フォートセバーンの路地裏。
現在俺とクスコ、そして捕らえた軍人の1人がいた。
「さて、色々と話を聞かせて貰おうか。……まず、カリスについてだ」
「カリス様について、だと? 言える事はない!」
カリスについてと口にすると、軍人は即座にそう叫ぶ。
コンクリートを指で抉るといったような光景を見せたのだが、それでもこうしてカリスについての情報を聞こうとすると即座に反対してくる。
こうした様子を見ると、やっぱりカリスはフォートセバーンの住民に好かれているのは間違いないだろう。
こうなると、まずはこの軍人の心を折る必要があるか。
「そのカリスだが、少し前に出撃したのは知ってるな?」
「……突然何を言う?」
「いいから、そのくらいの事は言ってもいいと思うが? それでどうだ?」
軍人も俺の問いにそのくらいは答えてもいいのか、やがて頷く。
「知っている。それがどうした?」
「その出撃で襲ったのは俺達なんだが、その戦いでカリスは捕らえられたぞ。他の敵も全員が捕らえられるか死ぬかした」
「馬鹿なっ!」
軍人の口からは、ほぼ反射的といった様子でそう叫ぶ。
それは俺の言葉を信じられないと、そう思っているらしい。
「事実だ。そもそもカリス達が攻めてきたのに、俺はこうしてここにいる。その理由を理解出来るか?」
「そ、それは……そうだ、フォートセバーンを襲おうとして失敗したから、何とかこの中に逃げ込んできたんだろう!」
「フォートセバーンを襲うのに失敗したからって、何でフォートセバーンに来るんだ? もし俺達がカリスにやられたら、それこそとっととこの場から逃げると思うが」
「そもそも、私達は別にフォートセバーンを襲おうとしてはいなかったのよ?」
俺の言葉に続けるようにクスコが告げる。
その言葉は、間違いなく真実だ。
しかしそれが真実だと知ってるのは、あくまでも俺達だけだ。
この軍人にしてみれば、とてもではないが俺の言葉を信じるといった真似は出来ないだろう。
「嘘を言うな! なら、何故カリス様が出撃したんだ!」
「それこそ、このフォートセバーンでは、何の罪もないバルチャーを襲って物資を得たりしていたんじゃないか?」
「ふざけるな!」
その言葉は我慢出来ないといった様子で、男が叫ぶ。
とはいえ、俺達やフリーデンを襲ってきたのは間違いない事実だ。
そして俺達は、別にフォートセバーンを襲撃するといったような事は考えていなかった。
だとすれば、フォートセバーンはそういう街だと認識してもおかしくはない。
ただ、それはあくまでも俺達だからこそそのように思っている事だ。
フォートセバーンの住人にしてみれば、到底許容出来ることではないだろう。
それに今回だけ特別そういう行動を取ったという可能性もあるのだから。
……カリスが今回に限ってそのような行動をしたと思われる理由は幾つかあるが、やはりティファだろう。
同じニュータイプ同士、カリスはティファを奪おうと、あるいは助けようとした可能性は十分にあった。
ティファ以外にも、クスコやマリオンといったニュータイプは存在するのだが、UC世界とX世界のニュータイプは違う。
それでもティファとクスコやマリオンは多少なりともお互いの存在を感知したり、心の接触的なものはあったらしいので、違うことは違うが完全に別物という訳ではないんだろうが。
「お前がどういう風に思うのかは勝手だけどな。……ただ、そうだな。いい事を教えてやろう。フォートセバーンの住人がカリスを信奉しているのは、カリスがニュータイプだからだろう?」
「……そうだ」
「なら、話は簡単だ。こっちのクスコもニュータイプだぞ」
「何?」
俺の言葉が信じられないだろう。
男はクスコに疑惑の視線を向ける。
「ええ、ニュータイプよ」
自信たっぷりにそう告げるクスコ。
まぁ、ニュータイプであるというのは間違ってないんだから、おかしな話ではないか。
違うのはX世界のニュータイプではないというだけだが。
「嘘だろう?」
「本当よ」
疑惑の問いにあっさりと答えるクスコ。
しかもその言葉は自信に満ちており、男も嘘だと断言は出来なくなっているらしい。
多分だが、これはクスコの美貌も効果がある気がするな。
もし俺が自分もニュータイプだと言っても、多分この男は信じてくれないだろうし。
実際にニュータイプではないのだから、信じないのは間違ってないのだが。
「取りあえず、情報収集の時間だ。今回お前に俺達を捕らえるように命令したのは誰だ?」
「何故俺がそれを言う必要がある?」
「それを命令した人物……正確には、それを命令した人物に情報を提供した人物を知ってるからだ」
「何を言っている?」
俺の言葉の意味が理解出来ないといった様子の男。
まぁ、エニルの件をこの男が知ってるとは思えないから、当然かもしれないが。
その後も色々と情報を聞き出そうとしたものの、結局何も聞き出す事は出来なかった。
カリスに対する忠誠心がここまで高いとは思わなかったな。
もしかして、カリスマ性が高いからカリスなんて名前……いや、ないか。
とにかくこれ以上情報を聞き出そうとしても、時間を無駄にするだけだと気が付いたのでさっさと気絶させ……
「どうだ?」
「うーん、多分政庁で間違いないと思う」
クスコがそんな風に言ってくる。
クスコがニュータイプである以上、相手の心を読んだりといった真似は出来る。
とはいえ、UC世界最高のニュータイプのセイラと比べると、どうしてもそのニュータイプ能力は低い。
もしここにセイラがいれば、それこそもっと鮮明に状況を理解出来るだろう。
だが、セイラよりも劣るニュータイプ能力を持つクスコは、確実にどこだと断言出来る程の力はない。
それでも恐らく政庁といった風に言えるのだから、問題はなかったが。
そもそも最初から政庁は怪しいと思っていたので、今回の件はその補強という意味もある。
「じゃあ、いつまでも外にいてもどうかと思うし、そろそろ政庁に向かうか」
「ええ。……でも、大丈夫なの?」
「取りあえず見つかっても俺がいるからどうにかなる。クスコの事は俺が守るから、安心しろ」
「え? ……あ、うん」
「クスコ?」
何故か返事が鈍くなったクスコに疑問の視線を向ける。
しかし、クスコは俺の言葉に何でもないといった様子で首を横に振る。
「何でもないわ。……もう、そういうところがずるいのよね」
ずるい?
クスコが何を言いたいのか分からないものの、今はまず行動に出る必要があった。
「ほら、近付いてくれ。まずは政庁にあるコンピュータから情報を引き出すぞ」
ニュータイプ研究について何らかのデータがあれば、それを盗み出す。
あるいはニュータイプ研究をやっている場所があれば、その研究所がどこにあるのかを知っておきたい。
「行きましょう」
そう言い、クスコは俺の側にやって来て……いや、腕を組む必要があるか?
冬服からでも、柔らかさを感じる双丘が俺の腕に押し潰されるのを感じる。
個人的に嬉しいが、今からフォートセバーンの政庁に侵入するといったような緊張感がどこにもない。
そんな風に思いながら影のゲートを展開し、その影に俺とクスコは腕を組んだまま沈んでいく。
そして影から姿を現すと、そこは既に政庁の中だ。
政庁の中だが、当然ながら人のいる場所に姿を現した訳ではない。
人の誰もいない部屋だ。
ただし、人はいないが同時にコンピュータもない。
コンピュータの代わりにあるのは、雑多な荷物の類。
多分物置として使っている部屋なんだろうな、ここ。
「アクセル、どうするの? ニュータイプ用の研究データとかがある場所に行くんじゃないの?」
「そのつもりだったけど、今はかなり忙しいみたいだな」
現在この政庁はかなりざわついている。
その理由は、当然だが俺にも理解出来た。
というか……考えるまでもなく明らかだし。
カリスが俺達に捕まったのが、その原因だろう。
軍人達の様子を見る限りだと、カリスはこのフォートセバーンの象徴的な存在だ。
そんなカリスが捕まった以上は、動揺するなという方が無理だろう。
そんな騒動になっているが故に、政庁の中を多くの者が歩き回っていた。
「こんなに混乱してるのは、ちょっと予想外だったな。けど……混乱してるならしてるで、それなりに対処のしようはある」
「どうするの?」
「こうして混乱している以上、誰か見知らぬ奴がいても気が付かれにくい。後は……服装をどうにかする必要があるけどな」
俺もクスコも、冬服の類を着ている。
俺の場合は宇宙でも生身で行動出来るくらいなのだから、それこそ南極でも北極でも夏服のまま……どころか、裸でも全く問題はなかったりするんだが。
けど、そうであってもこのフォートセバーンで、コートの類を着ないでTシャツとかでいれば悪目立ちする。
そんな訳でコートを含めて冬服を着ているのだが……政庁の中にいる連中は、スーツ姿だったりする者達が多い。
そうなると、街中では目立たなかった俺達も当然目立ってしまう。
また、エニルから色々と情報が流れている可能性が高い以上、当然ながら俺は指名手配されていてもおかしくはない。
クスコは……多分、クスコも危ないだろうな。
クスコがエニルと会ったのは少しの間だけだったが、クスコの美貌を考えるとエニルが強く印象に残っている可能性は高い。
そう考えると、美形ってのも必ずしも得って訳じゃないんだな。
「っと、来たな。数は……1人か」
廊下を歩いている誰かが近付いてくる気配を感じ、準備を整える。
そして……誰かが扉の前を通り掛かった瞬間、扉を開いて一気にその人物を部屋の中に引きずり込む。
「ぐ……」
即座に気絶させる。
そうして気絶した状態から相手の確認をする。
俺とそう年齢の変わらない20代程の男で、中肉中背といった形。
まぁ、戦後世界のX世界においては食料は決して豊かではないし、ましてやフォートセバーンのような雪国では更に厳しいだろう。
そんなフォートセバーンで太るくらいに食うというのは難しいので、痩せてないだけでも満足出来ているといったところか?
何よりも俺にとって嬉しかったのは、この男は白衣を着ていた事だ。
わざわざ男が着ている服を奪うような真似をしなくても、この白衣を上から着ればある程度は誤魔化せる。
「よし、俺の分はこれでいいな。後は何か手掛かりになりそうなのは……カードキーか。どこの奴かは分からないが、貰っておくか」
男の胸ポケットに入っていたカードキーを奪い、他にも何か使えそうなものがないかを確認するのだが、それ以外は特にない。
……胃薬っぽいのがあったけど、これは残しておいてやろう。
この先必要になるだろうし。
「後は、クスコの分の白衣か何かを手に入れる為に、女が通り掛かってくれればいいんだが」
「あら、白衣なら別に男の人の奴でもいいんじゃない?」
「ん? 一応白衣にも男用、女用で違いがあるんじゃないのか?」
その辺はあまり詳しくないが、一応服装である以上は男女で違いがあってもおかしくはない。
……テンザン級に戻ったら、マリュー辺りに聞いてみるか?
そんな風に思っていると、クスコが何かを言おうとして……
「待て」
その言葉を止める。
再びこの部屋に近付いてくる気配を感じたのだ。
しかも足音は2つ。
つまり、2人がこっちに向かってやって来ていることを示していた。
どういう人物がやって来たのかは、生憎と分からない。
ただ、折角向こうから近付いて来てくれるのだから、白衣や何か役に立つ道具の類を奪わないという選択肢はないだろう。
クスコも俺が止めた理由を理解したのか、それともニュータイプ能力で近付いてくる存在を理解したのか、言葉を止めて黙り込む。
そして……扉の前まで来たところで、一気に扉を開けて2人を部屋の中に引きずり込む。
引きずり込まれた方は、何が起きたのか理解出来ないままの状況で気絶させる。
もしかしたら、この行動でこの連中はトラウマになるかもしれないが……その辺は我慢してもらうとしよう。
「ちょっと、アクセル。妙なところに触ってないでしょうね?」
気絶した人物を確認していたクスコが、少しだけ俺を責める視線で見てきた。
何故そのような真似をしたのかは、考えるまでもなく明らかだ。
気絶している2人のうち、片方は女だったのだから。
とはいえ、咄嗟の事だったので部屋の中に引きずり込む時に、妙な場所に触れたかどうかというのは生憎と分からない。
手の中にそういう感触がないから、多分妙な場所に触れてはないと思うけど。
「それにしても……3人中3人が白衣? これってちょっとおかしくないか?」
「そう言われるとそうかもしれないわね。これは一体どうなってるのかしら? ここは政庁であって、研究所ではないのよね?」
「……研究所もこの政庁内にあるのかもしれないな」
これはそこまでおかしな考えではないだろう。
フォートセバーンはそこそこ大きな街だが、ニュータイプ研究とかを考えると、政庁のような重要拠点の他に警備の厳しい場所を複数作るのは少し問題がある。
であれば、それを纏めてしまうというのはそんなにおかしな考えではないと思えた。
「とにかく、準備は整った。本格的な調査に移るぞ」
俺の言葉に、クスコは頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751