転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0022話

「これが横流しなんかの証拠だ」

 

 いつものパイロットコース棟の会議室で、特脳研の所長室から持ってきたデータディスクと所長と俺のやりとりを録音したディスクをヴィンデルへと渡す。

 

「ご苦労だったな。実力を示した事だし、これでアクセルが実行部隊の隊長になっても誰からも文句は出ないだろう。私の面子も立ったという訳だ」

 

 満足そうなヴィンデルだが、残念ながら今の俺はそれに合わせる事が出来ない。

 

「どうした? 妙に沈んでいるが」

「ああ、特脳研で嫌なものを見てな」

「嫌なもの?」

「ああ。例の所長の悪趣味なコレクションをちょっとな。ま、もっとも所長を処理する時に纏めて処分してきたから、これ以上人目に付く事はないと思うが」

 

 正確にはスライムで吸収したのだが、まさかヴィンデルにそんな事を言う訳にはいかない。

 

「そうそう。録音の方だけど、聞いてみれば分かるが極東支部のハンス中佐とかいうのが所長の後ろ盾だったらしいぞ」

「そうか、分かった。上の方には報告しておく」

「で、次だが……こんな物も手に入った」

 

 次にバッグから取り出したのは、T-LINKシステム関係の書類だ。

 コンピュータの中から有用そうな情報をプリントアウトして持ってきた。

 

「ほう、T-LINKシステムか。そう言えば伊豆基地では念動力者が所属する特殊チームがあるという噂を聞いた事がある。その関係か?」

「恐らくな。あのまま特脳研に置いといても、どうせ死蔵するだけだろ? なら俺達が有用に使った方がいいと思ってな」

「だが、T-LINKシステムを使える念動力者なんて極めて珍しいぞ? そうそういるものじゃない」

 

 ヴィンデルの言葉に、ニヤリとした笑いを返してやる。

 

「そうそういるものじゃない……かもしれないが。少なくてもここに1人はいるぞ?」

「…………」

 

 俺の言葉の意味を最初は理解出来なかったのか、数秒経ってようやく動き始める。

 

「本当か?」

 

 尋ねて来るその表情は遊びという物が一切無く、真剣そのものだった。

 俺はそれに頷き、テーブルに置かれているヴィンデルのペンに意識を集中し、念動力を発動して空中に浮かべる。

 

「これが証拠だな。もっとも、普段は変な所から強引なスカウトを受けないよう隠しているんだがな」

「ならば、何故私に打ち明けた?」

「さっきも言っただろ? 折角T-LINKシステムの情報があるんだ。それを使わない手は無い」

「つまりはお前の機体にはT-LINKシステムを装備して欲しいという事か」

「ああ」

 

 そう言えば、所長を殺した事で撃墜数が1増えていたが、アヤを吸収しても撃墜数は変わっていなかった。これは撃墜対象に意識があるかどうか、とかそういう問題なのだろうか。

 その後はシャドウミラーとしての活動拠点、ラングレー基地の事や、俺がピックアップした隊員達の話で打ち合わせを完了した。

 

 

 

 

 

「諸君、卒業おめでとう。君達は今日からパイロット候補生ではなくれっきとした連邦軍の正式なパイロットとなった。これからもこの士官学校で勉強した内容を忘れずに励んでくれる事を期待する」

 

 パイロットコースの教室。そこで教官が俺達卒業生に向かい最後の言葉を送っている。今日は俺達パイロットコースの生徒、最後の授業の日なので簡単な卒業式のようなものだろうか。

 今日の授業が終われば、俺達はそれぞれの任地へと向かう事になる。俺はもちろん北米、ラングレー基地。

 そこでヴィンデル以外のメンバーとの初顔合わせだ。データでは何度か見たりしたメンバーだが、実際に顔を合わせるのは初めてとなる。

 ……ちなみに以前の俺の予想通り、結局半年で部隊を実働状態に持って行く事は出来なかった。なんとか準備が完了したとヴィンデルから連絡が来たのが2週間程前の事になる。

 後1ヶ月もしないうちに卒業という関係もあり、結局シャドウミラーの正式稼働は俺がパイロットコースを卒業してからという事になった。

 

「起立、教官に向かい、敬礼!」

 

 学年代表としての最後の仕事として、3年全員で教官に対する敬礼をしてパイロット候補生としての最後の授業を終える。

 

「さて、後はシャトルで移動か」

「ん? もう行くのか」

 

 さっさと教室を出ようとする俺に向かい、バリソンが声をかけてくる。

 そういえば、こいつとも結局3年に渡って長い付き合いになったな。

 一般組として入学したのだが、最終的にはクラスでも10位以内に入る成績を叩き出すようになっていた。

 気心が知れていて、それでいて優秀。バリソンみたいな奴がシャドウミラーにいてくれれば助かるんだが。

 

「ああ。何せ色々と忙しくてな」

「そうか。元気でな、というのはおかしいか?」

「いや、おかしくはないだろう。お前も元気で。と言うか、死なないように気をつけろよ。アフリカの方はDC残党がまだかなりいるらしいし」

 

 バリソンに軽く挨拶をし、クラスメイトにも適当に声を掛けつつ教室を出て寮の自室へと戻る。

 寮の部屋にある私物は既に殆どがラングレー基地に送ってあるので、持って行くのは簡単な手荷物だけだ。

 3年間とは言え、自分の部屋だっただけにいざ退去するとなると寂寥感みたいなものが湧き上がってくる。

 

「じゃ、今までありがとうな」

 

 誰にともなく礼を言い、ついでに管理人の爺さんに挨拶をして寮を出る。

 

「後はラングレー行きのシャトルが出るまで待つだけか」

 

 連邦お膝元の士官学校という事もあり、この学校には空港なんかも近くにあるので移動は非常に楽だ。

 空港内にある喫茶店で時間を潰していると、ふと1人の人物が店に入ってくるのが見えた。

 金髪の凛々しい顔立ちのその人物は俺を見ると驚いたように一瞬動きを止めるが、すぐに俺の座っている席へと向かってくる。

 

「久しぶりだな、アクセル。相席いいか?」

「ああ、構わんよ。にしても、まさかこんな所でユーリアに会うとは思わなかった」

 

 ユーリア・ハインケル。言わずと知れた幼年学校時代の親友だ。

 士官学校では俺がパイロットコース、ユーリアが宇宙軍コースに別れてしまった為に校舎も別々となり3年間全く接触がなかった。

 ただ、たまにメールでやりとりはしていたので、完全に音信不通だった訳ではない。

 それでも実際に会うのは殆ど3年ぶりなので、何だか妙な感じがする。

 何と言うか、幼年学校を卒業した時でも凛々しい表情でファンクラブが作られていたのに、今は男装の麗人といった雰囲気だ。

 可愛いというよりは、格好良い。格好良いというよりは男前、みたいな。

 

「アクセル、卒業おめでとう」

「ああ。そっちもな」

 

 運ばれてきた紅茶セットのケーキを1口食べながら、会話を続ける。

 

「ユーリアはやっぱり宇宙か?」

「ああ。そっちは?」

「俺は北米だな。そこでパイロットをやる事になった」

「北米というと、大きい所ではラングレー基地か。……あ、いや、すまん。任地先を聞き出すつもりはないんだ」

「いや、気にするな」

 

 慌てて謝るユーリアに首を振る。

 その後はお互いの学生時代の経験を話しつつ、時間を潰す。

 

「っと、俺はそろそろ時間だ。先に失礼させてもらう」

「ん、そうか。今日は会えて良かった。また機会があったら一緒にお茶でも飲もう」

 

 ユーリアからの挨拶に軽く手を振り、ユーリアと自分の料金を支払い喫茶店から出る。

 

「また、か」

 

 このまま俺のスケジュール通りに行った場合は、恐らくもうユーリアと会う機会は無いだろう。もしあったとしたら、それは反乱時に戦場でという事になると思う。

 

「そのまた、が無いのを祈ってるよ」

 

 呟き、シャトル発射場へと向かった。




名前:アクセル・アルマー
LV:9
PP:35
格闘:142
射撃:160
技量:152
防御:149
回避:177
命中:199
SP:214
エースボーナス:不明
成長タイプ:万能・特殊
空:A
陸:S
海:B
宇:A
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
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スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.7
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撃墜数:5

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