転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0306話

「アクセル君、アクセル君! しっかりしてくださいまし!」

 

 あやかのそんな声を聞きながら意識が浮上していく。目が覚めた俺の視界に入ってきたのは、目に涙を溜めたあやかと心配そうな顔でこちらを見ている千鶴と茶々丸。満足そうに笑みを浮かべるエヴァだった。

 ちなみにチャチャゼロに関しては部屋にいないらしい。

 

「ふむ、目覚めたか」

 

 エヴァの言葉に頷き、いつの間にかソファへと寝かされていた状態から起き上がる。

 

「ああ。闇の魔法、きちんと習得してきたぞ」

 

 チラリと自分のステータスを見てみると、スキル覧にはきちんと『闇の魔法』と表示されている。

 

「アクセル君、今日は闇の魔法がどういう物かを聞くだけだと言っていたのに……余り心配させないでくださいな」

 

 あやかの瞳からポロリと涙が零れ落ちる。千鶴もまた心配そうな顔をしながらどこか瞳が潤んでいるように見えた。

 さすがに2人に心配を掛けすぎたか。そう判断した俺は大人しく頭を下げる。

 

「悪かったな。だが、この機会を逃す訳にはいかなかったんだ」

「ですが!」

「……落ち着け、雪広あやか。アクセルが力を求めたのにも理由があっての事だ」

「理由、ですの?」

「ああ。どうやら修学旅行、あるいはそれ以降で何かが起きる可能性が高いらしい」

「そうなの?」

 

 今までは黙って俺とあやかのやり取りを見守っていた千鶴だったが、ソファに座っている俺の隣へと腰を下ろして頭を撫でながらそう尋ねてくる。

 さすがにこの期に及んで隠しておける筈もなく、その問いに頷く。

 

「恐らく……いや。間違い無く、な」

「取りあえず痴話喧嘩は後でやれ。アクセル、腕に魔力を集中してみろ」

 

 エヴァにそう声を掛けられ、ソファから立ち上がって腕へと魔力を集中する。すると次の瞬間にはあやかと千鶴が息を呑む。

 俺の腕にまるで炎を具象化したような模様が浮き出ていたのだ。

 

「ふむ、その紋様が現れたという事は無事闇の魔法を習得したと考えていいだろう」

 

 やはり己の固有スキルが継承されたというのが嬉しかったのだろう。口元に笑みを浮かべながら満足そうに頷くエヴァだった。

 

「だが、覚悟しろ。貴様はこの世界で唯一私の固有スキルである闇の魔法の正式な後継者となったのだ。マギステル・マギの中にはそれだけで貴様を目の仇にするような奴もいるだろう。……まぁ、お前に関しては心配はいらないだろうがな」

 

 確かにこちらに敵対するのならこちらとしてもそれ相応の態度を取るまでだ。

 その時、ふと床に落ちている灰のようなものが視界に入る。

 

「これは?」

「お前が使ったスクロールの残骸だ。使用前にも言ったが、あのスクロールは試験的に造ったプロトタイプで使い捨てのものだ。どこぞの筋肉馬鹿にイカサマで騙し取られた方は何度でも使えるタイプだったのだが」

「そう、か」

 

 エヴァの言葉に頷き、床に落ちている灰を集める。

 

「茶々丸、何か入れ物のようなものは無いか?」

「この箱ではいかがでしょう」

 

 そう言って茶々丸が差し出したのは、スクロールが封印されていた箱だった。

 確かにこの箱にこれまで封印されていたんだから、消える時もこの箱ごとの方がいいだろう。

 

「エヴァ、この封印の箱とスクロールの灰は貰っても構わないか?」

「ん? あぁ、もう使い道は無いし構わん」

 

 エヴァの了承を得、箱に灰を入れてから指を軽く鳴らしてスライムの触手を出す。

 

「お前のおかげで俺は闇の魔法を習得出来た。最後は俺の力となって消えてくれ。感謝している」

 

 その言葉と共に、スライムで箱を包み込み吸収する。

 その様子を見ていたエヴァがどこか嬉しそうにしていたのが印象的だった。

 

「さて、闇の魔法についてだが……その概要は理解したな?」

 

 箱を吸収してから数分、ようやくあやかや千鶴も落ち着いてきた所でエヴァが口を開く。

 

「ああ。攻撃魔法を己の身に取り込んで霊体に融合する」

「そうだ。つまり、闇の魔法を十分に活用するには取り込む為の攻撃魔法がある程度使えないと宝の持ち腐れになる訳だ」

 

 まぁ、確かにそうだろう。攻撃魔法を自分の霊体と融合するというのに、その攻撃魔法がしょぼいようじゃ正真正銘宝の持ち腐れだ。

 

「だが、アクセルの適性があるのは炎、影、召喚。そして私の適性があるのは氷と闇。私の言っている意味が分かるか?」

 

 エヴァの言葉に小さく頷く。

 

「つまり、現在ある闇の魔法はエヴァの専用術式状態で、氷と闇がメイン。それに対して適性が少ない俺は十分に使いこなす事が出来無い、か」

「うむ、その通りだ。ただし、闇の魔法の初歩である『闇き夜の型』は例外だな。出力的に約1.5倍になるのでそれなりに使えるだろう」

「闇き夜の型、か。それはありがたいが、結局は俺が自分で闇の魔法を発展させていくしか無い訳か」

「しょうがなかろう。基本的にこの魔法は私が自分自身で使うという目的で開発したものであって、私以外の人間が使うというのは想定されていなかったのだからな」

 

 まぁ、エヴァの言う事も分からないではない。だが、そうなると俺の場合は炎と操影術を活用する方向で考えないといけない訳か。エヴァが言ってるように、俺にはエヴァの得意属性である氷の魔法スキルは所持していない。……あるいは、氷魔法を得意としている敵が存在していれば吸収してスキルをゲットするのも可能なのだが……幸か不幸かこの麻帆良に転移してきてからは最初に出会った魔法使い以外の敵対的存在とは接触していない。

 以前エヴァから聞いた話では、偶にこの麻帆良に図書館島や世界樹、あるいはそれ以外の目的で侵入してくる存在がいるらしいが、そういう存在は魔法先生達によって捕縛されているらしい。

 あるいは、近右衛門に直訴して俺もそちらに関与させて貰うべきか? とも思ったが、子供の身体になってからは睡眠とかも子供並みに必要になっている為に1日2日ならともかく、定期的に夜更かしをするのはちょっと厳しい。

 

「結局自分で開発していくしかない、か」

 

 諦めのと共に漏らしたその声に、エヴァがニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「当然だろう。何でも楽をしようと思うな。若いうちの苦労は買ってでもしろとこの国でも言われている」

「若い、ねぇ」

 

 一応中身的には子供じゃないんだが。

 

「ふん、貴様が何歳だろうと私にしてみればガキもいい所だ」

「いや、600歳と比べれば大抵はそうなるだろうに」

 

 そもそもエヴァより年上の存在なんてそれこそドラゴンとかそっち関係になるだろう。

 

「それよりエヴァンジェリンさん。アクセル君は闇の魔法とやらを習得したばかりですし、今日はこのまま休んだ方がいいのではないでしょうか」

「そうね。色々とお話したい事もあるし」

 

 あやかがエヴァへと尋ね、千鶴も怪しげなプレッシャーを放ちながら小さく呟く。

 

「……まぁ、そうだな。茶々丸、こいつらに部屋を用意してやれ。この別荘から出るのに後10時間近くは掛かるだろうからな」

「はい、マスター。では皆さん、付いて来て下さい。部屋は以前と同じ場所を使って貰いたいと思いますが、構わないでしょうか?」

「ええ、それでお願い」

 

 茶々丸の問いに千鶴が頷き、そのまま以前この別荘で使っていた部屋へと案内された。

 

「さて、アクセル君。色々とお話しましょうか。特に私達に黙って闇の魔法なんていう危険な技術に手を出した理由とか」

「そうですわね。幾らアクセル君が魔法の才能に溢れているとは言っても、今回はちょっとやり過ぎですわ。私と千鶴さんは凄く心配したんですのよ?」

「はい、千鶴さんとあやかさんの仰る通りです」

 

 部屋に着くや否や、千鶴からのお話というなの説教が始まった。いつもは俺に優しい……と言うか、甘いあやかもこちらを庇ってくれる様子は無い。同時に何故か茶々丸もまた部屋に案内した後、エヴァの元へと戻らないで2人と共にどこかこちらを責めるような雰囲気を出している。

 

「あー、そうだな。分かった。説明するからそう責めないでくれ」

 

 そう前置きして、エヴァにした説明をそのまま3人にもする。

 と言うか、茶々丸。お前はエヴァと一緒に俺の説明を聞いてなかったか?

 

 

 

 

 

「……アクセル君の言い分は分かりました。つまり、それ程に私達は頼りにならないと思われている訳ですか」

 

 俺の説明を聞き終えた千鶴の第一声がそれだった。てっきり謎のプレッシャーとかを使われるかと思っていたのだがそんな事は無く、どこか悲しげな瞳で俺の方へと視線を向けている。

 

「いや、別にそう言う訳じゃない」

「でも、私達が頼りにならないからこそ闇の魔法という技術を習得しようとしたんでしょう?」

「違うな。例えばあやかと千鶴が現在よりも十分戦闘をこなせる実力を持っていたとしても、恐らく俺は闇の魔法に手を出しただろう。……念動力による直感というのは俺に取ってはそういう存在なんだよ」

 

 俺の言葉を聞いて、次に口を開いたのはあやかだった。

 

「ですが、私や千鶴さんが今よりももっと強かったとしたら……闇の魔法を習得するかどうかは前もって話していたのではないですか?」

「……」

 

 あやかのその言葉に、思わず沈黙で返す。

 確かにそうだ。あやかにしろ、千鶴にしろ今よりももっと実力を付けていたとしたら闇の魔法に手を出すという結果は変わらなくても相談をしていた可能性はある。

 

「なるほど、やはり私達の力が足りないからですか」

「……アクセルさん、もう少しお二人の事を考えてあげた方が良いのではないでしょうか?」

 

 あやかの悲しそうな顔。千鶴のどこか決意を固めたような顔。茶々丸の微妙に俺を責める雰囲気を感じながら、俺はそれ以上言葉を発する事は出来無かった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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