朝日が昇ってきた。
その言葉によって鬼殺隊……のみならず、この場で鬼舞辻無惨と戦っていた者の士気は天井知らずに上がる。
言ってみれば、無理に鬼舞辻無惨を倒すといったような真似をしなくても、太陽が……朝日が鬼舞辻無惨に照らし出されるまで時間稼ぎをすれば、勝利を得るということなのだから。
だが、太陽は俺達にとって希望の存在であると同時に、鬼舞辻無惨にしてみれば絶望の存在でもある。
鬼舞辻無惨は何とかして太陽を克服しようとしていたものの、結局それは出来なかった。
この世界の原作で鬼舞辻無惨が太陽を克服出来たのかどうかは、生憎と俺には分からない。
しかし、今の鬼舞辻無惨が太陽を克服していないのは事実。
それはつまり、時間が経過すれば鬼舞辻無惨に待っているのは確実な死のみとなる。
ただでさえ、しのぶや珠世、レモン、マリューといった者達が作った毒が10種類以上も打ち込まれ、その解毒は終わっていない。
具体的にはその身体で現在どのくらいの解毒が完了しているのかは分からない。
あるいはまだ1つも解毒出来ていないという可能性もあるし、もしくは9種類の毒を解毒しているのかもしれない。
その辺りは正直なところ俺にも分からないが、とにかく毒によって鬼舞辻無惨が全力を出せないのは間違いなかった。
それだけではなく、俺と綾子によって両腕を切断され、その再生も出来ない。
また、周囲にいる多くの者達から攻撃を食らい続け……まさにフルボッコという表現が相応しい状況。
そこに鬼舞辻無惨にとって最悪の存在と呼ぶべき太陽が昇ってきたのだから、その絶望感が一体どれだけのものかは分からない。
分からないが……不意に急激に明るくなっていく空を見上げ、口を大きく開く。
「っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!」
俺の鬼眼によって沈黙状態になってしまった鬼舞辻無惨が、一体何を叫んだのかは分からない。
分からないが、身体中にある口から空気の刃による攻撃が全周囲に放たれ、それによって鬼舞辻無惨の近くにいた者達は吹き飛ばされる。
中には空気の刃によって身体中を斬り裂かれ、あるいは指を数本切断した者もいた。
だが……それでも、多くの者は死ぬような事はないまま鬼舞辻無惨から距離を取る事に成功し……
「何ぃっ!? 派手にみっともない真似をしやがって!」
俺の近くに着地した天元が、鬼舞辻無惨の姿を見てそう叫ぶ。
声に出した者は少なかったが、多くの者は今の鬼舞辻無惨を見てそんな風に思っただろう。
何しろ、鬼舞辻無惨の身体が急激に膨れ上がり……まさに巨大な赤ん坊とでも呼ぶべき姿になったのだから。
それこそ5m近い大きさの赤ん坊……KMFと大体同じくらいの大きさの赤ん坊と表現すれば分かりやすいだろうその姿は、天元が叫んだ通りみっともない真似なのは間違いなかった。
それだけ鬼舞辻無惨も生き延びるのに必死だという事なのだろう。
それは分かるが、だからといってそれを認める訳にはいかない。
太陽……太陽か。そうだな。幸い、この戦場にいるのは鬼殺隊やシャドウミラーの関係者、あるいは神鳴流だけだ。
なら……
「時間を稼げ! 俺が鬼舞辻無惨を逃げようのないくらいに殺してやる!」
そう叫ぶ。
その言葉は鬼舞辻無惨にも聞こえたのだろう。
肉の赤子とでも呼ぶべき存在は、不意に地面に潜ろうとする。
なるほど。地面に潜ってしまえば、俺から逃げられると思ったのだろう。
それは間違っていない。
間違ってはいないが、それはあくまでも鬼殺隊を相手にしている時だけの話だ。
「うおおおおおっ! 神鳴流奥義、斬岩剣!」
ムラタのその一撃は、振り下ろして肉の赤子に向かって放つのではなく地面に向かって放たれた、掬い上げるような一撃。
その一撃は、5m近い大きさを持つ肉の赤子を空中に吹き飛ばすのに十分な威力を持っていた。
空中に吹き飛ばされた肉の赤子は、動きが鈍い。
恐らくあれは、鬼舞辻無惨が着ぐるみの中に入っているようなものなのだろう。
だからこそ、その動きは鈍くなる。
……ただし、肉の赤子になった事により防御力は明らかに上がっていた。
考えてみれば、太陽に対抗する為に今のような状況になったのだから、太陽の光を防ぐ為に防御力が上がってもおかしくはない。
とはいえ、肉の赤子になったからといって、太陽の光を完全に防ぐといった事は難しいだろう。
事実、鬼舞辻無惨もそれを知っているからこそ、太陽の光から逃げるように地面に潜ろうとしたのだろう。
「アクセル、急いで! 今の鬼舞辻無惨は何をするのか分からないわ! この!」
凛が叫びながら、宝石を投擲する。
その宝石が肉の赤子に命中すると、激しい爆発を引き起こした。
肉の赤子の身体の一部が吹き飛ぶが……その場所は、すぐに内部から盛り上がった肉によって埋められた。
毒があってもこの再生能力と考えると、本気なら一体どんな力を持つのやら。
そんな風に思いつつ、凛の言葉に従って空間倉庫からニーズヘッグを取り出す。
ざわり、と。
この場にいる中でも、初めてニーズヘッグを見る者達が、いきなり姿を現したその姿に気圧されたのだろう。
鬼殺隊の隠れ里で、以前ニーズヘッグを出した事はある。
しかしその時に見る事が出来た者は決して多くはない。
そんな多くの者の視線を感じつつも、俺はニーズヘッグのコックピットに乗り込む。
T-LINKシステムによって俺の念動力を感知。
ニーズヘッグが起動する。
そして、ニーズヘッグの映像モニタには肉の赤子が……それと戦っている者達の姿が表示される。
肉の赤子は5m程の大きさで、そこにいる者達よりも明らかに巨大だ。
しかし、そんな大きさの肉の赤子もニーズヘッグにしてみればかなり小さい。
何しろニーズヘッグは全高15m程の大きさを持つ。
つまり、肉の赤子は3分の1くらいの大きさなのだ。
「鬼舞辻無惨を押さえ込む。俺が押さえ込んだら、すぐに距離を取れ。下手に鬼舞辻無惨の近くにいれば、俺の行動に巻き込まれるぞ!」
外部スピーカーでそう叫び、肉の赤子との間合いを詰める。
当然ながら鬼舞辻無惨も外部スピーカーの声は聞こえていたので、ニーズヘッグが近付けば距離を取ろうとする。
鬼舞辻無惨にとっても、ニーズヘッグの存在は予想外なのは間違いないが、それでも動きが鈍るといった事はない。
今は何としてでも自分が生き残るのを優先しているのだろう。
実際、肉の赤子の力はかなり強く、行冥や蜜璃ですら力負けしていた。
そんな肉の赤子は、少しでもニーズヘッグから逃げようとするが……
「させると思うか? ファントム!」
ニーズヘッグのバインダーのヒュドラからファントムが放たれ、先端に展開されたビームソードが肉の赤子の身体を地面に縫い付ける。
同時にニーズヘッグの尾を使い、肉の赤子の身体に巻き付けて電撃を放つ。
日輪刀の刃は肉の赤子の身体の中にいる鬼舞辻無惨に届く事はないが、ニーズヘッグの尾から放たれた電撃はその身体を痺れさせるには十分だった。
そうしてニーズヘッグの尾を使って電撃を流したまま、システムXNを起動する。
「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」
システムXNによって転移フィールドである光の繭が生成された。
鬼舞辻無惨は電撃を流されながらも、自分とニーズヘッグの周囲に生み出された転移フィールドに危機感を覚えたのだろう。
電撃を流されたまま、暴れ回る。
だが、ニーズヘッグの尾が絡まっている以上、動く事は出来ない。
「諦めろ、お前はもう終わりだ。……転移フィールド、生成完了。転移」
システムXNを発動した瞬間、俺とニーズヘッグ、それと鬼舞辻無惨が中に入っている肉の赤子は、宇宙にいた。
それもただの宇宙ではなく、太陽の側。
猩々緋鉱石を入手した時よりも、更に太陽の側だ。
ただでさえ太陽が苦手な鬼舞辻無惨だけに、当然ながらそんな場所に来ればただですむ筈がない。
鬼舞辻無惨の身体を覆っていた肉の赤子は、見る間に燃えて塵となり、消滅していく。
そんな状態で鬼舞辻無惨を逃がさないように、T-LINKシステムを使って尾を動かし、その締め付けを厳しくしていく。
鬼舞辻無惨は必死になって暴れているものの、そもそもここは宇宙だ。
例え鬼の祖であろうとも、呼吸は必須なのだ。
……あるいは混沌精霊の俺と同じように、宇宙でも呼吸をせず、生身で行動出来るとかなら何とかなったかもしれないが。
生憎と、今の状況でそのような真似は出来ない。
そうして肉の赤子はやがて全てが消滅し、鬼舞辻無惨が宇宙空間に姿を現す。
両腕が存在しない鬼舞辻無惨は、電撃を流された状態であっても必死に抗っていた。
この辺り、まさに火事場の馬鹿力といったところか。
太股の付近にある口が必死に尾を噛み千切ろうとするが……T-LINKフレームはPS装甲の効果もあるのだ。
物理攻撃でどうにか出来る筈もない。
とはいえそれでもこんな間近で太陽に当たっているのに、それでもまだ動ける辺りはさすが鬼の祖といったところか。
とはいえ、それも悪あがきにすぎない。
このまま太陽の光で殺してもいいが……鬼舞辻無惨をそういう意味で楽にするのはどうかと思う。
それに、ぶっちゃけこのまま死んでしまえば、太陽が殺したという事で俺の撃墜数に入らないし。
撃墜数そのものは、そこまで気にするような事ではない。
だが、少しでも早くレベルを上げて、スキル欄を増やしたいという思いがある。
呼吸とか、そういうのもこの世界では習得出来なかったし。
あるいはスライムがあれば鳴女の転移の血鬼術も入手出来たかもしれない。
しかし……スキル欄が空いていない今となっては、スキル欄を増やす必要があった。
「そんな訳で、鬼舞辻無惨。お前にはこのまま太陽によって死んで貰うんじゃなく、俺の糧となって貰う。これまで散々人を喰い殺して自分の糧としてきたお前だ。そうである以上、次はお前自身が糧になってもいいだろう?」
そう告げるが、当然ながらこの言葉は鬼舞辻無惨に聞こえていない。
鬼舞辻無惨が何らかの機体に乗っていれば、接触回線で話すような真似も出来たのだろうが、今の鬼舞辻無惨は生身で宇宙空間に存在しているのだ。
俺が何を言っても、その言葉を聞くような真似は出来ない。
だが……それでも鬼舞辻無惨はニーズヘッグから漂ってくる雰囲気を感じたのか、それとも鬼の勘で生命の危機を感じたのか、不意に今まで以上に激しく暴れ出す。
肉の鞭を使って自分の身体に巻き付いているニーズヘッグの尾を攻撃するが、それでどうにか出来る筈もない。
「愛」
鬼舞辻無惨を経験値にする以上、最大限に使いたい。
そう判断し、精神コマンドの愛を使う。
愛は複数の精神コマンドが複合されており、複合されている中には経験値を倍にする努力もある。
鬼舞辻無惨を倒して具体的にどれくらいの経験値を貰えるのかは分からないが、それでも経験値は多ければ多い程にいい。
そうして愛を使ったところで……
「じゃあな、鬼舞辻無惨」
ニーズヘッグの尾には、様々な装置が内蔵されている。
例えば、T-LINKフレームの効果があるので普通に叩き付けるだけでも強力な鞭となる。
他にも鬼舞辻無惨の身体に現在流れているような電撃を流すことも出来る。
また高熱によって相手を溶断するヒートロッドの効果もある。
尾の先端部分は菱形となっており、そこに念動フィールドを使った刃を作る事も出来る。
あるいはその菱形の部分が展開し、ウルドの糸という相手の機体にハッキングしたりウィルスを流し込むといった機能もあるのだが……今の鬼舞辻無惨は生身なので、その効果は意味がない。
そして……ギアス世界で入手した技術である……
「輻射波動」
そう呟いた瞬間、鬼舞辻無惨の身体に巻き付いているニーズヘッグの尾から輻射波動が放たれ、鬼舞辻無惨の身体は出来の悪い水風船のように膨らんでいき……それが限界を迎えた瞬間、パァンっと弾け飛ぶ。
いや、実際にはパァンという音は俺には聞こえなかったのだが、それでもそんな音が聞こえたような気がしたのは間違いない。
そうして破裂した鬼舞辻無惨の身体は、まるでそうなるのが自然であるかのように太陽の方に向かって飛んでいく。
そんな状態で、一応といったようにステータスを確認する。
するとそこには、当然のように撃破の数値が1上がっていた。
それはつまり、鬼舞辻無惨が間違いなく死んだという事だ。
平安時代からこの鬼滅世界で生きてきた、そして暗躍してきた鬼舞辻無惨。
そんな鬼舞辻無惨も、まさか自分の最後が宇宙で……それも太陽の側で輻射波動を使われて、パァンとされるとは思ってもいなかっただろう。
一応、珠世から大量の肉片になって逃げ出すかもしれないといったような事は聞いていたのだが、幸いな事にそんな真似をする様子はなかった。
宇宙空間になる前に肉片になって逃げれば、あるいは逃げ切る事も出来たかもしれないのだが。
これもまた、解毒が出来ていなかったせいか、
そんな風に思いながら、俺はシステムXNを起動して地上に戻るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1830
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1734