転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0332話

 修学旅行が終わった翌日、俺の姿はエヴァの家にある別荘の中にあった。俺の他に同行しているのは、エヴァ、茶々丸、チャチャゼロの家主組に既にここに慣れてしまっているあやか、千鶴。そして……

 

「うわっ、ちょっと円。お城だよお城」

「っていうか、この手摺りの無い通路をなんとかしてーっ!」

 

 そう、魔法の世界へと踏み込んでくる決意をした美砂と円の2人である。

 この2人は初めてこの別荘の中に入った時のあやかや千鶴のように城に驚き、あるいは手摺りの無い通路に悲鳴を上げていた。

 

「私達も以前はああいう風だったんですのね」

「いつの間にか慣れてしまったんだけどね」

 

 あやかに千鶴もそんな2人を見ながら苦笑を浮かべている。

 

「ほら、さっさと来い。今日は色々と興味深いものがあるんだからな。ここで無駄な時間を使ってる暇は無い!」

 

 エヴァが空中を浮かびながら2人に声を掛けている。

 修学旅行が終わり、再び学園結界やバグっている登校地獄の影響下にあるエヴァだ。外に出ると花粉症がきついらしいのでこの別荘を借りたいと言ったら嬉々として許可を出してくれた。

 

「ね、ね。アクセル君。この通路を渡るの怖いからちょっと手を繋いでもいい?」

「ちょっと、美砂!」

「柿崎さん!?」

「あらあら。またアクセル君争奪戦が激しくなるわね」

 

 こんな具合でどうにかこうにか通路を進み、いつもの前庭へと辿り着くのだった。

 

「さて、まずはお前達2人のアーティファクトからだな。カードを持ってアデアットと唱えてみろ」

『アデアット』

 

 エヴァの指示に従い、呪文を唱える円と美砂。すると次の瞬間には円には両手首・両足首にそれぞれ腕輪、足輪のようなものが。美砂の首には3cm程の緑色の魔石が嵌ったネックレスがそれぞれ現れていた。

 

「アクセル、アーティファクト名を」

 

 エヴァの言葉に頷き、2人のマスターカードでアーティファクト名を調べる。

 

「円の方が純炎の涙。美砂の方はセイレーンの瞳、だな」

「なるほど」

「エヴァ?」

 

 何やら頷いているエヴァへと尋ねると何でも無いと首を振る。

 

「いや、聞いた事の無いアーティファクトだと思ってな。あの小動物に聞かないと正確には分からないが、恐らくこの2つも未発見アーティファクトで間違い無いだろう。ただ、そっちの2人のアーティファクトとは違って性能は予想しやすい名前だがな」

「分かりやすいんですの?」

 

 あやかの言葉にエヴァが頷く。

 

「まず、釘宮円の純炎の涙。名前から言って炎を操るようなタイプだろう。ちょっとそれを意識してそのアーティファクトを使って見ろ」

「えっと……こう、かな? えいっ!」

 

 右手を前に出して気合いを入れる円。すると次の瞬間には右手の先、10m程の所に炎の塊が現れた。炎の大きさとしては、通常の紅き炎クラスのものでそれなりに大きい。

 

「きゃっ、ちょっ、ちょっと!? 止まって、鎮火、鎮火ぁっ!」

 

 その炎を見て慌てる円。すると次の瞬間には燃えさかっていた炎が突然空気に溶けるように消え去る。

 

「ふむ、やはりアーティファクト名通りに炎を操る能力か。純炎とあるから、恐らく純粋に炎しか操れないのだろうが……腕輪の効果は分かった。だが、足輪はどういう効果なんだ?」

「足輪? えっと……キャアアアァァァァッ!」

 

 足輪の効果を確かめようとした円だったが、次の瞬間には何と足輪に拳大の小さな炎が宿り、そのまま上空へと上がっていったのだ。つまりは……

 

「空を飛んでいる?」

 

 唖然と美砂が呟く。

 そう、美砂の言う通りに円はその足輪に炎が宿りそのまま上空へと飛んでいったのだ。

 

「キャアアアアッ! ちょ、ちょっと、これどうすればいいの!? アクセル君助けてぇっ!」

「だ、そうだぞ?」

 

 ニヤリとしたエヴァを見て溜息を吐き、地面を蹴って落下しそうな所で瞬動を発動、発動、発動。そのまま空中を跳ね回り、円が俺の手の届く範囲を通り過ぎるのを待ってタイミングを合わせて抱きとめた。

 

「キャッ!」

 

 小さい悲鳴を上げる円をそのままに、地面へと着地する。幸い純炎の涙に関しては俺が円を抱きとめた時点で効果を失っていたのか、特に何事も無かったらしい。

 

「あ、ありがと」

 

 最後にぎゅっと強く一回抱き、離れていく円。それを見たあやかが何かを言いそうになったが、その機先を制するかのようにエヴァが口を開く。

 

「どうやら腕輪は炎を操り、足輪は空を飛ぶというのが基本的な効果のようだな。……まぁ、隠されている機能とかはあるかもしれないが。次、柿崎美砂のセイレーンの瞳だな、これは恐らく歌に関係する効果だろう」

「歌?」

「ああ。セイレーンの歌声を聞いた船は沈む。簡単に言えばそんな話だが聞いた事がないか?」

「うーん、そう言えば前にユエちゃんがそんな話をしていたのを聞いたような気が……」

「取りあえず歌ってみろ。そのセイレーンの瞳の存在を意識してな」

 

 エヴァに言われて小さく頷き、首に掛かっているセイレーンの瞳を握りしめながら美砂が歌い出す。その歌詞は何があっても諦めずに、己の誓いを貫き通せ、というような一昔前に流行った歌だ。以前一緒にカラオケに行った時も歌っていたので幸い俺も覚えていた。

 その歌声はさすがコーラス部所属というべきか、堂に入ったものだった。目を瞑りながらその歌声を聞いていると、身体の中から力が湧き上がってくるような感覚を覚える。戸惑いながらも周囲を見てみると、エヴァを含んだ全員が同じように戸惑った顔をしているのでどうやら俺だけでは無いらしい。

 その後色々と実験をした結果、その歌声に乗せて補助効果を発動出来るというのが判明する。しかも攻撃力アップや防御力アップ、速度アップ等。また、それ以外にも逆に対象の能力を下げる補助効果も可能だった。正直、これは反則的に近い能力だ。何せ歌声が聞こえさえすればその効果を発揮するのだから。戦闘中に耳栓をするなんて真似は普通しないし、もししたとしても周囲の音が一切聞こえなくなるというのはデメリットが大きすぎるだろう。念の為にエヴァに魔法障壁を張って試してみて貰ったが、声さえ聞こえていれば魔法障壁の有無は関係なく歌声の効果は発揮された。

 あやかや円のアーティファクトと違い、完全に補助に特化している能力だが弱点も存在する。補助効果が続くのはあくまでも美砂が歌っている間だけなのだ。つまり、俺を含めた味方が敵と戦っているのを見ながら歌い続けないといけない訳で、歌い手である美砂には相当なプレッシャーだろう。……と言うか、どこのマクロスの歌姫だって感じだな。また一度に使用出来る補助効果は一種類のみで、攻撃力アップと防御力アップといった風に複数の効果を同時に発動するというのは不可能らしい。

 

「ま、皆は私が守るからさ。この歌姫に任せて頂戴」

「……滅びの歌姫だけどね」

「ちょっと、それを言うなら円だって終焉の舞姫じゃないっ!」

 

 舞姫と歌姫の間でそんなやり取りもあったが。

 

「あ、そうそう。私も少しパワーアップしたみたいよ?」

 

 千鶴がそう言い、虹色領域の腕輪を召喚する。

 その様子を見ていたエヴァが面白そうに口を開く。

 

「ほう、他の色の魔石も発動が可能になったのか」

「ええ。とは言っても新しく発動出来るようになったのは緑だけなんだけど。私を中心に半径5mに領域を指定。緑の石よ、その力を示せ」

 

 千鶴のその声と共に、右腕に付けている虹色領域の腕輪が発動。ドーム状の領域を生成する。もちろんその言葉通りに展開された領域は緑色だ。

 

「ふむ、確かに。で、効果はどうなんだ?」

「それが、試したのは1人だったから良く分からなくて……」

「そうか、ちょっと待て」

 

 千鶴の言葉に頷き、領域の中へと入っていくエヴァ。

 

「いいぞ、領域の効果を発揮してみせろ」

「はい」

 

 腕輪を左手で掴み、意識を手中させる千鶴。それから数秒するとエヴァの顔色が変わる。

 

「これは……なんと……」

「エヴァ?」

「那波千鶴、もういいぞ。効果は分かった」

 

 エヴァの言葉で千鶴が能力の発動を停止する。

 

「疲労感があるだろう?」

「ええ、少しだけど」

「だろうな。この緑の領域は領域内にいる者に自分の魔力を譲渡する効果を持っている。ゲーム的に言えばこの領域内にいるだけで那波千鶴のMPを消費し領域内にる者のMPが自動的に回復する感じか。……もっとも、その分アーティファクト使用者の魔力を消耗するようだが……いや、待て。この能力ならあるいは……那波千鶴、能力を発動させる時にアクセルの魔力を使うようにイメージしてみろ」

「ええ、構わないけど」

 

 そう言って千鶴が再度緑の石を使い、ドーム内にいる者の魔力を回復する。するとその瞬間、俺のSPが減っていくのが分かった。

 

「……どうだ?」

 

 エヴァの言葉に頷く。

 

「ああ。俺の魔力が減っている。その緑の力では俺の魔力を分け与える事も可能だ」

「そうか、やはりな」

 

 満足げに頷いているエヴァだが、この緑の石の効果は恐らくエヴァが考えている以上に凄まじいものだ。何しろ俺のスキルにはSPブーストというチート的なスキルがある。SP回復の効果も含まれているこのスキルがあれば、実質的に戦闘中に俺のSPが空になるような事態にはなかなかならないだろう。……まぁ、フェイトやらリョウメンスクナノカミやらの時は例外だが。つまり何を言いたいのかというと、そういうボスクラスの敵でない限りは魔力切れにはなりにくいという事だ。ゲームのRPGでは戦闘終了後にHPを回復するのは良くあるが、俺と一緒のパーティならMP回復も可能になる。そしてその際に消費されるのは俺のMPのみで、その俺のMPも時間経過で自動回復する訳だ。

 その辺の話をエヴァにしてみると、案の定ニヤリとした笑みを浮かべて頷いている。

 

「そうだな、確かにそう考えれば緑の石の効果は凄まじいだろう。だが、体力や魔力といったものはともかく、精神的な疲労を癒すのは無理だから過信は禁物だ。あくまでもこれは現実であり、ゲームではないのだからな。まぁ、それにしても十分有用なのは間違い無い。さすが規格外の魔力を持つ異世界人。アーティファクトの効果も規格外な訳だ」

「そう言えば、そうなのよね。異世界人かぁ……本当なんだ」

 

 美砂がしみじみ、といった様子で呟く。魔法や俺の事に関してはリョウメンスクナノカミとフェイト戦後に気絶、と言うか眠っている間にあやかと千鶴が2人に説明してくれたらしい。当然、魔法に関してはともかく異世界人云々というのは絶対に周囲に秘密にするようにとの口止めと共に。

 

「お前等、よくそう簡単に納得したな。普通は異世界人と言われても信じられないんじゃないか?」

 

 エヴァの言葉に円が苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「まぁ、魔法とか吸血鬼とか鬼とか妖怪とかがいるんだから異世界人や未来人がいてもおかしくないでしょ」

「……そういうものか?」

 

 この辺は魔法が当然のものとして身に染みているエヴァや魔法関係者特有の感覚なのだろう。円や美砂、あるいはあやかや千鶴のように魔法に関して全く何も知らない者にとっては、魔法も異世界人も同じ穴の狢という訳か。逆に、だからこそ俺を受け入れられたのかもしれない。

 

「それに、あのリョウメンスクナノカミとかいうでっかい鬼神を見たら……ねぇ? それこそ大怪獣VS地球防衛軍! みたいな感じでも納得出来るわ」

 

 ……実は、その地球防衛軍みたいなロボットのパイロットを俺がやっていたと知ったらどうなる事やら。

 

「ん? そう言えば、アクセル。結局リョウメンスクナノカミを吸収した効果はどうなんだ?」

「あぁ、鬼神化というスキルが習得出来た。ただ、まだどういう効果なのかは確認してないがな。何せ50mオーバーの大鬼神の頭部を吸収して入手したスキルだ。迂闊な場所で使って俺が50mとかに巨大化したら洒落にもならんだろう。だからここで試そうと思ってたんだが……構わないか?」

「うむ、やってみろ。ほら、お前等ちょっとアクセルから離れろ。これからアクセルが面白い事をしてくれるらしいからな」

 

 エヴァの言葉に頷き、皆が俺から距離を取る。20m程俺から離れたところで、呼吸を整えて意識を集中する。

 

「鬼神化」

 

 そう呟いた瞬間、俺の体内でドクンッ、と何かが蠢くのを感じる。身体の中心に何らかの熱の塊が集まり、それが破裂して身体中へと行き渡るような、そんな感覚。

 

「ぐぅっ!」

 

 数秒、その熱を堪えているとすぐにその熱は身体の中から消えていく。……終わったのか? 取りあえず周囲を見る限りでは身長は10歳児のままのようだが。

 

「ア、ア、ア、ア、アクセル君!? 大丈夫ですの!」

 

 俺の様子を怖々と見守っていたあやかを先頭に、皆がこちらへと戻って来る。

 だが、その表情はどこか戸惑っているように感じられた。そしてその感覚はあやかの様子を見る限りでは間違い無いだろう。

 

「アクセル君、だよね?」

「当然だろう。俺以外の誰に見える?」

 

 円の言葉に頷くと、その声を聞いた円は安堵しつつも手鏡をこちらへと渡してくる。

 その手鏡を見ると、そこに映っていたのは紛れもなく俺の顔だ。ただし、左右の側頭部から真上に伸びるように鋭く長い角が1本ずつ伸びている。長さとしては30cm程で、その色は艶を感じさせるような黒だ。また、額の中央からも1本角が伸びていた。こちらは側頭部の角よりも長く40~50cm程で、色に関しても側頭部の物と違い真紅……いや、より深い色合いなので深紅とでも呼ぶべき色をしている。

 しかし鬼神化を使って変わったのはといえば、角が3本生えているだけだった。リョウメンスクナノカミのように4本の手を持っていたり、後頭部に顔がもう1つ付いていたりはしない。

 

「角以外はアクセル君で間違い無いと思うけど……ちょっとその角は凶悪過ぎない?」

 

 美砂の言葉にエヴァ以外の周囲の者達も無言で頷いている。……茶々丸含めて。

 そしてエヴァはと言えば上機嫌で俺へ……というよりも、角へと視線を向けている。

 

「くっくっく。まさか吸血鬼の私よりも鬼らしいとはな。それでどんな能力があるのか把握出来ているか?」

「あー、どうやら既存の俺の能力を強化する感じで発現した能力らしいな。左右の角は操影術のように影を自由に使えるし、額の角は炎の魔法のように火を操る能力だ。ただ、残念ながらこの鬼神化は身体能力自体は多少増幅してくれる程度でしかない。……大鬼神と言われるリョウメンスクナノカミを吸収した割には悪い意味で予想外だったな」

 

 影と炎を操る能力と、多少の身体能力の強化。それとこの角は相当の硬度を持つらしく武器として使えなくも無い、といった所か。

 

「まぁ、しょうがなかろう。リョウメンスクナノカミそのものを吸収したのならともかく、私が破壊した頭部と多少の肉体のみだったのだからな。それより暴走とかそういうのは無いんだな?」

「ああ」

 

 エヴァの言葉に頷き、内心で鬼神化解除と念じると角が空気に溶けるように消えていきすぐに元に戻る。

 

「こんな具合に解除も容易だ」

「なるほど、確かにアクセルが期待した程の力では無かったとは言っても、使えるのは間違いないんだろう?」

「まぁ、それはな」

「ならそう欲張るな」

 

 エヴァはそう言うが、現在のスキル覧最後の1つを使って習得したスキルなのだから出来ればもっと強力なスキルであって欲しかった、というのが正直な所だ。

 結局その日は俺の従者達4人とアーティファクトや魔法の訓練をして別荘の中で1日を過ごすのだった。

 ちなみに、円と美砂も魔法を習得しようとしてあやかや千鶴に教えて貰っていた。

 

 

 

 

 

「ふぅ、この中で1日を過ごしても現実世界で1時間っていうのは凄いわよねぇ。ね、エヴァちゃん。また借りてもいいかな?」

「……まぁ、構わんが。より早く歳を取ることになるのが分かっているか?」

「うっ、……それはちょっとやだなぁ」

 

 そんな風に話をしながらエヴァの家のドアを開けると……

 

「あれ? アクセル君?」

「……ネギ?」

 

 そこにはネギと神楽坂、ついでにカモの姿があった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    鬼神化

撃墜数:376

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