転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0330話

 ようやくフェイトを撃退したと思ったのも束の間、時間を掛けすぎたらしく魔力の柱からソレが顔を覗かせていた。

 身長50mは越えているかのようなその存在は、腕が左右2本ずつの合計4本。顔もこちらから見えるものと、後頭部にもう1つ。額から角が生えている所を見ると、鬼の類なのだろう。……俺達が先程戦った鬼の集団とは比べものにならない程高位の存在だろうが。いわゆる、鬼神……だろうか。

 

「ふふふ。フェイトはんを倒したのはええけど、どうやら一足遅かったようやな。儀式はこの通り、無事に終わりましたわ」

 

 鬼神の異様に息を呑んでいるあやかと神楽坂。……いや、俺もか。とにかくこの場にいる3人へと自慢気に声を掛けてくる天ヶ崎。

 

「儀式、だと? ネギと近衛を魔力を使って何を呼び出した?」

 

 脳裏に駄目元で空間倉庫のリストを表示しながら天ヶ崎へと声を掛ける。

 くそっ、やはり空間倉庫に入っているのは通常兵器のみでマジックアイテムの類は一切無い。通常兵器、特に銃器や爆薬はある種の儀式して魔力を込めるなりしないと効果が非常に限定されるのだ。つまり、俺の今の手札でこの鬼神を倒す手段で思いつくのはスライムくらいだろう。しかしそれにも問題はある。

 ……グロウセイヴァーがあればな。あの機体なら多少威力を削られた所でどうにでも出来そうな気がするんだが。

 

「二面四手の大鬼、リョウメンスクナノカミ。1600年前に討たれた飛騨の大鬼神や。20年程前に封印が破られた時はこの坊やの父親のサウザンドマスターが封印したらしいけど……今回はそうはいきまへんえ?」

 

 やはり鬼神か。しかし飛騨? 確か岐阜県だったと思うが、そこの大鬼神とやらが何で京都に封印されているんだ? いや、関西呪術協会のすぐ側に封印されていたんだから恐らく何らかの魔法的な事情があるのは確かなんだろうが。

 

「ちょ、ちょっと。アクセル。あのデカブツをどうにかしろって言われてもさすがに無理よ!?」

「だろうな。召喚された相手ならそのハリセンがあれば問題無かったんだが……封印を解いたという事は実物そのものだろうからな」

 

 だが、どうする? 現状の俺の手持ちであのデカブツとまともにやり合うだけの代物はスライムくらいしか思いつかない。そう、恐らくスライムならあの大鬼神とやり合おうと思えばやり合える。だが、その場合の問題はスライムはともかく、俺があの大鬼神に狙われた時にどうするか、だ。さすがに闇の魔法を使っても、あの大きさの高位の鬼神に狙われたらまともに対抗出来る筈はない。いわゆる、攻撃力は高くても防御力が低いみたいな感じだな。

 そんな風に思った時だった。夜空を切り裂くように上空から何かが……いや、誰かが降ってきたのは。

 その降ってきた誰かは自由自在に空を飛び、かなりの速度でリョウメンスクナノカミへと近付いていく。

 

「あれって……刹那、さん?」

「……に、見えるが。翼、だと?」

 

 神楽坂の声が聞こえ、俺も小さく頷く。確かに桜咲は闇夜を切り裂きながら飛んでいる。そう、跳んでいるのでは無く飛んでいるのだ。その背に生えた翼を用いて。

 

「陰陽術にそういう術でもあったのでしょうか?」

 

 あやかの言葉を聞きながらも首を傾げる。だが、そんな風にこちらが困惑している間にも桜咲はその翼を使いリョウメンスクナノカミの懐へと飛び込み、こちらを迎撃しようとした天ヶ崎の隙を突くかのように近衛を掻っ攫って即座にその場を離脱してこちらへとやってくる。幸いだったのはリョウメンスクナノカミの懐に素早く飛び込めた事だろう。あの懐に飛び込まれてその力を使った場合は、恐らく術者である天ヶ崎も巻き込まれるので自分の式神を召喚しようとしたその一瞬の隙を突いたのだ。

 

「ちぃっ、烏族のハーフやったんか!」

 

 悔し気な天ヶ崎のそんな声が聞こえてきて、ようやく理解する。桜咲のスキル覧にあった半烏族。その名の通りに、あれがそのスキルを解放した姿なのだろう。

 そして、天ヶ崎の不運はそれだけでは終わらなかった。

 

「ネギ坊主は返して貰うでござるよ」

 

 どこからともなく現れた長瀬が、天ヶ崎の手元に唯一残されたネギを桜咲と同じように奪取してこちらへとやってきたのだ。

 

「少し手間取ったでござるが、何とか任務達成でござる」

「楓ちゃん、ナイス!」

 

 神楽坂がネギを横抱きにしている長瀬へと思い切り抱きつく。

 

「な、なんやてぇっ! くそっ! その2人を奪われても既にリョウメンスクナノカミは復活しとるんや。長時間は無理でも短時間のコントロールならウチで十分。その2人、返してもらうで!」

 

 そう言ってリョウメンスクナノカミの拳を振り上げさせる天ヶ崎だったが、その不運はまだ終わりを告げていなかった。突然上空から発射された何かがリョウメンスクナノカミへと降り注ぎ、ドーム状の結界らしきものを作り出したのだ。

 

「こ、今度は何や!?」

「ふふっ、貴様等はよくよく私の旅行の邪魔をしたいと見える。おまけにこちらの身内も随分と翻弄してくれたようだし、その礼をさせてもらおうか。出来るだけ丁重に……派手にな!」

 

 周囲へと響く声。その発生源は俺達の上空だった。そこにいたのはエヴァ。そう、闇の福音と呼ばれる真祖の吸血鬼だ。

 

「アクセル、お前にしては随分と手こずっているようじゃないか」

 

 チラリ、とこちらを見て愉快そうな笑みを浮かべるエヴァ。その様子に苦笑しながらも安堵する。一見お子様で、実際その中身もお子様なのだが、その魔法に関する実力は間違い無く一級品。この世界でもトップクラスに入るのだろうから。

 

「まぁ、そもそも貴様は魔法はまだまだ修行中だからな。一番威力のある魔法が中の上程度の奈落の業火だ。あの鬼神の相手をするにはまだ早いだろう。……お前特有のスキルを考えても、な。まぁ、見ていろ。闇の福音と呼ばれた私の本気を」

 

 そう言い、空中へと浮かび上がっていくエヴァ。それを見ながら、術式兵装の獄炎煉我を解除する。

 

「ふぅ。……まぁ、エヴァがいればどうにでもなるか」

「エヴァちゃんってそんなに強いの?」

 

 神楽坂の問いに頷き……

 ドクンッ!

 

「?」

 

 ふと、自分の中でナニカが脈動したような気がした。

 

「アクセル?」

 

 一瞬感じた脈動が多少気になったが、今は特に何も無いし気のせいだったんだろうと判断して神楽坂との話を続ける。

 

「いや、なんでもない。そうだな、エヴァの強さはある意味反則的だな。少なくても本気でやり合って勝てるかと言えば……まぁ、真っ正面からでは無理だな」

 

 手段を選ばないのであれば、それこそサウザンドマスターがやったように罠とか弱点とかあるが、あのエヴァと真っ正面からやり合って勝てるかと言えば首を振らざるを得ないだろう。

 

「まぁ、エヴァンジェリンさんと正面から戦うという事そのものが無謀だと思いますわよ」

 

 あやかもこちらへと近付いてきながらそう告げてくる。

 

「うーん、ネギと戦ってるのは見た事あるけど……」

「……そうか。神楽坂はエヴァの本気を見た事がないのか。なら見てるといい。一流を越えた一流。世界でもトップクラスの魔法使いの実力をな」

 

 チラリ、と空中でリョウメンスクナノカミを睨みつけているエヴァへと視線を向ける。

 そこでは膨大な量の魔力を練り上げている真祖の吸血鬼の姿があった。

 

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 契約に従い、我に従え、氷の女王。来れ、とこしえのやみ……えいえんのひょうが!』

 

 呪文を唱え終わり、その魔法が発動する。すると50mを越す巨体を持つリョウメンスクナノカミの足下から巨大な氷柱が何本も突き出し、その身体を覆っていく。

 

「凄い……」

 

 神楽坂が唖然とした声を上げている間にも、地面から突き出した氷柱はその成長速度を増していく。そして数秒後には鬼神の氷漬けがそこに存在していた。

 

『全ての命ある者に等しき死を。其は、安らぎ也……おわるせかい』

 

 続けて放たれたその魔法。その効果が何かというのは聞くまでもなかった。氷漬けにされたリョウメンスクナノカミがその氷ごと砕け散ったのだ。

 そして砕け散った鬼神がバラバラになって落ちて……落ちて……

 

「ちぃっ、あやか、神楽坂、長瀬こっちに来い!」

「キャアアアアアッッッッ! ちょ、エヴァちゃん!? 下にいる人の事も考えてよ!」

「ほら、アスナさん。いいからアクセル君の側に!」

「拙者もお願いするでござる」

 

 3人……気絶しているネギもいれると4人が俺の側に来たのを確認してスライムをドーム状に展開させる。その際チラリと上空を確認すると、そこには近衛を横抱きにした桜咲の姿もあった。空中にいる以上あちらは問題無いだろう。

 ドーム上にスライムを展開した為、周囲は銀色一色で全く周りの様子が分からない。だが、そんな状態でもガンッ、ガンッというリョウメンスクナノカミの破片がぶつかっている音が聞こえてくる。

 ……いや、待てよ。どうせなら。

 ふと思いつき、ドームへと降りかかってくるリョウメンスクナノカミの破片を弾くのではなく吸収していく。その状態のまま十数秒。ようやく音がしなくなったのでスライムのドームを解除して空間倉庫へと戻した。

 他の面々も安堵の溜息を吐きながら周囲を見回している。湖の中央にあった舞台は殆ど跡形もなく破壊されており、その部品が水に浮かんで漂っている。……そう言えば天ヶ崎がいないが……まぁ、いいか。

 

「あれ、アクセル君? それに皆さんも……どうしたんです?」

「おろ、気が付いたでござるかネギ坊主」

 

 丁度タイミング良くネギも意識を取り戻したようだ。……と言うか、タイミング良すぎないか? まさか面倒くさくて気絶したふりをしていたなんて事はないだろうな?

 

「具合は?」

「え? いえ、僕は……っ!? そうだ、確か皆が石に……皆は無事なんですか!? 強硬派の襲撃は!」

「落ち着け。もう解決したよ」

 

 くいっとばかりに、上空に浮かんでいるエヴァの方へと視線を向ける。そこではどこか居心地の悪い表情をしたエヴァの姿があった。

 

「キャアアアアアアアアッッッッッッッッ! ちょっ、あれ!」

 

 そんな周囲に響き渡ったのは神楽坂の声。そちらへと視線を向けると、なんとリョウメンスクナノカミの生首が氷漬けになった状態で湖に浮かんでいた。おまけに氷漬けにされてはいてもまだ死んではいないのか、目が鈍い光を放っている。

 

「……ま、いいか。スライムっ!」

 

 空間倉庫から現れたスライムが湖の上を滑るように移動し、氷漬けになっている生首を包み込む。

 

「SPブースト!」

 

 そして俺のSPブーストの効果により、ものの数秒で吸収が終了する。

 だが……

 

 ドクンッ!

 

「ぐぅっ、やっぱり来たか」

 

 今までにも幾度となく襲われたその違和感。仮にも神と呼ばれる存在を吸収した影響なのか一際激しいソレに襲われる。俺の中にナニカが入ってくる感覚。それもとめどなく、途切れる事もないかのように。例えるのならコップにプールの水を無理矢理入れていくような感覚と言えばいいのか。だが、何故かそのコップ、即ち俺の身体は本来は溢れて零れる筈の水を際限なく飲み込んでいくのだ。まるで注がれた水によってコップの大きさそのものが変わっているかのように。

 

「があああああっっっっっっっ!」

「アクセル君、アクセル君。しっかりしてくださいまし!」

「ちょっ、アクセル!? あんた一体どうしたのよ!」

「アクセル殿!?」

「アクセル君?」

 

 周囲の面々が呼びかけてきてはいるが、こちらはそれどころではない。まるで身体の中を無理矢理拡張されているかのような、そんな違和感。

 まだ辛うじて残っている木の通路で踞り、ナニカに耐える、耐える、耐える。

 実際にその感覚に耐えていたのは数分といった所だろう。だが、実際に経験した時間は数時間にも感じていた。しかしどんな苦行でもいずれ終わりが訪れる。

 俺もまた、身体に入ってくるナニカを呑み込み、吸収し、己の物へと変えていくに従ってようやく落ち着いて来た。

 

「ふぅ……」

 

 ようやく一段落し、踞った状態から一気に上半身を起こし……リョウメンスクナノカミを吸収した事による身体の不調の為、そのまま勢いを殺せずにひっくり返る。

 だが、てっきり木の床へと頭を叩き付けるかと覚悟した瞬間、ポスンっと何かが柔らかく俺の頭を受け止めてくれた。

 

「ちょっ、アクセル!? あんた一体何を……」

「ア、ア、ア、ア、アスナさん!? なんで貴方がそんな役得をしてるんですの!?」

「私だって別に好きで膝枕をしてるんじゃないわよ! ただ、アクセルが勝手に私の膝に倒れてきただけでしょ!」

 

 ……なるほど。あやかと神楽坂の話を聞くに、どうやら俺は勢いのままに神楽坂の膝の上に頭を乗せて膝枕をして貰っているらしい。

 

「あー、悪い神楽坂。ちょっと今はきつくて身体を動かせそうにない。しばらくこのままにしておいてくれ」

「ちょっ、あー、もう! 分かったわよ! でも今日だけ特別だからね! 全く、ネギにしてもアクセルにしても、私はガキが嫌いだっていうのに。大体膝枕なんてまだ高畑先生にもしてあげた事がないのに……」

 

 ぶつぶつ言っている神楽坂を無視し、ステータスを表示する。レベルが上がってなかったりPPが増えてないのは……まぁ、実際にリョウメンスクナノカミを倒したのがエヴァだったんだからそれはしょうがない。フェイトに関しても撃墜数が増えていないとなると、やはり逃げられていたと見るべきか。そしてスキル覧へと目を映すと……そこには『鬼神化』のスキルが表示されている。どうやら落下してきた肉体と頭部を丸々吸収したおかげで覚えられたらしい。どんなスキルなのかは気になるが、確認するのは麻帆良に戻ってエヴァの別荘でだな。もし普通の場所で鬼神化を試してリョウメンスクナノカミのように身長50mオーバーとかになったら魔法の秘匿云々では済まないだろうし。

 そんな風に考えているとエヴァと茶々丸がこちらへと降りてくるのが見えた。

 

「アクセルさん、ご無事でしょうか?」

 

 どことなく心配そうな様子の茶々丸になんとか手を振って答える。

 そんな俺をエヴァは面白そうに見つめていた。

 

「なるほど、今のがお前の言ってた吸収か。だが、仮にも大鬼神と呼ばれる程の存在だぞ? よく無事だったな」

「まぁな。おかげで身体の調子が……っ!? 神楽坂、避けろ!」

 

 唐突に念動力が感じた危機感のままに俺の近くにいた神楽坂に注意を呼びかけながら、床を転がるようにしてその場から移動する。そして次の瞬間。

 ドドドドドッとばかりに、大量の石の槍が俺が数瞬前まで寝転がっていた場所へと降り注いだのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    鬼神化

撃墜数:376

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