俺が案内役としてやって来た男に連れていかれたのは、とあるホテルだった。
俺が泊まっているホテルとはまた違うホテル。
そんなホテルの一室には、会議室と思しき場所もある。
俺がやってきたのはそんな会議室。
その会議室には、俺以外にも多数のバルチャーやフリーのMS乗りがいて、それぞれに話をしていた。
当然ながら、そんな場所に姿を現した俺に向かって何人もが視線を向けてくる。
そんな視線の中には、敵意の籠もったものも多い。
多分、バルチャーではなくフリーのMS乗りだろう。
俺が他よりも安い依頼料で依頼を受けているのが気にくわない者達。
そんな者達だけに、何か切っ掛けがあれば俺を攻撃してきてもおかしくはない。
それでも、こんな場所で騒動を起こすような馬鹿じゃないと思うが。
俺を呼びに来た男は、大きな儲け話があると言っていた。
つまりここにいる連中は、その儲け話に乗った者達なのだろう。
そんな儲け話を一時の感情で……いや、フリーのMS乗りならそんな真似をしてもおかしくはないか?
そうなったらそうなったで、こっちも相応の態度を取ればいいと思いつつ、周囲に誰も座っていない椅子に座る。
こうして見る限り、結構な人数が集まっている。
つまり、それだけ戦力が必要なのだろう。
「ねぇ、貴方……アクセルよね? 最新売り出し中の」
周囲の様子を見ていた俺にそう声を掛け、隣に座ったのは1人の女。
つり目がちの目が印象深く、顔立ちも整っている。そんな女だが、胸元と脇腹を覆っているだけの非常に露出の高い格好をしており、その柔らかそうな双丘の半ば程までが露わになっていた。
随分と挑発的な格好をしている女だが、もし何かあっても自分でどうにか出来るといったように思っているように見える。
「ああ、俺はアクセルだ。で、お前は?」
「エニル・エルよ。まさか、貴方もここに呼ばれているとは思わなかったわ」
エニルと名乗った女は、笑みを浮かべて俺の方を見る。
そんなエニルの姿に呼応してか、会議室の中にいる者達が俺に向ける視線は一段と強くなった気がする。
いやまぁ、エニルは肉感的な美人で、その挑発的な格好もあって男に人気があるのは理解出来る。
勿論、この部屋の中には他にも女がいるのだが……そのような女達と比べても、エニルは間違いなく美人と呼ぶに相応しい。
……ちなみに俺にはエニルとお近づきになりたいと思っている男達からの視線が向けられているが、エニルにはエニルでそんな女達からの敵意の籠もった視線を向けられていた。
「エニルか、ここに呼ばれたって事は、どこかのバルチャーか? それとも、フリーのMS乗りか?」
「フリーのMS乗りよ。ただ、それなりに付き合いのあるバルチャーはいるけど」
そうなると、半専属のMS乗りといったところか?
「そうか。で、何でここに呼ばれたのか聞いてるか? 俺は大きな儲け話があるからって話しか聞いてないけど」
「いいえ、私も詳しい話は聞いてないわ。けど……私はそれなりにフリーのMS乗りとして活動してきているから、何となく予想は出来るけど。ただ……もし私の予想が正しければ、今回の一件は危険なのは間違いないわ」
「危険と言われても、バルチャーの仕事は基本的に危険だろう?」
盗賊となったフリーのMS乗りやバルチャーが襲ってくるといったような仕事は今までも何度も経験している。
そうである以上、俺達の仕事で危険がないという方が珍しい。
連邦軍の基地を探索するのだって、他のバルチャーとの争いになる可能性は否定出来ない。
バルチャーというのは、危険だからこそ報酬も高いのだから。
「そうね。でも、こうして色々な……それも腕のいいという人達を集めていると考えると、ちょっとその辺の基地の探索といった訳じゃないと思うわ」
「となると……サン・アンジェロ市を襲おうとしているバルチャーの集団に対抗するとか?」
「その可能性は否定出来ないわ。ただ、それならサン・アンジェロ市の上の人が顔を出してもいいと思うんだけど……それらしい人は誰もいないわね」
エニルが会議室の中を見回してそう告げると、俺もまたそれに続く。
会議室の中にいるのは政治家や役人といったような者ではなく、誰もがバルチャーといった様子の……荒事に慣れているような者達だ。
「まぁ、どういう場所で仕事をするのかは、もう少しで分かるでしょ。それよりも……ねぇ、アクセル。私が聞いた話だと、アクセルはオクト・エイプに乗ってるって聞いたけど本当?」
「本当だな」
「そのオクト・エイプ……どこで手に入れたのか、聞いてもいい? オクト・エイプは宇宙革命軍の中でもかなり数の少ないMSよ? そう簡単に入手出来るとは思えないんだけど」
そう聞いてくるエニルの視線には、どこか真剣な色があった。
何だ? オクト・エイプに……いや、宇宙革命軍のMSに何か思うところでもあるのか?
そんな疑問を抱きつつも、俺は素直に口を開く。
「俺のオクト・エイプは、ちょっとした人助けをしたら、その相手がくれたんだよ」
「人助けをして、MSを……?」
半信半疑、いや、三信七疑といった様子のエニル。
この戦後世界でMSというのは大きな価値を持つ。
ましてや、オクト・エイプはガンダムのような特殊なMSを除いた量産型MSとして考えれば、トップクラスの性能を持つ。
戦後となって連邦も宇宙革命軍もなくなった今となっては、新しいMSを開発するような真似は……出来ない事もないだろうが、かなりの苦労が必要となる。
それだけではなく、そのような苦労をしてMSを開発しても、そのMSの性能は決して高くはない。
それこそジェニスやドートレスのような一般的な量産型MSよりも性能が低くてもおかしくはない。
そんな状況を考えれば、オクト・エイプというのは現時点のX世界においてトップクラス……というのはガンダムがいるから無理だとしても、かなり高性能機なのは間違いない。
何しろジェニスと違って普通に空を飛んだりとか出来るし。
そんなMSを人に親切にして貰ったと言っても、素直に信じられないのは無理もない。
無理もないのだが……実際にそれが事実である以上、俺としてもそんな風にしか言えない。
それに俺にオクト・エイプをくれた奴が言うには、賭で負けてガンダムを渡したMS乗りもいるって話だったし、そう考えれば決しておかしな話ではないと思う。
「ああ。俺が助けた奴にしてみれば、MS乗りを止めてゆっくりと暮らしたいらしい」
「その人は……地球……いえ、MS乗りとして活動するのに疲れたの?」
地球? とエニルの言葉に疑問を抱くが、その辺は特に気にせず頷く。
「そう言ってたな。俺もそこまで詳しい相手じゃないから、そいつが今はどこにいるのか分からないが」
「そう。なら……」
そうエニルが何かを言おうとした時、不意に会議室の扉が開く。
誰か新しいMS乗りでもやってきたのか?
そう思って視線を向けたのだが、その視線の先にいたのは1人ではなく10人近い集団。
フリーのMS乗りではなくバルチャーの集団なのか?
そんな俺の予想は外れる。
やって来た者達は、会議室の中でも一番前まで移動したのだ。
「あら、どうやらこの辺で話は終わりね。今回の主催者の登場よ」
どうやらエニルはやって来た連中の事を知っていたらしい。
あの連中が俺を含めてこの会議室にいる連中を集めた奴か。
……ロッソがいないのは、まだサン・アンジェロ市に戻ってきてないんだろう。
以前にちょっと長くサン・アンジェロ市を離れると言っていたし。
それにロッソも別にサン・アンジェロ市を拠点にしている訳ではない。
あるいは、ロッソがいれば今回の一件を仕切るのはロッソだったかもしれないが。
「1つだけ忠告しておくわ。私達を呼んだあのバルチャー、あまりいい噂を聞かないわ。注意しておくのね」
「分かった」
そう言うものの、バルチャーというのは基本的に評判の悪い者が大半だ。
実際にバルチャーと名乗りながら連邦軍の基地を探索するのではなく盗賊稼業に精を出している奴も多いのだから、バルチャーという事で一括りにされてもおかしくはない。
とはいえ、それでも善良なバルチャーが村や街の流通を行っているから、何とかやっていけているというのも事実。
セインズアイランドなんか、まさにその典型だろう。
島だけに農業を出来る場所は……ない訳ではないものの、それでも限られている。
そうである以上、食料はどこか他の場所から持ってくる必要があった。
それが、俺を雇ってセインズアイランドに行ったバルチャーとかだ。
そういう意味で、バルチャーというのは必要悪というか、そんな感じで見ている者も多い。
特に盗賊に鞍替えしたバルチャーに襲われた事があるような奴にしてみれば、同じバルチャーというだけで忌み嫌ってもおかしくはない。
今回の話を持ってきたバルチャーも、出来ればそんな風であればいいんだが……エニルの言葉を聞く限りだと、一般的な意味ではなくバルチャーの間でも評判の悪い人物らしいんだよな。
そんな風に考えていると、皆の前まで移動したバルチャーが口を開く。
「皆、よく集まってくれた。俺の名前はダイラス。ここに集まったのは、俺が腕利きだと見込んだ者達だ。中にはサン・アンジェロ市を拠点にしていないような者もいるが、それでも技量の高い者という事で呼ばせて貰った」
そう口にしたダイラスは、40代くらいの厳つい男。
豪快な態度を取っているものの、ロッソと比べると明らかに数段格が落ちる。
まぁ、ロッソはバルチャーの間でも一目置かれている存在らしいから、この男よりも格上なのは間違いないんだろうが。
「儲け話って本当なんだろうな? 嘘だったら承知しねえぞ」
「ああ、相応の代価は貰う必要がある」
「いっそロッキー級の1隻でも貰うか?」
「ぎゃはははは、それはいいな」
ダイラスのその言葉に会議室の中にいた者達がそんな風に言う。
フリーのMS乗り、それもダイラスが腕利きだと判断して呼んだ相手だけあって、自分の技量には自信があるのだろう。
ダイラスを前にしても全く怯んだ様子はない。
そんなMS乗り達に対してダイラスの部下と思しき男が何かを言おうとするが、ダイラスは手を伸ばしてそれを止めさせる。
「では、前置きは抜きにして単刀直入に行こう。俺達は、連邦軍の基地を見つけた。それもまだ誰も見つけてない場所をだ。それも、その辺にあるような基地ではない。明らかに連邦軍の中でも重要施設と思われる場所だ」
しん、と。
ダイラスのその言葉に、先程まではヤジを口にしていた者達も黙り込む。
連邦軍の重要施設、それもまだ誰にも荒らされていない。
それは、有象無象を黙らせるだけの説得力を持っていたのだ。
「ほ……本当か?」
やがてMS乗りの1人が恐る恐るといった感じで尋ねる。
そんなMS乗りに対して、ダイラスは余裕の笑みすら浮かべて頷く。
「勿論だ。こんな事で嘘を吐いてもどうにもならないだろう?」
「何故そんなお宝を前に、私達を呼んだのかしら? そんな重要な場所なら、それこそ私達を呼ばなくても、自分達だけで探索すればいい。連邦軍の重要施設なんだから、当然お宝が眠っている筈よ。それを自分達だけで独占出来るチャンスなのに、何故?」
話に割り込んだのは、エニル。
実際、その言葉は決して間違いではない。
この世界でフリーのMS乗りとして活動してきたが、当然ながら美味しい獲物は出来れば自分だけで確保したいと思うだろう。
だというのに、何故ダイラスはそうしないのか。
考えられる可能性は幾つかある。その中でも最も可能性が高いのは……
「その基地がダイラス達だけではどうにか出来ない何かがある……か」
そう告げると、ダイラス本人は特に表情を動かさなかったが、周囲にいた部下達が苛立ち混じりに俺を睨んできた。
この様子を見る限りだと、どうやら俺の予想で正解だったようだな。
だが、ダイラスは……いや、ダイラスの部下達はそんな状況を知られたくなかった、と。
「正解だ。さすが今売り出し中のMS乗り、鋭いな。お前くらいの腕利きが協力してくれれば、こっちとしても頼りにさせて貰う」
何だ?
何でここで俺を煽てるような真似をする?
今の状況でそのような真似をする必要があるのか?
そんな疑問は、隣に座るエニルが他の者に見えないように軽く俺の身体を突いた事で理解する。
会議室にいた全員……とまではいかないが、7割くらいの者達が俺に向かって敵意の視線を向けているのだ。
ダイラスが俺を買ってるのが面白くないと思う連中だろう。
……それ以外にも、エニルを隣に座らせているのが気にくわないと思ってる奴もいそうだが。
「ダイラスさん、俺は納得出来ねえ。アクセルの奴は最近有名になってきたからって偉そうにしてるけど、実力はそんなにねえ筈だ」
俺を睨み付けている男の1人が、そう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1850
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1738