転生とらぶる   作:青竹(移住)

369 / 4305
0342話

 ふと目が覚めると、周囲に広がっているのは爽やかといってもいい朝の空気だった。ネギの記憶に潜ったのが夜だった事を考えると、随分と時間が経っているのだろう。……まぁ、それも無理は無い。何しろネギの記憶は村の襲撃中心だったが、俺の記憶は俺が転生してからこの麻帆良に来るまでの約20年分だったのだ。場面転換を繰り返していたのでかなり飛び飛びではあるが。

 

「……戻ってきたのか?」

 

 そう呟いて立ち上がったのはエヴァ。その様子を見て、俺自身も地面へと座り込んでいた事に気が付く。

 

「らしいな」

「マスター、アクセルさん。お気づきになられましたか。突然倒れ込んだのでどうしようかと思ったのですが」

「ケケケ。何ガアッタンダ?」

「詳しくは分からんが、調整した魔法と神楽坂明日菜の魔法無効化能力が妙な具合に反応して暴走したんだろうな。そしてアクセルの記憶へと皆が引き込まれた」

「え? 私のせい?」

 

 近くで起き上がっている神楽坂がそう呟くが、エヴァは軽く手を振ってそれを否定する。

 

「いや、原因の1つではあるがお前のせいというだけではない。どちらかと言うと……」

 

 そう言ってエヴァの視線が向いたのは俺の方だった。

 

「俺か?」

「当然だろう。お前の記憶に潜っていたんだからな」

「そうは言われても、俺自身が特別に何かをした訳ではないんだが」

「……それよりも。アクセル君には色々と聞いておきたい事や確認しておきたい事がありますわね」

「そうねぇ。まさかハーレムを作ってるとは思わなかったわ」

「……乙女の唇は安くないんだけどね」

「なら円もハーレムの一員を目指してみる? 少なくてもあの様子だとアクセル君を独占! なんて真似はまず無理だよ?」

 

 俺とエヴァの会話に割り込んできたのは、当然の如くあやか、千鶴、円、美砂の従者4人組だった。

 

「っていうか! 何で大人な筈のアクセルがこんなに小さくなってるのよ! どうも初めて会った時からガキには見えなかったのよね」

「そう言えばそうよね。ね、アクセル君。記事……には出来ないだろうなぁ。そもそも証拠が私達の記憶だけなんだし」

 

 神楽坂の質問に乗っかってそう聞いてくる朝倉だったが、すぐに諦める。

 

「それよりも、アクセル坊主は強いというのが確定したアルね。これは是非勝負して欲しいアル」

「くーふぇさん。そもそもアクセルさんが強いというのは修学旅行で分かりきっていたじゃないですか」

「おろ? そう言えばそうだったアルね」

 

 綾瀬の突っ込みに苦笑する古菲。

 

「今の話を聞く限りでは、ネギ先生ではなくてアクセルさんの記憶に潜っていたのですか?」

「うむ。まぁ、正確にはぼーやの記憶が終わった後にアクセルの記憶に呑み込まれた、というのが正しいのだろうがな」

「って、話がずれてる! で、結局なんでアクセルはネギと同い年くらいになってるのよ」

 

 がーっとばかりに叫ぶ神楽坂だったが、そんなのは正直な所俺が一番知りたい。

 

「正確な原因は不明だな。推測だが、この世界では魔法が存在するからそれが影響しているんじゃないか、とは思うが」

「……外見はともかく、精神年齢20代のいい大人が女子校に通うってのはどうなのよ」

「さてな。その辺に関しては俺じゃなくて学園長に聞いてくれ。実際俺を女子校に放り込むと決めたのも学園長なんだしな」

「あー、お爺ちゃんなら普通にそういう事をやりそうやなぁ」

「こ、このちゃん! 学園長だってそんな……そんな……」

 

 天然ながら毒舌を吐く近衛に桜咲が慌ててフォローをしようとするが、今までの行状を思い出すとそのフォローも出ないようだった。

 

「でも、アクセル君が強い理由は分かりましたね。色々と言いたい事や聞きたい事はありますけど……」

「あー。その辺にしておけ。アクセルの記憶に潜っていた影響で時間が余り無い。もうそろそろここを出ないと、またこの中で24時間経たないと出られなくなるぞ」

「え? あ、本当だ。もう明るくなってるし」

 

 何かを言いたそうなネギの言葉を遮ったエヴァの言葉に、ようやく周囲の様子に気が付いたのか神楽坂を始めとした皆が慌て始める。その様子を見ていた俺の方へと何やら4人で話していたあやか達が近付いて来た。

 

「アクセル君」

「どうした?」

「私……いえ、私達はあの3人に負けるつもりはありません」

「そうねぇ。あっちが3人だからこっちは4人で対抗してみる?」

「ちょっと、那波さん」

「千鶴、でしょう? 円」

「……うん、千鶴。じゃなくて! 何でこっちも対抗してハーレムを形成する事になってるのよ!」

「でも円、あの3人の恋愛戦闘力を見たでしょ? ……少なくても、私達の中じゃ千鶴しかあの3人に対抗出来そうに無いわ。だからここは皆で力を合わせるって事で」

「力を合わせてハーレムとか、どういう漫画よそれは!」

 

 あやか達の話を聞きながら、俺の今までの行動を見ても態度を変えない4人に思わず笑みを浮かべる。

 

「……悪いな」

「何がですか? 私達はアクセル君の従者。それも自ら望んで魔法へと踏み込んだのです。ならそれくらいは当然ではないですか。改めて、これからもよろしくお願いしますね、アクセル君」

 

 そう言ってあやかが己の唇で俺の唇を塞ぎ、数秒してから離れていく。次に俺の前に立ったのは笑みを浮かべた千鶴。

 

「うふふ。色々とアクセル君の事を知ったけど、私は別に後悔していないわよ? むしろ私の知らないアクセル君を見れて嬉しいくらい」

 

 千鶴の唇が俺の唇を塞ぎ、数秒してから離れる。次に俺の前に立ったのは顔を赤くした円。

 

「その、私は別にハーレムとかは余り興味ないんだけど……でも、アクセル君を想う気持ちは他の人にも負けてないんだからね!」

 

 円の唇が俺の唇を塞ぎ、数秒してから離れる。そして最後に俺の前に立ったのは苦笑を浮かべた美砂。

 

「ま、私としてもアクセル君とは離れたくないし……ね!」

 

 美砂の唇が俺の唇を塞ぎ、数秒後に離れていく。

 

「全く、俺なんかに付き合うなんて馬鹿な従者達だな」

 

 しみじみとそう呟くと、ふと周囲の皆の視線がこちらへと向けられているのに気が付く。

 

「ちょっと、何こんな所でどうどうとキスしてるのよ! それも4人と!」

「あいやー。キスシーンを堂々と見たのはこれが初めてアル」

「せっちゃん、せっちゃん。いいもん見たなぁ」

「ちょっ、このちゃん!?」

「……」

「のどか、しっかりするです。傷は浅いですよ!」

「ええいっ、貴様等喧しいぞ! さっさと出て行け! 雪広あやか、貴様等もだ。人の目の前でイチャイチャと。茶々丸! こいつらを連れ出せ!」

「はい。申し訳ありません、皆さん。今日はこの辺でお引き取り願えますでしょうか?」

 

 茶々丸と、どこから現れたのか同タイプの人形が姿を現し俺以外の面々を連れ去っていく。

 

「……俺はいいのか?」

「ふん、まだ何か用事があるといった顔をしていたぞ」

「いや、用事と言うか書庫で読んでいた本がもう少しで読み終わる所だったんでな。出来れば最後まで読ませて欲しいと思っただけだ」

「好きにしろ。私はちょっと一人で飲みたい気分だからな」

 

 そう言うと、チャチャゼロを連れて去っていく。こうして俺一人だけがここに残される。

 

「一応気を使って貰った……のか?」

 

 らしくもなく気を使ったのか、あるいは単純に俺の記憶を見て疲れていただけか。どちらにしろ、俺に取っては有り難い配慮だった。

 去っていくエヴァ達の後ろ姿を苦笑しながら見送ると、書庫へと向かう。

 

 

 

 

 

「……雨、か」

 

 書庫で魔法書を読み、その後は食事をしたり軽い訓練をしたりとして24時間を過ごした後、別荘から出て地下室からリビングルームへ移動して感じたのはそれだった。ザーザーという音から考えて、かなり雨足が強いらしい。

 

「ネギ達は濡れないで帰れたか?」

 

 この雨の様子からして、通り雨という訳ではないだろう。恐らく俺達が別荘に籠もった後から降り始めていたと思われる。

 

「アクセルさん、これをどうぞ」

 

 茶々丸から渡されたのは傘だった。青い傘で猫の絵が描かれている。

 

「これは茶々丸のか?」

「はい。ですが私はもう出掛ける用事がありませんので」

「悪いな。明日にでも返すよ」

「いえ、ではまた明日お会いしましょう。お休みなさいませ」

「ふん。まぁ、お前の記憶は悪くはなかったぞ。色々と興味深いものも見られたしな」

 

 ペコリと頭を下げる茶々丸と、どこか愉快そうに呟くエヴァに見送られて外へと出る。ちなみにチャチャゼロは別荘のある地下室で放って置かれていた。なにやらエヴァの秘蔵の酒を飲み干したとか罰だとか。

 

 

 

 

 

 雨の中、茶々丸から貸して貰った傘を差して寮へと戻る。ん? 何か妙な違和感が? 寮を見た時に何か感じたような。いや、気のせい……か?

 そんな風に思いつつも階段を上って部屋の前まで行くと……

 

「何?」

 

 ドアを見て思わず眉を顰める。

 ドアノブを中心にグニャリとドアが歪められているのだ。当然普通に起こる事ではないし、そもそも普通の一般人に出来る真似でもない。

 周囲を確認し、スライムを出して部屋の様子を探らせる。感じられる体温は1人分のみ。しかも床へと寝転がっている。

 特に罠のようなものは無いらしいと判断し、それでも油断せずにドアの隙間からするりと部屋の中へと滑り込む。玄関には3人分の靴がそのまま残っていた。

 まず目に入ってきたのはリビングの端で横になっている夏美の姿だ。息があるのは先程のスライムで確認してあるが、どうやら気絶しているだけらしい。そして周囲を見回して思わず凍り付く。

 

「何だ、これは」

 

 部屋はまるで爆発でもあったかのように破壊されている。

 

「何があった?」

 

 特に酷いのが玄関近くの入り口からあやかの部屋を貫通している破壊跡だろう。まるで砲弾でも発射されたかのように一直線に破壊の跡が延びている。

 

「誰がやった?」

 

 当然あやかの部屋を貫通しているとなると、あやかの部屋も無事では済まない。

 

「どこの、誰だ? 誰の仕業だ?」

 

 そして俺の視線に入って来たのは、そのあやかの机が破壊され、その奥に大事に保管されていた筈のマーカーが真っ二つに割れて床に転がっているというものだった。他にもあやかと千鶴の姿はどこにも見受けられない。玄関に靴が置いてある以上は出掛けた訳でも無いだろう。つまりは襲撃者に掠われたと考えるのが自然だ。

 視界が赤く染まり、魔力がふわりと身体から漏れそうになる。だが、その時。

 

「……あそこか」

 

 感じたのは、魔力と魔力がぶつかり合っているその衝撃。この寮まで届いているとなると、既に学園側でも感知しているのは間違い無いだろう。だが、そんな事は関係ない。

 

「己の犯した罪の報いを受けて貰おうか」

 

 ギリッと奥歯を噛み締めながら、魔力を感知した方へと視線を向ける。落ち着け、怒りに流されるな。暴走は単調さを産み、単調さは敗北をもたらす。

 深く深く。ひたすらに深く深呼吸をし、胸に湧き上がっている怒りを宥める。怒りを消すのではない。宥めるのだ。そうして数分。ようやく収まった衝動を胸の中に、リビングで気絶している夏美を寝室へと運んでベッドに寝かせ、そのまま靴を持って窓から飛び降りて魔力のぶつかっている方へと足を進める。

 

「……さぁ、処刑を始めよう」




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    鬼神化

撃墜数:376

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。