か。
……まぁ、分からないではない。
鬼舞辻無惨にしてみれば、上弦の参……つまり鬼の中で3番目に強い――勿論これは鬼舞辻無惨を抜いての話だが――猗窩座が、俺に連戦連敗してるのだ。
最初こそは、俺という存在を怪しく思って多少は猗窩座の敗北も許容していたのかもしれないが、その我慢も限界に来たという事なのだろう。
「つまり……これが猗窩座に与えられた最後の機会。そう思った方がいいのか?」
「……」
俺の言葉に無言を返す猗窩座。
しかし、その表情が俺の言葉が間違っていないと示していた。
「今日が最後の戦いという事になるのか」
「……」
再度無言を返す猗窩座。
そんな猗窩座の様子を見る限り、俺の言葉が事実だと無言で認めているように思えた。
猗窩座と向き合っていると、里の中で複数の戦いの気配が生まれ始める。
恐らく猗窩座が言っていた、他の上弦の鬼と数合わせの雑魚が刀鍛冶の里での戦いを始めたのだろう。
そうなると、俺としても猗窩座との戦いに長い時間を掛けてはいられないな。
「さて、まさか最後の戦いがこんな感じになるとは思わなかったが、それでも今の状況を思えば仕方がないか。……けど、そうだな。これが最後の戦いとなると、今までと同じような戦いにするのはどうかと思う」
本来なら、戦いを重ねる事で猗窩座の心をへし折って俺と召喚獣の契約を結ばせるつもりだった。
しかし、完全に心が折れるよりも前に鬼舞辻無惨が先手を打ってきたという事で、当初の目論見は外れてしまった形になる。
鬼舞辻無惨がこれを狙っていたのか、それとも偶然このような形になったのか。
その辺は俺にも正確には分からないが。
ともあれ、これが猗窩座との最後の戦いとなるのなら、俺としても予定を少し強引に進める必要があるのは間違いなかった。
俺が何を言うのか分からないといった様子の猗窩座に向けて、言葉を続ける。
「今までは、俺が負けたら俺が鬼舞辻無惨の血を飲む。そして俺が勝ったら鬼舞辻無惨の血を貰う。そんな賭けを行ってきたな? しかし、これが最後なら少し賭けの内容を変えるとしよう。猗窩座が勝った場合は、今まで通り俺が鬼舞辻無惨の血を飲む。だが……俺が勝った場合、お前には俺の血を飲んで貰う」
「何、だと?」
今まで無言で貫き通してきた猗窩座だったが、さすがに俺の血を飲めというのは予想外だったのだろう。
普段はあまり表情を変える事がない猗窩座だったが、今その顔にははっきりと驚愕が浮かんでいた。
ああ、いや。でも最近だと俺が持ってきた異世界の食べ物を食べた時とか、かなり表情が変わっていたな。そう考えると、実はこの件はそこまでおかしな話でもないのか?
「聞こえなかったのか? 俺の血を飲んで貰う」
「……アクセルの血を飲んだ場合、俺はどうなる?」
「正直なところ、具体的にどうなるのかというのは分からない。ただ、上手くいけば……本当に上手くいけばだが、お前は今よりも強くなるだろう。……ただし、お前の身体が俺の血に耐えられれば、だが」
これは嘘でも何でもなく、正真正銘の真実だ。
もし俺の血を飲んで、その魔力に耐えられた場合、猗窩座は間違いなく今よりも強くなる。
「何故俺にそのような真似を?」
「そうだな。色々と理由はあるが、それらを全部ひっくるめて言えば、勿体ないからだな」
「勿体ない、だと?」
その言葉は、猗窩座にとっても完全に予想外の言葉だったのだろう。
一瞬何を言ってるのかといった様子を見せる。
「ああ。普通の鬼なら、強くなる為には人を食う。けど、お前は違う。勿論人を食ってないって事はないんだろうが、お前の強さは鍛錬の末に得られたものだ。以前にも言ったかもしれないが、俺はお前が鬼になってからどれくらい経っているのかは分からない。だが、それだけの時間を鍛錬に当ててきたというのは、率直に凄いと思う」
鬼にとって、手っ取り早く強くなるのは人を食う事だ。
特に実弥のような稀血の持ち主は1人食っただけで十数人……あるいは数十人、場合によっては百人喰い殺したくらいの力を入手する事が出来ると聞く。
そんな中で、鍛錬によって上弦の参という地位にいる猗窩座は、生身での戦闘という極めて限定された状況ではあるが、それでも十分に突出した存在だ。
そんな猗窩座が俺の血を飲んで耐えられた場合、どうなるのか。
間違いなくその強さは一段階上のものになるだろう。
「そんなお前だからこそ、俺の血に耐えられた場合、どこまで強くなるのかを見てみたい。ああ、勿論これは猗窩座だけに利益がある訳じゃなくて、俺にも利益がある。具体的には、俺の血を飲むという事は俺と召喚の契約を結ぶという事になる」
「召喚?」
「そうだ。……いや、単純に召喚と言ってもちょっと分かりにくいか。そうだな、陰陽師というのを知ってるか?」
「詳しくは知らないが、ある程度の噂なら」
昭和や平成になれば、陰陽師は漫画とかでもそれなりに出て来るようになって、かなり有名になるんだが。
大正時代となると……ましてや、文化とかにはあまり興味がなく、自分の鍛錬だけに興味があるような猗窩座の場合は、陰陽師については殆ど知らないらしい。
いや、猗窩座の性格を考えると、噂程度であっても知っているのを褒めるべきか。
「ならある程度知ってるという前提で進めるが、陰陽師は前鬼や後鬼といったように妖怪を使役したりする。俺が結ぶという召喚の契約も似たようなものだ。……とはいえ、陰陽師と俺のでは大分違うが」
あくまでも俺が知ってる限りの情報だと、陰陽師の前鬼や後鬼というのは呪符とかに封じておいたり、あるいは常に一緒に行動していたりする。
しかし俺の召喚魔法は普段は離れた場所にいるのを、必要になった時にその場に召喚して協力して貰うという奴だ。
……刈り取る者は召喚の契約を結んでいるものの、好んで俺の影に潜んでいる。
そういう意味では、前鬼や後鬼に似ているのかもしれないな。
「……俺をその前鬼や後鬼にすると?」
「そうなると、猗窩座は鬼だけにある意味で丁度いいような気もするな。で、どうだ? この賭けに乗るか?」
もし猗窩座が賭けに乗らないと言ってきても、その場合は仕方がないんだよな。
何しろ猗窩座が刀鍛冶の里にいる者達を襲うと言えば、俺はそれに対抗する為に手を出すしかない。
つまり。賭けの内容云々というのとは全く関係なく猗窩座は俺と戦う事になるのだ。
とはいえ、猗窩座も俺からの提案……俺の血を飲めば強くなれるというのには、興味があるのだろう。
自分が鬼舞辻無惨の血を飲んで鬼になったのだから、それもあって余計に興味を持つのは当然だった。
もっとも、俺の血を飲めば強くなれるのは間違いないが、代わりに恐らく……本当に恐らくだが、その背中からはドラゴンや悪魔の翼が生えたりすると思う。
そういう意味では、鬼だとか何とかそういうのとは別の意味で人の前に出る事は出来なくなるな。
「面白い。その賭け、受けよう!」
たっぷりと数分が経過した後で、猗窩座はそう宣言する。
その数分の間に何があったのかは俺にも分からない。
あるいは、何らかの手段で鬼舞辻無惨と連絡を取っていた……いや、それはないか?
だが、転移の血鬼術がある以上、念話とかそんな感じの血鬼術があってもおかしくはないと思う。
とはいえ、猗窩座の血鬼術はその性格を見れば分かるように、攻撃に全振りしたような代物だ。
誰かが何らかの手段で仲介をしたりしない限り、その辺りの心配はないだろう。
だとすれば、俺の血を飲むかどうか。あるいは俺の血を飲んだ場合に鬼である猗窩座はどうなるのかという風に考えていたとか、そんな感じか?
ともあれ、最終的に賭けを受け入れたのだから、俺としては何の文句もない。
「分かった。なら……戦いを始めるか。下手に戦いが長引くと、余計なちょっかいを出してくるような奴がいないとも限らないしな」
俺と猗窩座の戦い。
鬼舞辻無惨がどこまで考えてこのような状況に持っていったのか分からない。
だが、もし俺が鬼舞辻無惨の立場だとすれば、完全にイレギュラーな存在である俺をどうにかして排除しようとするだろう。
具体的には、俺と猗窩座が戦っているところに、上弦の鬼を乱入させるとか、そんな感じで。
とはいえ、今こうして周囲の気配を探った限りでは、この周辺に俺と猗窩座以外の者はいない。
俺の感知能力を潜り抜けられるような奴がいれば、また話は別だが。
しかし、そんな事がそう簡単に出来るとも思えない。
出来るとすれば、何らかの血鬼術とか、そんな感じだろうが……それはそれで、そう簡単にそんな血鬼術が使えるような奴がいるとも思えなかった。
あるいは鬼側ではなく俺の方に猗窩座と戦いたがる奴がいる可能性もあるが。
五飛、獪岳、無一郎の3人は、一番危ない。
五飛は鬼との戦いの為に鬼滅世界に来た奴だし、獪岳は行冥との約束で少しでも多くの鬼を殺す必要があり、無一郎は取りあえず鬼だから殺そうと考える性格なのだから。
とはいえ、現在刀鍛冶の里には結構な数の鬼がいる。
それを思えば、他の鬼に集中している可能性が高いとは思うのだが。
「そうだな。では、最初から本気でいこう。……破壊殺、羅針!」
構えた猗窩座は、いつものように既に見慣れたと言ってもいいような血鬼術を展開するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730