転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0348話

「アクセル君、学園祭で私達のライブは当然見に来てくれるよね?」

「そうそう、盛り上がる事間違い無しだから絶対に来てよね」

 

 お化け屋敷の準備もようやく目処がついた頃、円と美砂から唐突に誘われた。

 話を聞くと、桜子や和泉と一緒にでこぴんロケットとかいうバンドを組んでライブをやるらしい。……と言うか、お化け屋敷の準備にエヴァの別荘での修行とスケジュールが一杯一杯だったと思うんだが、よくバンドの練習をする時間があったな。

 

「まぁ、学祭では特に予定も無いからいいが、いつだ?」

「2日目の午後6時過ぎかな」

「分かった。美砂の歌声は好きだからな。楽しみにさせて貰おう」

「いやん、アクセル君ったら。こんな所で愛の告白なんて!」

「ちょっと、美砂。アクセル君が言ってるのはあくまで声であって別に誰か特定個人をって訳じゃないんだからね」

 

 美砂へと突っ込みを入れる円だったが、次の瞬間にはジト目で俺の方へと視線を向ける。

 

「アクセル君も、女誑しもいい加減にしないといつか本当に刺されるわよ?」

「あー、まぁ、気をつける」

「うん、それで良し。……じゃ、ライブの件は約束だからね」

「ちょっと待って下さいまし。アクセル君には馬術部の体験乗馬にも是非来て欲しいのですが」

「あら、それなら天文部のプラネタリウムもかしらね」

 

 こちらの話を聞きつけたあやかと千鶴も近寄ってきてそう提案してくる。

 

「あー、そうだな。さっきも言ったように特に学祭で用事は無いし、行けると思う。あやかのおかげでお化け屋敷は俺の担当が無いしな」

 

 そう、あやかが気を使って根回しをしてくれたおかげで学祭での俺は基本的にフリーなのだ。俺の記憶とかを経験したあやかが、是非麻帆良祭を楽しんで欲しいと行動してくれた訳だ。お化け屋敷の幽霊役もちょっと面白そうだとは思ったんだが、折角の気遣いなのでありがたくその提案に乗らせて貰う事にした。

 もっとも、クラスの一員としては当然お化け屋敷にも遊びに来るように約束はさせられたのだが。

 そうなると、俺の知り合いで暇そうにしているのは小太郎くらいしかいない訳で。……ネギも一応俺と同じくフリーらしいが、未だにこっちに対して隔意を持っているらしく冷戦状態なので除外しておく。

 そんな風に考えていると、ふと教室へと源が顔を出した。

 

「アクセル・アルマー君は……ああ、いたわね。学園長先生がお呼びです」

「学園長が? 分かった。すぐに学園長室に向かう」

「いえ、世界樹前広場に集合との事です」

「……世界樹前広場?」

「ええ」

「分かった」

 

 源はそれだけいうとさっさと教室から出ていく。教師も教師でこの時期は忙しいのだろう。師走とかいうが、年末じゃなくても師走な状態になっている。

 

「アクセル君、私達も行く?」

 

 円の問いに首を振る。

 

「いや、俺だけで十分だろう。……と言うか、今のこの状況で何人もお化け屋敷の準備から抜けられるとは思わないしな」

「……それもそうね。じゃあ行ってらっしゃい」

 

 そう円に見送られて教室を出る。

 ちなみに、俺が出た後の教室では色々と冷やかされているような声が聞こえてきたが、円は逆に開き直っているように返事をしていた。

 

 

 

 

 

「……人が、いない?」

 

 世界樹前広場へと続く道で、思わずそう呟く。

 学園祭前日というこの状況で、学園でもメインストリートに近いこの場所に人がいないというのはかなりの違和感がある。当然普通に交通規制とかをした訳ではないだろう。そうなると考えられるのは関西呪術協会の陰陽師である天ヶ崎千草が使っていたような人払いの魔法なり認識阻害なりが使われているのか。

 

「お、アクセルやんか。お前も呼ばれたんか?」

 

 階段を上がっていると背後から聞こえて来るその声は、ここしばらくの生活で良く聞くようになったものだった。

 

「小太郎か。そういう聞き方をしてくるとなると、お前もか?」

「そうや。学園長からの呼び出しやて」

「……となると魔法関係の用事であるのは確定、か」

 

 階段を上り終えると、そこには学園長や高畑、瀬流彦といった顔見知りの他にも20人近い人数が存在していた。

 

「ふぉふぉふぉ。こんな所に呼び出して悪かったの」

「いや、それより用事は?」

「ネギ君達が来てから纏めて話すからちょっと待っていておくれ」

 

 近右衛門に頷き、周囲を見回す。シスターやらギャングにしか見えない男やら太ったのやら細いのやら、黒人やら白人やらと色々といるが、その殆どがこちらを見る目は鋭い色がある。疑念、と言ってもいいだろう。

 

「……なんや、気に食わんな」

 

 小太郎もその空気を感じ取ったのか、ボソリと呟く。

 

「まぁ、落ち着け」

 

 この魔法使い達が西からの脱走者である小太郎や、経歴不明の俺を怪しい目で見るのはある意味ではしょうがないのだ。……もっとも、それが不快でないかと言われればもちろん不快なのだが。しかし、なるほど。これがエヴァ曰く正義に感染した魔法使い達、か。

 

「せやけどアクセル、こいつら」

「いいから落ち着け。こんな所で騒ぎを起こしてもしょうがないだろう」

「そうです。そもそも貴方達はこの麻帆良の部外者なのです。この場にいるというのすら学園長の温情であるというのを理解して大人しくしている事ですね」

 

 ……小太郎を押さえようと思ったら、その前に魔法使い達からちょっかいを掛けられる。チラリとそちらへ視線を向けると、そこにいるのは高校生くらいの金髪の女だった。その制服から見てウルスラの生徒だろう。

 

「へっ、後ろからチマチマとしか攻撃出来へん雑魚が偉そうに吠えても何とかの遠吠え以外の何物でもないで」

「……なんですって?」

「お姉様、落ち着いて下さい。こんな所で騒ぎを起こしては……」

 

 ウルスラ生徒の隣に立っていた女子生徒がそう諫めている。

 

「小太郎、お前もだ。ここで騒ぎを起こしてどうする」

「けど!」

「……納得出来ないのは分かるが、キャンキャン口だけで吠えてもみっともないだけだぞ」

「ちょっと、貴方っ! 今、なんて言ったのかしら!?」

 

 ……何故か小太郎を押さえようとしたら、その小太郎と睨み合っていたウルスラの女に目を付けられたらしい。一体俺が何をした。

 

「何か用か?」

「貴方ねぇ……自分の立場と」

「えっと、あれ? 何か取り込み中ですか?」

 

 そこに丁度都合良く現れたのがネギと桜咲だった。ネギが俺を見た瞬間、一瞬だけ顔を強張らせたがすぐにふいっと目を逸らして近右衛門へと声を掛ける。

 

「いやいや、軽いレクリエーションじゃよ。そうじゃろう?」

「……はい」

 

 さすがに近右衛門にそう問われては言い返す事も出来なかったらしく、不承不承だが矛を収める女。……ただ、最後にこちらを強く睨みつけていたが。

 その様子思わず溜息を吐き、諸悪の根源である小太郎の頭をポカリと殴っておく。

 

「それで、学園長。この人達は……」

「うむ、ここにいるのは麻帆良にある小・中・高・大に常時勤務する魔法先生、及び魔法生徒じゃ。もっとも全員ではないがの」

「え、ええーーー!?」

 

 近右衛門の説明に驚くネギ。そこからは自己紹介タイムとなった。

 魔法先生や魔法生徒達にしてみれば、ネギは英雄であるサウザンドマスターの一人息子だけに色々と期待や好奇心といったものがあるのだろう。10分程でそれも一段落し、近右衛門から今回集められた理由が話される。

 この世界樹、22年に1度魔力による一種のオーバーブーストのような状態になってしまうらしい。そしてその結果、愛の告白に関しては呪い級に効果を発揮するとかなんとか。それを阻止する為に、世界樹の効果範囲での告白行為を止めて欲しいというのが近右衛門の頼みらしいが……

 

「当然俺に依頼をする以上は報酬を期待してもいいのか?」

 

 俺がそう尋ねた瞬間、集まっていた魔法関係者達の動きが止まる。

 そして当然と言うか何と言うか、最初に突っかかってきたのは先程俺と小太郎に絡んできた女だった。ネギに対する自己紹介で聞いた話によると、高音・D・グッドマンという名前らしい。

 

「ちょっと、貴方っ! 魔法使いとして人の役に立つのは当然じゃないですか! それを報酬だなんだって、それでもマギステル・マギを目指す者なのですか!?」

「いや、そもそもマギステル・マギなんて目指してないんだが」

「っ!? いいでしょう。私が貴方の性根を叩き直して差し上げます!」

 

 そう言ったグッドマンが腕を一振りすると、次の瞬間にはその影から3体の人影が現れる。

 

「これは、操影術か」

 

 そう言えば以前エヴァが魔法生徒に操影術の使い手がいるとか言っていたな。なるほど、それがこの女か。

 チラリ、と近右衛門へと視線を向けて尋ねる。

 

「どうするんだ?」

「うーむ、そうじゃな。アクセル君、ここは1つ賭けをしないかね?」

「賭け?」

「うむ。君と高音君が戦って、もし高音君が勝ったら君は今回の依頼を無償で受ける。もし君が勝ったとしたら報酬を多めに出そう」

 

 多めに出す、か。少し考えるが、軽く首を振る。

 

「いや、俺が勝ったら今回の依頼は受けないという事にさせて貰う」

「うーむ、君の腕は惜しいのじゃが……確かに無理強いは出来んのう。よかろう、その条件で構わん。それとアクセル君、ちょっとこっちに来て貰えるかな?」

 

 そう言い、離れた所へと連れて行かれる。

 

「すまんの。彼等、彼女等は固定概念に凝り固まっておってな。どうしても自分の価値観でしか物事を判断出来んのじゃ」

「……だろうな」

 

 少なくてもあの面子の中では6割~7割程は俺に対して胡散臭そうな目を向けている。

 

「で、その……じゃな。さすがに殺人事件は勘弁して欲しいのじゃが……」

 

 なるほど、近右衛門としても俺が勝つというのは既定路線か。……まぁ、しょうがないと言えばしょうがないか。

 

「安心しろ。俺としても自分から好き好んでこの麻帆良にいられなくなるような真似はしないさ。多少のお仕置きで勘弁してやる」

「……すまんの。今度この埋め合わせはさせてもらうからの」

「期待しないで待ってるよ」

 

 近右衛門との会話を終了し、元の位置へと戻ってグッドマンと向かい合う。

 

「さて、時間も時間じゃし長々と戦うのは拙かろう。よって、最初に有効打撃を与えた方の勝利とする。異論は?」

「ありません」

「無い」

「うむ。では……始め!」

 

 近右衛門の合図と共に、グッドマンの使い魔が地面を滑るような動きでこちらへと近寄ってくる。同時に、その影から放たれる3つの影槍。なるほど、操影術に特化しているというだけあって確かに操影術についての腕は俺よりも上だな。

 

『5の影槍』

「な!?」

 

 使い魔からの攻撃を回避しながら、こちらも影槍を発動。さすがに自分と同じ操影術を使うとは思ってもいなかったのかグッドマンが呆気に取られたような声を出す。

 使い魔をすり抜けるようにして宙を飛んだ5本の影槍はグッドマンが放った3本の影槍と空中で衝突する。……3本のみが。そして残りの2本はより速度を増してグッドマンの近くまで達し……

 

「はぁっ!」

 

 気合いの声と共に影を纏った腕で影槍を破壊してのける。

 なるほど、ああいう使い方も出来るのか。操影術は基本的に影槍しか使っていなかったのでなかなかに勉強になる。……使い魔に関してはまだ成形すら出来てない今の俺だと、影槍と異形化してのゲートくらいしか操影術は使えないのだ。だが。

 

「……まさか、私の他にも操影術を使える人が麻帆良にいるとは思いませんでした。でも、熟練度に関してはまだまだのようです……わ……ね?」

 

 喋ってる途中で言葉をつっかえる高音。それも当然だろう。何せいつの間にか背後に回った俺が背中へと掌を突きつけており、いつでも魔法の射手を発射出来る態勢になっているのだから。

 当然、俺の背後には火の矢が複数浮かんでいる。

 

「それまで! 勝者アクセル!」

 

 近右衛門がその様子を見て勝敗を決した。

 

「そんな、いつの間に私の後ろに?」

 

 愕然として呟くグッドマンに、その相棒らしき少女である佐倉愛衣が近付いていく。

 

「お姉様、大丈夫ですか?」

「え、ええ。それよりも愛衣。貴方は離れていた場所で見ていたのでしょう? どうしてこうなったのか教えて貰える?」

「はい。えっと、お姉様の影槍とアクセル君の影槍がぶつかりあいましたよね。あの時にそれを目眩ましにするようにして瞬動か何かで後ろに回り込んでいました」

「……でも、瞬動は直線上にしか進めない筈でしょう?」

「その通りだ。だが、そこに虚空瞬動を使っていわゆる三角跳びのような状態にした訳だな」

 

 2人の会話へと割り込み、正解を教える。

 別に敗者を貶めようとかそういうつもりはない。ただ単純にこの麻帆良で生活をしないといけない以上は面倒を無くしたいと思っての行動だ。

 

「……そうですか。確かに貴方は私よりも強いようですね」

「ああ、分かってくれれば……」

「ですが! それだけの強さを持ちながらマギステル・マギを目指さないというのは私が納得出来ません! これからは私が貴方をマギステル・マギの道へと導きましょう!」

「……は?」

 

 何と言うか最初の刺々しい雰囲気は既に無く、その顔には一種の使命感のようなものが浮かんでいる。

 どうしてこうなった?

 そんな俺の様子を見ていた佐倉が苦笑を浮かべながら近付いてくる。

 

「ごめんなさい、アクセル君。お姉様ってちょっと思い込みが激しいのよ」

 

 いや、本当に……どうしてこうなった?

 

「ただ、これで嫌な思いはしなく……」

 

 言葉の途中で、ふいっと上空を見上げる佐倉。

 

「……誰かが見てますね」

 

 その言葉を聞いたサングラスを掛けた男――一見するとマフィアにしか見えない――が無詠唱で風の刃を作り出すとその進路上にあった何かを破壊する。

 

「どうやら魔法ではなく機械のようです」

「追います」

「うむ。じゃが、深追いはせんでよいぞ。こんな事が出来るのは限られておるからな」

「分かりました。愛衣」

「はい、お姉様」

「ガンドルフィーニ君、一応念の為にフォローを」

「了解しました」

 

 高音と佐倉が走り出し、近右衛門に命じられた黒人の男がその後を追っていく。

 

「取りあえず、色々とあったが今回の話し合いはこの辺で終了じゃ。皆もご苦労じゃったな」

 

 近右衛門の言葉により、解散することになったのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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