バスに乗っていた俺を見つけた狛治は当然のように足を止め、そして俺がバスから降りると急いで近付いてくる。
「アクセル、戻っていたのか? この前戻ってきた時も顔を合わせなかったから、少し心配していたんだが」
額から伸びている一本の角や、背中から生えている竜の翼。
一件すると、明らかに人ではない……いやまぁ、実際に俺の召喚獣になる前は鬼だったので、人ではないのは間違いないんだが。
そんな狛治が普通に言葉を話しているのを聞いて、フリーデンの面々は素直に驚いた様子を見せていた。
「向こうの世界で色々と忙しかったからな。それより、狛治はここで何をしてるんだ? 聞いた話だと魔法世界に行ってるって話だったが」
狛治は自分を鍛えるのが趣味といったような存在だ。
そんな狛治にとって、シャドウミラーの実働班との訓練は悪くはないものだったらしいが……ただ、基本的にシャドウミラーの実働班が重視するのは、PTやMSのような人型機動兵器に乗っての戦闘だ。
生身での戦闘訓練もするし、それはエヴァが任されているが、どうしても比率としては少なくなる。
もっとも、そんな比率の少ない訓練であっても、普通の人間には耐えられないような厳しい訓練なのだが。
実働班の生身での戦闘訓練を誰がやってるのかを考えれば、それは当然だろう。
そんな訳で、思う存分生身での戦いを欲する狛治にとって、ネギま世界の魔法世界というのは非常に有用な場所なのだ。
何よりも、魔法世界は亜人が普通に存在するので、角や翼を持つ狛治も何らかの手段で外見を偽装したりしなくてもいいというのも大きい。
「ああ、それで間違いない。けど何となく今日はこっちに戻ってきた方がいいと思ってな」
「何となくか」
俺と狛治が召喚の契約を結んでいるので、それによって戻ってきた方がいいと認識した可能性もある。
「何となくだ。けど、戻ってきて正解だったらしい。……そっちの面々がアクセルが行った世界の連中か?」
そう言いながらも、狛治はフリーデンの面々を一瞥するとすぐに興味を失ったらしい。
狛治にしてみれば、フリーデンの面々は自分が興味を示す程の相手ではなかったのだろう。
とはいえ、フリーデンの面々はあくまでも普通の人間だ。
一応ティファやジャミルはニュータイプだったり、元ニュータイプだったりするが……それでも身体能力という意味では、どうしても普通の人間の範囲を越えていない。
生身での戦いを重視する狛治にしてみれば、特に気に留める相手ではないと判断されたのだろう。
そんな狛治の様子に何か思うところがあったのか、ウィッツやロアビィは反応しそうになるが……それでも、実際に行動する事はない。
フリーのMS乗りとして活動してきた経験から、狛治が自分達ではどうしようもない程の強者であると認識したのか、それとも角と翼を持っている相手に危険を感じたのか。
その辺はちょっと分からなかったが……そんな中で少しだけ意外だったのは、ティファが特に狛治を怖がっていなかったという事だ。
ニュータイプ能力を持つティファなら、寧ろ狛治を怖がってもおかしくはないのだが。
……というか、未だに俺を怖がっているのに、狛治は怖がらないって、どうなんだ?
あるいはティファにしてみれば、狛治は俺よりも怖くないから、問題がないと思っているのか。
「ああ。ホワイトスターを案内するところだ」
「そうか。……その様子だと、新しい世界には鬼殺隊のような者達はいないらしいな」
「お前の世界は色々な意味で例外だよ」
気の一種であると思われる呼吸を使い、鬼と戦う者達。
無理矢理に似ている者達となれば、ペルソナ使いか?
だが、ペルソナ世界の戦いは基本的にシャドウを相手にしてのもので、鬼滅世界のように殺したり殺されたりといったような事は基本的にない。
そういう意味ではやっぱり鬼滅世界が色々な意味で特殊だったんだろうな。
人型機動兵器を使う世界であれば、戦争とか普通にあるので殺したり殺されたりといったような事も珍しくないんだが。
「で、これからフリーデンから来た連中がホワイトスターで自由行動をする訳だが、もし何かやらかした場合、狛治の訓練相手になって貰う事にしたから、よろしく頼む」
「俺が……?」
何故ここで自分の名前が出て来たのか、理解出来ないといった様子の狛治。
バスの中で狛治を見たからこそ、そんな風に思いついただけでしかない。
「ああ。もっとも、狛治を見れば何かやらかすような真似はしないだろうし」
狛治と会話をしつつ、キッドの方を見る。
するとキッドは慌てたように何度も頷く。
キッドはメカニックとしては才能があるし、部下達を纏めている事から人望もあるのだろう。
だが、それはあくまでもメカニックとして相応の腕があるというだけで、もし狛治と正面から戦えといったようなことを言われれば……間違いなく無理だ。
そして今の様子から、キッドはもし自分が何かをやらかしたら本当に狛治と戦闘訓練をさせられるというのが分かったのだろう。
必死になって頷いていた。
「取りあえず、頑張ってくれ。ああ、そうそう。金はこれを使ってくれ」
そう言い、ホワイトスターで使える金を渡していくのだが……
「え? ちょっと、この紙がお金なの!?」
トニヤが渡された紙幣を見て、驚きの表情を浮かべた。
無理もないか。
X世界における金というのは、基本的に硬貨だ。
戦後の復興が進んでいない場所においては、普通に物々交換が行われていたりもする。
俺が知ってる限りだと、X世界で紙幣が使われているのはセインズアイランドくらいだ。
勿論、俺もX世界の全てを知ってる訳ではない。
X世界の他の場所……それこそ他の大陸とかでは、普通に紙幣が使われている場所とかもあるのかもしれないが。
「ああ、これが金だ。硬貨より軽くて持ち運び安いだろう?」
「それは……まぁ、そうだけど……」
「何か分からない事があったら、量産型Wとかに聞いてくれればいい。あるいは他の面々も相応に親切だから、何か聞けば教えてくれると思うぞ」
ホワイトスターにやって来る面々が問題を起こせば、その世界全体にペナルティがある。
そしてペナルティを受けると、その世界にとってのダメージは大きい。
だからこそ、その世界の中でホワイトスターに来る事が出来る者は性格的に問題ないと思っている者が多いのだ。
「分かった。では、アクセルの言葉に甘えるとしよう」
そう言い、ジャミルはフリーデンの面々に自由行動をするように言う。
特にキッドには妙な真似をしないようにと念押しすらしていた。
……多分、ジャミルもキッドがここで妙な動きをするかもしれないと、分かっているんだろうな。
狛治との一件を聞いて、それでもキッドが妙な真似をしないと思うのだが。
「アクセル、俺はどうすればいい?」
フリーデンの面々が行動するのを見ていると、狛治がそう尋ねてくる。
誰かが何かやらかした場合、狛治が模擬戦という罰を与えるのだ。
それを理解しているので、勝手にネギま世界に戻る訳にもいかず、どうすればいいのかと聞いてきたのだろう。
「そうだな。特に何かやるべき事もないし……俺と一緒に適当に見て回るか?」
「それで構わない。……ただ、出来れば刈り取る者と模擬戦をさせて欲しい」
「刈り取る者と? 分かった。どうせ俺も何かやる事はないしな」
そうして話が決まると、俺は狛治と共に交流区画から離れた場所に向かうのだった。
「じゃあ……始め!」
交流区画から大分離れた場所。
そこで俺が合図をすると、すぐに狛治と刈り取る者の模擬戦が始まった。
正直なところ、刈り取る者は模擬戦を嫌うかも? と思ったのだが……幸いなことに、本人もそれなりに乗り気だったらしい。
もっとも、刈り取る者は基本的に俺の影の中にいる。
狛治やグリと違って、普段は自由に行動している訳ではない。
そんな刈り取る者にとって、狛治との模擬戦は決してそう悪いものではなかったのだろう。
刈り取る者は俺の影以外にいるといった事も可能なので、本人がその気なら狛治やグリと同じように自由に行動も出来る。
それでも刈り取る者は俺の影にいるのを希望しているので、そこまで不満はないんだろうが。
「お」
近接戦闘を行っていた狛治と刈り取る者だったが、やはり近接戦闘では狛治の方がそれなりに有利なのか刈り取る者が距離を取った。
狛治は人間の時……そして鬼になってからも、ひたすらに訓練を続けてきた。
ストイックと表現すれば聞こえはいいが、実際には鍛錬中毒とでも呼ぶべきものなのは間違いない。
しかし、それだけに鍛えてきた動きは裏切らない。
純粋に身体能力という点では刈り取る者の方が上回っているのだろうが、それが技術となれば狛治に軍配が上がる。
だが……それはあくまでも近接戦闘の場合だ。
距離を取っての戦闘となると、刈り取る者の方が圧倒的に上だった。
放たれるマハラギダイン、マハブフダイン、マハジオダイン。
炎、吹雪、雷が連続して放たれる。
そんな中を、狛治は俺の血の力によって得た鬼以上の身体能力と、魔法世界で鍛えた体捌きで必死になって回避し、あるいは額から放つ雷にとって対抗しようとする。
しかし、一度距離を取れば圧倒的に有利な刈り取る者に勝機は見いだせず……そして最後に刈り取る者にとって最高の一撃であるメギドラオンが放たれ、勝負は決した。
「ぐわああああああ……魔法世界にもここまで多種多様な魔法を使ってくる相手はいないぞ」
模擬戦が終わると、地面に倒れ込んだ狛治がそう告げる。
自分の負けを認めたその言葉に、刈り取る者は俺に一礼すると影に戻っていった。
本当に俺の影の中にいるだけってのは、暇じゃないのか?
……もしかしたら、実は俺の影の中というのはそれなりに快適な空間だったりするのだろうか。
もし何らかの手段で俺の影に入った時、実はそこにエアコンやらコンピュータやらTVやらゲーム機やらがあって、刈り取る者が寝転んでリラックスしている……なんて事になったら面白いな。
そんな有り得ない想像をしながら、俺は狛治に近付いていく。
「怪我の方はどうだ?」
「問題ない。鬼の時程ではないが、アクセルの血の影響で回復力も強まっている。でないと、魔法世界での戦いは厳しいものだったしな」
狛治の身体能力は、間違いなく俺の召喚獣になって上がった。
それ以外に竜の翼によって自由に空を飛べるし、角から雷を放つ事も出来る。
また、鬼であった時までに訓練をして得た技術もそのまま残っている。
だが……血鬼術が使えなくなったというのは、狛治にとって総合的な強さを下げる要因であるのも、また事実だった。
しかし、逆に言えばこれからまだ強くなる余地があるという事でもある。
狛治もそれを理解しているのだろう。
刈り取る者に負けたのは悔しそうだが、それでもどこかに嬉しそうな様子がある。
「そうか。狛治が強くなるのは俺も賛成だ。とはいえ、すぐに強くなるというのは……ちょっと難しいと思うが」
「分かっている。俺の強さはあくまでも鍛錬の末の強さだからな」
勿論、狛治に才能がないとは言わない。
元々才能が会ったからこそ、上弦の参という鬼になる事が出来たのだから。
そして鬼になっても続けた訓練は確実にその力となっている。
しかし……才能があるとはいえ、狛治の才能が一番という訳ではない。
純粋に近接戦闘の才能という意味では上弦の壱がいて、血鬼術の才能では上弦の弐がいた。
双方共に、狛治よりも上だったのだ。
そういう意味では、狛治は秀才ではあっても天才ではないのかもしれないな。
「分かっているのならいい。それより、俺達もそろそろ交流区画に戻るか。フリーデンの面々がどういう風にしてるのか、ちょっと見てみたいしな」
そんな俺の言葉に、狛治はあまり興味がない様子だったが……それでも、頷くのだった。
「えーっと……これは一体……」
「あ、ちょっとアクセル! 何なのよこの人!」
影のゲートで転移した俺と狛治だったが、交流区画を歩き始めてすぐに騒動に直面する。
具体的には、気絶して道に倒れているロアビィと顔を赤くして怒っている明日菜。
それとついでに不思議そうに首を傾げているステラ。
うん。考えるまでもなく何が起きたのかは分かるな。
客観的に見た場合、明日菜は美人だ。
身体付きも非常に女らしいし、性格に接しやすい。
超包子で働く事も多い明日菜は、何気に看板娘っぽい扱いをされる事も多い。
最近ではステラも一緒に行動してるので、揃って看板娘扱いされたりもしている。
そんな明日菜なので、ロアビィにしてみれば口説こうと思ってもおかしくはないのだろう。
せめてもの救いは、ステラではなく明日菜を口説いたといったところか。
ステラはいわゆる電波系? 不思議ちゃん? そんな感じの性格をしてるので、ロアビィに口説かれてもどんな反応をするのか分からない。
場合によっては、ロアビィについていってもおかしくはなかった。
まぁ、ロアビィもそれなりに倫理観はあるだろうから、そこまで心配はしなくてもいいんだろうが。
それにしても……この状況は一体どうしたらいいんだろうな。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750