黒死牟は顔面にある6つの目で厳しい視線を向けてくる。
炭治郎が透き通る世界とか何とか言っていたが、この様子からすると今の黒死牟にそれは使えないらしい。
とはいえ、俺と最初に会った時に俺が一体どんな存在なのだと口にしていたのを思えば、その透き通る世界の効果があるのは人間や鬼……あるいは、それ以外にも生物である必要があるのだろう。
俺も生物という点では、間違いなく生物だ。
ただし普通の生物ではなく、魔法生物と呼ぶべき存在だが。
そんな俺に向け、黒死牟は刀を手に口を開く。
「鬼である私の再生を妨げる不可思議な技を使い、鬼である私の身体能力を上回り、鬼である私を……それも上弦の壱である私をこうも一方的に蹂躙してくる。貴様は本当に何者だ?」
「アクセル・アルマー。そうだな。お前に分かりやすく言えば、鬼のお前とはまた違った妖怪みたいなものか」
混沌精霊……精霊である自分を妖怪であると表現するのはどうかと思うが、黒死牟には多分それが一番分かりやすい。
あるいは妖怪ではなく、八百万の神々に近い存在と言えばもっと分かりやすいか?
とはいえ、自分で自分を神だと言うのもちょっとな。
ホワイトスターにいるエルフ達からは神として崇められているので、神であるのを否定するような真似はちょっと出来ないのだが。
「妖怪か。ならば……貴様を私が乗り越えてみせよう。昔から妖怪は退治されるものと決まっているのでな」
そう言い、意識をこちらに向けて集中する。
そんな黒死牟に向かって、お前が言うか? と突っ込みたくなったのは悪くない。
今の俺と黒死牟を見て、一般人がどちらが妖怪かと尋ねれば、多くの者が顔に6つの眼球を持つ黒死牟を妖怪と言うだろう。
混沌精霊としての姿を見せつければ、俺もまた妖怪といったように言われるかもしれないが。
「面白い。俺を退治出来るのならしてみるといい。ちなみに、狛治……お前には猗窩座と言った方が分かりやすいが、猗窩座は最後の戦いで俺を傷付ける事が出来たぞ」
上弦の弐である童磨の場合は、結局戦ったのはしのぶだったので、俺に傷を付けるといったような事はなかったが。
「傷を付ける? 違うな。私は……貴様を殺す!」
その言葉を切っ掛けにして、一気に俺との間合いを詰めてくる。
とはいえ、胴体と腕をゲイ・ボルクによって攻撃されており、回復阻害の効果によって傷が治る様子はない。
だというのに、黒死牟の動きはそこまで遅くなったようには思えない。
この辺りの身体の使い方は、黒死牟の高い才能故なのだろう。
……とはいえ、胴体や腕を怪我した状態での動きは鬼である黒死牟が出来るというのも、若干の疑問だったが。
「月の呼吸、玖ノ型、降り月・連面」
その言葉と共に振るわれた一撃は、横や下からではなく、上から降り注ぐような斬撃。
それも1つや2つではなく、無数の斬撃。
こちらに向かってくるその斬撃を、白炎で燃やす。
それを見た黒死牟は、しかし全く動揺していない。
最初に自分の斬撃が白炎によって燃やされるといった光景を見た時は驚いたのだが、初見ではない以上、それに対応する事も可能なのだろう。
「月の呼吸、拾ノ型、穿面斬・蘿月」
自分の斬撃が燃やされるといったのを見ても、全く動揺した様子を見せずに次の行動に移る。
放たれたのは、今までの三日月とは違い、満月……というか、回転鋸のような形をした斬撃が一度に複数放たれた。
「けどな!」
こちらに向かって一斉にやってくる満月の斬撃に対し、素早くゲイ・ボルクで突きを放つ。
1秒に10回以上放たれた突きによって、満月の斬撃は全てが破壊され……
「食らえ」
次の行動に移ろうとしていた黒死牟に向かい、鬼眼を発動する。
狛治と戦った時にも使ったこの鬼眼だが、使用者の俺にも一体どんな効果が現れるのかが分からないという意味では、かなり使いにくいスキルだ。
ただし、狛治の時は相手を殺さないようにするという事でかなり慎重になったのだが、黒死牟の場合は俺の召喚獣になるような様子もないので、鬼眼の効果が即死でも構わない。
そう思っての鬼眼だったのだが……
「な……に……これは……」
黒死牟は自分の身体に何が起きたのか理解出来ないといった様子を見せる。
取りあえず喋っているという事は、麻痺とかそういう系統じゃないのは間違いない。
また俺の方にきちんと視線を向けてくるのを思えば、狛治に使った時のように盲目といった訳ではない。
毒か? いや、それにしては苦しんでいる様子がないな。
石化といった様子でもないし、これは一体どんな効果が出た?
「どんな気分だ? 俺の鬼眼は、黒死牟にも効くようだな」
「一体何をした? この身体の重さはどういう事だ?」
身体の重さか。
だとすれば、動きを鈍くする奴か?
いや、その割には普通に言葉を話している。
だとすれば、考えられるのは重力か?
黒死牟が重力という存在を知ってるのかどうかは分からない。
ニュートンが生きていたのは今よりも前なので、そういう意味では既に引力だったりその辺についての法則は発見されているのだろうが……問題なのは、黒死牟がそれについて知ってるかどうかだろう。
こうして見る限り、黒死牟が重力について口に出したりはしないのを見ると、多分重力についてはあまり知らないらしい。
……まぁ、俺だって重力は何かとか、専門知識的な事を聞かれれば、詳しく説明したりといったような真似は出来ない。
シャドウミラーの機体はブラックホールエンジンを使ったり、重力波砲を使ったりといったように、重力に関する研究は進んでいる。
だが、それはあくまでも技術班の面々であれば重力について詳しいのかもしれないが、それを操縦するパイロットである俺達は、一般的な事しかしらない。
……TVの構造を知らなくても、TVを使うにはリモコンを操作出来れば問題はない。
つまりはそういう事だ。
「お前の身体が普段のどのくらいの重量になっているのかは、生憎と俺にも分からない。だが、今こうして俺と戦う時に胴体と腕に怪我をし、動く速度も遅くなってしまったというのは致命的だったな」
鬼眼の効果が今回のような重力だったのは、俺にとっても悪い話ではない。
とはいえ、黒死牟の身体が重くなったということは、一撃の威力はその重量の分だけ増しているという事になるので、注意が必要なのだが。
「貴様……」
「言っておくが、別にこれを卑怯だとは言わないよな? お前は鬼としての能力を使い、血鬼術も使っている。なら、俺が特殊能力を使ってもおかしくはないだろう?」
正確には血鬼術ではなく月の呼吸なのだが、黒死牟が使う月の呼吸は血鬼術が融合されている。
それを思えば、血鬼術を使っていないとは言えないだろう。
「お前の動きが鈍くなった以上、今までのような攻撃を行うのは無理な筈だ。お前が俺を相手にどういう風に対処するのか分からないが、それは楽しみにさせて貰おう。……行くぞ」
「くっ!」
俺がゲイ・ボルクを構えたのを見て、黒死牟が焦りの声を漏らす。
いきなり身体が重くなって動きが鈍くなったのだから、黒死牟にしてみればすぐに万全の状態で対処しろという方が無理だろう。
黒死牟の力を思えば、数日……いや、数時間くらいの余裕があれば、ある程度現在の状況に対処出来るようになってもおかしくはない。
しかし、今すぐにそれをどうにかしろという方が無理な話だった。
「ふぅ……行くぞ」
せめてもの情けとして、攻撃を宣言してから黒死牟との間合いを詰め、ゲイ・ボルクによる突きを放つ。
「月の呼吸……ぐっ!」
ゲイ・ボルクを迎撃する為に月の呼吸を使おうとした黒死牟だったが、重力によって動きが鈍い以上、対処が出来なかった。
月の呼吸で何らかの技を出すよりも前にゲイ・ボルクが右胸を貫く。
胴体を貫かれ、右腕に怪我をし、続いて右胸まで貫かれた訳だ。
鬼であれば、この程度の傷は決して致命傷ではないだろう。
それこそ上弦の壱である黒死牟なら、瞬時に再生してもおかしくはない。
「この程度で……このような場所で……私は負けていられんのだ! 縁壱を追い越すまでは!」
叫びつつ、半ば無理矢理といった様子で黒死牟は刀を振るう。
「月の呼吸、玖ノ型、降り月・連面!」
そうして無理矢理に振るわれた刀からは、複雑な軌道の斬撃が複数放たれる。
技術だけでは無理な、血鬼術と呼吸を組み合わせたからこそ可能な一撃。
それは間違いないのだが……
「遅いな」
普通の、その辺の剣士や、あるいは柱を相手にしても十分な威力と速度を持つ一撃なのは間違いない。
だが、混沌精霊である俺に命中させるには……そしてダメージを与えるには、足りない。
俺に向かって放たれた斬撃の全てを、白炎で燃やす。
あるいは黒死牟が万全の状態であれば、今の斬撃ももっと素早く、鋭く、俺にダメージを与えるには十分な威力を持っていたかもしれない。
しかし、今のこの状況において黒死牟はとてもではないが本当の意味で全力を出すような真似は出来ない。
本来なら俺にダメージを与えるようなことが出来たかもしれない攻撃ではあったが……この点、狛治とは前提条件が大きく違う。
俺が狛治と戦ったのは、言ってみれば俺が狛治に合わせたという点も大きい。
ゲイ・ボルクや日輪刀を使わず、素手で狛治と戦ったのだから。
しかし、黒死牟とはゲイ・ボルクを……一度ダメージを与えれば、それによって回復が阻害される宝具で戦っている。
回復の血鬼術を持つ鬼でも仲間にいれば、もしかしたらどうにかなったかもしれないが、狛治から聞いた話によるとそんな鬼は存在していないらしい。
あるいは雑魚鬼の中には存在しているのかもしれないが。
……いや、ないか。
自分の身の安全が最優先とされる鬼舞辻無惨にしてみれば、回復の血鬼術持ちがいた場合は、雑魚鬼のままにするといったような事はせず、自分の側近としておくだろう。
具体的には鳴女のように。
しかし、鬼舞辻無惨がそのような真似をしていないという事は、回復の血鬼術を持つ鬼がいないという事を示している。
まぁ、もし回復の血鬼術が使えた場合でも、ゲイ・ボルクの回復阻害効果を上回るかどうかはまた別の話だが。
「ほら、次はこっちの番だ!」
その言葉と共に、突きを放つ。
ゲイ・ボルクの一撃の威力を知っている黒死牟は何とかその攻撃を回避しようとするものの、重力によって動きが鈍くなっている以上回避は出来ず、左肩、右脇腹、左太股……と連続して貫かれる。
左の太股が貫かれた事により、立っているのも不可能になって黒死牟は地面に崩れ落ちた。
「ぐ……」
「さて、悪いがそろそろ終わりに……いや、その前にその身体を貰っておくか」
ゲイ・ボルクを振るって地面に倒れ、身動きの取れない黒死牟の腕と足を切断し、それを空間倉庫に収納する。
既に黒死牟はろくに動けない状態になっていたが、それでも痛みに呻くものの、泣き叫ぶといったような真似はしない。
この辺りの精神力の強さはさすがといったところだろう。
ついでとばかりに、離れた場所に落ちていた刀……刀身の途中から枝刃が伸びており、刀身そのものにも眼球っぽいのが存在するその刀を空間倉庫に収納する。
「最後に言い残す事はあるか?」
「……私はお前に勝てなかった。お前は私よりも強かった。……それだけだ。不思議だな。私が死ぬ時は、縁壱を倒した後になると思っていたのだが……こうして考えると、もしかしたら私は縁壱になりたかったのかもしれない」
「一応聞くが、縁壱ってのは誰だ? その様子からすると、お前にとって重要人物だったようだが」
「私の弟だ」
「それは、また……」
まさか黒死牟の口からそのような言葉が出て来るというのは予想外だった。
けど、縁壱を倒すとか言っていたが、その縁壱って奴はもう死んでるじゃないか?
黒死牟がいつ鬼になったのかは分からないが、最低でも狛治よりは前だろう。
そして狛治は、江戸時代に鬼になった。
その辺の状況を考えれば、江戸時代以前の人間が今ここで生きているとは思えない。
だとすれば、当然ながらもう縁壱という人物も死んでいる事になる。
「私は……縁壱になりたかった。そう、縁壱を倒した者ではなく、縁壱になりたかったのだ」
既に黒死牟の意識は朦朧してきているのか、その言葉は自分でも何を言ってるのか分からなくなっているようにすら思える。
黒死牟の身体も限界を迎えたのだろう。
残っていた片方の足から塵になって消えていく。
「どうやら俺が殺さなくてもダメージの蓄積で死ぬみたいだが……どうする? お前が望むのなら、このまま殺してやるけど」
「頼む」
正直、既に混乱状態にあった黒死牟の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
とはいえ、身体の一部や刀を貰ったのだ。
そう考えれば、一撃で楽に殺して欲しいという黒死牟の頼みを聞くくらいはしてやってもいいだろう。
ゲイ・ボルクを手に、黒死牟の近くまで移動し……そしてゲイ・ボルクの穂先を黒死牟の頭部に突き立てるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1820
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1732