転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0337話

 模擬戦が終わって数時間。殆ど完敗と言ってもいい内容に落ち込んでいたネギだったが、綾瀬や宮崎に魔法を教えて欲しいと頼まれて気分転換も出来たようで復活していた。

 そしてネギがその2人に魔法を教えているのをあやかや千鶴といった面々がフォローし、同じく最近魔法を習い始めた円や美砂と一緒に盛り上がっているのを見ながら寝そべって本を読んでいるエヴァへと声を掛ける。

 

「エヴァ、書斎を使わせて貰っても構わないか?」

「ん? あぁ、別に構わんが……お前はあいつらに混ざらなくてもいいのか?」

「俺の魔法習得は基本的に我流だしな。ネギのようにきちんと魔法学校のカリキュラムに則って教えられるって言うんならそっちの方がいいだろう」

 

 実際、我流と言うか独学で覚えた学習方法なので変な癖とかついている可能性が無いともいえないのだ。あるいは、より効率的な方法で魔法を習得出来る可能性もあるし。

 

「ふむ……まぁ、いいか。確かにお前は自己流だがある程度魔法体系を確立させているしな。そもそもアクセルの魔法習得速度を考えると魔法学校で教えるよりは独学の方がいいかもしれん。あぁ、書庫は勝手に使っても構わんぞ」

 

 エヴァの了解を得て、ネギ達に断ってから書庫へと向かう。

 

 

 

 

 

 書庫に籠もって魔法書を読み始めてからおよそ数時間。現在は操影術についての本を読んでいたのだが……

 

「……まだ難しいな」

 

 操影術の特殊な魔法の1つである、影を使い魔のような形にして操るという魔法が書かれている本を見つけたので、その本を見ながら試していたのだが、どうにも上手く使い魔を形成出来ない。いや、正確には人の形にならないといった所か。どうもその『人の形を取る』というのがいまいち俺とは相性が悪いらしい。そこまで考え、ふと気が付く。

 

「別に人の形じゃなくてもいいんじゃないか?」

 

 確かに人の形をしているのなら一般人に見られても誤魔化せる可能性もあるので汎用性は高いのだろうが、純粋に戦闘に使う目的なら別に人型に拘る必要も無い。そう思って新たな使い魔の生成をしようとしたその時、書庫の入り口から声が掛けられる。

 

「アクセル君、いる?」

「千鶴?」

 

 そう、書庫の入り口から顔を覗かせていたのは千鶴だった。

 

「どうしたんだ?」

「その、エヴァちゃんがアクセル君を呼んでこいって。何かやるみたいよ」

「……エヴァが?」

 

 いつもなら俺が書庫に籠もっている時は、自分から出て来るまで殆ど干渉してこないんだが……何かあったのか? まぁ、丁度休憩もしたい所だったし息抜き的な意味で考えてもいいだろう。

 

「分かった」

 

 操影術について書かれている本を閉じ、千鶴と共にエヴァ達の下へと向かう。

 

 

 

 

 

 千鶴に案内された場所には、現在この別荘にいるほぼ全員が集まっていた。ほぼ、としたのはこの別荘には城の管理等をするエヴァ製の人形がそれなりの数いるのだが、それらが含まれていなかった為だ。

 

「で、集まって何をするんだ?」

 

 エヴァへと尋ねた言葉だったのだが、ネギが複雑そうな顔をして口を開く。

 

「その、僕が父さんを、サウザンドマスターを追っている理由というのを皆さんにお話しておきたくて。魔法に関わるというのがどういう事態になるか、というのを知る意味もありますし。で、それをアスナさんに見せようとしたらマスターがどうせだから興味のある人全員に見せようって話になって……」

「うむ。私もあの馬鹿については興味があるしな」

 

 エヴァの言うあの馬鹿とは、間違い無くサウザンドマスターの事だろう。確かに死んだと思っていた筈の好きな相手が実は生きていて……となると確認してみたい気持ちは分からないでもない。

 

「ほら、全員手を繋いで丸くなれ」

 

 エヴァの指示に従い、その場にいる全員が手を繋いで丸くなる。

 

「いいか、本来この魔法は対象とおでこをくっつけて自分の記憶を体験させられるというものだ。だが、それだと1人しか体験出来ないからな。私の方で術式にブーストと調整を加えて手を繋いで接触している相手全員に範囲を拡大させる」

 

 ……術式の調整とかブーストとかをさらっと出来るのはさすが600年を生きてる吸血鬼だよな。

 

「いいな? では行くぞ。ぼーや、その体験を思い浮かべろ」

「はい」

『ムーサ達の母、ムネーモシュネーよ、おのがもとへと我ら全てを誘え』

 

 エヴァが呪文を唱えると、この場にいる全員を覆うような巨大な魔法陣が現れ……俺達の意識はネギの記憶へとシフトする。

 

 

 

 

 

 意識が戻り、まず目に付いたのは雪景色だった。

 

「雪?」

「はい。ここは6年前に僕が住んでいた山間の小さな村です」

 

 そう話すのは5cm程の丸い光の玉だ。その玉から聞こえて来るのは紛れもなくネギの声。

 

「ネギか?」

「はい。……って、え? アクセル君?」

 

 こちらを見ながら混乱したような声が聞こえて来る。良く見ると周囲には10以上の光球が浮かんでおり、それぞれが微妙に混乱しているらしい。

 

「落ち着け。本来この魔法は霊体となって人型をとるのだが、術式を調整した為に光球となっている。……ちなみに霊体になると真っ裸になるんだが、それでも人型の方がいいという奴はいるか?」

 

 エヴァのその質問に皆が無言で否定する。

 まぁ、光球とは言っても特に不具合はないので皆それで我慢することにしたのだろう。

 

「ちなみに現実の身体は念の為に茶々丸とチャチャゼロが守ってるから安心しろ。それよりもほら、あれがぼーやの小さい頃だろう」

 

 エヴァの声に人のいる方を見ると、そこには3歳くらいのネギに10代の少女らしき姿があった。父親に会える会えないという話をしているとそこにネギと同じ年齢の少女が現れて多少の言い合い後、初心者用の杖を渡して去って行く。ネギの話によると10代の少女がネカネ、後から出て来たのがアーニャというらしい。

 

「ネギ先生、可愛いですわ……」

「委員長、あんたねぇ」

 

 あやかと神楽坂の声が聞こえて来るが、それとは関係なく場面が転換する。

 次に現れたのはどこかの酒場。偏屈そうな爺さんがナギの悪口を言っている。

 

「うわ、子供のいる場所で言う事じゃないでしょあれ」

「っていうか、ネギ君がいるって事はまだ昼間よね? それなのに酒を飲んで酔っ払ってるなんてちょっとどうよ?」

 

 円と美砂の言葉が聞こえ、場面転換。

 最初に出て来たネカネとアーニャがバスで帰っていくとネギは1人で杖を持って誰もいない家で魔法の練習をしたり、ナギの絵を描いたりして過ごしている。

 

「……ネギ先生、一人なのですか?」

「はい、叔父さんの家を借りて」

「でも、それはちょっと……」

「ユエ、今は……」

「はいです」

 

 綾瀬の質問にネギが答える。

 場面転換。

 繋がれている犬の紐を魔法で切って追われたり、凍っている湖へと飛び込んだりする。

 

「あらあら、ちょっとやんちゃしすぎねぇ」

「子供は風の子と言っても、これじゃ風邪の子アルね」

 

 千鶴と古菲のどこか呆れたような声。

 場面転換。

 ネギが湖に落ちたと聞き、急いで魔法学校から戻ってくるネカネ。何故こんな事をしたのかと問われればピンチになったら父親が来てくれると思ったからと答え、ネカネに泣かれるネギ。

 

「……ネギ君……」

「このちゃん、これはもう過ぎた事ですから」

 

 場面転換。

 春になり、湖で釣りをしているネギ。ネカネが来る日だったと気が付き村へと急ぐが、そこで見たものは燃えている村だった。

 

「ちょっ、何で村が燃えてるのよ!」

「それに、村の人達が石になってますわ」

「それって、修学旅行の時のあのフェイトとかいう奴の仕業!?」

「いや、石化魔法はそれなりに高度だが他にも使い手はいる」

 

 混乱している神楽坂とあやかにエヴァがそう告げる。そしてネギは泣きながらピンチになったら父親が来ると思ったのが悪かったんじゃないかと呟く。

 

「違いますわ! ネギ先生には何の罪もありません!」

「そうよ! ネギ君がそんな風に思ったからって……」

 

 あやかと円がそう言う中、さらに事態は進行する。

 

「ちょっ、あれ! 何か地面から出て来たわよ!」

「悪魔、だな」

 

 美砂の言葉にエヴァが答える。

 ネギを中心にして小さいのから大きいのまで大量の異形――エヴァ曰く悪魔――が出て来たのだ。そしてその中でも一際大きい悪魔がその拳を振り上げ……

 

「ネギ先生、避けてぇっ!」

 

 宮崎の悲鳴が上がる中、拳が振り下ろされ……突然目の前に現れた男がその拳を受け止めていた。

 

「ナギ……」

 

 呆然と呟くエヴァの言葉で、その男の正体が判明した。ナギ・スプリングフィールド。ネギの父親で千の呪文の男と呼ばれる人物、か。

 ナギはそのまま雷の魔法で殴りかかってきた悪魔を蹴散らし、同時に掛かって来た他の悪魔達を殴り、蹴り、魔法を使って周囲の悪魔達を纏めて一掃する。

 その様に恐怖を覚えたのか、その場から逃げ出すネギ。だが、それを待ち伏せていたかのように1匹の悪魔が姿を現す。卵のような顔に羊のような角を生やしたその悪魔は光っている口を開く。

 

「ちょっ、ネギ君危ない!」

 

 美砂がそう叫ぶが、それが届く筈も無く悪魔の口から光線が発射され……どこからともなく現れたスタンとかいう爺さんとネカネがネギを庇う。

 その光線のようなものが村の人々を石化した原因だったのだろう、2人は徐々に石化していった。ネカネは石化した部分の足が砕けて地面へと倒れ、スタンは持っていた小さな瓶を使って悪魔を封印する。その後はネカネはともかくスタンはそのまま全身が石化する。そこに再びナギと思われる人物が現れた。

 

「スタンさん、実はいい人だったのね」

 

 千鶴のそんな声を聞きつつも場面は再び転換する。

 ナギによって湖の畔まで連れてこられたネカネとネギ。そのナギからネカネを守ろうとするネギに、形見だと言って自らが持っていた杖を渡して消え去るナギ。そしてネギはそれが自分の父親であるナギだと確信する。

 

「ナギ、あの馬鹿めが」

 

 エヴァのそんな呟きを聞きながら、再び場面は転換する。

 その後は救助に現れた魔法使い達に助けられ、魔法学校へと入学し魔法の勉強に熱中していくネギの姿があった。

 

「これが、僕の……父さんを追う理由です。でも、僕は時々思うんです。悪魔が僕の村を襲ったあの事件はもしかしたらピンチになったら父さんが来てくれると思い込んだ僕への天罰なんじゃないかって」

「何言ってんのよ! 今の話であんたに悪いところなんて何もないじゃん! 何よあの変な化け物、バッカじゃないの! 大丈夫よ、お父さんは生きてるんでしょ! なら絶対に会えるわよ!」

「アスナさん……え? あれ?」

 

 神楽坂が叫んだ瞬間、俺達が見ていた風景がグニャリと歪む。

 

「エヴァ!?」

「分からん、突然術式の構成が乱れて……まさか神楽坂明日菜の魔法無効化能力の影響か? くっ、皆意識をしっかりもて。どこかに飛ばされるぞ!」

「え? ちょっ、キャアアアアアアッ!」

 

 グニャリ、グニャリと歪んでいた風景がさらに非道く歪み、次第に周囲との判別が出来なくなっていった。

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 ふと気が付くと、どこかの部屋が視界に入ってくる。

 

「……皆、いるか?」

「え、ええ。大丈夫ですわ」

 

 周囲へと問いかけると、あやかを始めとして皆が次々に返事をしてくる。どうやら一応全員が無事らしい。

 

「だが、ここはどこだ? ぼーや、見覚えはあるか?」

「いえ、僕の住んでいた所はこんな風に機械とかは殆ど無い場所でしたし」

 

 エヴァの言葉にネギが否定する。となると、これはネギの記憶ではなく……いや、待て。どこか見覚えのあるこの部屋は……まさか!

 俺がそのとんでもない可能性に気が付いた時、部屋のドアを開けて1人の子供が入ってくる。年齢にして先程の子供時代のネギと同じ年頃の子供。赤毛というのもネギと同じだが、俺はその子供に見覚えがあった。即ち。

 

「アクセル君?」

 

 円の呟きが全てを物語っている。そこにいたのは子供の頃の俺の姿だった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    鬼神化

撃墜数:376

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