転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0329話

 犬上小太郎が俺達を待ち伏せしていた場所から数分移動すると、森が途切れて周囲が開けた場所へと出る。そこでまず目に付くのは、当然ながら湖の中央付近に存在している巨大な魔力の柱だ。そして次が広めの湖で柱の部分へと続く橋のようなものが存在している。恐らくあの柱の部分にフェイト達が集まっているのだろう。

 現状で把握している強硬派の戦力は月詠、犬上小太郎、フェイト、天ヶ崎千草の4人。そのうち月詠は桜咲が引きつけており、犬上はここに来る途中の森の中でダウンしている。となると残りは2人。

 だが、その2人が問題か。恐らくは今回の首謀者である天ヶ崎千草に、底の知れない実力の持ち主であるフェイト。このうち、フェイトは俺が相手をするのが妥当だろう。となると……

 チラリ、と俺の背後を走っている面々へと視線を向ける。

 

「長瀬、ネギと近衛の奪還を」

「承知したでござる」

「あやか、神楽坂は天ヶ崎の相手を頼む。最低限足止めをしてくれればいいから、別に倒す必要は無い」

「分かりましたわ」

「まぁ、しょうがないわね。一応ここはあんたの指示に従ってあげる。で、あんたは?」

 

 神楽坂の質問に答えようとして……こちらへと向かって空を飛んでくる存在に気が付いた。鬼というよりは、悪魔。つまりは陰陽師ではなく俺の使うような魔法。即ち。

 

「フェイトの押さえ……のつもりだったんだがな。悪いが指示は変更だ。あやかと神楽坂はこっちに向かって来ている悪魔の対処を頼む。恐らくフェイトが召喚したものだから、神楽坂のハリセンで一撃を与えれば還るだろう」

「分かったわ。さっきの鬼と一緒ね」

 

 神楽坂の言葉に頷き、その隣にいるあやかへと声を掛ける。

 

「あやか、鞭の方は大丈夫だな?」

「はい。アクセル君に魔法を封じ込めて貰いましたので9発全部OKです」

 

 俺の言葉に頷くあやか。一応、小太郎を倒してからここに到着するまでに走りながらだが鮮血の鞭に魔法を封じ込めておいたのだ。……もっとも、時間がなかったので紅き焔や魔法の射手の炎の矢といった簡単な魔法だが。

 

「2人はなるべく早くこっちに向かって来る悪魔を倒して、最初の指示通りに天ヶ崎の方を頼む。奴が何を企んでいるのかは分からないが、どうせ碌なものじゃないだろうからな」

「分かりました。ご武運を」

 

 にこり、と信頼の笑みを浮かべているあやかと神楽坂をその場に残して前へと突き進む。長瀬に関しては、既に自分の役目を果たす為にこの場から姿を消していた。その辺はさすが忍者というべきだろう。

 こちらへと向かって来る大鉈のような剣を持った悪魔。それがその勢いのままにその大鉈を振り下ろそうとして……

 

「そうはさせませんわっ!」

 

 あやかの操る鮮血の鞭がその悪魔へと絡みつく。魔力による鞭のコントロールだ。

 

「アスナさんっ!」

「分かってるわよ!」

 

 あやかの声に頷きハリセンを振り下ろそうとする神楽坂だったか、悪魔はその翼で空中へと浮き上がる。

 

「キャッ」

 

 そのまま一緒に空中に連れて行かれるのは御免だとばかりに、悪魔を縛っていた鞭を解放するあやか。その際に先端に付いている刃先で多少ではあるが切り傷を与えているのはさすがというべきだろう。

 その様子を横目で見ながら、俺は湖の中央へと向かって伸びている橋を進む。

 

「……いたな」

 

 橋を進むこと約十秒。その先では既に見慣れたと言ってもいい無表情のフェイトがこちらを待ち受けていた。

 フェイトの近くには天ヶ崎の姿も見える。その近くの台座には相変わらず気を失ったネギと、ガムテープで口を封じられている近衛が転がされている。

 

「んーーーっっ!」

 

 目に涙を浮かべながら俺の方へと視線を向ける近衛。出来ればすぐに助けに行きたい所だが、2人の救助に関しては長瀬に任せてある。それに……

 

「そう簡単に行かせると思うかい?」

 

 フェイトがゆっくりと歩いて、俺の前へと移動してくる。

 

「……だと思ったよ」

 

 こちらも足を止め、フェイトと向かい合う。

 

「全く、君にはつくづくこっちの目論見を壊されるね。まさかあの鬼や妖怪達の大群をどうにかしてくるとは思わなかったよ」

「ふん、よく言う。あそこで別れ際にこの程度の奴等にやられるなよ、みたいに言い残していったのは誰だ?」

「それにしても予想よりも早すぎる。……本当ならこっちの目的が叶ってからの予定だったんだけどね」

 

 ジリッとお互いに距離を縮めながら会話を続ける。

 

「目的?」

「ああ。……まぁ、詳しい事は後のお楽しみだよ」

「そうか、それは残念だ。……スライムっ!」

 

 俺とフェイトの距離がお互いの射程距離に入るギリギリの間。そこで俺は空間倉庫を展開し、数十ものスライムの触手を呼び出して寸分の躊躇いも無くその触手をフェイト目掛けて叩き付ける! MSやPTでさえ難なく斬り裂くスライムの触手による乱れ斬りだ。幾らフェイトと言えども無事では済まないだろう。……そう思っていたのだが、スライムの触手が振り下ろされた時には既にそこにフェイトの姿は無かった。

 そして同時に感じる危機感。それを感じるのと同時に、瞬動を使ってたった今スライムによって斬り裂かれた場所へと自分の身を運ぶ。そして次の瞬間。

 ドドドドドドドドッ! とつい今まで俺がいた場所へと降り注ぐ石の槍の雨。周囲を見回すと湖の上に立っているフェイトの姿があった。多少の損傷は見られるがフェイト自身は無傷と言ってもいい状態でこちらを観察するような視線を向けている。

 

「無詠唱の召喚術かな? それにしてはどこか違和感がある。君の側に空いている黒い穴に関しても理解不能だし」

「さてな。わざわざ手の内を晒すような真似をする訳がないだろうに。……次、行くぞ」

 

 お互いに向き合いながらタイミングを計る。そして……

 

『アリアンロッド 来たれ深淵の闇、燃え盛る大剣、闇と影と憎悪と破壊、復讐の大焔。我を焼け、彼を焼け、そはただ焼き尽くす者……奈落の業火! ……固定、掌握! 術式兵装獄炎煉我!』

 

 俺の使える最大の炎の魔法である奈落の業火を、闇の魔法で取り込む!

 同時に、俺の中に吸収された黒い炎が身体から吹き出してその身を覆う。

 

『ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト おお、地の底に眠る死者の宮殿……冥府の石柱!』

 

 こちらが闇の魔法の準備を整えている間、フェイトも何もしていない訳ではなかった。呪文を唱え終え、魔法が発動すると長さが20m、半径5mはありそうな巨大な石の柱が俺目掛けて落下してきたのだ。その数、3本。

 

「加速!」

 

 精神コマンドの加速を使い、こちらへと降ってくる巨大な石柱を潜り抜ける。回避方向は前方なので、当然潜り抜けた先にはフェイトがこちらを待ち構えていた。

 というよりも、わざと回避方向を誘導した節があるので恐らく向こうの計算通りなのだろう。

 

「その技法……あぁ、思い出した。闇の福音が編み出した闇の魔法か。ただ、それは出力をアップするようなものだった筈。……まぁ、君程の戦闘技術を持っているのなら十分使えるのかも知れないけどね」

 

 そう言いながら、こちらが近付く前に迎撃しようというのか新たな魔法が発動する。

 

『千刃黒耀剣』

 

 フェイトの後方に20を超える数の長剣が現れる。そしてフェイトが腕を振り下ろすのと同時に、それらの剣はまるで自分の意志を持っているかのような軌道を描きながら俺へと迫る!

 

「ちぃっ、スライムッ!」

 

 こちらへと迫る剣を迎撃する為にこちらもスライムの触手を出す。

 そこから始まるのは触手と長剣による、周囲の空間全てを使った死の舞踏。スライムの触手が剣を刀身半ばで斬り裂き、あるいは剣が触手の先端を斬り飛ばす。

 しかし目の前で行われている触手と剣の戦いは、フェイトの召喚した剣が圧倒的に不利だった。一撃の威力は触手が上。同時に先端を剣に斬られたとしても空間倉庫の中に入っているスライムの質量は既にMS1機や2機程度ではないのだ。質、量共に負けている剣群に勝ち目などある筈も無く……

 

「そこだっ!」

 

 剣の残りが数本になったその瞬間、少数の触手で剣の相手をしつつ残りの大部分がフェイトへと襲い掛かる。しかし……

 

「忘れたのかな? 僕にはこれがあると」

 

 フェイトの前に現れた魔法障壁がスライムの触手を弾き返す。だが。

 

「知ってるよ!」

 

 最後の剣を触手で斬り裂き、同時に瞬動でフェイトの懐へと潜りこむ。

 

「分からないかな、僕には……」

「直撃」

 

 フェイトの言葉を最後まで言わせずに、精神コマンドの直撃を使用。黒い炎を纏った腕でフェイトの喉を鷲掴み、そのまま……毟り取るっ!

 

「ぐっ!」

「……何?」

 

 グシャッ、という生々しい音が周囲に響き渡るが、その手に違和感がある。なんと言うか、生身の人間というよりは作り物のような……

 

「ヒュー、ヒュー……ん、んん。これでよし」

 

 そして喉の筋肉を毟り取られたというのに、特に違和感無く言葉を発するフェイト。

 

「……お前、人じゃないな?」

「さて、それがそんなに大事な事なのかな? そもそもそれを言うなら君だって既に人の枠から外れているだろうに」

「一応俺は人間のつもりなんだがな」

「君が人間? ……まぁ、ジョークは置いておくとして次の舞台を始めようか。君には色々と隠し球があるようだしね」

 

 フェイトの話を聞きながら右手を振るい、手に付着していたフェイトの喉の肉を湖へと投げ捨てる。同時に脳裏に空間倉庫のリストを表示してサブマシンガンを選択。

 

「そうかいっ!」

 

 その言葉と同時に、銃口をフェイトの方へと向けてトリガーを引く。

 湖面へと響き渡る銃声を聞きながら、ジリジリとフェイトとの距離を詰めていく。

 あくまでもこのサブマシンガンは牽制と目眩まし以外の意味が無いのは分かりきっているが、それでも撃たれる以上は常に魔法障壁を展開しないといけないだろう。

 

「愛、直撃」

 

 精神コマンドの愛と直撃を使用し、サブマシンガンを空間倉庫へと収納。愛の中の加速の効果と瞬動を同時使用してフェイトへと突っ込みながらスライムの触手数十本を四方八方へと伸ばして同時に魔法障壁へと突き刺す!

 魔法障壁が展開していたようだが、直撃の効果によって無効化され、フェイトの身体中へと触手が突き刺さっているのが見えた。だが……

 

「……何?」

 

 触手が突き刺さった筈のフェイトの身体がドロリ、と水のようになって湖へとこぼれ落ちていったのだ。

 これは、どう判断するべきだ? フェイトの身体が水のような物質で出来ていた? あるいは水を使った身代わりのような物か? ……水による転移魔法を使っていた事を考えると、恐らく後者だな。

 まだフェイトが生きている。そう判断し、周囲を見回しているとこちらへと向かって来るあやかと神楽坂が見えた。あの大鉈を持った悪魔を無事倒すか還すかしたのだろう。

 

「アクセル君、ご無事ですか!?」

「ああ。そっちも無事なようで何よりだ」

「それで、あのフェイトとかいうのはどうしたの? ここにいないって事は倒した?」

 

 神楽坂の言葉に首を振る。

 

「いや、水の分身みたいなのを身代わりにして逃げたらしい。まぁ、とにかくこれで残るは……っ!?」

 

 2人と話していると、突然背後から莫大な魔力を感じ取り反射的に振り向く。

 当然その魔力の出所は魔力の柱であり、そこからは巨大なナニカが姿を現そうとしていた。

 

「……化け物……」

 

 あやかのそんな声が不思議と周囲へと響き渡るのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    ???

撃墜数:376

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