「じゃあ、そんな訳で分身の相手は頼む」
未だに炎獣によって攻撃され、それに対処している関係でこちらには手を出す事が出来ない半天狗の分身を見て、そう告げる。
半天狗の分身は木で出来た龍を何匹も出しては、炎獣に対処しようとしているのだが……そもそも、木を使う半天狗の分身と炎獣という意味で、相性が悪い。
あるいは炎獣を構成しているのが普通の炎なら、もしかしたら木龍でも何とかなったのかもしれないが……生憎と炎獣を構成しているのは、俺の白炎だ。
血鬼術で生み出されたのだろう木龍と、俺の白炎で生み出された炎獣。
そのどちらが強いのかは、今のこの状況がはっきりと示していた。
……それこそ、俺がもっと炎獣を生み出せば半天狗の分身を倒す、もしくは本体を倒すまで足止め出来るのでは? といったように思わないでもなかったが。
ただ、それでも未だに炭治郎達が本体を倒すことが出来ていないのなら、そっちに回った方がいい。
炭治郎達の実戦経験を増すという意味では、もしかしたらここでちょっかいを出さない方がいいのかもしれないが。
いや、そうだな。様子を見に行って、本当にどうしようもない場合は、こっちで対処するとしよう。
出来れば炭治郎達で倒して貰う必要がある。
ただし、本当に炭治郎達に実戦経験が必要なのか? という疑問がない訳でもない。
何しろ、恐らく……本当に恐らくだが、この世界の原作は既に最終盤と言ってもいい筈だ。
何しろ下弦の鬼は全滅し、上弦の鬼も残っているのは半天狗と童磨、それと上弦の壱の3匹だけ。
その半天狗も今日ここで死ぬ事になる以上、残りの上弦の鬼は2匹だけとなる。
ただし、十二鬼月の中でも上弦の壱と弐という意味では、鬼舞辻無惨以外の最強の2匹が生き残ったという事になるのだが。
そんな訳で、もう最終盤になっている可能性が高い以上、炭治郎を鍛えるよりもさっさと終わらせた方がいいのでは? という思いがある。
もっとも、この世界の原作のラスボスが鬼舞辻無惨とは限らない。
実は鬼舞辻無惨以外にも鬼の祖とも言うべき存在がいて、そいつが次のラスボスとして姿を現す可能性も否定は出来なかった。
もしくは、鬼舞辻無惨は四天王の中で最弱……とか、そんな流れになる可能性は……さすがにないか。
「ともあれ、俺はもう行くから半天狗の本体を倒すまではここであの分身を相手に時間稼ぎをしていてくれ」
「時間稼ぎか。それは分かった。だが……倒してしまってもいいのだろう?」
狛治の口から出たその言葉に、ふと既視感を抱く。
とはいえ、今はまず出来るだけ早く半天狗の本体がいる方に行くのが先決か。
「ああ、倒せるのなら倒してもいい。とはいえ、分身が倒された時にどうなるのかは、俺にも分からないが」
分身が死ねば、そのまま消滅するのか。
もしくは本体の半天狗に戻るのか。
その辺りについては、生憎と俺も詳しくはない。
しかし、今の状況を考えると半天狗が追い詰められているのは間違いない以上、倒せるのなら倒してしまった方がいいのは間違いなかった。
「蜜璃にも、少し無理をさせるけど、あの分身の相手を頼むな」
「ええ、任せて下さい!」
先程狛治に守られると言ってきゃーきゃー騒いでいたとは思えないくらい、真剣に蜜璃は頷く。
蜜璃にしてみれば、自分が鬼殺隊の隊員であるというのは十分に理解しているのだろう。
そういう意味では、蜜璃はやはり頼れる存在なのは間違いない。
「じゃあ、任せた」
そう言い、俺は空中に浮かぶ。
最後の土産として、炎獣と戦っている木龍に向かって白炎を放つ。
数匹の木龍が白炎によって瞬時に灰と化し、その隙を突くかのように炎獣が半天狗の分身に向かって突っ込んでいく。
それを見ながら、俺はその場から離れる。
向かうのは、半天狗の本体が逃げている場所。
炭治郎達が追っている場所なので、現在進行形で攻撃が行われているので、すぐに見つける事が出来た。
見る限りでは、やはり炭治郎、善逸、伊之助、禰豆子……そして玄弥も合流してるらしい。
何だかんだとこんな人数に攻撃されているのに、まだ死んでいないというのは、半天狗の強さを示していた。
そんな中で、やがて地上にいる炭治郎を見つけて降りていく。
「炭治郎!」
「アクセルさん!? 何でここに!?」
俺が近付いて来るのは、嗅覚で察知していたのだろう。
それでもやはりここにいる俺の姿に驚きを見せていた。
「残っている上弦の鬼は半天狗だけだからな」
「えええええ!? ちょ、先生!? もしかしてあれ以外にも上弦の鬼がいたんですか!?」
炭治郎の隣を走っていた善逸が、俺の言葉を聞いて驚きを露わにして叫ぶ。
「ああ。今回この刀鍛冶の里に襲撃してきた鬼は全部で4匹。それも全て上弦の鬼だ。数合わせの雑魚鬼は抜いてな」
そんな俺の言葉を聞いて、善逸は心の底から嫌そうな表情を浮かべる。
遊郭の一件では、上弦の陸を相手にしただけで、あそこまで戦力が必要だったのだ。
今回は上弦の鬼が4匹という事で、規模は4倍だ。
それを思えば、善逸がこういう表情を浮かべるのも理解出来た。
理解は出来たが……だが、だからといって先程の俺の言葉を忘れられては困る。
「安心しろ。さっきも言ったが、もうここに残っている上弦の鬼はあの半天狗だけだ。それ以外は問題ない」
実際には、残り3匹の上弦の鬼のうち、倒したのは1匹で、1匹は逃がし、1匹は俺の召喚獣となったのだが。
そういう意味では、今回の一件ってそこまで褒められた結果ではないよな。
いやまぁ、狛治を召喚獣にしたというのは、鬼の情報を得られるという意味で非常に大きな意味を持つが。
何しろ、まさか汽車で炭治郎達が倒した下弦の壱以外の下弦の鬼の生き残りは、その全てが鬼柱である鬼舞辻無惨によって殺されていたというのは、全く予想外だったし。
やっぱり鬼柱は凄いよな。将来的には倒すけど。
「そ、そうなんですか。……よかったぁ……」
心の底から安堵した様子を見せる善逸。
そんな善逸を見ながら、他の面々に視線を向ける。
「あの逃げている半天狗の前には俺が回り込む。お前達は後ろから逃げないようにしてくれ」
そんな俺の言葉に、話を聞いていた伊之助が大きく手を上げる。
「うおおおおっ! 任せろ! 猪突猛進、猪突猛進、猪突猛進!」
うん、この様子を見る限りでは伊之助に任せておけば安心出来そうだな。
伊之助は純粋な剣士としてはかなりの力を持ってるし。
禰豆子の方は、いつものようにむーむー言っているが、玄弥の方は俺を見ても小さく頭を下げるだけだ。
取りあえずこの様子を見る限りでは半天狗への攻撃を任せておけばいいか。
そう判断すると、俺は前を進む半天狗に向かう。
半天狗の走る速度もかなり速いのは間違いない。
だが……それでも、空を飛ぶ俺から逃げるような真似は出来ない。
そうして半天狗の上に行くと、即座に腕を大きく振るう。
瞬間、半天狗の進行方向に白炎の壁が生み出される。
「おっと、そこまでだ。もう残っているのはお前だけだ」
「ぐ……」
さすがに半天狗も逃げる為に白炎の壁に突っ込むといった真似は出来なかったらしい。
急いで動きを止めて別の場所に逃げようとするものの、生憎と半天狗の周囲は後ろ以外全て白炎で包まれている。
それ以外で逃げる場所となれば……
「そう来るよな。けど、逃がすと思うか?」
後ろからは炭治郎達。
前と横は白炎の壁。
そんな状況で逃げられる場所というのは、当然ながら限られている。
そう、空中。
半天狗は、分身こそ強いものの、本体は決して強くはない。
だが、それはあくまでも上弦の鬼、あるいは下弦の鬼も含めた十二鬼月全体での話であって、普通の雑魚鬼と同等か、あるいはそれ以上の身体能力は持っている。
それを示すかのように、炭治郎達が追っても追いつけない……どころか、その差は開くばかりだった。
それだけの足の速さを持っている以上、当然ながら脚力は高く、跳躍力もまた戦い。
……もしかしたら、本当にもしかしたらだが、何らかの血鬼術を使って地面を移動するとか、そういう手段で逃げる可能性もあったが。
以前ちょっと炭治郎に聞いたのだが、炭治郎が戦った鬼の中には土の中を移動出来る鬼もいたらしい。
実際には血鬼術で作った異空間的な場所を移動していたのであって、地中を移動していた訳ではないらしいが。
とにかく、半天狗に地中を移動する方法はなかったので、跳躍してきたその姿に白炎を叩き付ける。
「がああああああああああああっ!」
白炎に包まれ、地面を転げ回る半天狗。
日輪刀で首を切断しなければ死なない鬼だが、それ以外にも鬼を殺す方法はある。
それが、俺の持つ宝具であったり、魔法であったり……そして俺の魔力によって生み出された白炎であったりする。
そうして地面を転げ回っている半天狗だったが、やがて動きを止め……
「違います、アクセルさん! そいつも分身です! 半天狗の本体は、その分身の心臓がある場所に潜んでいます!」
追い付いてきた炭治郎が、白炎に包まれた半天狗……その分身を見て、そう叫ぶ。
するとそんな炭治郎の声が聞こえたかのように――実際に聞こえたのだろうが――地面を転がっていた半天狗の分身した身体の中から小さな鬼が姿を現し……
「死ね」
その言葉と共に、その小さな鬼は瞬時に白炎によって燃やされ……そして、死ぬ。
一応ということでステータスを確認してみると、撃墜数の数字はきちんと1上がっていた。
半天狗のように、分身に分身を重ねてどれが本物なのか分からないような、そんな敵を相手にした場合、撃墜数を確認出来るというのは大きいよな。
……木の龍を使っていた分身の完成度というか、意思の強さを考えれば、もしかしたら分身を殺しても撃墜数が上がる……いや、ないな。
実際に本体が隠れていた分身はもう白炎によって炭と化しているが、撃墜数は変わってないし。
「むー? むー! むー!」
と、不意に禰豆子が俺の側にやってくると、不思議そうに何かを尋ねてくる。
その言葉がいつものように『むー』だけなので何を聞きたいのかは分からないが。
「その……先生。今ので本当に終わったんですか?」
禰豆子の言葉の通訳という訳でもないだろうが、そんな風に善逸が尋ねてくる。
善逸にしてみれば、あっさりと終わったのが信じられなかったのだろう。
「ああ、終わった。半天狗……お前達が戦っていた上弦の肆は死んだ」
そう言いながら、そう言えば木の龍を使う分身のところに残してきた蜜璃と狛治はどうなったんだ? と疑問に思う。
本体が死んだ以上、分身も当然のように死ぬ……いや、消える? とにかくいなくなってもおかしくはないのだが、それでも上弦の肆である半天狗の血鬼術だと考えると、もしかしたら本体が死んでも分身だけが生き残っていたりはしないよな?
そんな不安を感じていると、玄弥の唖然とした視線に気が付く。
「どうした?」
「いえ、俺達があれだけ苦戦していたのに……まさか、こうもあっさりと倒すとは思わなかったので」
なるほど。玄弥達が何人もで戦って、それでも勝てなかった相手を俺はあっさりと殺した。
それが玄弥にとっては理解不能な驚きだったのだろう。
「これは慰めとかそういうつもりで言う訳じゃないが、俺がここにやって来た時は、既に半天狗はかなり追い詰められて逃げていた。そんな状況だった以上、俺が倒せたのはそんなにおかしな話ではないだろ」
実際、あの木龍を使っている分身は、分身ではあったがかなりの強さだった。
「あるいは、あの小さい本体にはまだ何らかの奥の手があった可能性があるが……奥の手だろうとなんだろうと、出させないままに殺してしまえばいい」
当たらなければどうという事はない……ってのは誰の言葉だったか。
それとは少し違うか、奥の手を持っていても使わせる前に殺してしまえばどうという事はないって感じか?
「そう、ですか」
玄弥は俺の言葉に完全に納得した様子ではなかったが、それでもそう言う。
実は手柄を求めるような性格だったのか?
実弥の弟……かどうかは分からないが、血縁なのは多分間違いないだろうし、その関係か?
「ともあれ、この鬼を倒したことで刀鍛冶の里に来た上弦の鬼は全て対処した。後は……そう言えば、雑魚鬼も結構来たみたいだけど、そっちはどうなったんだ?」
雑魚鬼と口にしてはいるが、それはあくまでも俺から見た場合の認識だ。
雑魚鬼とはいえ、鬼である以上は人間以上の身体能力を持っており、中には当然ながら血鬼術を使える者もいるのだろう。
鬼殺隊の剣士が護衛としてここにはいるらしいが、そういう連中ではなく刀鍛冶がそういう雑魚鬼と遭遇すれば……それがどうなるのかは考えるまでもないだろう。
そんな疑問を抱く俺だったが、やがて集まってきた刀鍛冶達から話を聞く限り、最初は刀鍛冶の里にいる鬼殺隊の剣士達が何とか雑魚鬼達を防いでいたようだったが、玉壺の件が終わって自由になった五飛と獪岳の2人が揃って雑魚鬼を退治していったと聞き、納得すると同時に安堵するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731