転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0349話

『只今より、第78回麻帆良祭を開催します』

 

 麻帆良中にその放送が響き渡ると同時に、花火が上がり、飛行機の曲芸飛行が行われる。そして見渡す限りの人、人、人。まさに人がゴミのようだ! とか言ったら様になるだろうか。

 周囲の一般人や麻帆良の生徒は仮装している者もそれなりに多く、道路を歩いているだけでどこか楽しい気分になってくる。

 

「そこの坊主、たこ焼きどうだい?」

「いやいや、男の子ならやっぱりお好み焼きだろう」

「甘いな。通が求めるのはフランクフルトに決まっている」

 

 道を歩いていると道路に群がっている、と言ってもいい程の屋台の店主達から次々に声を掛けられる。

 

「あー、そうだな。取りあえず1つずつ貰おうか」

『毎度』

 

 たこ焼き、お好み焼き、フランクフルト、焼きそばを購入し……ん? 焼きそば?

 

「……まぁ、いいか」

 

 注文した覚えのない品が入ってはいたが、特に気にせずに腹に収める。祭りの雰囲気による影響なのか、どれもいつも買い食いで食ってるものよりも美味く感じる。例え具の大半がキャベツのお好み焼きだったり、タコが小指の爪程の大きさだとしてもだ。

 

「ついでに肉まんもどうかネ?」

「……超か。学祭長者とか言われてるお前がこんな所で暇そうにしていてもいいのか?」

 

 取りあえず受け取った肉まんを口に運びながら会話を促す。

 

「勿論今頃は大忙しヨ。この話が終わったらすぐに戻らないと古達が忙しさでノックダウン寸前ネ」

「……そこまでして時間を作ってきたってのは確かに興味あるな。で、話って?」

 

 1個目の肉まんを次々に腹の中へと収め、2個目に取り掛かる。

 ……さすがに学祭長者とか言われるだけあって非常に美味い肉まんだ。

 

「うむ。実はアクセル坊主に依頼があル」

「依頼?」

「そうネ。実は武道大会に出場して欲しいんだヨ」

「武道大会?」

 

 確かに麻帆良祭では武道大会も開かれていると聞いた。……と言うか、数十年前はこの武道大会が麻帆良祭のメインイベントだったらしい。だが、それも過去の話で現在はかなり小規模の武道大会が複数開かれているという話だったが……

 

「うん? あぁ、アクセル坊主が不思議に思ってるのは分かル。実は今回麻帆良で開かれる武道大会を全て吸収・合併したんだヨ。つまりこの麻帆良祭で開かれる武道大会は私の開催するものだケ。……興味が湧いてきたかナ?」

 

 まぁ、興味があるか無いかと言えばあるのだが……どうにもこの超というクラスメイトは腹の底を読ませない所があるのが引っ掛かる。いや、そもそもその手の駆け引きが苦手だというのもあるんだが。

 

「興味は無くもないが……かと言って、わざわざ労力を使ってまでとなるとちょっとな」

「うーん、それは正直困るネ。こっちはもうアクセル坊主の参戦ありきで話を進めてるのヨ」

「……人の意見を聞かずに勝手に組み込むなよ」

「そこで、取引といこうカ」

「取引?」

「そう、もしアクセル坊主が武道大会に出場して優勝できたとしたら、優勝賞金の一千万円の他にも特別賞品を付けてあげよウ」

 

 ニコリとした笑みを浮かべながらそう告げてくる超。その顔は自分は何も企んでませんとでも言うように見えるが……

 

「特別賞品?」

「そう。きっとアクセル坊主も気に入る事間違い無しの賞品ネ」

 

 正直、俺がそこまでして欲しい物というのはそうそう無い筈だが……それでも自信満々の超の言葉に興味を惹かれて口を開く。

 

「それは何だ?」

「アクセル坊主が一番欲している物。すなわち、マーカーの修理ヨ」

 

 その言葉を超の口から聞いた瞬間、轟! とばかりに俺の身体から殺気が吹き出る。

 

「……お前、何を知っている?」

 

 少なくてもマーカーの存在を知っている以上はただの一般人という事は有り得ないだろう。そもそも超はエヴァとの関係で魔法について知っているのだから一般人とは呼べないのだが。

 

「お、落ち着くネ。ほら、周囲の人達も固まってるヨ」

 

 超の声に周囲を見回すと、確かに殆どが凍り付いたように動きを止めている。この騒がしい麻帆良祭の現場でここだけが、だ。

 ……確かにこれだと目立つな。

 

「場所を移すぞ」

「いや、残念ながら時間切れネ。本気で古達が悲鳴を上げている頃ヨ。だからここからの決断はアクセル坊主に任せるヨ。賞品や賞金が魅力的だと思ったら龍宮神社で行われる午後6時からの受付に来て欲しいネ」

 

 言うだけ言って、俺に背を向ける超。だが、このままこいつを逃す訳にはいかない!

 

「待て!」

 

 俺と超の距離はほんの数歩で、瞬動を使うまでもない。

 背を向けた超の肩に手を掛けようとした瞬間……

 

「……何?」

 

 スカッとからぶりをしたのだ。と言うか、今までここに超がいたのすら夢や幻だったかのように超の姿は消えていた。

 

「転移魔法か? いや、違うな」

 

 俺が知ってる転移魔法は水と影のみだが、どちらにしても展開したゲートにその身を沈ませるといった感じで魔法は発動する。今の超みたいに一瞬で跡形もなく消え去るなんて真似は出来ないのだ。

 そうなると、俺の知ってるゲート以外の転移魔法か……あるいは魔法以外の何かがあるという事になる。

 

「マーカーの件にしろ、今の転移にしろ……なかなかに飽きさせない奴だな」

 

 そう呟きながらも、既に俺は超の言っていた武道大会に出場する意志を固めていた。奴の言葉全てが正しいとは思えないが、少なくてもマーカーについての存在を知ってる以上は俺に取って要注意人物であるのは間違い無いのだから。

 それにヘルマンのお遊びとも言える攻撃でマーカーが破壊されてしまった以上、万が一にも本当に修理が可能だとしたらみすみすその機会を逃すという選択肢は有り得ない。

 

「午後6時に龍宮神社だったな」

 

 周囲では『映画の撮影?』『何かのアトラクションだって』という声が聞こえて来る。認識阻害様々だが、さすがにこのままここにいて何かに巻き込まれるのも御免なのでさっさとその場から移動する。

 

「この時間なら確かあやか達がお化け屋敷の当番だった筈だな」

 

 どのみち一度は行かないといけないので、暇な時間のあるいまのうちに行っておくか。武道大会の件も話しておきたいしな。

 差し入れとして近くにある出店でシュークリームを20個程買っていく。確か1回のローテーションは10人程度だったと思うので20個もあれば十分足りるだろう。

 

 

 

 

 

「……足りる、と思ってたんだがな」

 

 そう呟く俺の目の前には空っぽになった空き箱があった。20個入りのシュークリームは見るも無惨に3-Aで幽霊をやっていた面々に食べきられてしまったのだ。どうやら出店としては当たりの店だったらしく、皆が競うように食べていた。……と言うか、食べられてしまった。

 

「その、ごめんねアクセル君」

 

 大河内が謝りながら頭を撫でてくる。さすがにバツが悪いのだろう。いや、それでも大河内は1個しか食べてないんだけどな。

 

「あー、気にするな。食いたくなったらまた買うから」

「そう? あ、そうだ。今日の夕方になったら私の時間も空くから一緒に何か食べに行こうか? シュークリームのお礼に奢るよ?」

「あ、それいいね。私も一緒に行きたいな」

 

 会話に割り込んできたのは大河内とも仲のいい明石だった。その隣には和泉や佐々木の姿もある。佐々木はどこか戸惑ったように俺を見ていたが、ネギに好意を持っている佐々木としてはそのネギと現在冷戦中の俺に思う所がある……といった所か。

 

「あー、悪い。6時からは予定があるんだ」

「え? デート? 誰? いいんちょ? 那波さん? クギミー? 柿崎?」

「クギミー言うな!」

 

 いつものようにそう突っ込みながら現れたのは、当然の如く円だった。

 だが、いつもと違う所が一つ。

 

「口にクリームが付いてるぞ」

 

 指でそのクリームを取って、そのまま自分の口へと運ぶ。

 

『きゃーーーーーーっっ』

 

 当然、それを見ていた運動部4人組や周囲の他の面々が黙っている筈も無く嬉しそうな悲鳴を上げる。

 

「ちょっ、アクセル君!?」

「……悪い」

 

 半ば反射的な行動だったのだが、顔を真っ赤にした円の顔を見て思わず謝る。

 

「あーあ、円いいなー。ほら、アクセル君。私の口元にも生クリームがついてるんだけどなぁ」

 

 いかにもわざとらしく顔を突き出してきた美砂に、思わず苦笑を浮かべながらハンカチで生クリームを拭ってやる。

 

「美砂さん、いい加減になさい。それでアクセル君、6時からの予定とは?」

 

 口元を丁寧に拭いてからあやかがそう尋ねてくる。周囲の面々も興味があるのかどこか面白そうに俺の言葉を待っていた。いや、別にそこまで注目されるような事でもないんだが。

 

「超が開催する武道大会に出る事になってな」

「超さんが、ですか?」

「ああ、なんでも麻帆良で開かれる予定だった小さい大会を吸収・合併したらしい。それで俺にオファーが来た訳だ」

「そうですか。では、是非応援に行かせて貰いますわね」

「でもさぁ、なんでアクセル君に出場依頼が来たの?」

 

 あやかの言葉に口を挟んだのは明石だった。どこか不思議そうに聞いてくる。

 

「やっぱりあれ? ネギ君の弟子入り試験で強かったのが超りんの耳に入ったのかな?」

「さて、どうだろうな。ただ、賞金が魅力的だから俺としては出るのに躊躇はないが」

 

 まさかマーカーが修理出来る可能性があるという訳にもいかず、取りあえずは賞金目当てという形にさせて貰う。

 

「賞金?」

「ああ。優勝賞金一千万円だそうだ」

 

 俺がその金額を口に出した瞬間、あやかと千鶴を除く周囲の面々がざわりとする。

 あやかと千鶴が驚かなかったのは、財閥の令嬢だったり社長令嬢だったりするのが影響してるのだろう。

 

「ちょっとちょっと、何その賞金額。……あ、いやでも超りんが麻帆良祭で稼ぐ金額を考えるとそう不思議でもないのかも。……いいなー。私も格闘技やってたら出場したんだけどにゃー」

 

 明石のその言葉に、周囲が同意だとばかりに頷く。

 

「ま、本当に優勝出来たらその賞金で何か奢るから勘弁してくれ」

「本当? 実は美味しい焼き肉屋さんの情報があるんだけど、値段がちょーっと高いんだよねぇ……」

「あー。分かった分かった。もし優勝したら麻帆良祭の打ち上げはそこでやるとしよう」

「よっし。約束だよ! こうなったら皆でアクセル君の応援に行かなきゃね」

 

 周囲が武道大会の応援に来るので纏まっていると、大河内がこちらへと近付いてくる。

 

「アクセル君が強いのは知ってるけど、怪我しちゃ駄目だよ?」

 

 そう言って頭を撫でる大河内だった。

 

 

 

 

 視界に映る人、人、人。その数は麻帆良祭開始の時に比べると少ないが、それでもかなりの人数が集まっているのが分かる。

 現在午後5時40分過ぎ。武道大会の会場である龍宮神社での光景だ。

 結局お化け屋敷の様子を見た後は色々と出店やステージを見て回っていた。さすがに麻帆良祭だけあってそれだけで時間が潰れてしまい、ふと気が付くとこの時間だった訳だ。

 

「アクセル君?」

 

 ふと声が掛けられ、そちらへと視線を向けるとそこには妖精の格好をした夏美の姿があった。

 

「演劇部の準備の方はもういいのか?」

「うん。それよりもアクセル君もこの武道大会に出るんでしょ?」

「ああ」

「ちづ姉に聞いた通りだったね。私はお化け屋敷の担当じゃなかったから少し早めに来たけど、ちづ姉やいいんちょ達ももう少しで来るってさ」

 

 なるほど、そっちからの情報が流れていたのか。

 

「……あ、ほら。アクセル君。あそこあそこ」

 

 唐突に夏美が何かに気が付いたかのように右の方を指さす。そこにいたのは……

 

「ネギ達だな」

 

 ネギ、小太郎、神楽坂、近衛、桜咲、綾瀬。あとついでにカモの6人と1匹が集まっていた。

 

「ね、行こうよ」

「あー、いや。俺は遠慮しておく。夏美だけで行ってきてくれ」

「……やっぱりネギ先生?」

「まぁ、な。向こうとしても俺と顔を合わせても気まずいだけだろう」

「……そっか。分かった。あ、でも小太郎君にだけはアクセル君がここに来てるって話しておくね」

 

 そう言って軽く手を振り、ネギ達の方へと向かっていく。

 まぁ、ネギと神楽坂以外なら問題無いんだろうけどな。

 そんな風に思いつつも、夏美に声を掛けられた小太郎が俺の方を見て唖然とした表情を向けているのを確認しながら内心で苦笑する。

 

『見学者と参加希望者は入り口よりお入り下さい』

 

 小太郎の唖然とした顔や、神楽坂の複雑そうな顔、ネギの意地でもこちらへと視線を向けない様子とかを確認していると、周囲に放送の声が響いた。どうやら始まり、か。けどこの声はどこかで……

 どこか聞き覚えのある放送の声に従って、入り口から龍宮神社の中へと入っていく。

 そこで目に入ってきたのは武道大会で使われると思われる複数の試合会場と、本殿の入り口と思われる場所で派手に着飾ってマイクを握っている朝倉の姿だった。

 ……なるほど。道理で聞き覚えのある声の筈だ。

 

『ようこそ! 麻帆良生徒及び学生及び部外者の皆様! 復活した麻帆良武道会へ! 突然の告知にも関わらず、これだけの人数が集まってくれた事に感謝します!! 優勝賞金一千万円!! 伝統ある大会優勝の栄誉とこの賞金を見事その手に掴んで下さい!』

 

 その煽りとも言える声に、参加希望者や見学者達は『おおおお』と雄叫びの様な声を上げる。

 

『では、今大会の主催者より開会の挨拶をお願いします。主催者は学園人気No.1の屋台、超包子のオーナー、超鈴音!』

 

 朝倉のその言葉と共に前に出て来たのは超だ。

 

『私がこの大会を買収して復活させた理由はただ一つネ。表の世界、裏の世界を問わずこの学園の最強を見たい。ただそれだけネ』

 

 そう言った超はルールの説明をしていく。

 飛び道具、刃物の使用禁止。呪文詠唱の禁止。

 

「って、おいおい」

 

 この世界では魔法は秘匿義務がある筈だ。それをこうも大っぴらにしてもいいのか?

 ……いや、あるいはそれが狙いか?




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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