「アクセル、どうするの? 戦いに介入する?」
凛が目の前の光景を見て、そう尋ねてくる。
目の前の光景……しのぶと童磨の戦い。
しのぶは蟲の呼吸を使って童磨との間合いを詰めて攻撃をするのではなく、距離を取って攻撃を続けていた。
狛治からの情報で、童磨は戦いの時に目に見えない程に小さな氷を撒き散らかし、それによって相手の体内にダメージを与えるのを知ってるからだろう。
だからこそ、基本的には距離をとって童磨の使う血鬼術による氷の攻撃を回避し……そして童磨が一瞬でも隙を見せれば、一気に間合いを詰めて攻撃をする。
見た感じでは、童磨に攻撃する際には息を止めて氷を吸い込まないようにしているらしいが、それでも時間が経てば呼吸以外の方法、それこそ耳や目、鼻から小さな氷がしのぶの体内に入ってもおかしくはなかった。
そんなしのぶの戦いを見ていて、ふと疑問を抱く。
攻撃をする際に息を止めて日輪刀で攻撃するのは分かる。
童磨のような相手を攻撃するには、それが最善なのは間違いないだろう。
だが……何故日輪刀での攻撃に拘る?
しのぶは、マリューが作った拳銃と、強化された藤の花の毒を使った弾丸が渡されている筈だ。
そうである以上、今よりもっと有効な攻撃手段はあるのだ。
なのに、何故か日輪刀だけで戦っている。
考えられるとすれば、拳銃を奥の手として考えている事か。
実際、強化された藤の花の毒というのは、童磨にとって……いや、童磨に限らず、鬼にとって致命傷になりかねない。
そんな致命傷の一撃を放つ為に様子を窺っているなら……
「そうだな、介入するか。しのぶには悪いが、まずは童磨を倒すのが先決だ。それこそが今回の襲撃の目的なんだし。……ただ、綾子。お前は戦うのは厳しくなると思うが、構わないか?」
半サーヴァントである綾子の身体は、普通の人間とは比べものにならないくらいに頑丈だ。
そうである以上、童磨の放つ細かな氷を取り込んでも、傷つけることは出来ない可能性が高かった。
だが……それはあくまでも可能性でしかない。
そうである以上、念には念を入れた方がよく、つまりは綾子が攻撃する際にはしのぶがやってるみたいに息を止めて攻撃をするといった方法が必要となる。
「分かっている。攻撃する際は注意するから、安心してくれ。……いざとなったら、レモンに治療して貰うといった方法もあるしな」
「レモンならそのくらいは喜んでやってくれそうだけどな」
レモンにとって、綾子は完全に身内だ。
それだけに綾子の身体に異常があるのなら、しっかりと治療するだろう。
とはいえ、レモンだけにそれを抜きにしても綾子の身体の治療は行っただろうが。
何しろ綾子の身体は半サーヴァントという特殊なものだ。
色々とあってそんな身体になったのだが、もし半サーヴァントの身体構造を量産型Wに使えれば、それは非常に大きな意味を持つ。
まぁ、凛の持つ魔術回路のように劣化した形になるとは思うが。
「前情報にあるように、童磨は氷の血鬼術が得意だ。それによってダメージを受けないように注意しながら攻撃しろ。……まぁ、可能なら、本当に可能ならでいいが、最後の一撃はしのぶに任せてもいい」
仇討ちや復讐という行為は、その言葉を聞いただけで即座に否定する者も多い。
だが、俺はそうは思わない。
仇討ちや復讐を行うことによって、自分の中にある無念や悔しさ、怒り、憎悪……そういうのが一段落するのなら、寧ろ積極的に勧めたいとすら思う。
勿論、仇討ちや復讐を終えた結果として、それ以後は何もやる気が起きなくなるとか、そういうのはどうかと思わないでもなかったが。
「善逸、お前は……そうだな。炭治郎達のところに行け。炭治郎なら冷静に判断出来ると思うが、他の2人が冷静に判断出来るかは分からないからな。お前が抑え役になるんだ」
伊之助は本人が言ってるように、猪突猛進気味な性格をしているので、童磨に向かって突っ込みかねない。
童磨の放つ細かい氷の件を思えば、伊之助は童磨を相手にするには最悪の相手だろう。……いや、もしかして伊之助だけに、野生の勘とかでどうにか対処したりしかねないか?
そしてカナヲは、普段ならそこまで心配する事はない。
いやまぁ、俺はそこまでカナヲと接する機会が多い訳ではないのだが、それでも何度か話した事はある。
冷静な性格をしているので、普通ならそこまで心配する必要はない。
だが、今回の敵はその辺の鬼ではなく童磨……しのぶの姉の仇だ。
しのぶの継子であるカナヲもまた、当然のようにしのぶの姉に懐いていたと聞いている。
事実、しのぶの姉は花の呼吸の使い手で、花柱だったらしい。
そしてカナヲは花の呼吸の使い手。
その辺りの状況を考えれば、しのぶの姉とカナヲがどんな関係だったのかが分かるだろう。
「え? お、俺がですか!?」
俺の指示に戸惑った様子を見せる善逸。
善逸も、やるべき時はやるんだが……このヘタレぶりを何とかした方がいいと思うんだよな。
もっとも、このヘタレぶりは生来の性格らしいから、そう簡単にどうにかなるとは思っていないが。
とはいえ、どうするか。
そんな風に思ってると、凛が1歩前に出る。
「男なんだから、しっかりとしなさい。頼りがいのある男はモテるわよ? 逆にあんたみたいな性格だと、女にモテるのは難しいわね」
「が……頑張りますぅっ!」
凛の言葉に、善逸はそう言いながら炭治郎達のいる方に向かう。
女にモテたい善逸にとって、凛という美女からの今の言葉は、奮起させるのに十分だったのだろう。
それを抜きにしても、善逸は凛と綾子を連れている俺をみて、羨ましさから血の涙を流していたのだから。
自分もまた、凛や綾子のような美人とお近づきになりたいと、そう思っているのだろう。
禰豆子の見舞いにはこまめに行ってるみたいだし、そっちの方はそれなりに進展しているらしいが。
「善逸の件も何とかなったし……そうなるといよいよ童磨に攻撃をするか」
相手が鬼という事で、ゲイ・ボルクではなく日輪刀を手にする。
ゲイ・ボルクでも鬼を殺せるし、遠距離から童磨を殺すという意味ではそちらの方が向いているのだが、しのぶに童磨を殺させるとなると、やはり日輪刀の方がいい。
「おや、アクセルじゃないか。君も来たのかい? いやぁ、俺も多くの者に好かれてるね。おや、そっちの女は……ふむ、なかなか楽しくなりそうだね」
「黙りなさい!」
童磨の言葉が、自分に対しての挑発のように感じたのだろう。
しのぶは離れた場所で叫びながら、一気に童磨との間合いを詰めて日輪刀を振るう。
息を止めての行動なので、その一撃は万全の一撃という訳ではない。
小柄なしのぶの一撃なので、万全の状態であっても日輪刀によって首を絶つ事は出来ない。
その上で息を止めて蟲の呼吸を万全の状態で使えていない今は、当然ながら日輪刀で童磨を倒すといった真似は出来なかった。
何より、童磨の挑発――本人にその気があるのかどうかは分からないが――によって、頭に血が上っている状態だ。
「うーん、これだけ人数が多いとちょっと厳しいかな。なら……」
しのぶの攻撃を回避した童磨は、後方に大きく跳んで着地するや否や扇を振るう。
「血鬼術、結晶ノ御子」
その言葉と共に、童磨を模したかのような氷で出来た人形が生み出された。
それが何なのかは、これもまた狛治からの情報提供によって知っている。
刀鍛冶の里での戦いの時は狛治を相手に使わなかったが、この結晶ノ御子という血鬼術こそが、童磨を上弦の弐にまで引き上げた大きな理由の1つであるのは間違いない。
結晶ノ御子。
それは、言ってみれば童磨の分身だ。
童磨の使える血鬼術は全て使えて、しかもこの人形を破壊しても童磨には全くダメージはない。
言ってみれば、複数の童磨を相手にするようなものだ。
勿論、童磨の人形は童磨の血鬼術を全て使えるものの、それはあくまでも血鬼術に限定されている。
例えば、童磨は狛治程ではないにしろ、扇を武器にした近接戦闘もそれなりに得意だ。
だが、この氷の人形は童磨の血鬼術は使えるものの、そちらに特化した存在となっている。
……これで近接戦闘も出来るようなら、非常に厄介な存在なのは間違いないが。
童磨にとっても、血鬼術を使う人形を作り出すだけで精一杯だったのだろう。
しかも、何よりも厄介なのは……
「いきなり6体か!」
そう。血鬼術で作られた童磨の人形は、1体ではなく6体もいる。
人形だから1つとか1個とかの方がいいのかもしれないが、自由に動き回るのを見れば数え方は取りあえず1体でいいだろう。
狛治からも複数の人形を出せると聞いていたが、まさか童磨がいきなりこれだけの数の人形を出してくるというのは、少し厄介だった。
童磨の血鬼術しか使えなくても、それを使える人形が6体。
これで厄介に思うなという方が無理だろう。
とはいえ……
「1体目」
結晶ノ御子で生み出された人形は、童磨の血鬼術である以上当然のように氷で出来た人形だ。
そうである以上、白炎を使う俺にしてみれば倒しやすい敵であるのは間違いなかった。
ちなみに当然の話だが人形を倒してもステータスの撃墜数が上がるといった事はない。
まぁ、これは分かっていたから別に気にするような事でもないけどな。
続けて2体、3体といったように白炎を使って倒していくと、綾子も物干し竿で素早く人形を切断し、凛もまた宝石を使った魔術で人形を倒す事に成功する。
そんな俺達の様子を見て、驚きの表現を浮かべる童磨。
ただし、見た感じでは本当に驚いているというよりは、驚いている演技をしているといった印象を受けたが。
それを示すように、その隙を突いて放たれたしのぶの一撃はあっさりと扇によって受け止められた。
「数には数ってな」
そんな童磨に向け、炎獣を二十匹程生み出し、突撃させる。
残りの人形については凛と綾子に任せておけば問題はないだろう。
「ちょっ、これは狡くないか!?」
多数の炎獣が突っ込んでくるのを見て、童磨が悲鳴を上げる。
童磨お得意の、相手の体内に小さな氷を送り込むというのも、炎獣が相手では意味がない。
いやまぁ、もしかしたら炎獣を構成している白炎を多少……本当に多少ではあるが、弱めることが出来るかもしれないが。
しかし、言ってみればそれだけでしかない。
氷柱を放つ童磨だったが、こちらも多くの炎獣は回避するか、あるいは自分から氷柱に突っ込んで溶かすといった真似をしている。
こうして炎獣で相手の意表を突くような攻撃をしていれば、当然ながら童磨のしのぶに対する注意力も落ちてくる。
それでも蟲柱のしのぶを相手に完全に注意を逸らすといったような真似はしていなかったが……
「ついでだ、これも食らえ」
そう告げ、影槍を放つ。
俺の影から伸びた影槍は、真っ直ぐ童磨に向かう。
だが、まだ生き残っていた人形が蓮の花を模した氷を生み出し、童磨を影槍から守る盾にする。
当然ながら、凛や綾子と戦っている最中にそんな真似をした以上、童磨の人形は次の瞬間には綾子の物干し竿によって切断されていた。
また……俺の放った影槍は蓮の花が防いだものの、防げたのは本当に一瞬でしかない。
次の瞬間には蓮の花を貫き、童磨の足を貫く。
とはいえ、上弦の弐ともなれば当然のように再生能力は高い。
しのぶと戦いながら足を貫かれても、すぐにその足は回復し……だが次の瞬間、そうして動きが鈍った童磨の身体に狼の炎獣が噛みつき、それを始めとして多くの炎獣が童磨に向かって攻撃を仕掛けた。
その一撃は、さすがに童磨にとっても痛かったのだろう。
演技でも何でもなく痛みに呻き……
「しのぶ!」
それを見た俺は、しのぶに叫ぶ。
しのぶはそんな俺の叫びの意味を即座に理解したのだろう。
懐から素早く拳銃を取り出す。
やっぱり、童磨が隙を見せるのを待っていたらしいな。
「姉さんの仇!」
叫び、放たれる銃弾。
その銃弾は、当然のように童磨の身体に命中し……その寸前、俺は影槍を操作して童磨の肉体を抉って手元に戻すと、レモンに渡されていた試験管にその肉片を入れて空間倉庫に収納する。
取りあえず当初の目的だった童磨の身体の一部は入手、と。
空間倉庫の中は時間が停まっているので、童磨が死んでもこの肉片が即座にどうにかはならない。
空間倉庫から出す時は注意が必要だが。
……出来れば頭部とか腕とかその辺が欲しかったんだが、マリューの開発した強化された藤の花の毒の入った弾丸を撃たれたのだ。
その体内とかにも毒の影響があるのは間違いない。
レモンなら毒が影響していてもそれをどうにか出来るかもしれないが、面倒を掛けないに越したことはない。
「え……あれ……?」
童磨の口から出たそんな声。
自分の身体の中で何が起きているのか、全く理解出来ないといった様子で告げるその言葉。
だが、そんな童磨に対して銃弾を撃ったしのぶは憎しみの視線を向けるだけだ。
普段は笑みを浮かべていることの多いしのぶなので、そんな表情を浮かべているのはどこか新鮮だと思いながら、童磨が塵になって消えていくのを眺めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731