転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0327話

 じりっと、俺達を囲んでいる鬼や妖怪達が包囲を狭めてくるのを確認して口を開く。

 

「桜咲、今から派手な花火を上げる。巻き込まれるなよ」

「は? 花火、ですか?」

 

 突然の俺の言葉に混乱している桜咲をそのままに、既に使い慣れている身体強化の魔法を唱えた。

 

『戦いの歌!』

 

 魔法が発動し、魔力が俺の身体へと纏わり付きその効果を発揮する。同時に脳裏に空間倉庫のリストを表示し、目的の物を選択。

 次の瞬間には、俺の手の上にはどう見ても人が1人で持ち上げる事は不可能だろう巨大なコンテナが存在していた。

 ……そう、あの最悪のテロリストであるアーチボルド・グリムズがリクセント公国で使おうとしたコンテナ爆弾だ。以前のクルーゼとの戦いでも使用したので残りはそれ程ないのだが、どうせならここで使い切ってしまおう。なにせアーチボルド印の爆弾なのでその威力は保証付きだ。

 

「え? ちょっ、あれ今一体どこから出て来たの!?」

 

 神楽坂が上げる驚愕の声を聞きながら、そのコンテナ爆弾を敵の密集している所へと放り投げる。同時に再びリストからコンテナ爆弾を選択。数個を同様に敵の密集地帯へと放り投げる。

 ドスンッ! と重い音を立てながら不運にも落下地点にいた鬼や妖怪達を押しつぶしながら地面へと落ちるコンテナ爆弾。いきなり現れたその大質量の物体に驚いて足の止まっている敵を見ながら再び魔法を発動する。

 

『魔法の射手! 火の20矢!』

 

 始動キーを省略して発動した炎の矢は、それぞれが敵……ではなくコンテナへと向かって飛翔する。

 

「桜咲、吹き飛ばされないように気をつけろよ」

「アクセルさん?」

 

 桜咲が不思議そうに俺へと視線を向けるが、次の瞬間にはドガアアァァァァッ! と耳をつんざくような轟音が周囲に響き渡り、コンテナ爆弾が爆発した爆風とその破片が鋭い刃となって周囲を吹き荒れる。

 幸い俺と桜咲以外は千鶴の守護領域内にいた為に、轟音はともかく爆風による二次被害は受けなかったようだ。

 桜咲も桜咲でさすがに神鳴流の剣士と言うべきか、持っていた大太刀を地面に突き刺して吹き飛ばされるのを防いでいる。刃となって周囲の者を斬り付けているコンテナの破片に関しては、大量の鬼がこちらの盾となってくれているのでそれ程心配はいらない。

 俺に関しては言うまでもないだろう。

 だが、俺達を囲んでいる鬼や妖怪は有象無象、玉石混合の集まりだ。高位の存在は足を踏ん張るなり、防御障壁のようなものを展開するなりしてやり過ごしたものの、それ以外のものは結構な数が吹き飛ばされている。

 

「やれやれ。今ので30は持って行かれたか?」

「この坊主、魔法使いじゃないんか? 今のは魔法じゃないだろう? いや、炎の矢は魔法だろうが」

 

 鳥の顔と羽を持っている妖怪が呟くと、その隣にいた巨大な鬼が金棒を肩に背負いながらそう呟いている。

 先程の爆発でまだ混乱状態の敵を見据えながら口を開く。

 

「桜咲、行け!」

「はい!」

 

 鋭く叫ぶと、先程俺が言ったようにこちらから離れるようにして敵の背後へ回り込むように移動していく。

 鬼や妖怪はそれを興味深そうに見つめながらこちらへと視線を向けてきた。

 

「ただでさえ少ない人数を、さらに減らしてどうするつもりじゃ?」

「さて、な。その答は自分で味わえ! スライム!」

 

 俺の言葉と同時に、空間倉庫の穴が展開。そこから数十ものスライムの触手が現れる。

 

「なんじゃこりゃあ!」

 

 先程話していた金棒を持った鬼が思わずそう叫び、その隙を突くかのようにスライムを操りその鬼へと斬り付ける!

 

「ふんっ!」

 

 スライムの一撃を金棒で防ごうとした鬼だったが……

 

「な、何じゃと!?」

 

 スライムから放たれた一撃は金棒を何の抵抗もなく切断し、同時に鬼も頭から唐竹割に切断する。

 

「ば、馬鹿な……儂がこうも簡単に……」

 

 信じられない、といったような様子で呟く鬼。だが、その身体は煙が消えるかのように次第に薄れていく。召喚された元の場所へと戻るのだろう。

 チラリとステータス覧を確認してみるが、やはりPPも撃墜数も増えてはいない。そうなると経験値が入っているかどうかも怪しいものだな。

 

「ちぃっ、一斉に掛かれ! 奴に攻撃の隙を与えるな!」

 

 鳥の妖怪がそう号令すると、周囲にいた鬼や妖怪が纏めてこちらへと掛かってくる。

 確かに普通ならその判断は正しい。敵対している相手が俺じゃなければ、だがな。

 

「スライムッ!」

 

 俺の声に従い、20本以上の細長い触手が縦横無尽に踊り狂う。触手が一閃する度に、鬼の右手が、河童の首が、名前も知らない妖怪の四肢が切断されて空に舞った。

 これが桜咲を俺の近くで戦闘させなかった理由だ。千鶴の守護領域の様に1ヶ所に固まって動かないのならまだしも、戦闘をする為に動き回っている場合は下手をしたら鬼と一緒に切り刻んでしまう可能性がある。

 

「くそっ、化け物がっ! だが奴とて限界はある筈だ。休ませるな!」

 

 先程の鳥の顔と翼を持った妖怪がそう怒鳴り、敵はそれに従うかのように俺へと襲い掛かってきては身体を切り飛ばされる。こいつらが召喚体であるというのはこっちにとってもあっちにとっても幸運だったろう。四肢切断や頭部切断、あるいは唐竹割りや上半身と下半身が切断されて別の方向へ飛んでいくというような一般人にとっては残虐な行動も、こいつらの場合は死んだとみなされると煙のように消滅していくので千鶴の守護領域内にいる面々はグロい光景を見なくて済んでいる。斬り裂かれている方にしてみれば死なないのだから考えるまでもない。

 そんな風にこちらへと襲い掛かっている敵を斬り裂いていると、俺に対する敵意を念動力の結界が感じ取る。

 

「ちぃっ、気が付かれたか。だがせめて一太刀!」

 

 刀を構えて真上から振り下ろしてくる相手。それは鳥の顔と羽を持った相手だった。ただし先程から指示を出しているのとはまた別個体らしい。

 

「甘いっ!」

 

 振り下ろされた刀は、俺の頭上数10cmの場所で動きを止めていた。……刀だけではなく、身体すらもピクリと動かせないようになって。

 真祖の吸血鬼であるエヴァですらも動きを止められた念動力だ。召喚された中では上位の存在であろうがこいつごときではどうにも出来ないだろう。

 

「ぐっ!」

「消えろ」

 

 スライムを素早く動かし、空中で数10に分割されてそのまま煙のように消えていく。

 

「貴様、本当に人間か? その年でこうも容易く……いや、貴様の魔力量を考えれば純粋な人間ではないという可能性もあるか。……まぁ、いい。強者との戦いこそが我が望み」

 

 スラリ、と一人の女が刀を抜き放ちながらこちらへと近付いてくる。

 一見して人間のようにも見えるその女は、特徴的な外見として狐の面を付けていた。

 

「ふん、人食い如きが強者との戦いを希望するとはな」

「ふふっ、そう言うな。人食いも我等が業である事は否定せんがな。だが、あいにく私の趣味では無い。……皆も手を出さぬようにな」

 

 弧面の女がそう言うと、周囲を囲んでいた者達が引き下がって距離を取る。一言で周囲の者がその命令を聞いている所を見ると、それなりの実力者であるのは間違い無いらしい。

 

「……いざっ!」

 

 瞬動、あるいはそれに類似した技法により一瞬でこちらの懐へと入ってくる弧面の女。袈裟懸けに振り下ろされたその一撃を身体を半身にして回避する。その動きを利用して肘打ちを女の身体へと叩き込むが……寸前で回避された。さすがに他の鬼達に一目置かれているだけはあるな。

 弧面の女はそのまま流れるような仕草で連続して斬り付けてくる。一切の淀みが無く、全ての動作が繋がっているかのようにすら思えるその連撃。その悉くを回避しながら隙を伺う。

 そんな状態が続いてから1分程。ようやくその瞬間が訪れた。

 

「はぁっ!」

 

 神速と言っても過言ではないその突き。人間ではない、妖怪だからこその一撃と言えるだろう。だが、残念ながら今の俺はその動きすら見切る事が出来る!

 自分から突き出された剣先へと向かい、顔面を狙ってきたその一撃を顔を数cm動かして紙一重で回避。そのまま弧面の女とすれ違うようにお互いの態勢を入れ替え……

 

「スライムっ!」

 

 俺のその叫びと共に、弧面の女は下半身はそのままに、上半身だけがスライムに切断された勢いで回転しながら空を飛び、ドシャリと地面に落下する。

 

「ふ……まさか人間の、それも魔法使いに接近戦で敗れるとはな。……化け物よ、私が消える前に名前だけでも聞かせて貰えるか?」

 

 既に下半身は煙とかして消え去っており、今は何とか喋っている上半身ですらも次第に煙へと変化している。

 そんな弧面の女を見ながら、小さく呟く。

 

「アクセル・アルマー」

「そうか、良い戦いだった。またいつか戦える時が来るのを楽しみにしていよう」

 

 それだけ言い残すと、弧面の女の上半身も煙となり消えていった。

 その様子を見ていた鬼や妖怪達はざわりと戦慄く。恐らくこの中でもかなり上位の存在だったのだろう。このままこいつらを退かせられればフェイト達に追いつけるか? 俺のそんな考えが甘かったというのはすぐに証明された。

 

「何をやってる、皆で一斉に掛かるのだ。奴とて所詮は人間。今の一戦で相当消耗している筈」

 

 と、先程から指示を出している男が声を上げた瞬間……

 

「神鳴流奥義、斬岩剣!」

 

 背後からの強力な一撃で唐竹割にされ、言葉もないままに煙となって消えていく。

 その後に残されたのは大太刀を振り下ろした桜咲の姿だった。

 

「神鳴流奥義、百花繚乱!」

 

 次に放たれた技は、多数の気を放出するものだった。それが俺や千鶴を囲むようにしていた敵に背後から襲い掛かる。

 チャンス!

 

「あやか! 解放を!」

「分かりましたわ!」

 

 俺の言葉に短く返事をし、その手に持っていた鮮血の鞭を振りかぶって鞭の先端にある刃先に封じられていた魔法を解放する。

 そこに封じられていたのは、紅き焔が3発、奈落の業火が4発、魔法の射手の炎の矢が2発の合計9つだ。おまけにその全ての魔法は俺がかなりのSPを注ぎ込んで発動したものを封じ込めてある。

 その結果起きたのは……まさに空爆と言ってもいい光景だった。小型の太陽とも言える赤い炎に、闇すらも燃やし尽くすかのような黒い炎。それらには劣るものの、普通の炎による攻撃魔法よりも威力の高い爆発。それらが合計9ヶ所で同時に発生したのだ。

 まさに大火災としかいいようがないその状況の中、それでもこの惨事を引き起こした俺達へと一矢報いようと周囲の鬼や妖怪達はこちらへと向かって来る。

 

『5の影槍!』

 

 こちらへと向かって来る鬼や妖怪に向け、そう呪文を唱える。すると俺の影から伸びた5本の影槍がそれぞれ胴体、手足といった場所をそれぞれ貫きその場に足止めする。

 

「スライムっ!」

 

 そうして動きを止めた以上はそれが致命的な隙となり、スライムによって切断されてこの世から消えていった。

 

「キャアッ、こ、このぉっ!」

 

 後ろからそんな声が聞こえてきたのでそちらへと視線を向けると、そこでは1m程度の小型の妖怪が神楽坂のハリセンに叩かれて消えていく所だった。やはりこちらの目論見通りに召喚された存在に対しては一撃で還す事が可能らしい。

 

「近寄らないで下さいましっ!」

 

 あやかもまた、鮮血の鞭を振るって鬼や妖怪達をその9条の鞭で叩き、先端に突いている刃先で切り裂いている。

 

「アスナ、後ろ!」

 

 千鶴の側にいる円の声で、背後から鬼が迫っている事に気が付いた神楽坂はそのまま千鶴の張っている守護領域の中へと避難する。同時に、近くの敵を一掃したあやかもまた守護領域内に避難した。

 

「うわ、こっちにも来た!?」

 

 身体の表面が青くなっている鬼、青鬼としか表現出来ないような2m程の鬼が金棒を振り上げ、勢いを付けて守護領域へと振り下ろす! だが……

 

 ガァンッ!

 

 と、金属か何かを思いきり叩いたような音を周囲に響かせ、持っていた金棒を取り落とす青鬼。

 

「な、なんじゃこの固さは!?」

 

 その青鬼はそう呟き……次の瞬間には額を何かに貫かれて煙と化して消滅していく。

 同時に俺を回り込んで千鶴達の避難している守護領域へと向かっていた10匹程の集団が巨大な手裏剣に纏めて胴体を切断され、その集団とは別の方向から回り込もうとしていた数匹の妖怪があらぬ方向へと殴り飛ばされる。

 

「え? 何でこんな所にあの3人が?」

 

 あやかが驚きの声を上げる。その視線の先にいたのは銃を構えている龍宮、綾瀬を横抱きにしている長瀬、敵を吹き飛ばしたままの姿勢を維持している古菲の4人だった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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