突然姿を現したその相手が鬼だというのは、目を見れば明らかだった。
右目には上弦、そして左目には弐。
つまり、この男は上弦の弐。
上弦の参であった猗窩座――今は狛治――よりも格上の存在だ。
……そう言えば、狛治は自分よりも格上の上弦が来ていると言っていたが、それがこの男か。
上弦の壱の可能性も考えていたんだが……それが上弦の弐というのは、喜べばいいのか、悲しめばいいのか。
外見の特徴としては、大正時代にしてはかなり背が高いといったところか。
行冥のような巨体に比べれば劣るが、それでも190cmくらいはあるように思える。
他にも頭の上の方だけが赤かったり、着物を無理矢理洋風にしたかのような、ちょっと違和感のある服を着ていたりと、かなり特徴的な外見をしていた。
「上弦の弐か。……ただ、お前の言葉は間違ってるぞ。こいつは猗窩座じゃない。狛治だ」
「へぇ、それは一体どういう事かな。ちょっと興味があるから、教えて欲しいんだけど」
上弦の弐……狛治よりも上の存在だという事で、狛治のイメージからてっきり武人系の相手なのかと思っていたんだが、この鬼は明らかに違うな。
狛治のように鍛錬の動きが見える身体の動かし方ではない。
だが……それでも、この鬼は上弦の参であった狛治よりも格上の存在なのだ。
それはつまり、何からの理由があるのは間違いないだろう。
「その前に、自己紹介くらいはしてもいいんじゃないか? 狛治の名前も間違っていたようだしな」
「それもそうだね。なら、自己紹介といこうか! いや、こうして俺と話してくれる人は滅多にいないから、嬉しい限りだよ。俺は童磨。知っての通り上弦の弐さ。それで君は一体誰かな? 知りたいなぁ」
どこか煽るような口調でそう言ってくる童磨。
外見は線が細いといった感じだが、あくまでもそれは見掛けだけだろう。
実際に鬼である以上、その外見に見合わない身体能力を持つのは間違いないのだから。
「俺はアクセルだ。鬼殺隊の……そうだな、協力者だと思ってくれていい」
「へぇ! 君が猗窩座君を何度も倒したっていう……うん、君には会ってみたいと思っていたんだよ。思っていたのとはちょっと違うけど、それでもこうして君に会えたのは嬉しいね。それで、猗窩座君は一体何がどうなってそうなったのかな? 見た感じ……鬼じゃないよね?」
これが童磨にとっては普通の口調ではあるのだろう。
だが、その言葉には相手を苛つかせるような、そんな棘がある。
本人が意図的にやっているのか、あるいはこれが無意識の言葉なのか。
その辺は俺にも分からなかったが、とにかくこれが童磨の標準なのだろう。
「そうだな。色々とあったのは間違いない。そして今の俺は……既に鬼舞辻無惨の支配下にはない」
「……へぇ」
狛治が鬼舞辻無惨の名前を口にしたのが、童磨にとっては驚きだったのだろう。
今までの煽るような、どこか軽い口調が消えて、一瞬だけ真剣な表情になる。
童磨にしてみれば、狛治に対して思うところがあるのだろう。
「猗窩座殿……いや、狛治殿か。狛治殿は鬼ではなくなったらしいね。とはいえ、今の狛治殿を見れば、鬼らしい鬼に見えるけどね」
童磨の視線が向けられているのは、狛治の額から伸びている角だろう。
とはいえ、その角は鬼の角というよりも……そうだな。ユニコーンの角という表現の方が相応しいと思える。
「アクセル、童磨の相手は俺に任せてくれ」
「……本気か?」
狛治のその言葉に、俺はそんな声を漏らす。
当然だろう。狛治が鬼から俺の召喚獣となったことによって、その能力がどう変わったのかは分からない。
しかし、先程少し確認しただけでも、猗窩座の血鬼術である破壊殺は使えなくなっているのは判明している。
勿論、破壊殺の中でも羅針といったようなものではなく、他の……例えば普通に拳や足を使って行う攻撃は鍛錬の成果である以上、多少威力は弱まっても使えるだろう。
だが、それでも狛治が弱体化したのは間違いない。
……実際には弱体化しただけではなく、翼や角を得た事によって強くなっている可能性も否定は出来ないものの、召喚獣になった今すぐでは、翼や角にどのような力があるのか……そして、それ以外にも一体どのような力があるのかというのを、しっかりと知るような真似は出来ていない。
これがグリや刈り取る者であれば、元々持っていた能力の類は失わず、それにプラスして俺の血の力で強化されるといった感じになったのだが。
狛治の場合は俺の血によって鬼舞辻無惨の血で変化した鬼から解放されるという形だったので、グリや刈り取る者と違って単純な強化といった感じにはならなかった。
狛治本人も、俺の召喚獣になった事により、自分の力が具体的にどのようなものなのかというのは、完全に把握はしていないだろう。
であれば、やはり今ここですぐに童磨と戦うといったような真似をしなくてもいいような気がする。
そう思ったが、狛治の目を見ると自分は決してここで退くようなつもりはないと、そんな意思があった。
これまで10回近くも戦ってきたからこそ、ここで狛治が退くつもりがないのは理解出来た。
「童磨とお前の間には何か因縁があるのか?」
「正解!」
俺の問いに答えたのは、狛治……ではなく、童磨。
先程の真剣な表情は既に消え、煽るような表情や言葉遣いに戻っている。
「何しろ狛治君は俺よりも先に鬼になったのに、血戦……順位の入れ替え戦で狛治君よりも後で鬼になった俺に負けてしまったんだ。いやぁ、あの時の戦いは激戦だったね」
その言葉に、しかし狛治は特に気にした様子もなく童磨を見ている。
狛治にしてみれば、自分が負けた事については思うところがあるのだろう。
だが、それでも鬼であった時程には拘っていない……といった感じか?
今の状況を考えると、それが正しいのかどうかは分からないが。
それでも自分の能力すらも完全に把握出来ていないのに、童磨の相手は自分でやると言う辺り、全く気にしていないという訳ではないらしいが。
「今の状態で勝てるのか? ……というか、単純に今のお前には童磨を殺す手段がないだろうに」
鬼を殺すには、太陽に当てるか、日輪刀で首を切断するか、鬼舞辻無惨の名前を口にさせるかがある。
実際には他にもあるのだが。
例えば、俺の持つゲイ・ボルクや魔力を使った一撃。
あるいは神鳴流の使う剣術。
それらなら鬼を殺す事も出来るのだが、生憎と今の狛治にそのような真似は出来ない。
だとすれば、例えば狛治の拳で童磨の頭部を砕いても、それは意味がなかった。
にも関わらず、狛治は自分が童磨と戦おうとしていた。
何か倒せる目論見があるのか?
「分からない。だが、今の俺はどうにか対処出来るという確信がある」
何の根拠があってそのような事を狛治が言ってるのかは分からない。
分からないが、それでも今の状況を思えば何らかの手段があるのは間違いがないのだろう。
とはいえ、どうしたものやら。
「どうしたんだい? 狛治殿が俺の相手をするのなら、それはそれで構わないよ。君が戦いに参加するのなら、それはそれで構わないよ」
そう言ってくるのは、自分の実力に自信があってこそのものなのだろう。
だからといって、それで俺と狛治を相手にしても勝てるというのはどうかと思うが。
「……だ、そうだが。狛治、どうする? 俺も戦いに参加するか?」
「いや、俺だけで戦う」
狛治はそう断言する。
狛治にとって、自分だけで童磨と戦うのはそれだけの意味があるのだろう。
これ以上は言っても無駄か。
「分かった。なら、童磨の相手はお前に任せる。鬼ではなく、俺の召喚獣となったその力を相手にしっかりと見せてやれ」
「ああ」
そう言うと、狛治は童磨に向かって構えを取る。
その構えそのものは、鬼だった時と変わらない構えだ。
狛治にとって鍛錬を積み重ねてきた結果が今の構えである以上、無理に構えを変える必要もないと判断したのだろう。
とはいえ、角や翼が生えた影響は少なからずある筈であり、それに対処する為にも構えを調整する必要があるのだろうが……その辺はやろうと思ってすぐに出来る事ではない。
それなりに時間を掛けて身体の動きを調整していく必要があるのは間違いなかった。
「ふむ、狛治殿の戦い方そのものは、そう変わらないんだね。けど……それで俺に勝てると、本当に思ってるのかな?」
そう言いながら、童磨は懐から扇子を取り出す。
……エヴァも確か扇子を武器にしていたが、何気に扇子って実は武器として使いやすいのか?
今度俺もちょっと試してみても面白いかもしれないな。
「どうだろうな。だが……今の俺は鬼ではない。そうである以上、お前を倒すといったような真似も、もしかしたら可能かもしれないぞ?」
狛治のその言葉に、童磨は面白そうな笑みを浮かべ……それを隙と見たのか、次の瞬間、狛治は地面を蹴って童磨との間合いを詰める。
その瞬発力は、鬼だった頃と比べても遜色ない。
……いや、それどころか、身体を完全に使いこなせていない今の時点でも、明らかに鬼だった頃よりも上だった。
なるほど。血鬼術はなくなったが、角と翼が生えただけではなく、純粋に身体能力は鬼だった頃よりも上なのか。
「っと!」
童磨にとっても、狛治のその身体能力は驚きだったのだろう。
驚きの声を出し……その一撃により、左肩が折られる。
狛治は失敗したといった表情を浮かべる。
狛治にしてみれば、当然のように頭部を狙ったのだろう。
しかし、高まった身体能力を完全に操るような真似は出来ず、それでいて、角や翼が新たに生えた影響で、狙いが逸れてしまったのだろう。
だが、さすがに狛治。
狙いが逸れたにも関わらず、すぐに次の一撃を放とうとするが……
「血鬼術、凍て曇」
その言葉と共に扇を振るう童磨。
するとその扇の動きに呼応するかのように、煙幕……いや、あれはただの煙幕じゃないな。氷の煙幕か? そんなのが狛治の視界を遮る。
狛治はそんな氷の煙幕の中に突っ込もうとするが……その動きを止め、翼を大きく羽ばたかせる。
それによって生み出された風はあっさりと氷の煙幕を吹き飛ばす。
「おお? これは凄い。そう簡単に吹き飛ばせるようなものじゃないんだけどな。けど……いいのかい、狛治殿。俺の粉凍りについては、知ってるだろう?」
その言葉を聞いた瞬間、狛治は素早く童磨から距離を取る。
粉凍り? それは一体どんな血鬼術だ?
狛治の行動を見る限り、十分に警戒すべき攻撃方法なんだろうけど。
「ほら、どうしたんだい? 俺に負けて上弦の参に落ちてしまった狛治殿だが、どこまで強くなったのか、俺に見せて欲しいんだけどな」
童磨のその言葉は、別に本人には煽るようなつもりはなく、純粋に疑問を口に出したにすぎないのだろう。
とはいえ、今の状況を考えれば生憎と狛治にその無意識の挑発はあまり効果があるようには思えなかった。
「なるほど。以前のように身体を動かすには、しっかりと鍛錬をする必要があるな。だが……不思議なことに、今のお前に負けるような気がしない。何故だろうな」
「そうかい? その割には俺の攻撃から逃げてるだけだと思うけどな。狛治殿、出来るだけ早くその力を俺に見せてくれ! 血鬼術、蓮葉氷!」
童磨の血鬼術が発動し、蓮の花と思しき形をした氷が生み出される。
だが、狛治はそんな蓮の氷を回避しながら童磨との間合いを詰めていき……
「血鬼術、蔓蓮華!」
蓮の氷の近くを通ろうとした狛治に対して、蓮の氷から蔦が伸びる。
氷で出来た蓮から伸びる蔦である以上、当然ながらその蔦もまた氷で出来ているのだろう。
それが触れれば、一体どんなダメージがあるのか、俺には分からない。
蔦の先端が相手の身体を貫くのか、もしくは触れた場所を凍り付かせるのか。
こうして見る限りだと、童磨の血鬼術は氷系なのか。
……だとすれば、ぶっちゃけ俺との相性は最悪だな。
いやまぁ、普通に考えれば氷と炎なら氷の方が有利に思えるだろう。
だが、俺の白炎は普通の炎ではない。
童磨の血鬼術で生み出された氷が、具体的にどのくらいの威力になるのかは、正直なところ分からない。
それでも客観的に見た場合、俺の白炎を氷の血鬼術でどうにか出来るとは思えなかった。
それこそ、俺が本気になれば血鬼術で生み出された氷を全て溶かし、蒸発させるといった真似もそう難しいことではないだろう。
「ふんっ!」
正面から童磨に向かうのが危険だと判断したのだろう。
狛治は地面を蹴って跳躍し……次の瞬間には翼を羽ばたかせて強引に跳躍の方向を変え、半ば三角跳びに近い形で童磨に襲い掛かる。
そんな狛治に対し、童磨は素早く後方に跳躍しながら扇を振るう。
「血鬼術、冬ざれ氷柱」
その血鬼術により、上空に巨大な氷柱が生み出され、降り注ぐ。
その殆どが狛治に向かって降り注いでくるが。その中の1本が俺に向かって来た。
偶然そのような形になった……訳ではなく、明らかに意図があっての行動だろう。
俺に対しての挑発に対して起こした行動は……白炎を生み出し、瞬時に氷柱を消滅させるというものだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730