ドーラット博士とエニルの会話を聞いたクスコは、不愉快そうな表情を浮かべる。
人工ニュータイプであるカリスを道具として認識しているのが気にくわないのだろう。
……決して、俺とエニルの関係について邪推して不愉快になっている訳ではない筈だ。
「それでアクセル、これからどうするの? 白衣やカードキーを入手したんだし、研究所に向かう?」
「パトゥーリアとかいうのが地下にあるのは間違いないらしい。あの口調からするとニュータイプがいないと動かせないだろうし、そうなるとニュータイプの研究データも地下にあると考えるのが正しいんだろうが……人工ニュータイプ、か」
俺が欲しかったのは、あくまでも天然のニュータイプの研究データだ。
アルタネイティブ社でティファの研究データは入手したものの、出来ればもっと他のニュータイプのデータも欲しい。
欲しいのだが……今のこの状況を考えると、入手したとしてもそれはカリスという人工ニュータイプのデータとなる。
「貰っておいた方がいいんじゃない? 正直なところあまりいい気分はしないわ。けど、人工ニュータイプであっても、ニュータイプ研究の成果の1つでしょう? アルテミスでなら、それなりに使い道があるかもしれないし」
アルテミスというのは、UC世界のルナ・ジオンが有するニュータイプ研究所だ。
そこではその名の通りニュータイプの研究が行われているのだが、その内容はフラナガン機関で行われていた非人道的なものではなく、被検者のニュータイプ、あるいはニュータイプ候補達は人道的な扱いをされており、リラックスして研究に協力している。
例えば勉強の類もそうだが、嫌々やると勉強が出来なくなる……とまではいかないが、習得率はかなり悪い。
それと比べると、楽しんで勉強を行った場合は物覚えがいい。
プログラムの勉強とかを趣味でやって、一流のプログラマーになったりするのは珍しくはない。
そういう感じでニュータイプの研究を行う場合も被験者達がリラックスして研究に協力するというのが、非常に大きな意味を持つのだ。
だからこそルナ・ジオンのニュータイプ研究所のアルテミスにおいては、フラナガン機関の中でニュータイプ達に非人道的な対応をしていたような者達はいない。
そういう連中は、クレイドルにある農場で強制労働をさせられている。
……ニュータイプ研究をしていたという事は、当然ながらエリートと呼ぶべき存在だろう。
そんなエリート研究者達を農業に使うのはどうかと思わないでもない。
だが、もし農業以外となると、それこそ最悪処刑となる可能性も高かった。
もしくは研究者に相応しくない肉体労働か。
かといって、ニュータイプ研究に関わっていた者達をルナ・ジオンから追放するような真似をすれば、その研究者はジオン、あるいは連邦……場合によってはジオンの残党に合流する可能性があった。
ジオン残党は幾つもの集団があるが、その中にはニュータイプ研究に熱心だったキシリアもいる。
ただでさえキシリアの存在はジオン共和国を率いるガルマにとって厄介な存在だ。
ガルマ本人はキシリアに可愛がって貰っていたので、肉親の情はあるのだろうが。
実際にガルマが率いていた地球方面軍も、その実体はキシリアの突撃機動軍の傘下にあったし。
だが、今のガルマはジオン共和国を率いる立場にある以上、キシリアを追う立場にある。
そんなキシリアの率いる残党にフラナガン機関の研究者達が行くのは、最悪の未来しかない。
かといって、連邦は連邦で厄介なのだが。
こっちに流れてきている情報によると、連邦の中には再び強硬派が増えてきているらしい。
1年戦争の中で散々強硬派を減らしたと思ったのだが……やっぱり戦争で勝ったというのが強硬派が増えた大きな理由だろう。
そんな強硬派がニュータイプ研究者達を手に入れれば、どうするか考えるまでもない。
当然研究者を渡す訳にはいかなかった。
なら、ジオン共和国は?
ガルマが率いており、現在のルナ・ジオンの友好国であるのは間違いないものの、それでも1年戦争で負けたのは間違いない。
月の存在があるので露骨な真似は出来ないものの、それでもジオン共和国がニュータイプの研究者達を入手して研究を始めたとなれば、その成果を寄越すようにと介入してきてもおかしくはない。
何しろ、連邦には強硬派が増えているのだから。
そんな訳で、結局元フラナガン機関の研究者達は飼い殺しにするしかなかった。
……もっとも、こちらも聞いた話だが、研究者の中には農業を続けていった事で、農業に目覚めてしまった者もいるらしく、そのような者達は積極的に農業を楽しんでいるらしい。
「そうだな。アルテミスに……そしてシャドウミラーとしても、人工ニュータイプのデータというのはあっても損にはならないと思う。カリスを見る限り、特に問題はないらしいし。……シナップス・シンドロームというのがあるらしいけど」
「もしかして、人工ニュータイプを作る気なの?」
「どうだろうな。……ニュータイプの能力が高いのは間違いないが、シャドウミラーの場合は気や魔力によって身体強化する事でGを無視した機動とか出来るから、ニュータイプ以上の実力の持ち主は何気に多いんだよな」
勿論、ニュータイプの強みはそれはそれであるだろうが、シナップス・シンドロームとやらがあるのは、結構な難点だ。
それに技術班の場合は取りあえずデータだけでも集めておくといったような真似をしてもおかしくはない。
他にもスティング達を始めとした者達の治療に役立つ可能性もあるし。
「取りあえずここでこうしていても進展はないし、地下に行くか」
「地下に行くよりも、ドーラット博士とエニルを制圧した方がいいんじゃない?」
「どうだろうな。エニルは腕のいいMS乗りではあるが。言ってみればそれだけだ」
これで実はスーパーエース級の操縦技術を持ち、多くの者に影響を与えるようなカリスマ性を持っているとかなれば話は別だが、生憎とエニルはそこまでの存在ではない。
ドーラット博士の方は、結局研究者の1人でしかない以上、確保しても……まぁ、ニュータイプ研究についての情報とかは聞き出せるかもしれないが、それだけだ。
しかも今の状況を思えば、自分の知ってる情報を話すかどうかも怪しいし。
やっぱりエニル達はここでちょっかいを出さない方がいいか。
今のこの状況では、向こうからわざわざフリーデンに来てくれる。
更にはパトゥーリアはニュータイプがいないと意味がない。
そうなると、カリスがこっちにいる限り向こうはどうにかしてカリスを取り返すといった真似をする筈だ。
……あるいは、カリスがフリーデンから脱出するといった可能性もある。
その辺については、一応ジャミルに言っておいたから厳重に監視していると思うが、ガロードに毎晩のように脱走されていたのを考えると、あまり信頼は出来ないのだが。
「じゃあ、やっぱり地下に?」
「ああ。それとパトゥーリアがどういうのかは分からないが、それを奪えるのなら奪っておきたい」
MSなのかMAなのか、その辺は未だに分からない。
分からないが、それでもフォートセバーンの奥の手であるのは間違いない。
であれば、その奥の手をこっちで確保してしまえばフォートセバーンにとって妙な事を考えるのは止めるだろう。
……実際のところ、フォートセバーンが一体何を考えているのかは分からない。
あるいはパトゥーリアも平和の為に使われるといった可能性も否定は出来ないのだが。
「それにしても、アクセルのスライムって凄いわね」
しみじみと呟くクスコ。
クスコにしてみれば、スライムは非常に便利なものに思えるのだろう。
スライムがかなり高性能なのは間違いない。
攻撃力もそうだが、防御力や諜報能力も高い。それでいて糸のように細くなると扉の隙間とかから侵入する事も出来るのだ。
ましてや、敵に限らず岩とかコンクリートとかそういうのでも吸収して体積を増やす真似も出来る。
そういう意味ではかなり万能性の高い能力であるのは間違いない。
「さて、そろそろ地下に行くか。影のゲートで行くから、近付いてくれ」
「ええ」
クスコが何の躊躇もなく、俺の隣にやって来る。
いや、別に俺の腕を抱きしめなくてもいいんだが。
そんな風に思いつつ、影のゲートを使ってそこに沈み込んでいく。
地下に空間があると知った以上、そっちに出るのは特に問題ないのだが……
「地下空間? 洞窟か?」
影のゲートから出た俺が見たのは、岩肌が露出している場所だった。
影で移動したので、ここが地下空間であるのは知っている。
だが当初の予想ではきちんとした地下研究所の類があるのかと思っていたのだ。
そこには多数の研究者と思しき者達がいる。
俺とクスコは壁の側にある岩の陰に隠れながら周囲の様子を確認する。
そこにいた研究者は、俺とクスコが着ている白衣の持ち主と同じ所属なのだろう。
「こうした便利な真似が出来るのなら、カードキーは必要なかったんじゃない?」
小さく呟くクスコ。
実際、その言葉はそんなに間違っている訳ではない。
カードキーがないと入れない場所があっても、影のゲートがあればそういうのは全く関係なくスルー出来るし。
それでも何かあった時の事を考えると、カードキーがどういう時に使えるのか分からない以上、持っておいた方がいい。
「あっても困るものじゃないだろ。それより……あれがパトゥーリアだと思うか?」
地下に広がる広大な空間。
その中心に存在する巨大な機体を見つつ、クスコに尋ねてみる。
「あんなに堂々とあるんだから、多分あれがパトゥーリアで間違いないんじゃない? もっとも、あれだけ巨大となると……MAって呼んでもいいのかしら?」
「ビグザムとかを考えれば、MAでいいんじゃないか? こっちの方が圧倒的に巨大だが」
さっきスライムで聞いた会話によると、このパトゥーリアはニュータイプの存在があってこそという話だったが……これ、ニュータイプ1人で操縦出来るのか?
見た感じでは、このMAは圧倒的な巨大さを持っている。
もしニュータイプがこれを動かすとしても、1人で動かせるとは到底思えない。
「それで、どうするの? あのMAを奪っていく?」
「どうだろうな。ああやって色々な場所と繋がっているとなると……いや、それならケーブルを切ればいいのか」
スライムを使えば、そんなに難しくはない。
ただ問題なのは、パトゥーリアを入手しても使い道があるかだよな。
巨大すぎて、MAとして使うのはかなり難しい……というか、MSと連携出来るか?
「パトゥーリアよりも先に入手するのは、ニュータイプのデータだ。人工ニュータイプのデータだが、それでもある程度使い道はあるだろうし」
「コンピュータは……向こうの方ね」
クスコが示した方向には、その言葉通りコンピュータがあった。
フリーのMS乗りやバルチャーとして活動して、それなりに基地の探索をしている。
その時、コンピュータに触れる機会があったので、X世界のコンピュータについてもそれなりに詳しくなっている。
……もっとも、技術班から渡されたハッキングツールは入出力装置の類があればOSの類が違っていても普通に使えるので、コンピュータに詳しい云々というのはこの場合は関係ないのだが。
「紙のデータ……というか書類やレポートの類があれば、私も役に立てたんだけど」
「それはしょうがない。こういう場所に書類とかレポートとかを置いておけば、間違いなく汚れてしまう。多分、そういうのは他の場所にあるんだろうな」
クスコが言うように、出来ればそういうのは入手しておきたかった。
何しろその手の代物はそれこそピンポイントでこっちの欲しい情報があったりするのだから。
「恐らくそうなんでしょうね。そうなると、あのコンピュータにデータがあるのを祈るだけだわ。あるいはネットワークで繋がっているとか」
「それだと俺も助かるんだけどな。……さて、じゃあちょっと待っていてくれ。俺だけなら気配遮断のスキルで見つからずにコンピュータまで行ける」
ここは明らかに重要な場所である以上、監視カメラの類もあるだろう。
だが、白衣を着ている俺が堂々と歩き、更にはそれで他の研究者達も俺を見ても怪しんだりしない……というか、認識出来ないというが正しいのだが、とにかく不審者だと騒いだりしない以上、監視カメラで見られても問題はないと思う。
「気を付けてね」
そう言ってくるクスコに頷き、堂々とコンピュータのある方に向かう。
当然のように研究者達は俺の存在に気が付かず、誰に声を掛けられる事もないままコンピュータのある場所に到着する。
幸いなことに普通に入出力装置の類があったので、技術班の作ったハッキングツールを突き刺す。
即座にデータの吸い出しが始まるが……ネットワークで繋がっていないか。
それを残念に思いながら俺はデータの吸い取りが終わるのを待つのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751