転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0347話

 幽霊騒動が一段落してから数日後の日曜日。その日は珍しい事に俺はエヴァの別荘の中にいた。

 ……正確に言うと珍しいのは俺がエヴァの別荘にいるのではなく、俺と小太郎が一緒に別荘の中にいる、という事だが。

 ちなみにあやか達に関してはクラスでやるお化け屋敷の準備に掛かりきりになっている。麻帆良祭まで残り5日という関係上、特に用事の無い人はそっちの手伝いに回る事になっているのだ。本当は俺もそっちに回る予定だったのだが、珍しく小太郎に頼まれ、あやかや千鶴にも諭されてこっちに付き合う羽目になった。

 当然だが、現在俺を避けているネギや神楽坂といった面々はこの場にはいない。この場にいるのは、俺、小太郎、一応監督役という意味で茶々丸の3人のみとなっている。

 

「で、何でまた急に俺と一緒に別荘に来たいなんて言い出したんだ? お前は俺の事を苦手にしていると思っていたんだが」

 

 その言葉に一瞬怯む小太郎だったが、すぐに口を開く。

 

「確かに俺はあんたが苦手や。けど、だからこそその苦手さを克服しないといけないんや」

 

 ……なるほど。俺に対しての苦手意識をどうにかしようと思った訳か。修学旅行の時に植え付けたトラウマはなかなかに強力なものだったと思うんだが、それを乗り越えようというのはさすがと言うべきか。

 

「いいだろう。茶々丸、危険だと思ったら止めてくれ」

「はい、分かりました」

「へへっ、俺の都合に付き合ってもらって悪いな。……けど、あんたにビビってるままじゃ、俺の気が収まらんのや。行くでぇっ!」

 

 大きな声でそう吠えると、瞬動を使いながらこちらの懐へと潜り込み、至近距離から陰陽術で言う式神である狗神を2発叩き込んでくる。

 

『2の影槍!』

 

 それに対抗するように操影術の影槍を発動。俺の胴体へと噛みつこうとした狗神は影槍の穂先に真下から胴体を貫かれてその場で釘付けにされる。

 

「ちぃっ、けどそんなんは予定通りや!」

 

 狗神を囮に、至近距離のさらに内側。いわゆる零距離まで密着してこちらの顎を狙ったアッパーを放ってくる小太郎。

 そのアッパーを1歩後退する事であっさりと回避し、伸ばされた右腕を掴み取りそのまま軸にして回転、地面へと背中を叩き付ける。……背中が地面にぶつかる直前に軽く引き上げて衝撃は殆どを殺したが。

 

「ぐっ、……ちぃっ!」

 

 衝撃を殆ど殺したと言っても、当然0にした訳ではない。一瞬息を止めた小太郎だったが、すぐにその瞬発力を使って跳ね起き、こちらと距離を取る。

 

「へへっ、さすがやな。まさかああも簡単に投げられるとは思わへんかったわ」

 

 ジリッとこちらと距離を計りながら口を開く小太郎。恐らく会話をして時間稼ぎをしつつ体力の回復を待つ……といった所か。

 さて、どうする? このまま小太郎の策に付き合うというのもそれはそれで面白そうだが……いや、小太郎は言わば俺という壁を乗り越えようとしているのだから手加減をするのは向こうも望まないだろう。

 一応、小太郎の相手をするのはこちらで習得した技術のみとする予定だが、それでも戦力的に見て俺の方が勝っていると思われる。ならその範囲で思う存分やらせて貰うとするか。

 

「俺という壁はそうそう簡単に乗り越えられるものじゃないと教えてやろう」

「……へっ、上等! 高い壁だからこそ乗り越えがいがあるんやっ!」

 

 再度の瞬動。だが先程とは違い、現れたのは俺から3m程離れた位置で尚且つ真横だ。

 

「食らえやっ!」

 

 地面に手を付いたと同時に20匹以上の狗神が姿を現し、俺の周囲を囲むようにして回り始める。

 それはどちらかと言えば犬と言うよりも狼の狩りを連想させる集団攻撃だった。

 

「一発一発では確かに俺に勝ち目はないかもしれん。けど、この数ならどうやっ! いけぇっ!」

 

 小太郎の合図と同時に、文字通り四方八方から襲い掛かってくる大量の狗神。俺はその攻撃を回避しつつ口元に笑みを浮かべる。

 

「確かに今の俺では数に対抗は出来ないな。なら数には数といかせて貰おうか」

 

 狗神による攻撃に、踊るような回避を続けつつも呪文を口に出す。

 

『アリアンロッド 火精召喚……槍の火蜥蜴30柱!』

 

 その呪文は以前エヴァの書庫で習得した火精召喚の魔法であり、練習ではともかく実戦で使うのは初めてとなる呪文だ。この呪文で出て来るのは槍を持った火蜥蜴で、それらが俺の周囲を回って狗神相手に槍を突きつける。

 

「な、なんやと!? くそっ、一斉に掛かれぇっ!」

 

 その火蜥蜴に驚いたのか、一瞬の隙を見せる小太郎。その隙に火蜥蜴達は槍を構えてそれぞれの獲物へと襲い掛かっていく。

 襲い掛かってきた狗神を槍でいなし、柄の部分で腹を殴りつけて上空へと飛ばしたかと思うとそこに槍の穂先が叩き込まれる。

 あるいは、口を開けて襲い掛かってきた狗神へと鋭い突きの一撃を食らわせて狗神を串刺しにする。

 あるいは思い切り槍を払い、吹き飛ばされた複数の狗神へと数匹の火蜥蜴が槍を構えて殺到する。

 そんな火蜥蜴と狗神の戦いはあらゆる所で展開している。戦闘の流れ自体は違ってもその全てで火蜥蜴が狗神を圧倒しているというのは明らかだったのだ。

 エヴァによると、俺の膨大なSPを吸収して召喚された火蜥蜴はいわゆる精霊の密度とかいうのが濃いらしい。つまりは普通に召喚された火蜥蜴よりも数段上の実力を持つとかなんとか。その話を聞いた時は多少疑問に感じたのだが、狗神を圧倒しているシーンを見るとそう間違った話でも無いらしい。

 

「……強い強いとは思ってたが、これ程とはな。ネギといい、あんたといい、ほんま西洋魔法使いを甘く見すぎてたみたいや」

 

 狗神の全てが消滅し、1匹も欠けずに残った火蜥蜴が俺の上空で小太郎を警戒している。そんな状態で放たれた言葉だけに一瞬ギブアップなのかと思いきや、その目にはまだまだ闘志が満ちていた。

 

「ギブアップ……って訳じゃなさそうだな」

「当然や! あんたが俺よりも強いなんてのはそれこそ京都で戦った時から分かっとったんや。だから……こっからが俺の本気や!」

 

 そう叫びながら、地面へと四つん這いになり何かに耐えるかのような仕草をする小太郎。そして次の瞬間には身体中から毛が生え、爪は鋭く伸び、髪の毛が伸び、尻尾も生えてくる。その様はまさに獣人と言っても間違いではないだろう。

 

「ぐっ、ぐぐ……この獣化を出したからには俺の残り時間はそう多くない。短期決戦や、いくでぇっ! アオオオオォォォォォンッッッ!」

 

 雄叫びを上げながら瞬動を使う小太郎。またこちらの懐に入り込む気か? そうも思ったのだが、小太郎が向かったのは俺ではなく火蜥蜴の方だった。

 繰り出された槍を潜り抜け、火蜥蜴の胴体をその鋭い爪で切り裂く。そして次の瞬間には別の火蜥蜴の背後へと瞬動で回り込み、その首筋へと鋭い牙を突き立て、横にいる火蜥蜴の頭部を鋭い爪が生えた手で貫通する。

 そんな風にまさに無双とでも呼ぶべき戦いを繰り広げ、小太郎は瞬く間に火蜥蜴を一掃していった。30匹の火蜥蜴を一掃するのに要した時間、およそ2分といった所か。

 

「ほう、なかなかやるな」

「へっ、へへ……これであんたの手持ちの駒は無くなったやろ。こっちも時間制限が結構厳しいんでな。この一撃に賭けさせてもらうで!」

「……いいだろう、来い」

 

 そう呟き、ジリッと小太郎と向き合い間合いを計り……

 

「行くでぇっ!」

 

 自らを鼓舞する為の雄叫びと共に、小太郎が瞬動を利用して……

 

「何?」

 

 てっきり以前と同じように懐に踏み込んでくるものだとばかり思っていたのだが、何と小太郎は瞬動で空中へと跳び上がり、同時に何も無い場所を蹴りつけ方向を転換。俺の背後へと回り込んでいた。

 虚空瞬動、か。

 

「貰ったで!」

 

 そういいながら突き出された一撃だったが、こちらも瞬動と虚空瞬動を併用してその一撃を回避して小太郎の背後へと回り込む。同時にその首筋を右手で掴み……

 

「勝負あり。そこまでです」

 

 周囲に茶々丸の声が響き渡った。

 

「ちょっ、待てや。何でもう勝負ありなんや? まだ捕まえられただけやんか!」

 

 茶々丸の裁定に納得がいかなかったのか、小太郎の声が周囲へと響き渡る。

 その様子に苦笑しながらも首を掴んでいた手を離してやる。

 

「もう忘れたのか? お前は修学旅行で俺と戦った時に俺の握力で関節を外されただろうに」

「……けど、今の俺は……ぐっ!」

 

 さらに言い募ろうとした小太郎だったが、獣化の限界時間が来たのか苦しそうに呻きながらも、元の状態へと戻っていく。

 

「そもそも俺の握力は本気を出したら金属を毟り取るなんて真似が可能なレベルだが、その状態から何とか出来ると思ってるのか?」

「……確かにそうやな。今回は俺の負けや。あーあ、どんだけ強いねん」

「そうか? 勝負自体の目標は達成したんだから、お前の勝ちと言ってもいいんじゃないか?」

「勝負自体の目的?」

「ああ。そもそもお前が俺に挑んできたのは俺に対するトラウマを克服したかったからだろうに。今のお前はどうだ?」

「……おお」

 

 俺のその言葉で自分が戦闘前の時のように緊張していない事に気が付いたのか右手を握ったり開いたりして身体の調子を確認している。

 

「ほんまや。確かにアクセルの前にいても普通になっとる」

「試合に負けて勝負に勝ったって状態だな」

「……そっか。勝負には勝ったのか。へへっ」

 

 どちらかと言えば俺に対するトラウマを取り除いたのよりも、勝負に勝ったと言われた方が嬉しかったのかニマニマとした笑みを浮かべる小太郎。その様子に思わず苦笑を浮かべながらも先程の件について尋ねる。

 

「瞬動はともかく、虚空瞬動を使えるようになっていたのか?」

「ん? あぁ。エヴァンジェリンさんに教えて貰ってなんとか。まだまだ発動段階でミスる事も多いんやけど、今回は何とか上手くいったみたいや。……あの人、怖いけど強いよなぁ」

 

 しみじみ、といった様子で呟く小太郎。それを見るだけでエヴァが小太郎に対してどのような振る舞いをしているのか何となく予想が出来てしまうのはどうしたものか。

 と、それよりも。

 

「……ネギの様子はどうだ?」

「ん? あぁ、ネギか。エヴァンジェリンさん相手に頑張ってるようやで。なんやアクセルとネギはヘルマンの件から喧嘩してるとか近衛のねーちゃんが言ってたけどホンマみたいやな」

「まぁ、喧嘩と言うか意見のすれ違いだな」

「ふーん、まぁ、俺には関係ないけどな。それよりも少し休憩したらまた勝負しようや。次こそは勝ってみせるで!」

 

 やる気満々な小太郎に苦笑を浮かべながらも、取りあえずはこちらに近寄ってきた茶々丸に食事の用意をして貰うのだった。

 ……ちなみに、結局この後数回勝負をしたが俺が全勝したとだけ言っておこう。

 最後の試合では花を持たせようかとも思ったんだが、手を抜かれているのを見破られて文句を言われたりした為だ。

 

 

 

 

 その後別荘で1日を過ごした後は教室へと向かい、お化け屋敷の手伝いをしたりしたが到底学祭までに間に合わないという事で翌日、翌々日もお化け屋敷の制作に集中したり、あるいは泊まり込みをしたりする事になったのだった。……もう少し計画性を持って欲しいと思うのは俺だけだろうか。いや、これもまたいい思い出にはなるんだろうが。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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