ジャミルからの許可を貰ったキッドは、即座に機体の改造に取り掛かる。
量産型Wやコバッタを一応の見張りとしてキッドと共に行動させていたのだが、すぐにキッドによって自由に使われる手足となってしまった。
俺としては、ヒートワイヤーの移植をきちんとやってくれるのならその程度は別に構わないんだけどな。
そんな訳で、ヒートワイヤーの移植は1日……実質的には半日くらいで終わり……
「へぇ、これはなかなか」
ヴァサーゴの両腕の部分に移植されたヒートワイヤーを使いながら、俺はそんな風に告げる。
本来なら、ベルフェゴールは腕……というか、腕の裾とでも表現すべき部分にヒートワイヤーの発射装置があった。
しかし、ベルフェゴールの後継機であるヴァサーゴにはそのような場所はない。
その為、ヴァサーゴの腕の部分を少し弄り、ヴァサーゴでも問題なくヒートワイヤーを使えるようにした。
両手に装備されたヒートワイヤーは、発射装置と先端にある重り、それを手で動かす事によって、自由に操る。
使いこなすのは難しいものの、使いこなせればかなりの効果を発揮するのは間違いない。
しかし、ヴァサーゴにヒートワイヤーがなかったということは、この武器はアシュタロンが受け継いだのか?
ヴァサーゴはベルフェゴールの後継機だが、正確にはベルフェゴールが持っていたストライククローとソニックスマッシュ砲を継承した形だ。
だとすれば、アシュタロンはアトミックシザーズの他にヒートワイヤーを継承していてもおかしくはない。
とはいえ、アシュタロンの場合はベルフェゴールには全く関係のない機能であるMAへの変形機能がある。
そう考えれば、ヒートワイヤーを継承していない可能性もあるのか。
『どうだい、アクセル』
ヴァサーゴの映像モニタに、キッドの顔が表示される。
見て分かる程、自慢げな表情を浮かべていた。
まぁ、その気持ちは分からないでもない。
移植されたヒートワイヤーは特に問題なく動いているのだから。
ワイヤーというだけに、かなり細い。
フリーデンのブリッジから映像モニタで見ても、恐らくはまず認識出来ないだろう。
何か試し斬りが出来るような標的でもあればいいんだが。
生憎と、そういう標的の類はどこにもない。
そうである以上、ヴァサーゴの動きからヒートワイヤーの動きを予想するしかない訳だ。
そういう意味では、キッドはヴァサーゴの動きを十分に理解し、感心しているのだろう。
もっとも、実戦になればヒートワイヤーの動きを見切る事は難しいだろうが。
「ああ、悪くない。いや、寧ろかなり使いやすくなった」
これはお世辞でも何でもなく、ヴァサーゴに移植した事によってヒートワイヤーが使いやすくなったのは間違いない。
ベルフェゴールを使っていた時は、フラッシュシステムによって機体性能を最大限に発揮出来なかった。
ヒートワイヤーというのは、機体の性能に……もっと言えば、腕を動かす速度やタイミングによって、その威力を十分に発揮する。
だからこそ、フラッシュシステムがなくなったおかげで、その性能を十分に発揮出来るようになったヴァサーゴは、ヒートワイヤーを使うのに悪くない選択肢だったのだ。
『へへん、だろう? にしても、アクセルは機体を簡単に改造させてくれて助かったよ。これでGXの整備とか、そっち方面にも活かせるし』
「活かせる……のか?」
キッドの言葉に疑問を抱く。
ベルフェゴールやヴァサーゴは、間違いなくガンダムだ。
だが、ガンダムとはいえ、そこには大きな違いがある。
具体的には、GXは正統派のガンダムなのに対し、ベルフェゴールやヴァサーゴは異端……ゲテモノガンダムと呼ばれてもおかしくはない、そんなガンダムだという事だろう。
そんな全く違う種類のガンダムと呼ぶべき2機だけに、整備とかに今回の一件が活かせるのか? と若干疑問に思う。
とはいえ、具体的にどうといったことは、俺も指摘出来なかったが。
『ああ、問題はない。……出来ればヴァサーゴをもっと改造したかったんだけど、今回はヒートワイヤーで精一杯だったんだ。フリーデンの方には色々と面白いパーツもあるんだけど、それは勝手に使っていいもんじゃないし』
キッドの言う面白いパーツというのはちょっと気になるが、だからといって俺がそれをどうこう出来る訳ではない。
とはいえ、キッドがそんな風に言うということは、間違いなく有益なパーツなのは間違いないんだろうけど。
「その辺は、ジャミルの許可が下りてからだろうな」
ジャミルが許可をするかどうかというのは、生憎と俺にも分からなかったが。
キッドがフリーデンのメカニックを率いる人物なのは間違いない。
だが、そのパーツというのも当然のように今までフリーデンが連邦軍の工場とかから入手した物なのは間違いないだろう。
であれば、そのパーツというのはキッドの私物というよりはフリーデンの備品と考えた方がいいのは間違いない。
であれば、当然ながらそれを使うにはジャミルの許可が必要となる。
……もしジャミルが俺に許可をするとなると、何らかの感謝からというのが可能性は高い。
実際にそんな事があるのかどうかは、俺にも分からないが。
それに……そういう風にキッドが集めたパーツという事は、恐らく原作ではGXとかに使われていた可能性が高い。
『あー……うん。それはそうかも』
『ふむ。許可したいところではあるが』
キッドに続いてジャミルがそう言う。
「別に無理矢理そんな真似をしろとは言わないから、気にするな。俺にとっては、どうしてもそうしたいって訳じゃないし」
実際問題、ヴァサーゴは元々かなり武装が多い。
いや、数そのものは少ないのだが、ストライククローやクローアーム砲、メガソニック砲、ビームサーベルと、性能の高い武器が揃っている。
ちょっと不満なのは、頭部バルカン砲の類がない事か。
ミサイルの迎撃であったり、戦闘車両とかの装甲がないか薄い敵を攻撃したり、牽制に使ったり。
頭部バルカンの類は何気に便利な武器なのは間違いない。
しかし、ヴァサーゴには……というか、ベルフェゴールにもその手の武器はついていない。
使いやすい武器だけに、何故最初から頭部バルカンを内蔵するようにしなかったのか、かなり疑問だ。
あ、でもGXにも胸部バルカンはあったが、頭部バルカンはなかった事を考えると、X世界において頭部バルカンというのは実は考えられてないのか?
MS……というか、ガンダムとなれば頭部にバルカンがあるのが普通だと思ったが、それはあくまでも俺が今までの経験からそんな風に思っているだけだ。
そうである以上、別の世界においては普通であってもこの世界では違うという可能性はある。
とはいえ、バルカンの類は普通に存在している以上、いわゆるコロンブスの卵的な感じだと思うんだが。
オクト・エイプも胸部バルカンだったし。
ただ、胸部バルカンとかのように胴体にバルカンがある場合、攻撃する時は狙う方に身体を向ける必要がある。
しかし頭部の場合は、機体の向きを変えるといったような真似をしなくても、頭部を狙う方に向けるだけで問題はない。
そういう意味では、頭部バルカンの方が色々と便利だと思う。
胴体にバルカンを装備するメリットは……最初に思いつくのは残弾か。
頭部バルカンの場合は、当然だが弾丸をそこまで多く搭載出来ない。
だが、胴体にバルカンがあれば、多数の……最低でも頭部バルカンよりも多くの弾丸を搭載出来るのだ。
弾丸が多くなれば継戦能力も高くなる。
そう考えると、頭部と胴体のどちらにバルカンを設置するのかは一長一短といったところか。
これがシャドウミラーなら、頭部を実弾のバルカンではなくビームバルカンにするので、残弾の心配はいらないのだが。
「キッド、ヴァサーゴの頭部にバルカンをつけることは可能か?」
『え? うーん……頭部の形状を変えるのは、止めておいた方がいいと思うぜ? 頭部には精密機器がしっかりと入ってるし。それを考えると、頭部にバルカンを内蔵するのは難しいと思う』
「キッドでも出来ないのか」
『いや、やろうと思えば出来るけど、そうなるとしっかりとした設備が必要になる。それに、機体を動かす時の風の影響とかも考える必要があるから、相応に時間が掛かるんだよ。ヒートワイヤーみたいに、腕に内蔵するといった真似は出来ないから』
なるほど、色々と面倒な事が必要らしい。
技術班の面々が機体を製造したり改造する時は、何でもないようにやってるように見せて実はその辺の計算とかをしっかりやってるのだろう。
この辺は何だかんだと技術班が天才揃いだという事を示していた。
とはいえ、頭部バルカンがないのはちょっとな。
マリュー辺りに頼むか?
キッドには無理でも、マリューならその辺をどうにか出来てもおかしくはない。
何しろ、マリューも技術班なのだから。
それもレモンに次ぐだけの能力を持つ。
……ある意味、クリスの上位互換的な存在だよな、マリューって。
「分かった。なら、諦めるよ」
『悪いね。ただ……頭部バルカンか。あってもよさそうだったけど、そういうのって見た事がないんだよな』
キッドの様子からすると、やっぱりX世界のMSでは頭部バルカンが普及していなかったのだろう。
勿体ない。
俺にしてみれば素直にそう思うが……まぁ、この世界の技術の流れがそういう風になってるのなら、俺が口を出すべき事じゃないか。
それにキッドは頭部バルカンという存在について知った。
当然ながら、それがどのような有用性を持っているのかというのも、すぐに理解するだろう。
であれば、キッドがMS開発とかMSの改造とかする時には頭部バルカンが装備される可能性もあるな。
キッドとの会話を終えると、テンザン級の格納庫に戻る。
そうしてヴァサーゴから降りると、すぐに量産型W、コバッタ、エルフ達がやって来る。
「整備をしておいてくれ」
今回、初めてヒートワイヤーを使ったので、ヴァサーゴに問題がないかどうかを確認しておく必要がある。
取りあえず問題なく使えていたからということで整備とかをしておかないと、気が付けば何か問題が起きる……といったような事があったりする。
そうならないようにする為には、やはりしっかりと整備をする必要があるのだ。
「分かりました」
量産型Wが頷いたのを見て、俺はブリッジに向かう。
それにしても、これから一体どうするんだろうな。
何でもティファにニュータイプのいる場所を見つけて貰うって話だったが……正直、それが出来るのか? といった疑問がある。
あるいはクスコとマリオンを一度フリーデンに向かわせた方がいいのかもしれないな。
一応、以前顔合わせはしているものの、クスコやマリオンとティファの関わり合いはそれだけだ。
同じニュータイプだから、話そうと思えば色々と話もあるだろう。
もっとも、ニュータイプという言葉は同じだし、能力に似たような部分があるのも事実だが、実際にはUC世界のニュータイプとX世界のニュータイプは違う存在なのだが。
そんな風に考えていると、やがてブリッジに到着した。
「あら、アクセル。こっちに来たの? てっきり食堂かどこかに顔を出すと思ってたのに。勿論、私は嬉しいけどね」
ブリッジにいたミナトが俺を見て、そんな風に笑みを浮かべる。
「マリューはいないのか?」
「私がいるのにマリューの事を聞くのは、ちょっと嫉妬しちゃうわね」
「いや、MSについての相談があったんだよ」
「ふーん。……なら、許してあげる」
取りあえず俺の言葉に納得したのだろう。ミナトはそう言ってくる。
「でも、ヒートワイヤーだっけ? ここから見ていたけど、かなり変わった武器よね」
「そうか? KMFとかにも似たような武器があるだろ」
「スラッシュハーケン? あれとヒートワイヤーを似ていると表現するのは正直どうかと思うわ」
そう言いつつも、ミナトの口に浮かんでいるのは笑みだ。
実際、ヒートワイヤーとスラッシュハーケンは似ているようで違う。
具体的には、スラッシュハーケンは武器として使う時、先端部分を打突武器として使う。
それに対して、ヒートワイヤーはその名の通りヒート系の武器なので、それが触れた場所はあっさりと切断されるのだ。
また、スラッシュハーケンはその先端を壁とかに突き刺して、それを使ってKMFが昇るといったような真似も出来るが、ヒートワイヤーは純粋に攻撃専用だ。
……いやまぁ、攻撃専用ではあるが、それをどうにかして何か別の事に使うといった真似も出来ない訳ではないが。
「そう言われるとそうかもしれないな。とはいえ、ビームサーベルとかビームライフルとかと比べると、似たような武器であるのは間違いないだろう?」
そんな俺の言葉に、ミナトは渋々といった様子で頷く。
「そうかもしれないけど、それはちょっと無茶じゃない?」
「そうか? 鞭状というか、紐状というか、そんな武器なんだから類似していると言ってもいいと思うが」
俺とミナトは、マリューがブリッジに戻ってくるまで会話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750