「これが……ホワイトスター……アクセルの故郷……」
呆然とした様子で呟く狛治。
その視線は、ホワイトスターにある交流区画に向けられていた。
一体何がどうなっているのか、今の状況を狛治には分かっていないのだろう。
大正時代……いや、狛治の場合は江戸時代に鬼になり、それからは修行とかを行うことはあっても、街中に出るといったようなことは基本的になかったのだから。
それを思えば、現在狛治の目の前に広がっている光景は全く理解出来ないような未知の光景でしかない。
「そうだな。ここが俺の故郷のホワイトスターだ」
正確には故郷という表現が相応しいのかどうかは、俺には分からない。
故郷という意味では、それこそ俺が生まれた世界を示してもおかしくはないのだから。
しかし、故郷かどうかは別として、レモンを始めとした俺の恋人達がいて、それ以外にもシャドウミラーの人員がいるのを考えると、このホワイトスターが俺の帰るべき場所というのは間違いない。
「世の中は、これだけ凄くなるのか」
「鬼滅世界と比べれば、発展してるだろうな。ただ……正直な話、発展度合いという意味ではここ以上の場所もあったりする」
ホワイトスターの中は、当然だが限られた空間だ。
そうである以上、一般的な高さのビルの類は用意されているものの。超高層ビルといったような、100階、200階、300階といったような高層建築物はない。
……そもそも、ホワイトスターで暮らしているシャドウミラーの面々はそう人数が多くないし、他の世界からやってくる者達を含めても、交流区画が1つあれば基本的にそれで問題はない。
メギロートを始めとした無人機や量産型Wの類は、待機場所がきちんと用意されてるし。
そういう意味では、人口密度そのものは結構低かったりする。
「そうだな……最初に政治班のところに顔を出そうかと思っていたんだが、超包子にでも行ってみるか? 腹も減ってるんじゃないか?」
鬼だったときは、人を食うことでしか腹を満たす事は出来なかった。
いやまぁ、俺と接触したことによって他の世界の料理を食べられるようになったのは間違いないが。
しかし、今の狛治は鬼ではなく召喚獣だ。
それこそ、その気になれば鬼滅世界の料理であっても普通に食べられる。
「そうだな。そうしてくれると助かる。だが……随分と注目されてるようだが、いいのか?」
狛治は上半身裸で、翼と角が生えている。
身体には入れ墨のような模様があるので、上半身が裸でもそこまで騒動になったりはしないんだろうが……それでも、今の状況を思えば注目を集めるのは当然の話だった。
「最初のうちだけだ。そのうち、すぐに慣れる」
これは狛治に気を遣って言った訳ではなく、本心からの言葉だ。
何しろホワイトスターには、エルフやワイバーンが普通にいる。
それだけではなく、ネギま世界から来た魔法使いや、マクロス世界からきた異星人もいるのだ。
それに頻繁に技術班とエキドナ達が虚空瞬動とかを使って騒動を起こしたりもしている。
そんな状況だけに、羽や角が生えている程度では最初こそ目立つが、すぐに慣れてしまうだろう。
とはいえ、それはあくまでもホワイトスターでの話だ。
他の世界に行けば、狛治は思い切り目立つ。
それこそシャドウミラーの存在が公になっていないような場所では、何らかの研究機関に捕らえられてもおかしくはなかった。
もっとも、今の狛治がそう簡単に捕らえられるかどうかと言われれば、微妙だが。
周囲にいる者達の注目を浴びながら、俺と狛治は超包子に入る。
超包子は、朝から開いている。
実際に超包子で朝食を食べてから仕事に行くという者もそれなりに多い。
とはいえ、今はもうそんな朝の忙しい時間は終わったので、超包子の中に客の姿は決して多くなかった。
「あら? アクセル? そっちは……えっと、誰?」
今日は超包子でウェイトレスをしていたのか、明日菜が俺を見てそんな風に言ってくる。
そして明日菜と同様に超包子でウェイトレスをしているステラの姿もあった。
そのステラは、狛治を見て興味津々といった様子を見せている。
「狛治だ。鬼滅世界出身で、俺と召喚の契約をした」
「え……召喚の契約って、アクセルの血を飲むんでしょ? エヴァちゃんでも、アクセルの血はそのまま飲めなかったのに……その、大丈夫?」
俺の血を何だと思っているのか、明日菜は狛治に向かってそう尋ねる。
失礼な。
そう思ったが、実際に俺の血に含まれている魔力の濃密さを考えると、反論は出来ないんだよな。
「あ、ああ。問題はない。ちょっと翼や角が生えてきた程度だ」
「それで問題はないというのは、どうかと思うけど」
戸惑ったように言う狛治に、明日菜は呆れたように言う。
そしてどこか責める視線を俺に向けてきた。
「アクセル、人を召喚獣にするのはどうかと思うわよ?」
「一応言っておくけど、狛治は元人間じゃなくて、元鬼だぞ? まぁ、鬼になる前は人間だったから、正確には元人間なのかもしれないけど」
「え? ……鬼?」
戸惑った視線を狛治に向ける明日菜。
それでいながら、さりげなくステラを庇う位置取りをする。
後輩を守る為に行動したのだろう。
「安心しろ。狛治は鬼だったが、今はもう鬼じゃない。また、鬼だった時に人を食ったのは間違いないが、それでも最低限だった珍しい鬼だ」
この説明は間違っていない。
しかし、それはあくまでも俺の……鬼滅世界の事情を知っている者としての意見だ。
鬼滅世界についての情報を知っていても、実際に鬼滅世界で行動していた訳ではない明日菜にしてみれば、あまり食っていないとはいえ、人を食っていたのは間違いのない事実である以上はそう簡単に狛治に気を許す真似は出来ないらしい。
「そう。でも……ごめんなさい。すぐに受け入れるような事は出来ないわ」
「構わん。俺が鬼だったのは間違いのない事実だ。これからアクセルの仲間に認められるように行動していくとしよう」
狛治にとって、自分がすぐに受け入れられるとは思っていなかったのだろう。
そういう意味では、俺もちょっと見通しが甘かったのかもしれない。
とはいえ、狛治が言ってるようにこれからの行動で認めさせるといったような真似をするしかないのだろうが。
「そう……まだ貴方のことを完全に信じる事は出来ないけど、それでも信じることが出来るように願っているわ」
明日菜はそう言って、取り合えずこの件については一段落したと判断したのだろう。
やがて話題を移す。
「それで、超包子に来たという事は、ご飯よね? 朝食だと……中華粥とか人気が高いわよ」
「中華粥……?」
狛治にしてみれば、中華粥というのは初めて聞く料理なのだろう。
江戸時代に生きていた狛治にしてみれば、当時の料理くらいしか分からなかっただろう。
江戸時代に白米を食うといったことは、結構な贅沢だった筈だ。
今なら精米とかは機械であっという間に出来るのだが。
「中華粥というのは……そうね。普通のお粥と違って病人食じゃなくて、しっかりとした料理の一種ね」
明日菜は狛治の言葉で中華粥という料理がどういうものだったのかは分からなかったらしく、そんな風に説明する。
俺が知ってる限りだと、日本のお粥は多めの水で炊いて、食べる時に梅干しとか入れるような、明日菜が言う病人食だ。
それと比べると、中華粥というのが鶏ガラとかの出汁で、肉や魚と一緒に炊き上げるお粥で、トッピングの具も冷やし中華的感じでバリエーション豊かだ。
明日菜が言った通り、病人食ではなく普通の料理として食べられる、そんな料理。
「四葉が作る中華粥か。なら、それを2つ頼む」
「……2つで足りるの?」
明日菜が呆れの視線を俺に向けてくる。
その視線の意味は明らかだ。
何だかんだと、俺と明日菜の付き合いは長い。
それだけに、明日菜は俺が大食いだという事を理解しているのだろう。
大食いというか、俺がその気になれば文字通りの意味で無限に食べ続ける事が可能なんだよな。
何しろ腹の中に入ると、すぐに魔力として吸収されてしまうのだから。
「そうだな。じゃあ俺には4人分、狛治は……どうする?」
鬼だった頃は、俺が渡した料理をそれなりに食べていたが、鬼ではなく召喚獣となった今となっては、正直なところどれくらい食べるのかというのは分からない。
狛治も現在の自分がどれくらい食べられるのかは分からないらしく、少し迷った後で口を開く。
「じゃあ、2人分頼む」
そう告げるが、その言葉は間違っていないだろう。
2人分なら、少し無理をすれば食べられるくらいだし。
……まぁ、本当にどうしようもなくなったら俺が食えばいいだけなんだから、狛治も俺と同じ注文をしてもおかしくはないのだが。
「分かったわ。ステラ、厨房に行きましょう」
そう言い、明日菜はステラを連れて厨房に向かう。
注文を伝えるだけなら、明日菜だけでも問題はない。
それでもステラを連れていったのは……つまり、そういう事なのだろう。
「迷惑を掛けるな」
「気にするな。とはいえ、最初のうちは明日菜のような対応をする奴がいるというのも覚悟しておけ。お前が言ったように、これからの行動によって評判を覆していけばいい」
そう言うが、正直なところここまで狛治が警戒されるとは思っていなかった。
まぁ、俺の場合は狛治と前から付き合いがあり、拳で分かり合ってきた仲だから、そこまで気にしていなかったのだが……それはあくまでも俺だからの話であって、他の奴にしてみれば全く違う対応になってもおかしくはない。
エヴァ辺りなら、吸血鬼として狛治ともそれなりに友好的にやれるかもしれないが。
それに狛治は江戸時代を実際に生きてきた者だ。
日本文化に興味津々のエヴァにしてみれば、江戸時代を知っている狛治にはつれない対応をしないと思う。
……もっとも、江戸時代を生きた事は事実だが、エヴァが好むような文化を体験出来たかと言われると、それは微妙なところだが。
それでも一般常識とかそういうのは、それなりに知ってるから……多分大丈夫だと思いたい。
「それで……いや、まずは料理を食ってからにするか」
厨房の方から漂ってきた匂いに、狛治はどこか落ち着かない様子を見せる。
俺と戦った後で料理とかを渡していたのは間違いないが、その時に渡していたのは基本的にスーパーやコンビニで買えるようなのだったからな。
勿論、日本のスーパーやコンビニで売ってる料理というのは、非常にレベルが高い。
噂では、カップラーメンの類は下手な店の料理より美味いとか、普通にあるらしいし。
だが……この超包子を任されている四葉は、下手な料理人という表現は全く相応しくない女だ。
勿論、全ての世界で最高の料理人……とまではいかないが、それでも全ての世界を合わせても上位に位置する腕前を持つ料理人なのは間違いないと思う。
そんな四葉が作る料理である以上、それが美味いのは間違いない。
狛治にしてみれば、そんな料理を食べたいと思うのは当然だろう。
やがて明日菜とステラがそれぞれ中華粥を持ってやって来る。
「トッピングは海鮮系と肉系の2つがあるけど、半々にしておいたけど、それでよかったわよね?」
「ああ、問題ない。狛治も、どうせなら両方を食べ比べしてみたいだろうし」
「そう。じゃあ、ゆっくりとしていってね」
そう言うと、明日菜はステラを連れて店を出ていく。
「嫌われたな」
「いや、そうでもないと思うぞ。明日菜……あっちの大人の女の方は、シャドウミラーの中で生活班という場所に所属していて、これは色々な仕事を任されているんだ。超包子での仕事が終わったから、すぐに次の仕事に向かったんだろ。ステラもいるし」
勿論ステラと狛治を長い間接触させておきたくはなかったというのもあるだろう。
だが同時に、現在明日菜は生活班として働いているステラに仕事を教える必要がある。
そちらを優先したのも、理解出来る話だ。
俺の説明に、狛治は少し迷った様子を見せ……だが、取りあえずは納得したのだろう。
レンゲを使って中華粥を楽しむ。
一口目を食べたその様子は、それこそ圧倒的なまでに美味いといったように目を大きく見開いていた。
俺が最初に狛治に食わせたのは……おにぎりだったか? あれを食べた時と同じような衝撃を受けているのが分かる。
そんな狛治を見ながら、俺も中華粥を口に運ぶ。
うん、文句なく美味い。
それこそ注文したのは4人分だが、これが10人分であっても食べていたいと思うくらいに美味かった。
俺と狛治は中華粥を満足出来るまで食べると、支払いをすませて超包子から出る。
……その際、店から出た狛治を見た通行人な少しだけ驚いた様子を見せていたが……その辺は、そのうち慣れるだろうと思っておく。
「さて、じゃあ次は政治班だな。まずは狛治がホワイトスターで問題なく動けるように登録とかしないといけないし。後は……行動に困ったりしないように、コバッタを案内役としてつけるか」
「任せる」
ホワイトスターの生活に慣れない狛治は、そう言葉を返すのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731