転生とらぶる   作:青竹(移住)

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3176話

「これが……スライム……」

 

 空間倉庫から延々と出て来るスライムを見て、狛治が圧倒された様子で口を開く。

 スライムという言葉で思い浮かべるような透明染みた液体ではなく、銀色の液体。

 その液体は、一向に留まることなく姿を現しては、周辺に存在する襖を吸収していく。

 しかも、狛治には分からないかもしれないが、襖……あるいはそれ以外にも生命体以外の存在を吸収すると、その分だけスライムの量は増えていく。

 つまり、この無限城の中にある空間が広ければ広い程に、そこに存在する襖をスライムは吸収してその量を増やしていく。

 しかも空間倉庫の中にはまだ大量に……それこそもの凄い量のスライムが存在し、次々に出て来るのだ。

 この無限城の中が具体的にどのくらいの広さを持つのかは、生憎と俺には分からない。

 しかし、空間倉庫に入っている量、そしてここに出て来て無限城の中の襖とかを吸収して量が増えたスライムと比べてもどうにかなるかと言われれば……恐らく、少し難しい筈だ。

 

「っと、これは凛だな。こっちは綾子、炭治郎、杏寿郎……」

 

 スライムを伝わって知り合いの姿を確認すると、その知り合いだけはスライムに巻き込まないようにする。

 ただし、それはあくまでも俺が顔と名前を知ってる面々だけだ。

 例えば一般的な鬼殺隊の剣士であったり、神鳴流の剣士であったりすれば、それが敵か味方かは判断出来ないので、即座に呑み込んでいた。

 ……あ、神鳴流の剣士の1人が百花繚乱を使った。

 神鳴流の百花繚乱というのは、直線上に気を放って敵を吹き飛ばすという技なのだが、生憎とスライムには効果がない。

 いや、実際にはスライムにも十分に効果はあるのだが、それはあくまでも一時的にスライムを吹き飛ばすという意味でだ。

 スライムを消滅させるというのは……出来ない事ではないのかもしれないが、この程度の技ではどうしようもない。

 その上、百花繚乱で吹き飛ばせるのは自分の前方の直線上であり、つまりは横と後ろ、上下は隙だらけだということになる。

 それらの場所から一斉にスライムによって襲われれば、当然ながら神鳴流の剣士にも防ぎようはない。

 そんな感じで、延々と、延々と、延々と、延々と……そんな感じで出て来るスライムが無限城の中に充満していく。

 雑魚鬼と思しき者の悲鳴も聞こえてくるのだが、取りあえずそちらは殺すといったような真似はしないでおく。

 何しろ鬼であるという可能性は高いものの、実は鬼ではなく鬼殺隊の剣士だったり、もしくは神鳴流の剣士であるという可能性も否定は出来ない。

 もしスライムで殺した相手が実は……というのを考えると、迂闊な真似は出来る筈もない。

 

「それで、アクセル。無限城の中はどのような様子だ?」

「順調にスライムが充満している。確保した相手は結構な人数になるが……この中に鬼舞辻無惨や黒死牟、鳴女といった者達がいるのかと言われれば、少し難しいだろうな」

 

 そう言いながらスライムを出し続ける。

 先程の神鳴流ではないが、自分を呑み込もうとしているスライムをどうにかして防ごうと暴れている者もいる。

 特に雑魚鬼は鬼舞辻無惨の力によって下弦並の力を入手したものの、それで入手した血鬼術を好き放題に使うといったような者も多い。

 とはいえ、今回の一件で血鬼術を覚えたばかりの鬼が使うそれは、洗練されていない。

 中には鬼舞辻無惨によって強化される前から血鬼術を使えた鬼もいる。

 雑魚鬼とはいえ、その練度は様々だ。

 正確には分からないものの、素の状態で下弦の鬼に近いだけの実力を持っている鬼がいてもおかしくはない。

 とはいえ、当然だがそんな鬼はそこまで多くはないのだろうが。

 

「お?」

「どうした?」

 

 不意に声を上げた俺に、狛治がそう尋ねてくる。

 この状況で俺がそんな声を上げるというのは、狛治にとっても予想外だったのだろう。

 

「誰かは分からないが、一気に大量のスライムを吹き飛ばした奴がいる。鬼殺隊の剣士か、神鳴流の剣士か……あるいは鬼かはちょっと分からないが」

 

 結構な広範囲のスライムが吹き飛ばされたものの、それでも周辺から延々と襲ってくるスライムに対処するのは無理だ。

 最初はかなり頑張っていたものの、それでも最後にはスライムによって呑み込まれ……へぇ、スライムによって呑み込まれても、まだスライムの中で奮闘してるな。

 いやまぁ、凛や綾子を始めとして俺にスライムという能力があると知っている者ならともかく、それを知らない者にしてみれば、スライムに呑み込まれればそれで死ぬと思ってもおかしくはない。

 そうならないようにする為には、やはりスライムに呑み込まれた状態で暴れてもおかしくはないだろう。

 そうして30分程が経過した時、その瞬間がやってきた。

 

「アクセル!?」

 

 いきなり周囲の空間が崩れるかのような衝撃を受け、それを見た狛治が慌てて俺の名前を呼ぶ

 とはいえ、今の状況を思えば何が起きたのかは予想出来る。

 予想出来る手段は2つ。

 1つはこの無限城の空間全てがスライムによって埋めつくされ、無限城という空間そのものが維持出来なくなったというもの。

 ただ、恐らくこっちではないと思う。

 スライムが広がり続ける空間は、まだかなりの余裕があったのだから。

 だから考えられる可能性としてはもう1つ。

 それはこの無限城の主とも言うべき鳴女がスライムに呑み込まれたという事。

 具体的にはスライムによって呑み込まれても死ぬような事はない。

 だが、それが分からない鳴女は必死になって抜け出そうとして転移の血鬼術を使い続け……限界に達したのか、それとも何か別の理由なのかは分からないが、この無限城を維持する事が出来なくなった。

 その結果、現在無限城を形成する空間が壊れようとしているのだろう。

 具体的にこの空間が壊れればどうなるかというのは、分からない。

 しかし、もし空間そのものが壊れて空間の狭間、次元の狭間に流されるといったような事になる場合は、念動力が危険を察知するだろう。

 だが、俺の念動力は全く反応していない。

 だとすれば……

 そんな俺の予想は、次の瞬間証明されることになる。

 まるでエレベーターで上昇するような、そんな感覚と共に無限城の空間は破壊され……気が付くと、俺の姿は地上にあった。

 それも、ただの地上ではなく先程俺達が突入した、人里離れた場所にある洋館のすぐ側に。

 

「ここは……」

「どうやら、地上に戻ったようだな。……何でここに出たのかは分からないが」

 

 そんな風に言いつつ、空間倉庫から出ていたスライムを収納する。

 無限城の全てを呑み込まんばかりに出ていた大量の……それこそ周辺を完全にスライムで覆っていたそのスライムは綺麗に消えた。

 するとそこに残っていたのは、多数の鬼と鬼殺隊や神鳴流の剣士、あるいはシャドウミラーの先遣隊の面々。

 そんな中で、俺は周囲の様子を見て……

 

「狛治、あれが鳴女か?」

 

 顔に一つの巨大な眼球の存在する女の鬼を見て、そう尋ねる。

 地面に両手を突き、激しく呼吸をしている女の鬼。

 以前狛治から聞いた鳴女の特徴に相応しい。

 

「そうだ。どうする? 俺が殺すか?」

「いや、殺さなくても確保してくれれば、それでいい」

 

 鬼舞辻無惨を殺せば鳴女は死ぬ。

 また、鳴女が鬼舞辻無惨の為にどのように動くのかは俺にも分からない。

 しかし、それでも可能なら鳴女は確保したい存在なのは間違いなかった。

 

「承知した」

「ぎゃっ!」

 

 狛治が俺の言葉に頷くと同時に地面を蹴って、瞬時に鳴女を蹴り飛ばすと首を踏みつける。

 鬼であっても女にそんな真似を……と思いはしたものの、鳴女の能力を思えば琵琶を持たせるといった真似はしないようにして、それ以上に動けないようにする必要もあるのだろう。

 ともあれ、こうして鳴女を確保した以上、残るのは黒死牟と鬼舞辻無惨だが……

 何で無限城にいた全員がここに現れたのかは分からないが、周辺に何も建物がないというのは楽でいい。

 離れた場所では、我に返った鬼殺隊や神鳴流の剣士達が雑魚鬼と戦っているのが見える。

 皆が我に返って、自分が取るべき行動を始めたのだろう。

 そんな中でも真っ先に動いたのは、当然のようにシャドウミラーの面々だ。

 これは俺との付き合いが長いから……いや、そういう問題ではなく、シャドウミラーとして色々と活動してきたのが影響していると言ってもいい。

 そんなシャドウミラーの面々に続いて神鳴流が、そして仲間が動いたからという事で鬼殺隊が動き、そこでようやく鬼が動いたというのが正しい。

 

「黒死牟と鬼舞辻無惨がどこにいるのか、だな」

 

 呟くと、俺は飛んで空中を上がっていく。

 そんな俺に向かって、まだこの近くにいたのだろうドロが数機姿を現して近付いてきた。

 ドロにしてみれば、本来なら俺達が鬼舞辻無惨と戦っている時にフレイボムを使って援護射撃をする筈だったのに、建物の中でいきなり姿を消して、こうして地上に戻ってきたのだ。

 それも大量のスライムと一緒に。

 それだけに、戸惑っているのは当然だろう。

 

「アクセル殿、これは一体……」

 

 鬼殺隊の剣士の1人が、どうなっているのか尋ねてくる。

 

「簡単に言えば、あの屋敷に突入した面々は転移の血鬼術によって無限城という敵の本拠地に連れて行かれた。それをどうにかして、こうして地上に戻ってきた訳だ」

「どうにかって……」

 

 そのどうにかの部分を聞きたそうにしていた男だったが、今はその辺について詳しく説明している暇はない。

 そもそもの話、スライムを出したとか言っても素直に信じたりはしないだろうし。

 であれば、どうやって無限城からこの世界に戻って来たのかというのは、適当に誤魔化しておいた方がいい。

 

「それは戦いが終わったら多分上から説明があるから、それを待ってろ。それより、お前達は自分のやるべき事をやれ。当初の予定とは大分違ってきたが、それでも鬼殺隊の剣士である以上、やるべき事は分かってるな。幸い……雑魚鬼は多いんだ。フレイボムを使って地上で戦っている連中の手助けをしてやれ」

 

 その言葉で、自分のやるべき事を理解したのだろう。

 男は慌てたように頷く。

 

「わ、分かりました! おい、すぐに地上の援護を始めるぞ!」

 

 叫ぶ男に、一応といった様子で注意しておく。

 

「地上にいる鬼は、本来なら雑魚鬼だが鬼舞辻無惨の力によって下弦並の力を持っている。当然だが中には血鬼術を使ってくる鬼もいるから、気を付けろよ」

 

 血鬼術を使えない鬼ならそれこそ石か何かを投げるといった攻撃しか出来ない。

 ……いやまぁ、単純な鬼の腕力は非常に強いので、そういう意味ではただの投石でも厄介なのは間違いない。

 あ、でもオーラバリアがあるから大丈夫か?

 けど、フレイボムの威力はダンバイン世界程じゃないんだよな。

 だとすれば、オーラバリアも同様にそこまで強力ではない可能性もある。

 ともあれ、通常の鬼はともかく血鬼術が使えるようになった鬼となると、色々と話が違ってくる。

 血鬼術はそれこそ何でもありだ。

 中には遠距離攻撃用の血鬼術を持っている鬼がいてもおかしくはないし、空を飛んだり虚空瞬動みたいに空中を蹴る血鬼術があってもおかしくはない。

 ドロはこの鬼滅世界……大正時代にしてみれば、極めて強力な兵器だ。

 いや、それどころか昭和に入ってからも暫くは強力な兵器なのは間違いないだろう。

 それはダンバイン世界の地上でしっかりと証明されている。

 もっとも、それはあくでもダンバイン世界での話で、弱体化している今のドロはダンバイン世界程の性能はないが。

 それでも自由に空を飛ぶ事が出来て、パイロットの思い通りに動いてくれるドロが強力なのは間違いない。

 しかし、その強力さはあくまでも空を飛ぶ砲台としての強さだ。

 空を飛んだり空中を蹴ったりして近接戦闘を挑まれた場合、ドロに乗っている者達では太刀打ち出来るか怪しいだろう。

 ただでさえ、ドロに乗っているのは鬼殺隊の中でも強さという点では他の者達に劣っているのが大半なのだから。

 

「分かりました。気を付けます」

 

 俺の言葉を聞いた男は、真剣な表情を浮かべて頷く。

 取りあえず、この様子ならそこまで心配しなくてもいいだろう。

 ……もっとも、戦いに集中しすぎてフレイボムの威力や命中精度を上げる為に地上に向かって降下していくといった真似をする可能性もあったが。

 ドロに乗ってる者は多いので、その辺は多分大丈夫だとは思うけど。

 

「ああ、任せた。ただ、まだ鬼舞辻無惨と上弦の壱がどこかにいる筈だ。そっちは見つけても攻撃しないように注意しろよ」

 

 そう言い、俺はドロと別行動を取り地上の様子を確認する。

 今は夜だが、月明かりはそれなりにあるし、何よりも俺は普通に夜目が利く。

 そんな状態で地上を見ていると……ふと、1つの戦いに気が付く。

 神鳴流の剣士が主に戦っているのだが、その相手は……1人。

 周囲には鬼殺隊の剣士の手足が転がっているのを見れば、結構な数がその相手に殺されたらしい。

 そして現状、そのような真似を出来る者は鬼舞辻無惨以外に1人しかおらず、その鬼舞辻無惨は毒の治療に専念している筈だった。

 そのおかげで鬼舞辻無惨がどこにいるのかを見つけにくいんだが……とにかく、見つけた以上は倒させて貰おう。

 

「黒死牟……その命、貰い受ける」




アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1731

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