俺と狛治の2人は、刀鍛冶の里の中を移動する。
本来なら上弦の弐である童磨をこの場で仕留めたかったのだが……まぁ、狛治と何らかの因縁がある筈であり、それを思えば俺が横から取るのもどうかと思ったが。
そして実際、童磨との戦いの中で狛治は新しい力……角から電撃を放つという力を手に入れた。
正確には力を手に入れたというよりは、俺の血を飲んだ影響で得た力を発動させられるようになった、というのが正しいのだが。
そんな訳で、今はまず戦いの気配のある場所に向かった方がいいと判断し、移動中だった。
「それで、どこに向かう? 俺が聞いた話だと、里の中心に近い場所で戦っているのは上弦の肆の半天狗。里の端の方で戦っているのが、上弦の伍の玉壺だ」
狛治を仲間にした事で、こうして敵の情報を素早く入手出来るというのは大きいよな。
とはいえ、問題なのはどっちに行くかだが。
取りあえず雑魚鬼の方は気にしなくてもいいとして……どっちに、こちらの戦力がどれだけ行ってるかだよな。
取りあえず上弦の鬼をどうにかするように対処する必要がある。
……だとすれば、本来なら俺と狛治は別行動の方がいいんだろうが。
戦力の分散というのは、ある意味で愚策だ。
しかし、分散した戦力が双方共に大きな力を持っているのなら、分散するのは悪い話ではない。
だが……それでも、戦力の分散はしない方がいいのは間違いなかった。
この場合、問題になるのは狛治の外見だ。
翼と角が生えたとはいえ、外見そのものは鬼だった頃とそう違っていない。
つまり、鬼だった頃の姿を知ってる者が狛治を見れば、敵だと認識してもおかしくはない。
汽車の一件で炭治郎達が遭遇してるし、それ以外にも遊郭の一件で俺と戦っているのだから、見覚えのある奴も多いだろう。
いや、鬼だった頃の狛治を知らなくても、今の狛治を見れば鬼であると認識してもおかしくはない。
角が伸びているのが、より鬼らしいしな。
「どっちの方が厄介だ?」
狛治は鬼だった頃、上弦の参だった。
それはつまり、上弦の肆と伍の能力を知っていてもおかしくはない。
勿論、能力に関しては奥の手を隠しているといったような事はあるかもしれないが、通常の能力を知っているのは間違い。
「アクセルとの相性がいいのは、玉壺だろうな。玉壺は基本的に水を使う。炎を使うアクセルにとっては、かなり戦いやすい相手だ」
「水であれば、そうだろうな。なら、そっちに行った方がいいのか? ……半天狗とかいうのは、どうだ?」
「戦うという意味では、かなり厄介だと思う。半天狗は、自分が危なくなれば自分の分身を生み出す。その分身はかなりの強さを持つから、戦うには厄介だ」
さて、そうなるとどっちと戦うべきか。
俺と相性のいい玉壺の方に向かって、素早く倒し、それから半天狗の方に向かえばいいのか?
それとも、倒すのが厄介な半天狗の方に最初に向かえばいいのか。
正直、悩む。
「半天狗の方が厄介だという事は、やっぱりそっちを倒した方がいいのか」
「玉壺の方も厄介ではあるがな。壺から壺に移動する能力を持っているから、倒すのはそれなりに難しいと思う」
「……壺?」
そう言えば玉壺というのも名前に壺の字が入ってるな。
そして鬼で壺となると、どうしても思い浮かぶのは貿易商が売っていた壺だろう。
その壺を売った金が鬼にとっての活動資金となっているのなら、そっちを確実に仕留めた方がいい。
「よし、ならまずは玉壺の方に向かうぞ」
「分かった」
狛治は素直に俺の言葉に従う。
狛治にしてみれば、玉壺と半天狗のどちらと戦うのでもいいのだろう。
あるいは鬼だった時なら、仲間と戦う事を拒否したかもしれないが……いや、ないな。
鬼だった時も、狛治はかなりの戦闘狂だった。
それこそ自分が強くなる為なら、俺を利用するといったようなことをしてもおかしくないくらいに。
だからこそ、俺が玉壺を倒しに行くといったような事を言っても、こうして素直に従ったのだろう。
「急ぐから、空を飛んでいくぞ。その翼は自由に使えるか?」
「まだ完全ではないが」
「取りあえず俺に追い付けなかったら、後から来ればいい。今はまず玉壺を倒す方が先決だからな」
そう言うと、混沌精霊の力を使って空中に浮かぶ。
狛治もまた、翼を羽ばたかせて空中に浮かび上がる。
童磨との戦いではそれなりに翼を使っていたものの、それでもやはりまだ扱いに慣れてはいない。
これだと、恐らく俺が飛んでも追い付いてくるのは難しいな。
俺と狛治が別行動を取るのは危険なのだが、俺のすぐ後を追い掛けてくるのなら、多分そこまで問題はない……筈。
狛治の能力を考えれば、そう遠くないうちに翼を使いこなせるだろうが。
「じゃあ……行くぞ」
そう言うと、俺は空を飛んで移動を始める。
向かうのは、刀鍛冶の里の中でも端の方にある場所。
そこでは明らかに大きな戦いが起きていた。
空を飛び、そちらに向かう。
瞬く間に周囲の景色が流れていき……同時に、当然ながら狛治も置いてきぼりとなる。
そうして到着した場所では、玉壺と無一郎、五飛、獪岳の3人が戦っていた。
……しまったな。柱の無一郎がこっちにいたという事は、半天狗と戦っているのは炭治郎、善逸、伊之助……後は禰豆子もか?
とにかく、炭治郎達はエヴァとかの訓練によってかなり実力を上げているので、一方的にやられるという事はないと思うが、それでも狛治にして厄介な能力だと言う半天狗の相手は厳しいかもしれない。
ああ、炭治郎達の方には玄弥もいるかもしれないな。
ただ……玄弥が具体的にどのくらいの実力を持っているのか、俺は知らない。
しかし、エヴァの特訓を受けている炭治郎達と比べて勝ってるという事はないだろう。
だとすれば、やはり半天狗の方に向かった方が……いや、俺がここで玉壺を倒し、出来るだけ素早く向こうに行けばいいのか。
そう考え、水を使って3人を相手にしている玉壺に向かい……虚空瞬動を使って一気に間合いを詰めると、その身体を殴る。
「おぐぁっ!」
そんな悲鳴を上げつつ、吹き飛ぶ玉壺。
だが、今は咄嗟に自分から飛んで衝撃を殺したな。
「アクセル!?」
突然姿を現した俺を見て、五飛の口から驚きの声が上がる。
五飛にしてみれば、まさかここで俺が姿を現すとは思っていなかったのだろう。
「どうした? 玉壺はそこまで強い相手ではないぞ? これだけの戦力が集まってるのなら……うん?」
そう言いながら周囲の様子を見ていると、ふと違和感に気が付く。
それは、無一郎の顔に何らかの痣のようなものが広がっていたのだ。
それはまるで炭治郎の顔にある痣のような……それとはまた違うような、そんな痣だ。
「あの小屋を守りながら戦う必要があるからな。こちらが隙を見せると、あの小屋に……ちぃっ!」
五飛が説明の途中で吹き飛んでいった方向から、魚……魚? 腕が生えているのを魚と呼んでもいいのかどうかは微妙だが、とにかくそんな魚が多数飛んできたのを見て、五飛が青竜刀型の日輪刀を振るって倒す。
獪岳もまた、日輪刀を使って魚を倒していく。
そして驚いたのは、無一郎だ。
その手が握っている日輪刀の刀身は、赤く変わっていた。
赫刀だ。
赫刀? 何で無一郎が赫刀を使える?
以前赫刀の存在が認識されたとき、柱の中でも力では最強クラスの蜜璃に日輪刀を思い切り握って貰った。
だが、そんな蜜璃が握っても赫刀は発現しなかった。
だからこそ、俺はてっきり赫刀というのはもしかしたら鬼滅世界の人間には発現出来ないのかもしれないとすら思っていた。
しかし、現在俺の視線の先で無一郎は間違いなく赫刀を発動して、魚……金魚に近い外見をしている魚を、次から次に斬り裂いている。
それを見れば、とてもではないがその赫刀が偽物だとは思えない。
……まぁ、わざわざ赫刀の偽物を用意しても、その意味はないのだろうが。
考えられるとすれば、やはり赫刀の正体は無一郎の顔に出ている痣だろう。
その痣がどういうものなのかは、正直なところ分からない。
しかし、それでも赫刀の理由となっているのは痣くらいしか思いつかないのは間違いなかった。
もっとも、今は痣がどうとか考えるよりも前に、玉壺をどうにかする必要がある。
俺の一撃によって吹き飛ばされたのを、寧ろ間合いを詰める好機として多数の魚を放ってくるのだから。
恐らくこの魚は血鬼術によるものだろう。
それは分かるが、厄介なのは間違いない。
とはいえ……数で攻めてくるのなら、こちらも同様に数で攻めればいい。
五飛や獪岳の側まで移動すると、俺は指を鳴らす。
同時に俺の腕が白炎と化し……その白炎から、多数の炎獣が生み出された。
犬や猫といった小型の炎獣から、獅子や虎といった大型の炎獣。
中にはペガサスやグリフォンといったようなファンタジーの世界にしか存在しないようなモンスターのような炎獣もいる。
そんな無数の炎獣は、一斉に魚に向かって襲い掛かった。
相手が無数の魚なら、こっちは無数の炎獣で攻めればいい。
そんな俺の予想は正しく、魚は炎獣によって一方的に蹂躙されていく。
小さな炎獣……それこそリスとかそういう炎獣であっても、その身体は俺の白炎によって生み出されているのだ。
そうである以上、上弦の鬼の血鬼術によって生み出された存在であっても、そう簡単に負けるという事はない。
「これは……」
あまりに一方的な光景に驚きの声を上げる五飛。
そんな五飛に対し、俺は疑問を口にする。
「それで、その小屋を守れという話だったが、何でその小屋を守るんだ? 小屋の中に何か重要な代物があるのなら、それをさっさと持ち出した方がいいと思うが」
「持ち出せないから困っている。鋼鐵塚とかいう刀鍛冶が、この中で日輪刀を研いでいる」
「……ああ、なるほど」
その言葉を聞いて、人形の中にあった日輪刀を鋼鐵塚が一族に伝わる研磨術で研ぐと言っていたのを思い出す。
思い出すが……それなら別に、こんな場所で研ぐ必要はないと思うんだが。
いやまぁ、もし鋼鐵塚がここにいなければ、玉壺は刀鍛冶の里に下りてきて、半天狗と同じく暴れていたのだろうから……そういう意味では、意外と悪くない選択だったのか?
「それで、その研磨術をやってるから、鋼鐵塚を動かすことは出来ないと。そういう事なのか?」
「そうらしい。その為に、ここで守る必要がある。向こうの鬼はそれを知った上で、小屋に攻撃しようとしている。俺達がそれを守らなければならないと知った上でな」
「……なるほど」
こうして話を聞いた感じ、玉壺も童磨と同じく血鬼術メインの戦い方をしているのだろう。
勿論、童磨よりも序列が下だという事は、童磨よりも弱いのだろうが。
「それで……これは戦いが終わってから聞いた方がいいのかもしれないが、それでも気になったから尋ねるが、その痣は何だ? 赫刀を使えているのはその痣のおかげらしいが」
「知らないよ。戦いの中で自然と出て来たんだ。色々と思うところはあったけど」
実施に口にはしないものの、無一郎はどこか変わったように思える。
具体的にどこがどう変わったのかというのは、生憎と俺にも分からないが。
ただ、それでも無一郎にとって決して悪い事ではないのだろう。
「話は分かった。……で、どうする? 玉壺にとって俺は相性が最悪の相手だ。俺が倒してもいいのなら、倒してしまうが」
「待ってくれ」
俺の言葉にそう待ったを掛けてきたのは、無一郎……ではなく、五飛。
ただし、五飛だけではなく獪岳も俺に向かって五飛と同じような表情を浮かべていた。
「お前達が戦うと?」
「そうだ」
「……お前達が知ってるかどうかは分からないが、現在刀鍛冶の里は他にも鬼の襲撃を受けている。上弦の弐は俺が……正確には狛治が追い返したが、まだ玉壺以外に半天狗という上弦の鬼がいる」
唐突に出て来た狛治という名前に、一体誰だそれは? といった視線を向ける五飛や獪岳、そして無一郎。
狛治については、追い付いてきてから説明すればいいだろう。
ちなみに狛治は俺の召喚獣である以上、狛治の手柄は俺の手柄……というのは、そこまで間違ってはいないと思う。
とはいえ、それをやりすぎると面倒な事になりそうだが。
「ともあれ、まだ最低でも一匹……いや上弦の鬼以外にも雑魚の鬼が結構な数襲ってきている。そっちの対処も考えると、玉壺を倒すのにそこまで時間を使っていられないぞ」
そう言うと、五飛と獪岳の2人は真剣な表情で頷く。
今の状況を思えば、多分俺がとっとと玉壺を倒して半天狗のいる場所に向かった方がいいんだが……あるいは、雑魚鬼を倒しに向かってもいいのか?
ともあれ、五飛と獪岳の成長の為にも、ここで玉壺の相手は任せようと判断する。
柱の無一郎も、顔に痣が出た影響か赫刀を使えるようになり、それで大きな戦力として考える事が出来るようになったし……取りあえず、ここは任せた方がいいだろう。
「分かった。なら、小屋は俺が炎獣で守らせる。お前達は出来るだけ早く玉壺を倒せ」
狛治がここに到着するまでに戦いの決着がつけばいいんだが。
そう思いながら、俺はこの場の戦いは五飛達に任せるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730