「ちょっと、アクセル。この基地を使うとなると、かなり大規模に改修する必要があるわよ」
そう言ったのは、レモン。
MSについての話を終えると、まずはドートレスの製造工場について見たいと言ったレモンやマリュー、それとバルチャーをやる上で操舵士をする事になっているミナトと、丁度どの世界でも今は仕事がなくて暇だったシェリルと共にX世界にやって来たのだが……そんな中で基地の中を見て回ってきたレモンの言葉がそれだった。
「だろうな。この基地は以前も言ったように、戦後15年の間放置されていたんだ。その上で俺を含めたバルチャーが侵入して探索している。それを思えば、改修が必要なのは間違いない」
「そうじゃないわ。いえ、アクセルの言いたい事も分かるけど、それだけじゃないのよ。この基地の動力炉……具体的には発電施設なんだけど、これは全面的に改修しないと使えないわ。もしこのまま使おうとした場合、それこそ爆発してもおかしくはないわよ」
「それは……なるほど」
これだけの基地の電量を生み出す動力炉だ。
当然ながらかなりの規模であり、もしその動力炉が爆発しようものならこの基地の全てが消滅してもおかしくはない。
「分かった? なら、動力炉はこっちの方で変えておくわ。ブラックホールエンジン系統の物にしておけば、エネルギーは十分に生み出せると思うし」
「いや、それは……いいのか?」
このX世界において使われている動力炉は、MSを含めて核融合炉だ。
だが、その核融合炉をブラックホールエンジン系統に変更するというのは、色々と問題があるような気がする。
具体的には、もしその一件を知ればその技術を入手しようと多くのバルチャーが襲ってくるだろう。
……まぁ、そうやって多くのバルチャーがやって来ても、その全てが迎撃されて俺達の資源になるだけだが。
「大丈夫でしょ。別にこの基地ではブラックホールエンジンを使っているといったように公表する訳じゃないもの。それを知らなければ、普通の核融合炉と勘違いしたままでしょ。……もっとも、それを見せるような真似は出来ないけど」
「あら、でもこの基地が私達の拠点となると、1つの街になるんでしょ? そうなると、中には動力炉を見たいというような人も出て来るんじゃない?」
ミナトのその言葉に、ふと小学生が職場見学をするといったような行事を思い出す。
いや、小学生だけではないにしろ、工場の見学というのはそれなりに聞くイベントだ。
……工場見学で、誰でもブラックホールエンジンを見る事が出来るとなれば、それは色々と凄い事になりそうだな。
ある意味、金を貰ってでも見学したいという奴が来そうだ。
「で、どうなの? こっちの方でやってもいい?」
「ああ、頼む。今のうちにその辺を代える事が出来れば、将来的に色々と楽だろうしな」
今はまだ、この基地の設備は殆ど使われていない。
だからこそ、動力炉を交換するといったような真似をしても、そこまで苦労はない。
……いや、実際にはかなり苦労する事になると思うんだが、その辺は技術班に任せておけば問題はないだろう。
何しろ核融合炉……それもX世界で作られた核融合炉から、ブラックホールエンジンにするのだ。
当然ながらそこから得られるエネルギー量も増えるだろうし、そのエネルギーを各施設に分配する際の設定やら何やらも弄る必要がある。
とはいえ、技術班やコバッタ、量産型Wがいれば問題はないのだろうが。
「そう。じゃあ、こっちの方で調整しておくわね。……一応言っておくけど、この基地の設備はその辺が終わってからじゃないと動かせないわよ?」
「分かってる。そんな真似はしないから安心してくれ。とはいえ、その辺は急いでくれれば助かるけど」
この基地を少しでも早く稼働させて、シャドウミラーの拠点……そして俺がバルチャーとして行動する際の拠点とするには、やはり出来るだけ早い方がいい。
それに……何だかんだと、結局まだこの世界の主人公は見つけていないのだ。
そうである以上、そっちの方も急がないといけない。
……本当に、この世界の主人公はどこにいるんだろうな。
「ええ、任せてちょうだい。今日すぐ……とはいかないけど、それでも数日中にはどうにかするわ」
普通、基地の動力炉を別の物に代えるというのは、そう簡単に出来るものではない。
それも今までと同じ物ではなく、全く違う方式の物に。
多分だが、もしそういう事があった場合は月単位……いや、年単位での作業になるだろう。
だが、レモンは数日でその辺をどうにかすると言う。
この辺りがレモンの凄いところだよな。
「じゃあ、動力炉はそれでいいとして……ドートレスの生産設備はどうだった?」
「そっちは私が見てきたわ」
マリューが俺に向かってそう告げる。
元々、マリューはSEED世界でMSの開発を行っていた技術将校だ。
最終的には階級が一番上ということでアークエンジェルの艦長をやる事になっていたが。
それだけに、マリューはこの世界のMSに興味を持っていたのだろう。
ドートレスはストライクダガー的な存在……いや、違うか?
ストライクダガーはストライクの量産型の簡易型といったMSだ。
それに比べると、ドートレスはX世界における標準的なMSなのだから。
「それで、どうだった?」
「エネルギーが来てないから詳細は分からないわ。けど、見た限りでは生産ラインそのものを大々的に整備しないと駄目でしょうね」
「MSの生産ラインだし、その辺は慎重にやってくれ」
「ええ。ただ、生産ラインそのものは結構大きかったから、アクセルが使っていたオクト・エイプだけじゃなくて、ドートレスも一緒に作れると思うわ」
「機種は多い方がいい、か」
性能という一点においては、オクト・エイプはドートレスを上回る。
だが、高性能になると当然だが値段も高くなる。
オクト・エイプを売るのは俺である以上、値段そのものは安くするといった真似も出来るが……無理にそのようにして、他のバルチャーの恨みを買う必要もない。
この基地を手に入れようと襲ってくるバルチャーなら潰すのに躊躇はしない。
だが、こっちに敵対的な訳ではない相手を、MSの値段で敵に回すというのは避けたかった。
勿論、バルチャーの中にはMSの値段を高くして、少しでも自分の報酬を多くしようと思う者もいるので、そういう連中に対しては遠慮するつもりはないが。
幸いにもと言うべきか、俺はこれまでバルチャーとして活動してきたので、MSの値段は大体理解している。
とはいえ、場所が変わればMSの値段も変わる。
あくまでも俺が知ってるのはサン・アンジェロ市周辺でのMSの値段であって、実際には違う。
他の場所でMSを売る時は、その辺を注意する必要があるな。
ともあれ、オクト・エイプは高性能なだけに高額だ。
それと比べると、ドートレスは性能はオクト・エイプよりも低いが、値段もオクト・エイプより低い。
MSを購入する者が、どういう理由でMSを欲しているのか。
それこそ場合によってはオクト・エイプのように高性能MSでなくてもいいという者も多いだろう。
……まぁ、中には金に余裕があって、ドートレスでも十分だがオクト・エイプを欲しているといったような者もいるかもしれないが。
「機種が多い方がいいのなら、ジェニスやドーシートも揃える?」
「ジェニスはともかく、ドーシートはちょっとな」
海沿いで活動するのなら、ドーシートもそれなりに欲する者はいるだろう。
だが、今のところその予定はない。
いやまぁ、将来的にそういう真似をしてもいいのかもしれないな。
ドーシートとドーシートⅢは、どちらもシーバルチャーにとっては幾らあってもいいだろうし。
それに海には海賊的な存在のオルクもいる。
そんなオルクに対処するには、MSが必須だろう。
「そう? なら今はまだ止めておくわ」
マリューがその言葉に頷くと、次にミナトが口を開く。
「ねぇ、テンザン級は私が操縦するんでしょう? ちょっと見てきたいんだけど」
「それはいいけど、テンザン級は現在整備中だから、今行っても操縦をしたりは出来ないぞ。それでもいいなら、量産型Wに案内させるけど。どうする?」
「あ、なら私も一緒に行ってもいいかしら? ちょっと興味があるのよね」
何故興味を持ったのかは分からないが、シェリルだからと考えれば納得出来る。
シェリルはあくまでも歌手なのだから。
……いや、最近は歌姫と呼ばれているらしいが。
とにかくそんな芸術家なのだから、俺には理解出来ないような何かでピンと来て、それによって新しい曲とかが思い浮かんだりしてもおかしくはない。
「この基地には俺達以外に誰もいないし、量産型Wがいるから、問題はない。……ミナトもシェリルも、その辺のバルチャーが相手ならどうとでも出来るだろうけど」
ミナトもシェリルも実働班ではない。
いや、正確にはミナトは操舵士なので実働班なのだが。
それでもシャドウミラーの一員である以上、当然ながらエヴァとの訓練を行っており、その辺の軍人や傭兵、バルチャーといった者達よりは明らかに強い。
それこそ相手が銃火器を持っていた複数人でも鎮圧出来る実力がある。……それだけの力を護身術と言っていいのかどうかは微妙だが。
相手がMSを出してくれば、さすがに勝つのは難しい。
しかし、勝てなくても逃げ延びる事は出来るだろう。
そのような2人だからこそ、俺から離れて行動しても問題はなかった。
「ふふっ、ありがとう。アクセル。……じゃあ、シェリル行きましょうか」
「ええ。この基地は何となくインスピレーションを与えてくれるのよね。いい曲が出来そうだわ」
そう言いながら、ミナトとシェリルの2人は離れていく。
「あの2人はマイペースよね」
「いや、レモンは人の事を言えないと思うぞ?」
確かにシェリルとミナトはマイペースではあるが、レモンだってそんな2人に負けないくらいマイペースなのは間違いない。
だが、本人にその自覚はないらしく、レモンは不思議そうな表情を浮かべる。
「そう?」
「ああ、俺から見て間違いなくな」
「行っておくけど、レモンもそうだけどアクセルだって相当マイペースなのよ?」
マリューのその言葉に、反論は出来なかった。
実際、今の自分の状況を思えば決してマイペースではないとは言えないのだから。
「マイペース云々というのは置いておくとして、この基地についてだ」
「誤魔化したわね」
「ええ、誤魔化したわね」
「この基地についてだ」
改めてそう言うと、ようやくレモンとマリューは俺をからかうのを止めて、真剣な表情になる。
「そうね。動力炉の件もあるし、取りあえず使えるようになるまでは十日……完全に問題なく使えるようになるまでは、一ヶ月くらいは掛かるかしら」
一ヶ月か。それが短いか長いかは微妙なところだな。
いや、普通に考えれば明らかに短いのは間違いないんだが。
「そうなると、一度サン・アンジェロ市に顔を出してくるかな。あとセインズアイランドの方にも顔を出しておいた方がいいか?」
サン・アンジェロ市は、何だかんだと俺の拠点だったのは間違いない。
泊まっていたホテルやメンテ親父のところにもちゃんと顔を出して俺が無事だと伝えておいた方がいいだろうし、セインズアイランドのルマークも以前言っていたオリジナルのMAが出来たかどうか聞いておきたい。
あるいはまだ俺が知らないMSやMAが引き上げられていたら、そっちも買いたいし。
「そうしておいた方がいいわよ? MSを売るのなら、顔繋ぎはきちんとしておいた方がいいでしょうし。それにアクセルは今までフリーのMSパイロット……いえ、この世界だとMS乗りだったかしら。それだったのが、きちんとしたバルチャーとして活動するのなら、その辺も言っておいた方がいいわ」
マリューのその言葉には納得出来るところが多い。
いきなり行ってバルチャーになったからMSを買わないかと言っても、普通は納得しないで疑問に思うだろう。
とはいえ、だからといって今から行って俺がバルチャーになったと言っても……まぁ、俺がダイラスに雇われたというのはそれなりに知られているし、そう考えると俺がフリーのMS乗りではなく、きちんと集団でバルチャーとして活動する事になったと言っても信じて貰えるのか?
最悪、テンザン級の整備が終わってから……
「そう言えば、UC世界のMSパイロットについてはどうなってるんだ? 昨日の今日だし、まだ決まってないとは思うけど」
一体誰が来るのか、俺はまだ具体的に聞いてはいない。
勿論、ルナ・ジオンから来るんだから、相応の技量を持つ者達なのは間違いない。
だが、UC世界のMSとX世界のMSは微妙に操縦方法が違ったりする。
そうである以上、こっちの世界のMSには慣れておいた方がいいと思う。
……まぁ、慣れるもなにも、オクト・エイプはまだ量産されてないから、練習するとすれば同じ宇宙革命軍のMSであるジェニスとかだろうが。
「さぁ? 私はまだ聞いてないわね。もっとも、何となく予想は出来てるけど。ねぇ?」
「そうね」
レモンの言葉にマリューは笑みを浮かべて同意するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750