突然会議室の中に響き渡った怒声。
その声を発した方に視線を向けると、そこには1人の男が俺を睨み付けていた。
この会議室に入ってから、ずっと敵意の視線を向けていた者達の中の1人。
俺は有名になって調子に乗ってるだけで、実力はないか。
一体何を根拠にそんな風に言ってるのかは分からない。
分からないが……その声が呼び水となり、俺に不満を抱いていた者の何人かはそれに同意するように声を上げ始めた。
「そうだ、アクセルは意味もなく安値で依頼を受けてるから、繁盛してるように見えるだけだ!」
「そのせいでこっちが迷惑を受けてるってのに、全く知らん顔をしやがって!」
そんな声が会議室の中に響き渡る。
他にも何人か同じような声を発している者がいるが、大抵がそれと同じような声だ。
とはいえ、会議室にいる中には俺の力を認めたのか、それとも俺に不満はないのか……ともあれ、黙っている者もそれなりにいたが。
「なるほど、話は分かった。だが、俺の知ってる限りではアクセルはかなりの数の依頼を成功させている。その中には、盗賊となって村や街を襲ったバルチャー達を倒したというのも多い。これは実力を証明しているとは言えないのか?」
そんなダイラスの言葉に、しかし不満の声は収まらない。
そのダイラスはさっきまで何故か俺を妙に持ち上げるような事を口にしていたが、一体何を考えてこんな真似をしたんだ?
「そんなのは、何かの間違いだ!」
最初に叫んだ男が再び叫ぶ。
何らかの根拠があっての言葉ではないのは、ただ感情に任せた様子で叫んでいるのを見れば明らかだろう。
そんな男達を見ていたダイラスは、少し考えてから口を開く。
「では、どうだろう? MSを使った模擬戦をやってみるのは。アクセルの実力に不安を抱く者も、その力を間近で見れば問題はないだろう?」
「それは……いや……」
ダイラスの提案を聞いた瞬間、先程まで俺を責めていた者達は怯んだ様子を見せる。
「どうした? 模擬戦でいいのなら俺はやってもいいぞ? まぁ、お前達にしてみれば自分が負けるのが確定している戦いだ。やりたくないというのも分かるけどな」
「ふざけるな! いいよ、やってやる!」
そんな相手の言葉を聞いたダイラスは、やがて口を開く。
「では、話は決まった。ただし、これはあくまでも模擬戦だ。ペイント弾や模擬戦用のペイントが付着する格闘武器を使っての戦いとなる。双方、異論はないな?」
「俺は構わない。どうやっても俺が勝利するのは間違いないしな」
「俺もそれで構わねえっ! アクセルの化けの皮を引っぺがしてやるよ!」
そう言うと、MSの準備をするべく会議室から出て行く。
それを見送っていたダイラスは、部下に一言二言呟くと、その部下は会議室から出て行った男を追う。
「大変ね」
ダイラスのいる場所に向かおうとした俺に対し、エニルはそう言ってくる。
言葉では大変ねと言ってるものの、その口調には面白そうな色がある。
「お前、面白がってないか?」
「そうね。面白がっていないと言えば嘘になるわ。けど、それは私だけじゃないわよ?」
そう言い、会議室を見回すエニル。
会議室に残っていた者の多くは、エニルと同じように面白くなったといった表情を浮かべている者や、俺の力を見極めようとしている者も多かった。
当然だが、俺に喧嘩を売ってきてた男と同じように、俺に向かって敵意のある視線を向けている者もいたが。
「アクセルの名前が売れてるのは知ってるし、一緒に仕事をした事がある人なら、アクセルの実力も分かってると思うわ。けど、その辺について何も知らない人にしてみれば、実際にアクセルがどのくらいの力を持ってるのか分からないのよ。だからこそ、それを確認したいと思ってる人も多いんでしょうね。それに……多分、賭けも行われるわよ?」
「へぇ、それはいい事を聞いた。なら金を渡しておくから、俺の勝利に賭けておいてくれ」
「あら、自信家なのね」
「自信家というか、客観的に見て俺があの程度の相手に負けるとは思えないし」
これは客観的な事実と言ってもいい。
……俺を妬んでいるあの男が、実はシャアやアムロといったくらいの実力を持っており、更にはガンダムに乗ってるのなら俺に対抗出来るかもしれないが。
「ほう、これは随分とやる気に満ちているようで何よりだ」
俺とエニルの会話に割り込んで来たのは、ダイラスだった。
色々と聞きたい事があったのは事実だが、向こうからもこっちに何か話があったらしい。
「で、何であんたはあんな風に煽るような真似をしたんだ? あんな風に言われれば、ただでさえ俺に敵意を持っていた連中があんな態度になるのは分かっていただろう?」
「そうかもしれないな。だが、感謝して貰いたいな」
「……感謝? お前を恨めというんじゃなくてか?」
わざわざ回りくどい手を使ってまで、俺とあの男に模擬戦をさせようとしたのだ。
何故それに感謝をしないといけないのか。
そんな俺の不満そうな視線を理解したのだろう。ダイラスは呆れたように息を吐くと口を開く。
「アクセル、お前は自分が他の奴に妬まれているというのを知っておくべきだ。お前のせいで儲けられなくなった奴は多い。そんな奴と一緒に連邦軍の重要施設に行くなんて事になったら、どうなると思う?」
「1発だけなら誤射かもしれない、か」
「……何だ、それは?」
俺の言葉の意味が分からなかったのか、不思議そうな様子を見せるダイラス。
いや、ダイラスだけではなく、エニルや他の周囲で話を聞いていた者達も同様の表情を浮かべている。
「どこぞの頭がお花畑な奴が言った名台詞……いや迷台詞だよ。自分に攻撃されても……例えそれが致命的な一撃であっても、1発だけなら誤射かもしれないと」
「それは……」
エニルが呆れたように何かを言い掛けるが、結局それ以上口を開く事はなかった。
「ともあれ、話は分かった。色々と強引すぎると思うけどな」
ダイラスの言ってる事は納得出来る。納得出来るものの、何だが誤魔化しているように思えるんだよな。
これが俺の気のせいならいいんだが。
もしそうでなければ、面倒な事になりそうな気がする。
そんな風に思いつつダイラスからどこで模擬戦をやるのかを聞いて会議室から出るのだった。
『では、お互いに模擬戦用の武器は持ったな? くれぐれもこれは模擬戦であって、殺し合いではないという事を忘れないように!』
ダイラスの声が聞こえてくる。
忘れないようにと言っても、向こうはやる気満々……殺る気満々といった感じなのだが。
ちなみに、俺が模擬戦をする相手が乗っているMSはジェニスだ。
これは別にそこまでおかしな事ではない。
ドートレスと並んで、ジェニスは地球に多くに残っているMSなのだから。
とはいえ、当然ながらそんなMSであっても性能を発揮出来ないと意味はないのだが。
ああ、でもダイラスに呼ばれたという事は、あの男も相応の技量は持ってるのかもしれないな。
『では、模擬戦開始!』
ダイラスのその言葉と同時に、ジェニスは100mmマシンガンを撃ってくる。
当然ながら、それはペイント弾だ。
……あの男の様子を見る限り、しれっとペイント弾の代わりに実弾が入っていてもおかしくはないが。
そんなペイント弾の攻撃を回避しながら、ジェニスとの間合いを詰めていいく。
本来ならオクト・エイプの強みである空を飛べばいいのだろうが、そうなれば向こうは負けても文句を言ってくるだろうし。
そんな面倒な事にならないように、俺は空を飛ばずに地上を移動していた。
まぁ、空を飛ばずとも、オプションのスラスターは強力だ。
機動力はジェニスよりも明らかに上なのだから、回避するのに問題はない。
オクト・エイプのいた場所をペイント弾が通りすぎていく。
なるほど、やっぱりダイラスに選ばれた者の1人だけあって、相応の技量は持っているらしい。
とはいえ、それでもオクト・エイプの動きについてくることは出来ないが。
向こうは必死に狙いを定めようとしているものの、それはあくまでもオクト・エイプがいた場所にすぎない。
向こうが100mmマシンガンを撃てば、それが飛んでいくのは何もない空間だ。
周囲で物見遊山的な意味で見ている者達に命中していないといいけどな。
MSの装甲に当たってもペイント液で汚れるだけだが、それはあくまでもMSの装甲ならだ。
生身の人間がMSの撃つ100mmマシンガンのペイント弾に命中すれば、下手をしたら死んでもおかしくはない。
そんな訳で、周囲に被害が出ないといいけどと思いつつ間合いを詰め……模擬戦用のビームサーベル――命中すればペイント液が付着するようになっている――を振るう。
ジェニスはヒートホークでその一撃を受け止めようとしたものの、それは甘い。
オクト・エイプの腕を器用に動かし、こちらの攻撃を防ごうとしたヒートホークを回避するようにジェニスに袈裟懸けの一撃を命中させた。
『そこまで、勝負あり!』
そう、周辺にダイラスの声が響き渡るのだった。
「さて、アクセルの強さは理解して貰えたと思う。まさに一流と呼ぶに相応しいMS乗りだという事に、誰も異論はないだろう。もし異論があるようなら、また後で模擬戦をやってみてもいい」
「いや、俺は別にやるって言ってないんだが」
ダイラスが勝手に模擬戦云々といった話をしたので、俺はそう突っ込んでおく。
正直なところ、俺としては別に模擬戦をやってもいいのだが……さっき俺に模擬戦で負けた男は、面子を潰されたとでも思ったのか、憎悪すら感じさせる視線を向けていた。
「そうか、残念だ。だが……俺がお前達を雇ったのは、会議室でも言ったように連邦軍の重要拠点と思しき場所を見つけたからだ。そこは自動防衛機能がまだ生きていて……いや、あるいは壊れているのかもしれないが、それは動けないという訳ではなく、手当たり次第に攻撃をしてくるという意味で壊れている」
なるほど。そういう場所か。
この様子だと、ダイラス達は最初自分達だけでどうにかしようとしたのだろう。
当然だ。連邦軍の重要拠点と思しき場所で、そこまで警備も厳重なのだ。
中には当然相応のお宝が眠っていると判断するのはおかしくない。
だが、それが失敗したので俺のようなフリーのMS乗りに声を掛けた訳か。
「ダイラス、私は残念だけど下ろさせて貰うわ」
「そうか。エニル・エルと言えば腕利きのMS乗りだって話だったが……臆病風に吹かれたのならしょうがねえ。いいさ、無理にとは言わねえよ。それ以外の連中も、俺の話を聞いて怖じ気づいたのなら無理にとは言わねえ。だが、もし参加するつもりになったら、3日後サン・アンジェロ市の前にやって来てくれ! これで解散だ!」
そう言い、ダイラスは話を終える。
最初からここで話を終えるつもりだったのか、それともエニルに断られたから話を切り上げたのか。その辺は俺にも分からなかったが。
ともあれ解散という事でそれぞれがサン・アンジェロ市に戻っていく。
俺もオクト・エイプを移動させる必要がある以上、そちらに向かったのだが……
「アクセル、はいこれ。賭けの勝ち分よ」
エニルが俺に寄ってくると、そう言って賭けの勝ち分を渡してくる。
とはいえ、その金額はそんなに多くない。
オッズ的には俺が本命だったらしいから、当然だろう。
それでも貰える金は貰っておきたいので、特に不満はなかったが。
「悪いな。……それにしても、何で急に仕事を降りるって言ったんだ?」
エニルのとの付き合いは短いが、こういう依頼を断るような性格ではないと思っていた。
それだけに、エニルがダイラスの依頼を断ったのは意外だった。
「会議室でも言ったでしょ? ダイラスには悪い噂があるのよ。それが気になったし……それに、ちょっと付き合いのあるバルチャーから先に誘われていたから」
「なら、何でそもそもダイラスの誘いに乗って会議室に行ったんだ?」
「情報というのは、集めておいて損はないでしょう? それに……多分ダイラスも私の予定についても知っていたのかもしれないわね。それでも自分の話を聞けば何とかなると思っていたんじゃない? ほら、周囲を見れば分かるでしょ?」
そう言われると、多くの者がサン・アンジェロ市に残っていたが、中には現在の仕事を一時中断してでもダイラスの仕事に乗るといったような話をしている者もいる。
なるほど、ダイラスの持ってきた話は危険が大きいものの、見返りもでかい……まさにハイリスクハイリータンな訳だ。
「私が知ってる限り、ダイラスは今まで何度か同じように危険な基地を攻略してるわ。ただ、その時には決まってフリーのMS乗りに大きな被害が出ている。……少し怪しくない?」
「かもしれないな。ただ、その辺は上手くやればいい」
これは俺が混沌精霊だからこそ言える事だ。
もし何かの騒動があってオクト・エイプが破壊されても、俺の場合は問題なく生き残る事が出来る。
「それに……連邦軍の重要拠点なら、もしかしたらガンダムが眠っている可能性も否定は出来ないしな」
「そう。じゃあ、気を付けなさい。また今度会える事を祈ってるわ」
そう言うと、エニルは去っていく。
それを見送ると、俺もオクト・エイプをメンテ親父の場所に向かわせる。
そうして3日が経過し……いよいよ、出発の時が来るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1850
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1738