転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0325話

「2人共、無事でしたか……良かった」

 

 俺達の目の前に現れたのは詠春だった。その下半身は既に石化しており、碌に動く事も出来そうにない。……その状態でどうやってここまで移動してきたのかは不明だが。

 

「長!」

 

 桜咲がそう叫びながら詠春の方へと近付いていく。それを見ながら、俺達もまた同様に詠春の近くへと向かう。

 

「本山の守護結界を過信しすぎていたようです。まさかあのレベルの結界を破壊する事が可能な術者が向こうにいるとは」

 

 ……詠春の状況を見る限りでは、結界を破ったのもフェイトで間違い無いだろう。手練れだと予想はしていたが、こちらの予想以上に出来る奴らしい。

 

「平和な時代が続いて身体が鈍っていたようです。かつてのサウザンドマスターの盟友ともあろう者が情けない。……2人がここにいてネギ君がいないとなると、ネギ君も石化されてしまいましたか」

 

 詠春の言葉に首を横に振る。

 

「いや、予備として使えるとか何とか言ってフェイトが連れ去った。恐らく強硬派の目的は近衛を魔力タンクとして何かに利用しようとしているんだろう。そしてネギはその予備として……」

「くっ、そうですか。ネギ君まで巻き込んでしまうとは……白い髪の少年、彼が恐らくアクセル君からの話にあったフェイトという人物なのだと思いますが、彼には気をつけなさい。天ヶ崎千草とは格が違う相手だ。……君達だけでは厳しいかもしれませんので学園長に連絡して、なんとか増援を……すまない……ネギ君…と……このかを…頼みま……」

 

 その言葉を最後に、完全に石化してしまう詠春。

 

「長ぁっ!」

 

 慌てた桜咲が詠春の石像に触ろうとするが、それを何とか止める。

 

「落ち着け! まずは風呂場に向かって神楽坂と近衛と合流するぞ」

「は、はい。……申し訳ありません、みっともない所をお見せしました」

「気にするな」

 

 桜咲にそれだけ言って、詠春の石像を念の為に空間倉庫に格納してから風呂場へと向かって走り出す。後の面々は、一度朝倉達で見ているとは言ってもさすがに人間が徐々に石化していくのを見るのはきついものがあるのか顔を青くしながら俺の後をついてきている。桜咲に至っては、詠春の石像が消えた時に混乱していたが取りあえず安全な場所に確保してあるとだけ言って無理矢理に納得させた。桜咲にしても今は言い争っている時間は無いと理解しているのだろう。

 そんな様子を確認し、懐から携帯を取り出して登録してある番号へと電話を掛けると数コールで目的の人物が電話を取る。

 

『もしもし、アクセル君かの? こんな時間にどうしたんじゃ?』

「緊急事態だ。親書に関しては無事終わったが、強硬派が関西呪術協会の本山に襲撃を掛けて来た」

『フォッ!?』

「現在は西の長が石化、関西呪術協会のメンバーも大半が石化。ネギが魔力タンクとして敵にさらわれているといった所だな」

『何……じゃと……』

「現在残りのメンバーで神楽坂と近衛と合流すべく移動中だ。それで援軍を頼みたいんだが」

『むぅ、援軍と急に言われてものぅ』

 

 悩むような近右衛門だが、エヴァの存在を忘れているんだろうか?

 

「何も高畑をこっちに寄こせとか言ってる訳じゃない。エヴァがこっちに来てるのを忘れたのか?」

『そう言えば確かにそうじゃったのぅ。……じゃが、それなら何故儂に連絡をしてきたんじゃ? 直接エヴァに連絡すれば話は早いじゃろうに』

「今回の件は仮にも関東魔法協会と関西呪術協会の間での出来事だろう。それをフリーで外様の俺が勝手に仕切ったら後で面倒な事になるのは間違い無い」

『ふむ、気を使ってくれて感謝すべきか。分かった、すぐにエヴァに連絡を取ってみよう』

「ああ、そうしてくれ。それと俺の枷を外して貰いたい」

『枷?』

「ああ。使わないようにと言われていた俺独自のスキルだ」

『うーむ……本来、余り好ましくないのじゃが……それが必要なんじゃな?』

「ああ。敵には少なくてもこの本山の結界を破るレベルの術者がいる。そいつ相手にまだ使い慣れない魔法で対抗するというのはちょっと無謀だな」

 

 俺の言葉に近右衛門は数秒沈黙し……

 

『良かろう。何かあった時の責任は全て儂が負う。好きなようにしてくれて構わん。君達やネギ君、木乃香の安全を第一に考えて行動してくれ』

「感謝する。さて、そろそろ神楽坂や近衛達との待ち合わせ予定の場所に着く。この辺で切るぞ」

『うむ、頼んだぞい』

 

 よし、これで空間倉庫やスライムといった俺特有のスキルを自由に使えるようになった。これがあればフェイト相手でもまぁ、どうにかなるだろう。

 そして丁度その時、待ち合わせの場所である風呂場が視界に入り……

 

「……え?」

 

 視界に入ってきたのは、浴場で一糸纏わぬ姿で倒れている神楽坂の姿だった。神楽坂と一緒にいる筈の近衛の姿はどこにもない。

 

「あやか、千鶴、皆と一緒に神楽坂の保護を!」

 

 周囲を警戒しながらあやかと千鶴に指示を出す。桜咲は俺と共に周囲の警戒を。その他のメンバーは気絶している神楽坂を中心にして集まり、千鶴が虹色領域の腕輪で守護領域を形成する。

 

「アクセル君、アスナさんが目を覚ましましたわ。その……性的にどうこうという訳ではないようです。それと、近衛さんが敵に……っ!? 桜咲さん、後ろ!」

「え? ちぃっ!」

 

 チラリと視線を向けると、桜咲の後ろにはいつの間にかフェイトの姿があった。

 馬鹿なっ、俺に感知されずにここまで近付くだと? まるでいきなり現れたかのように……いや、そう。ここは風呂場で、水やお湯には事欠かない。そしてフェイトは水のゲートを使った転移魔法を使える。

 咄嗟にフェイトの放った一撃をいなし、カウンターを叩き込もうとする桜咲。だが、フェイトの技量はそれにすらも対応し、カウンターに対するカウンターとでも呼ぶべき一撃を加えられて桜咲は吹き飛ばされる。床にバウンドし、壁にぶつかって跳ね返されたと言えばフェイトの一撃がどれ程の威力を持っているか想像出来るだろう。ただ、不幸中の幸いというべきか壁でバウンドした桜咲が倒れ込んだのは神楽坂を中心として張られている守護領域のすぐ側だ。

 

「千鶴!」

「はい! あやか」

「ええ」

 

 その一言で俺の言いたい事を理解したのだろう。あやかが一瞬だけ守護領域の外へと出て気絶した桜咲を守護領域の中へと引きずり込む。

 本来なら守護領域ごと移動して桜咲を中に匿えば良かったのだが、現在は息も絶え絶えな状態の神楽坂を動かすのはきついだろう。よってこの選択になった訳だが、よく俺の一言でこちらの意図を察してくれたものだ。

 

「へぇ、コンビネーションはなかなかだね。阿吽の呼吸って奴かい?」

 

 感心するようなフェイトを正面に見据えて、いつでもスライムを使えるように準備しておく。

 

「まあな。それよりも近衛とネギはどうした?」

「あの2人かい? さて、正直に話す必要性を感じないね。本当なら僕としてもここで君に対して意趣返しをしておきたい所なんだけど……目標が手に入った以上、下手な欲目は損をするだけだろうしね。ここは退かせて貰うよ」

 

 水のゲートを展開し、そのまま沈み込んでいくフェイト。本来ならここで何とか仕留めておきたい所だが、この狭い場所で俺とフェイトが本気で戦ってしまうと恐らく千鶴の守護領域でも耐えられるかどうかは微妙な所だろう。ここは見逃すしかない、か。

 

「こ、このちゃん……」

「ちょっと桜咲さん! 無茶しないで!」

 

 守護領域の中で円の声が響く。そちらへと視線を向けると、膝を突きながらも桜咲が起き上がっている所だった。

 

「無理をするな。……千鶴」

「はい。神楽坂さんと桜咲さん以外はちょっと出てくれる?」

「え? うん」

「わかったわ」

 

 守護領域を解除し、円と美砂がこちらへと近寄ってくる。

 あやかは千鶴から少し離れた場所で鮮血の鞭を実体化させて周囲を警戒中だ。

 その様子を確認した千鶴は自分の腕に装備されている虹色領域の腕輪を起動させる。

 

「私を中心に半径1mに領域を指定。橙の石よ、その力を示せ」

 

 すると先程消えた赤い守護領域の代わりに橙色の領域が生成されて千鶴、神楽坂、桜咲の3人をドーム状の領域で包み込む。ふと見ると、桜咲も神楽坂も気を失うように眠りについている。恐らく常時回復の気持ちよさからだろう。ちなみに神楽坂はあやかが用意したと思われるバスタオルで肌を隠している。

 

「アクセル君、あれは?」

 

 尋ねてきた円と、黙ってこっちを見ている美砂。その2人にこれ以上隠しておける筈も無く、口を開く。

 

「あれは千鶴の持ってるアーティファクトだ」

「アーティファクト?」

「ああ。お前達にもカードをやっただろう? あれを使って召喚する言わば魔法の道具だな。千鶴のアーティファクトは虹色領域の腕輪。未発見アイテムでかなりレアなものらしい。その名の通りに7つの能力を発揮出来るらしいが……残念ながら今は千鶴の実力不足で3つしか使えないけどな。その中の1つがあれだ。常時回復効果を与える領域だな」

「へぇ……さっきまでのとか那波さんのアーティファクトとかいうのを見ると魔法っていうのは本当にあるって信じるしかないよね」

 

 美砂が自分のカード取り出す。

 

「にしても、このカードなんて書いてるのか読めないのよね」

「あ、美砂も? 私のも」

 

 円も同様に自分のカードを取り出す。

 桜咲の怪我を回復している途中だが、まぁ、暗い雰囲気になるよりはいいだろうと判断して口を開く。

 

「まぁ、ラテン語で書かれてるからな。読めなくてもしょうがない」

「え? じゃあアクセル君は読めるの?」

「魔法の基本がラテン語だから一通りはな」

「じゃあ、私のカードに何て書いてあるか読んでくれる?」

「あ、私も聞きたい」

「あー、そうだな。桜咲が回復するまではもう少し掛かるだろうから構わないか。まず円だが」

 

 カードに書かれている円の情報を口に出す。

 

名前:釘宮円

称号:終焉の舞姫

色調:銀

特性:正義

方位:西

星辰性:火星

 

「で、美砂は」

 

名前:柿崎美砂

称号:滅びの歌姫

色調:銀

特性:知恵

方位:東

星辰性:金星

 

「だな」

「ちょっと、終焉の舞姫ってなにその物騒な称号!? っていうか、今更言うのもなんだけど、何で私がこんな男を誘うような格好をしてるのよ」

「……ちなみに私は滅びの歌姫だってさ」

 

 ちなみに円のカードの絵はアラブの踊り子が来ているような紫のシースルーの衣装を着ている。そして男を誘うような流し目をしているというおまけ付きだ。普段自分の事を女っぽくないと嘆いている円だが、カードに描かれている絵は十分蠱惑的だ。

 そして美砂のカードの絵に関しては円の絵と似たようなシースルーの衣装を着ている。違う所はその色が赤という所だろう。

 そんな2人の様子を見ていたカモが口を挟む。

 

「アクセルの兄貴と契約した人の称号は、大抵物騒なものなんすよ。あやかの姐さんは鮮血の乙女だし、千鶴の姐さんは破壊の守護者となってるんで。恐らく、と言うか多分間違い無くアクセルの兄貴の影響だと思うんだけど……」

「と、いう事らしい」

「アクセル君って一体……」

 

 呆れたような表情で俺へと視線を向ける2人。

 

「でも、私はアクセル君と契約した事を後悔していませんわよ」

 

 あやかがこちらへと近付きつつ、自分の鮮血の鞭を2人に見せながらそう言ってくる。

 

「それを言うなら私だって同じよ」

「以下同文って奴ね。ちなみに私もアーティファクトとかいうのを召喚出来るのよね?」

「ああ。ただ、アーティファクトは使いこなすのが難しい。俺の方で分かるのは名前だけだしな。だから今は時間も無いしアーティファクトに関しては忘れてくれ」

「うーん、しょうがないわね。じゃあせめて名前だけでも教えて貰える?」

 

 まぁ、名前だけなら構わないかと美砂の言葉に頷く。

 

「円の方は『純炎の涙』で、美砂の方は『セイレーンの瞳』だな」

「う……アクセル、さん?」

 

 俺が2人にアーティファクト名を告げたのと同時に桜咲が目を覚ます。

 自然と話はそれまでとなり、皆が桜咲の側へと集まった。

 

「はっ、わ、私は……お嬢様!」

 

 ばっと立ち上がると、そのまま外へと走り出した桜咲を腕を掴む。

 

「落ち着け。一人で突っ込んでも返り討ちに遭うだけだ。俺達も一緒に行くから」

「あ、その、すいません」

「あれ? 私……」

「ちょっと、アスナさん!? 自分の格好を考えて起きて下さいまし!」

 

 バスタオルを掛けただけだった神楽坂だった為に、無造作に上半身を起こせば当然そのバスタオルは床へと落ちる。すると俺の目に入ってくるのは……うん、まぁ、予想出来ていたけどな。

 神楽坂の身体からバスタオルが落ちた次の瞬間には、俺の目は円と美砂の2人によって塞がれていた。

 慌ててあやかが神楽坂を脱衣所へと連れて行く音が聞こえてくる。

 そして数分後、ようやく準備の整った俺達は近衛とネギを取り返すべく気の跡を追えるという桜咲を先頭に、関西呪術協会の本拠地を出るのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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