キッドについての話をウィッツやロアビィとしていたところで、やがてジャミルとティファ、カリスの3人が戻ってくる。
先程は俺を見て信じられないといった様子のカリスだったが、今は大分落ち着いたらしい。
……それでも俺を見る目に畏怖が宿っているように見えるが。
ようやくティファと友好的な関係を築けたところだったのに、今度はカリスに怯えられるのか。
あ、でもティファの件はマリューやミナトの一件で色々と問題になってはいるか。
それでもティファは俺を怖いと思いはするが、それなりに好意的なのは間違いない。
少なくても、俺を見て恐怖から叫んだり逃げ出したりといったような真似はしなかったのだから。
「ジャミル、それでカリスはどうするんだ?」
「取りあえず捕虜という扱いにする。何故私達を襲ってきたのか、それにフォートセバーンについての話もしっかりと聞きたいからな」
「それに……」
ジャミルの言葉に続けるようにしてティファが何かを言おうとしたものの、俺が視線を向けるとすぐに顔を赤くして視線を逸らす。
この件も、そろそろどうにかしないといけないんだが。
「私も彼と話してみたい……です」
ティファが顔を赤くし、俺から視線を逸らしながらそう言ってくる。
「分かった。ただ、ガロードも労ってやれよ」
ガロードが何を考えて自分だけでカリスと戦おうとしたのかは、生憎と俺にも分からない。
だが、その結果としてガロードはカリスに勝つ事は出来ず、一方的にボコボコにされたのだ。
そう考えると、今回の一件はガロードに強いショックを与えている筈だ。
ガロードの性格を考えると、ティファの前であそこまでやられたのだ。
かなりのショックを受けている事は、容易に想像出来る。
「はい」
ティファもその辺については十分に理解しているのか、短く返事をしてくる。
「分かった。なら、俺はそろそろ向こうに戻る。……ジャミル、警備は厳重にな」
「ああ」
ジャミルは俺の言葉に真剣に頷く。
この場合、警備というのはカリスの脱走を防ぐという意味や、フォートセバーンからカリスを取り返しにくる連中に対する警備だと理解しているのだろう。
とはいえ、正直なところフリーデンの警備というのはあまり当てにならないというのが俺の考えだった。
その理由として、以前ガロードから聞いた話がある。
ちょうどアルタネイティブ社の一件のすぐ前……その時、ガロードはフリーデンに軟禁されていた。
しかし、夜になる度に軟禁されていた部屋の見張りを薬で眠らせて部屋を抜け出し、昏睡しているティファに花を持っていったらしい。
これが1回くらいなら、まだ分かる。
だが毎晩のように繰り返されて、それでも見張りは異常に気が付かなかったのだ。
普通に考えて、その見張りは毎晩のように薬で眠らされてるのに気が付かないというのは……うん。まぁ、多分フリーデンは実は激務で、睡眠時間が少なかったのかもしれないし。
「くれぐれも、警備は厳重にな」
「アクセル、そこまで繰り返して言う必要があるのか?」
ウィッツが理解出来ないといった様子で視線を向けてくる。
もしかしたら、見張りが毎晩眠らされていた件を知らないのかもしれないな。
「カリスの件は重要だからな。繰り返し言っておいた方がいいだろう。……なんなら、量産型Wかコバッタを貸し出そうか?」
「いや、必要ない」
そう告げるジャミルに、そうかとだけ頷く。
もしカリスが脱出して同じニュータイプのティファを連れ去ろうとしても、ティファには護衛の炎獣がいる。
……そう言えばカリスは炎獣をどんな風に認識してるんだろうな。
フリーデンにいる面々は、既に俺の正体について知っているし、ホワイトスターに行った者もいる。
そこまでした事で、ようやく俺の存在を完全に信じる事が出来るようになったのだが、カリスはその辺について何の知識もない。
あるいは俺の存在を感じた事によって、そういうのを気にするような精神的余裕をなくしてしまったとか?
そんな風に思いつつも、俺はヴァサーゴに乗ってテンザン級に向かうのだった。
「そうか。クスコとマリオンでも駄目だったか」
「ええ。フラッシュシステムを搭載しているMSじゃないから、もしかして……とは思ったんだけどね」
マリューが残念そうな様子を見せる。
今の報告は、クスコとマリオンがベルティゴを動かせるかという件についての報告だ。
いや、正確には小型のビットを動かせるか、というのが正しい。
ベルティゴそのものは、フラッシュシステムを搭載している訳でもないので普通のMSとして誰でも操縦は出来る。
ただし、ベルティゴ最大の特徴である小型のビットはクスコやマリオンといったUC世界のニュータイプであっても動かせなかったらしい。
連邦軍系のガンダムなら、フラッシュシステムが搭載されているのでUC世界のニュータイプでは動かせないというのは分かる。
だが、ベルティゴの小型のビットなら動かせてもおかしくはないと思うんだが。
「やっぱり、UC世界とX世界ではニュータイプという言葉は同じであっても、その意味するところは違うのか?」
「その可能性は高いわ。正直なところ、ニュータイプじゃないと使えない武器というのはどうかと思うけど」
そうマリューが言うのは、シャドウミラーのファントムの類はミノフスキー粒子があっても普通に使えるからだろう。
とはいえ、それを言うのならマリューの出身世界のSEED世界においても、Nジャマーがあったからドラグーンが発展したのだ。そういう意味でUC世界と似ているのは間違いないんだよな。
「そうなると、ベルティゴはどうする方がいいと思う?」
「小型のビットが使えないのはともかく、純粋にMSとしてはオクト・エイプ以上……それこそガンダムに匹敵するだけの性能を持つわ。そうなると、出来れば保管しておくのではなく、私達の戦力として使いたいわね」
「それは俺も賛成だ」
この場合のオクト・エイプ以上の性能というのは、基地で生産されている普通のオクト・エイプではなく、シーマ達が使っている特別製のオクト・エイプだろう。
取りあえずベルティゴのデータは取るとして、普通に戦力として使ってもいいのは間違いない。
ベルティゴがオクト・エイプよりも性能が高いとなると、テンザン級で使うMSも最終的にはベルティゴになる可能性も否定出来ないな。
小型のビットは使えずとも、純粋にMSとしての性能が高いのは間違いないのだから。
いきなりテンザン級から出撃してくる、8機のベルティゴ……ベルティゴがどんなMSなのかを知っている者であれば、余計に混乱しそうだ。
「取りあえず誰を乗せるのかは、マリューに任せる。フォートセバーンとの戦いが終わって余裕があったら転移でホワイトスターに戻って、データ取りと量産出来るようにしてくる。小型のビットは……UC世界に持っていけばルナ・ジオンでニュータイプ研究の役に立つだろうし」
UC世界とX世界では、ニュータイプという言葉は同じでも、その意味が違う。
そういう意味では、ベルティゴはUC世界のニュータイプ用MSとしては使い物にならないのだろうが、それでもニュータイプ研究に一石を投じる事にはなるだろう。
上手くいけば……本当に最善の結果になればの話だが、ベルティゴの小型のビットをUC世界のニュータイプが使えるようになるかもしれないし。
「そうね。アクセルがそう言うのなら、私の方では問題ないわ。ただ、そうなると出来ればフォートセバーンでもっとニュータイプのデータを集めておきたいところね」
一応、アルタネイティブ社の一件でそれなりにニュータイプのデータは入手してある。
だが、この手のデータというのは多ければ多い程にいいのだ。
だからといって、偽物のデータとかは幾らあっても意味はないが。
「そうなると、いっそフォートセバーンに侵入してくるか?」
侵入というのは、俺にとって得意分野の1つだ。
ただ、このX世界は科学技術が発展しているので、監視カメラの類も多用されているだろう。
俺の持つ気配遮断のスキルは、見張りの目の前を通っても見つかる事はないが、カメラとかそういうのを通すと普通に見えてしまう。
戦後世界のX世界だけに、戦争中よりは監視カメラが使われている場所は少ないものの、それでも敵の本拠地ともなれば相応の監視カメラの類はあるだろう。
「なるほど。それはいいかもしれないわね。アクセルなら敵に見つかってもどうとでも対処出来るでしょうし。……いっそ、ヴァサーゴに乗ってフォートセバーンに突っ込む?」
マリューのその言葉は、明らかに冗談ではある。
マリューの性格から考えて、フォートセバーンに被害が大きくなる可能性が高い……というか確実な、俺がヴァサーゴでフォートセバーンに突っ込んでいくのを勧める筈もない。
それ以外に選択肢がないのなら、マリューもそれを受け入れるだろう。
しかし、今の状況では他に採れる選択肢は複数ある。
そうである以上、俺がヴァサーゴでフォートセバーンに突っ込んで行くといった真似をマリューが許容する事はないだろう。
「取りあえず侵入してくるよ。フォートセバーンでニュータイプがどういう扱いになっているのかも分からないし」
ジャミルやティファ辺りがカリスと話してその辺の情報を入手している可能性もあるが、カリスの言葉を全て真実だと思う訳にもいかない。
あるいはカリスが信じていても、客観的に見た場合は違うという可能性も否定は出来ないのだから。
「シーマ達には会っていかないの?」
「今ここで会っても、そんなに時間は取れないからな。まずはフォートセバーンに行って、色々と確認してくるよ」
「……1人で行くのではなく、誰かを一緒に連れていった方がいいんじゃない?」
早速フォートセバーンに行こうとするも、マリューのその言葉で動きを止める。
現在の俺は20代の男だ。
北米にいる以上、今の俺は特に目立つような事はないと思うんだが。
混沌精霊としての姿を露わにしているのなら、かなり目立つだろうが。
ただ、マリューがこんな風に言う以上はきちんとそう思う理由があるのは間違いない。
「誰を連れていけばいいと思う?」
「クスコね」
俺の質問に、マリューは躊躇するようなこともせずにそう告げる。
「クスコ?」
「ええ。フォートセバーンに行く以上、ニュータイプを連れていった方がいいでしょう? フォートセバーンのニュータイプについての情報を得る為にも、クスコが行った方がいいと思うわ。ニュータイプの意味が違っても、クスコを連れていった方がいいと思う」
ニュータイプのクスコを連れていく、か。
とはいえ、クスコは派手系の美人だ。
ある意味俺1人で行動しているよりも、目立ってしまいそうな気がする。
「シーマとはデートをしたんでしょう? なら、仮とはいえ恋人なんだし、他の3人とも同じようにした方がいいんじゃない? 何だか私が見たところでは、シーマだけがいい目を見てるような気がするし」
「そういう理由か」
「勿論、クスコが今回の件に役立ちそうだからというのもあるわよ?」
マリューにそこまで言われると、俺も反対する訳にはいかない。
それにマリューが言ってるように、何だかんだと俺はシーマと一緒にいる事が多い。
モニク、クスコ、クリスもシーマと同様に仮とはいえ恋人なのだ。
「分かった。なら、クスコに声を掛けてみるよ。……ちなみにモニクとクリスは?」
「さすがに、女3人……それも美人ばかり連れていると、目立つでしょう?」
「否定はしない」
ただでさえ、X世界は戦後という事で治安は決してよくはない。
そんな場所に美人を連れて街中を歩いていれば……間違いなく嫉妬した奴に絡まれるだろう。
まぁ、それならそれで、そういう連中からも情報収集が出来るんだから、悪い話ではないのだが。
ただ、それはあくまでも普通の場合だ。
今回は見つからないように忍び込む必要がある以上、こっちも派手な動きは出来るだけ避けたい。
そんな訳で、俺はクスコに一緒にフォートセバーンに行くのかを聞きに行ったのだが……
「ええ、当然行くわ」
一瞬の躊躇もなく、クスコは俺の言葉に頷く。
レモンとはまた違った色合いの桃色の髪を掻き上げつつ、笑みを浮かべる。
「あら、今回はクスコだけなのかしら?」
「そうそう。シーマはともかく、私達も置いていくの?」
「ちょっと、あたしはともかくってどういう事だい」
食堂でお茶をしていただけに、4人が揃っていた。
そんな中でこうした話が出たのだから、他の3人がそんな風に言うのも当然だろう。
「悪いが今回はクスコだけだ。フォートセバーンに行くのにお前達全員を連れて行ったら、間違いなく絡まれるだろ」
「……そ、そうかい?」
「それなら……その、仕方がないわね」
「え、ええ。そうね。アクセルを困らせる訳にはいかないし」
照れた様子を見せる3人だったが、取りあえず納得した様子だったのでクスコに視線を向けると……
「ふーん。ふーん。ふーん」
何故か微妙に拗ねていたのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751