「へぇ……このピザは美味いな。まさか、こんな場所で本格的なピザを食べられるとは思わなかった」
喫茶店の中で、俺はピザを楽しみながらそう言う。
あくまでも俺の偏った知識なのだが、アメリカのピザというのは……そう、イタリアで食べられているピッツァと呼ばれているようなものではなく、キッシュのようなピザであるという認識があった。
勿論、普通のピザも食べられてはいるんだろうが。
「そうね。少し驚いたわ。ここまで美味しいピザが食べられるとは思ってもみなかったもの」
クスコはコーヒーを飲みながらピザを食べてそう告げる。
ちなみにピザにつきものの飲み物といえばコーラとかなんだろうが、この店はコーヒーが売りの店なので店員にはコーヒーを勧められる。
だが、俺はNoと言える男。
クスコは元々コーヒーにも興味があった為か、普通にお勧めのコーヒーを頼んだが、俺はオレンジジュースを頼んだ。
……出来れば紅茶がよかったんだが、コーヒーが売りの店で紅茶を頼むのも何だかな。
ネギやユウキ辺りならコーヒーが売りの店でも普通に紅茶を頼んだりしそうだが。
ともあれ、そんなオレンジジュースを飲みながらピザを楽しむ。
けど、ピザを焼くにはピザ釜が必要だ。
あるいは冷凍のピザを解凍してるのか……いや、ないな。
幾ら何でも冷凍のピザと焼きたてのピザの味の違いくらいは理解出来る。
だがそうなると、それはそれで疑問がある。
基本的にこういう本格的なピザというのは、石窯で焼くものの筈だ。
そして石窯を使うとなると、当然ながら薪が必要となる。
雪国であるフォートセバーンにおいて、どうやってそれだけの薪を入手出来るのかが分からない。
あるいは薪ではなくもっと別の方法……それこそ電気を使ったオーブントースターや、いわゆるサラマンダーと呼ばれる調理器具を使っているのかもしれないな。
「とにかく、今はここで少し時間を潰しましょう。どこに行くのかも決める必要があるし」
「エニルの一件であそこまで人目を集めるとは思わなかったしな。……それに、どこに向かうかとなるのを決める必要がある。とはいえ、エニルのおかげで考えられる場所もあるが」
「具体的には?」
「政庁だな」
エニルが父親の知人に会うという事だったが、このような状況で戦力を用意するとなると、その辺の軍人がどうにか出来る訳がない。
そうなると、当然だがその知人は相応の地位にいる者になり……そんな状況で一番可能性が高いのは、やっぱり政庁だと思う。
基地の司令官とか、そっちの可能性もあるが。
「そう。アクセルが決めたのなら、それもいいと思うわよ。じゃあ、ここで時間を潰したら、行動に移しましょうか」
「そうするよ。今はこのピザの味を楽しむだけだ」
「こうなったらいいとは思っていたけど、アクセルとこうしてゆっくりとデート出来ると思っていなかったわ」
そう言い、笑みを浮かべるクスコ。
俺としてはそんなクスコとのデートが楽しくない訳でもない。
クスコにとって、楽しい日々だとそれはそれで俺も嬉しいのだが。
そう思っていたのだが……
「残念ながら、デートはこの辺で終わりだな」
喫茶店の周囲に集まってきた気配を察知し、そう告げる。
クスコもまた残念そうにしながら俺の言葉に頷く。
「出来ればもう少しアクセルとゆっくりしたかったんだけど。まぁ、少しはアクセルとゆっくり出来たから、悪い話ではないかもしれないけど」
そうクスコが言った瞬間、喫茶店の扉が開く。
いや、開くのではなく蹴り開けたといった表現の方が正しいだろう。
銃を持った軍人と思しき者達が、多数中に入ってきた。
「動くな! この喫茶店の中に凶悪犯がいる!」
そう叫ぶ軍人。
最初に喫茶店に入ってきた軍人のうちの1人がそう叫び、それに続くように更に追加で何人もの軍人が入ってきた。
これは……20人くらい軍人がいないか?
俺達を捕らえる為の行動なんだろうが、何でこんなに人数を?
普通に考えれば、俺とクスコを捕らえる為にこんなに人数を出してくるというのはちょっと意外だ。
だとすれば……考えられる可能性としては、エニルが父親の知人と会って、俺の事を話したといったところか。
エニルは俺が腕の立つMS乗りだというのを知っている。
……腕の立つMS乗りだからといって、生身の戦いでも強いという訳ではないのだが。
エニルにしてみれば、念の為といったところなのだろう。
カリスが捕まったという一件について、フォートセバーンの上層部が知ってるかどうかは分からない。
一応攻めて来たMSは全て撃破するか捕らえるかしたから、MS隊の中から脱出した奴はいないと思う。
いないと思うが、それはあくまでもMS隊の中からだ。
例えば戦いに参加せず、遠くから戦いの成り行きを観察し、それを報告しに戻るといったような奴がいても、おかしくはない。
普通に考えれば、そんな真似をしたりはしないだろう。
だが、カリスはニュータイプだ。
フォートセバーンでちょっと情報を集めれば、カリスはフォートセバーンの象徴とも呼ぶべき人物なのは間違いない。
そんなカリスの件だけに、慎重な真似をしてもおかしくはなかった。
「アクセル、どうするの?」
「取りあえず、ここにいる訳にはいかないし、脱出するか。……クスコ、隠れてろよ」
ニュータイプであると同時に、軍人として鍛えているクスコだが、それでもシャドウミラーの実働班のような実力を持っている訳ではない。
ニュータイプ能力を使って、相手がどこに攻撃をしてくるかというのを察知し、それを有効利用して生身での戦いを行うといった真似をしてもおかしくはないのだが。
「ええ。アクセルには言うまでもないと思うけど、気を付けてね」
そう言い、クスコはテーブルの下に隠れる。
そこにいれば、取りあえず安心だろう。
もっとも、ここは普通の喫茶店だ。
別にテーブルが防弾仕様だったりする訳ではないので、軍人達が乱射した場合、クスコも含めて周囲に被害が及ぶ可能性もある。
そうならないよう、とっとと片付けるか。
客の顔を1人ずつ確認している軍人達に向かって、席から立ち上がるとそちらに向かって移動する。
そんな俺に軍人達が気が付き、喫茶店の中にいる多くの軍人達は一斉に銃口を向けてきた。
「お……」
お前とでも言おうとしたのか、それとももっと別の何かを言おうとしたのか。
それは結局分からなかった。
軍人が何かを言うよりも早く俺は軍人に近付くと、その鳩尾を殴って気絶させたのだから。
「次」
「な……」
まさか、こうなるとは予想出来ていなかったのだろう。
近くにいた軍人が絶句した様子を見せ……そのまま一撃を受けて気絶する。
そうして1人、2人といった具合に気絶していくと、そこでようやく軍人達が動き出す。
「撃つな! 市民に当たる! 素手で取り押さえろ!」
軍人の1人がそう叫び、他の軍人達は素手でこっちに襲い掛かってくる。
今までの一連の動きを見ていても、素手で俺をどうにか出来ると、本当に思っているのか。
こっちに伸ばされる手を回避し、伸びきったところで一撃を叩き込む。
骨の折れる感触が伝わってくるが、俺はそれを気にせずに他の軍人達を気絶させていく。
次々と襲い掛かってくるものの、俺に触れる事も出来ずに気絶していく軍人達。
そうして残りの人数が少なくなったところで……
「ひ……退け、一旦退却するぞ!」
まだ気絶していない軍人の中で、恐らくもっとも階級の高い人物なのだろう。
必死になって叫ぶ様子に、俺はその軍人の側まで近づく。
「どうやらお前が生き残りの中では一番情報を知ってそうだな。……ちょっと一緒に来て貰おうか」
「な……」
捕まえられた男は、まさか自分がこうもあっさり捕らえられるとは思っていなかったのか、驚きの表情を浮かべる。
次の瞬間には他の軍人達に助けを求めようとするものの、既に撤退してそこにはもう誰の姿もない。
この男が部下から慕われておらず、あっさりと見捨てられたのか。
あるいはこれだけの大人数で襲い掛かったのに、こうもあっさり負けるというのは思いもしなかったのか。
理由は分からないが、俺が捕らえた男と気絶した者達を残して誰もいなくなったのは間違いない。
「クスコ、行くぞ!」
「ええ」
クスコに呼び掛けると、すぐにテーブルの下から姿を現す。
本来なら堂々と名前を呼んだり姿を現したりするのは、止めておいた方がいいのだろう。
しかしこのような状況になってしまった以上、隠し立てをしてもしょうがない。
エニルを通じて、俺の情報はフォートセバーン側に渡っているのは間違いない。
それでもエニルと一緒に写真を撮ったりといった真似はしていないので、エニルは俺の顔を知っていても、フォートセバーン側には分からない筈なんだが。
考えられる可能性があるとすれば、いわゆるモンタージュ写真って奴か?
現在戦前の技術がどのくらい残っているのかは、生憎と俺には分からない。
分からないが、それでもこのフォートセバーンを見る限り、ある程度残っているのは間違いないだろう。
その中にはモンタージュ写真の技術とか、そういうのがピンポイントで残っていてもおかしくはない……か?
理由はとにかく、向こうが俺の情報を理解しているのは間違いない。
そうなると、ここでクスコの名前を呼ぶくらいはいいだろう。
……クスコの名前や顔については、フォートセバーン側でも知らないのだろうが。
「悪いな。店の修理費はこの連中から貰ってくれ。ついでに俺達の代金もこの連中から貰ってくれると助かる」
店を出る前、店主にそう告げる。
店主は何かを言いたそうにしていたが、結局何も言う様子はない。
正直なところ、金を置いていってもいいかと思ったのだが。
今はそれよりも先に行動する必要があった。
「おい、何をしている! 離せ!」
俺に捕まっている軍人は必死にそう叫ぶものの、俺はそれをスルーしていた。
騒ぐ軍人の横にクスコがやってくると、俺に向かって口を開く。
「行きましょう」
「ああ。色々と詳しい事情を聞く必要がある以上、出来れば人のいない場所でこいつから話を聞いておく必要があるし」
「話? 一体何を……」
「はいはい、その辺は後でだ。今はまずここから離れるぞ」
そう言って喫茶店から出ると、そこには多くの野次馬の姿があった。
軍人達が喫茶店を囲むようにしていなかったのは助かったが……しかし、これだけの野次馬がいるのはそれなりに厄介だな。
実際、今も喫茶店から出て来た俺達を多くの野次馬達が見ているし。
「どうするの?」
「このまま移動する。さすがにこの状況では、俺達についてくるといった真似は出来ないだろうし」
そう言いつつ、軍人を捕まえたままクスコを引き連れるように移動を始める。
野次馬の一部に近付くと、場所を空けた。
そのまま野次馬達の間を通り抜ける。
幸いな事に……それが具体的にどっちにとって幸いなのかは分からなかったが、とにかく幸いなことに俺達を追ってくるような者はいなかった。
喫茶店の中の出来事から、ここで迂闊に俺達を追えばどうなるのか分からなかったのだろう。
これがエニルとの一件のように痴話喧嘩の類だと思われていれば、もしかしたら興味本位で追ってくる者もいたかもしれない。
しかし、軍人達が大量に突入した結果、その殆どが倒されて、少数が逃げ出したのをその目で見ている以上、普通なら迂闊な真似は出来なくてもおかしくはなかった。
……あるいは、正義感の強い奴がいれば軍人が捕まっているのを助けようとするかもしれないが、そのような者達の姿もここにはない。
そうして結局俺達は、表通りから外れた路地裏までやって来る。
ここに来る途中で軍人は何度か叫び声を上げようとしていたものの、握っている軍人の腕を強く……ただし決して骨が折れたり皮が破けたり、肉が引き千切れたりしないようにして、声を出させるような真似はしなかった。
路地裏に来て、誰も周囲にいないのを確認してから、そこでようやく手を離す。
「き、貴様……自分が何をしているのか、本当に分かっているのか!」
「黙れ。お前が喋っていいのは、俺達の質問に答える時だけだ。でないと……」
そこで一旦言葉を止めると、軍人の頭の横……コンクリート製の建物にそっと手を触れ……
「ひっ!」
指先でコンクリートを抉ったのを見た男の口から、信じられないといった押し殺された悲鳴が上がる。
ネギま世界とかでなら、この程度の事が出来る奴は幾らでもいるんだが。
このX世界には気も魔力も存在しない。
だからこそ、この軍人は鍛えていてもこんな真似は出来ないのだろう。
……あるいは、コンクリートが風化していたとか、そんな風に思ってもいいかもしれないが。
今の悲鳴を聞く限り、そんな風には思っていないらしい。
「自分の立場は分かったな? もし妙な真似をしたり、嘘を吐いたりしたら……コンクリートじゃなくて、お前の腕を抉ってしまうかもしれないから、気を付けて返事をしろよ?」
そんな俺の言葉に、男は何度も頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751