転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0312話

 新幹線が発車してから1時間程。当然と言えば当然だが、新幹線の中は凄い事になっていた。……まぁ、中学生の修学旅行なんだし予想は出来ていたんだが。

 カードゲームで遊んでいる集団がいるかと思えば、お菓子を食べながら京都での予定について話し合っている集団もいる。かと思えば、イヤホンを耳に突っ込んで音楽を聴いて我関せずとしている者や、隣の車両に肉マンを売りに行っている四……もとい、商売熱心な生徒もいる。

 いや、新幹線の車内でそういう事をしてもいいのかどうかは微妙だが……まぁ、隣のクラスも麻帆良の生徒だし問題は無いという事にしておこう。

 

「フハハハハ! 流れゆく風景を見ながら駅弁を食べる! これぞまさに旅の醍醐味だな」

「マスター、お茶です」

「うむ」

 

 という風な主従もいたりする。

 そんな中、俺達の班はお菓子を食べながら京都について話していた。

 

「京都と言ったらやっぱり生八つ橋かな。ね、アクセル君もどうせなら京都銘菓を食べてみたいよね」

 

 ポッキーを食べながら柿崎の声に頷く。

 

「そうだな、海外でも有名な食べ物だし」

 

 個人的には生八つ橋はかなり好物だ。……前世では、という但し書きが付くが。当然アクセルになってからは生八つ橋を食べた事はないので、実はこの修学旅行でもかなり楽しみにしている。

 

「そうだよね。ちょっと調べてみたんだけど、あんこが入ってるのの他にもイチゴ味とかリンゴ味、チョコ味とかあるらしい……よ……って、キャーーーッ! ちょ、ちょっと何コレ!」

 

 スナック菓子を食べていた柿崎が袋から手を取り出すと、そこに掴まれていたのはスナックではなく蛙だった。一瞬、誰か――最有力候補は鳴滝姉妹と春日だろう――の悪戯で蛙のゴム人形でも仕込んでいたのかと思ったのだが、ゲコゲコと鳴くその蛙は明らかに生きている。

 

「キャーーッ! ちょ、こっちも!?」

「いやーん、こっちにも出たぁっ!」

 

 ふと気が付くと、俺達の周辺だけではなく車両中にその蛙パニックは広がっていた。車両内にいる蛙の数は10匹や20匹所ではない。下手をしたら100匹を越えているかもしれない。

 

「と、取りあえず皆さん蛙を集めて下さい」

 

 あやかがどもりながらも、指示を出す。

 いきなり蛙に遭遇という事態に、脳が機能停止状態になったのか気絶している者も数人いる。パッと見では源に長瀬か。

 ……と言うか、魔法を知っている教師に忍ばない忍者。お前等2人が率先して気絶してどうする。

 そんな風にしながらも、意外と図太いクラスの皆で力を合わせて蛙の回収を完了する。

 どう考えても、この蛙の集団は魔法とかそっち関係の代物だろう。となると……

 

「ネギ、無事か?」

「あ、アクセル君。うん、僕は無事だけど……」

「アクセルの兄貴、これは多分」

 

 ネギの肩に乗っているカモが周囲に聞こえないように小さく呟く。

 

「ああ、例の関西呪術協会だろうな」

「でも、何で蛙を?」

「さて、あくまでも混乱目的なのか……あるいは、この蛙に反応する人物を観察して魔法の関係者を特定したいのか」

「っ!? も、もしかして!」

 

 不意に何かに気が付いたかのように、身体中をまさぐるネギ。

 

「えっと、あれ? ここじゃない。なら……あった!」

 

 安堵の溜息を吐いて親書をスーツの内ポケットから出すが……

 

「おいっ、馬鹿! 向こうの狙いも分からないのにそんな重要アイテムをほいほい出すな!」

「え、でも」

 

 何かを言い募ろうとするネギだが、幾ら悪ふざけ以外の何物に見えなくても襲撃は襲撃だ。そんな中で敵の狙っているであろう親書を取り出すなんてのは迂闊すぎる。

 だが、俺のその注意は一歩遅かった。いや、この場合は敵の行動の早さを褒めるべきか。

 ヒュンッと何かの音が近付いたかと思うとネギが手に持っていた親書を奪っていったのだ。しかもご丁寧に俺の手の届かない所を飛ぶようにして。

 確かに素早い動きだったが、俺の動体視力は当然その姿を捕らえていた。ネギの親書を奪っていったのはツバメだった。当然、親書を奪うなんて真似をする以上はただのツバメではないだろう。

 

「え?」

「ネギ! 追うぞ!」

「あ、う、うん!」

 

 ネギと共に、ツバメの飛んでいった方へと走り出す。

 そんな中、ネギの肩に乗ったカモが式神についての説明をしている。カモはこう見えて魔法の世界に詳しいらしく、極東で使われているマイナーといってもいい陰陽術についてもそれなりに知識があるらしい。

 そして説明を聞きながら次の車両へと入ると、再び売り子へと激突しそうになり……謝りながら先へと進む。

 ネギのその後ろ姿を見送り、俺はその売り子へと声を掛ける。

 

「怪我は?」

「あ、大丈夫です。おおきに」

「へぇ、関西弁……ねぇ」

「っ!? 関西弁がどうかしたんどすか? この新幹線は京都行きですしおかしな事ではないと思うんやけど」

「ああ、確かにそうだな」

 

 女の様子を見ながら、床へと落ちたガムや飴、チョコといったお菓子を拾って手渡す。

 

「……お前が陰陽術を使えないのなら、な」

 

 そのまま俺の差し出した物を受け取ろうとした女の手首を掴み取る。

 

「な、なんやのお客さん。これ以上やんちゃをするようなら車掌に報告せなあかんねんけど」

「ほう。この期に及んでもシラを切る、か」

 

 この反応だけで十分な状況証拠だろう。いっそここで捕縛してしまうか? そうも思うが、こんな所で捕縛してもどうしようも無い。俺の空間倉庫に入れられればいいのだが、残念ながら生物を空間倉庫に入れるのは不可能だ。なら、取りあえず情報を聞き出すのがいいか。そう思った時唐突に声を掛けられた。

 

「アクセル君、どうかした?」

 

 先へと進んだ筈のネギだが、いつの間にか近くまで戻ってきていたのかそう尋ねてくる。その手にはツバメから取り戻したのだろう、親書を持っている。

 ネギの見ている前で尋問をする訳にもいかず、持っていたお菓子の類を売り子へと手渡す。

 

「いや、何でも無い。と言うか、お前がぶつかって床へ撒き散らしていったのを拾っていただけだよ」

「あ、ゴメン! 僕も手伝うよ」

「もう殆ど拾い終わってるから先に戻ってろ。蛙の件で色々と騒ぎになってるだろしな」

「分かった。じゃ、ここはお願いするね。お姉さん、ぶつかってすいませんでした」

 

 女へとペコリと頭を下げて、3-Aの生徒が乗っている車両へと向かうネギ。その様子を見送りながら、最後に女へと声を掛ける。

 

「……取りあえず、ここは見逃してやる。だが次は無いと思えよ?」

「ひっ!?」

 

 一瞬だけ出した殺気を感じ取ったのか、青い顔をして悲鳴を上げる女をそのままに俺も自分の席へと移動する。

 正直、やり過ぎだと思わなくもない。だが俺の中にある念動力が知らせてくる危機感は未だに止まないのだ。つまりはそれだけ大きな危険がこの先に間違い無く待ち受けているという事。

 そして恐らくだが、あの陰陽師の女もそのトラブルに関わっているのだろう。

 

「アクセル君、大丈夫だった?」

 

 3-Aの車両に戻った俺へと千鶴が声を掛けてくる。

 その周囲では蛙パニックからようやく落ち着いたあやかを含む班員達の姿もある。

 

「ああ、どうやらあの蛙テロはこのクラスだけだったらしいな。ネギと一緒に他の車両も見てきたが、どこも普通だった」

「あー、苛つく。折角買ったお菓子を台無しにされたんだよ!? 誰の仕業か知らないけど……春日ぁっ! もしかしてあんたの仕業じゃないでしょうね!」

 

 がーーっ! とばかりに近くを偶然通りかかった春日へと噛みつく柿崎。その八つ当たりに近い矛先となってしまった春日はあたふたと首を振る。

 ……まぁ、日頃から悪戯をしているのだから容疑者になるのも当然か。そうなると他の容疑者は鳴滝姉妹か? いや、妹の方はいつも姉に引っ張り回されているだけなのだが。

 

「ちょっ、ちょっと、いきなり何?」

「あの蛙パニック、あんたの仕業じゃないでしょうね?」

「違う、違う。幾ら何でもあんな事はしないって」

「……本当に?」

「本当に。神に誓って」

 

 そこまで言って、ようやく柿崎も信用したのか溜息を吐いて自分の座席へとどさりと座り込む。

 

「全く、開けたばかりのお菓子だったのに」

「ほら、取りあえずこれでも食べて落ち着け」

 

 旅行バッグの中から枝豆のスナック菓子を取り出して柿崎の方へと差し出す。

 

「うーん、アクセル君が食べさせてくれたら機嫌が元に戻るかも知れないけど」

 

 意味ありげな目で俺の方へと視線を送る柿崎だったが、それを黙って見ていられない人物も存在する。

 

「ちょっと、柿崎さん!? アクセル君に迷惑を掛けるのは感心しませんわよ。そもそも蛙のおかげでお菓子が駄目になったのは貴方だけじゃないんですのよ?」

「ちぇー。委員長のガードは相変わらず固いね」

 

 いつものように馬鹿な会話をしていると、やがてクラスもいつもの雰囲気へと戻っていく。そんな中、どこか真剣な表情をしたネギがこちらへと近付いてくるのが見えた。

 

「アクセル君、その、ちょっと相談があるんだけど」

「ネギ? まぁ、構わない……と言いたい所だが、ちょっとお預けだな」

「え? 何で?」

「ほら、良く耳を澄ませてみろ」

 

 俺の言葉に耳を澄ますネギ。

 

『まもなく京都です。お忘れ物の無きよう……』

 

 その放送は、もうすぐ京都駅に着くというものだった。

 

「な? そろそろ京都だ。担任教師として色々と仕事があるだろう」

「あ、うん。でも……」

「そうなんでさぁ。なるべく早くアクセルの兄貴の耳に入れておきたい事があるんですが」

 

 カモもどこか真剣な表情でこちらを見ている。……ような気がする。何しろ、オコジョの表情なんて見分けが付かない。それに、相手はカモだし。

 

「ま、時間が出来たら話を聞くよ」

「うん、分かった」

 

 そう頷き、俺の前を去っていくネギ。それを見送りながら、ふと気が付く。

 そう言えば、さっきの蛙テロの時にエヴァが騒いでなかったな。修学旅行を楽しみにしていたエヴァなら、怒り狂ってもおかしくないと思うのだが。

 そう思いエヴァの方へと視線を向けると、そこには茶々丸の肩を枕にぐっすりと眠っているエヴァの姿が。

 そしてそんな俺の視線に気が付いた茶々丸が口を開く。

 

「マスターは修学旅行が楽しみで、昨日の夜も殆ど眠られなかったようですので」

 

 ……遠足前の子供か。

 いや、実年齢はともかく外見年齢は子供なのか。

 そんな風に思いつつも、新幹線は京都へと到着するのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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