転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0352話

 本戦1回戦目からなかなかに疲れる戦いだった。小太郎やクウネルとかいう奴は楽勝気味に勝利したというのと比べると運営、と言うか超の意地悪さを感じないでもない。

 

「楓さん、大丈夫ですか!?」

「いちちち。大丈夫。ちょっと気を失っていただけでござるよ」

 

 選手控え室では意識を取り戻した長瀬の回りにネギや神楽坂、桜咲が集まっていた。

 そんな中、いつもの如くニンニンと笑いながらネギの相手をしていた長瀬の視線が俺へと向けられる。

 

「アクセル坊主、強かったでござる。拙者の修行もまだまだでござるな」

「うー……」

 

 そんな長瀬の隣で、何かを言いたいらしいが本人が納得してる様子なので口を出したくても出せない神楽坂が何やら唸っていた。

 

「アスナさん、アスナさん。これはトーナメントなんですから」

「刹那さん、でも女の子を殴ったり蹴ったりっていうのはちょっと……」

 

 この期に及んでも尚、甘い事を口に出す神楽坂だったが、それに待ったを掛けたのは長瀬本人だった。

 

「アスナ殿、拙者とアクセル坊主の戦いは正々堂々とした正面からのものでござった。それなのにアクセル坊主を責めるという事は、即ち拙者をも責めるというのと変わらないのでござるよ」

「うっ、で、でも……」

 

 それでも尚納得出来ないかのように口籠もる神楽坂だったが、さすがにこれ以上言い募るのは長瀬に対しても悪いと思ったのか押し黙る。……ムスッとしたままだが。

 

「すまぬな、アクセル坊主」

「気にするな。別に俺も」

 

 気にしてない、と続けようと思ったその瞬間。観客席の方から今までに無い絶叫が聞こえて来た。ただし、悲痛な叫びとかそういうのではなく歓喜の絶叫とでも呼ぶべき感じだ。

 

「……何だ?」

 

 確か俺と長瀬の後の試合だから、グッドマンと田中とかいう奴の試合だったと思うが。

 

「ね、ねぇ。ちょっと、あれ……」

 

 ムスッとしていた筈の神楽坂だったが、思わずといった様子で指さしている方向。そちらへと視線を向けた俺は思わず呆気に取られてしまった。何とそこではマントらしき物を1枚羽織って走っていくグッドマンの姿があったのだ。前はマントで隠されているが、滑らかな曲線を描く背中から尻を含む後ろの部分は一切隠されずに人目に晒されている。

 

「……」

 

 俺に出来るのは、そっと目を逸らすだけだった。

 

「さて、次の試合は龍宮と古菲だったな。そろそろ見に行った方がいいんじゃないか?」

 

 取りあえず見なかった事にして会話を進める。周囲の面々も同じだったのか呆気なく話に乗ってくる。

 

「そ、そうですね。古老師の応援に行かないと。……でも、相手が龍宮隊長というのはちょっと厳しそうな気がします」

「確かにそうかもしれないですね。真名は本物の傭兵と言っても過言ではありません。私が本気で挑んで勝てるかどうか微妙な所ですし」

「え!? 刹那さんでも勝てないの!?」

 

『では、第5試合です。この大会の大本命! 巫女さんスナイパーと名高い龍宮真名選手と前年度ウルティマホラの覇者、古菲選手です!』

 

 控え室で話をしている間に既に試合開始寸前になっていたらしく、試合会場の方から朝倉の声が聞こえて来る。

 

「わっ、急がないと!」

 

 神楽坂達はその声を聞き、急いで試合会場の方へと走っていった。

 

「おろ? アクセル坊主は行かないのでござるか?」

「いや、ちょっと気になる相手がいてな」

「気になる相手?」

「ああ。クウネル・サンダースとかいう巫山戯た名前の奴だが……その辺、どう思う?」

 

 控え室の中、観葉植物の後ろに隠れているフードの男。今俺が名前を出したクウネル・サンダースへと声を掛ける。

 

「……」

 

 だが、クウネル・サンダースは特に何も言わずにそのまま無言で控え室を出て行くのだった。

 

「……どう思う?」

「うーむ、名前からいってもあからさまに怪しい御仁でござるな。アクセル坊主は何に引っ掛かってるのでござるか?」

「いや。何がって訳じゃないんだが……どうも、引っ掛かるんだよな」

「そうでござるか。まぁ、このまま進めば準決勝で当たるだろうから、気にするなというのは無理でござろうが」

 

 確かにあの薄気味悪さを考えると、小太郎が勝つのはちょっと難しいかもしれないな。

 

「っと、それより拙者達も早く試合会場に行くでござるよ」

「おわっ、おい、自分で歩ける!」

 

 長瀬に抱えられて試合会場まで強制的に移動させられる。

 

「……何とか間に合ったでござるか」

 

 そこで見たのは、龍宮に密着しながらも地面へと膝を突いている古菲の姿だった。

 

「龍宮の勝ちか?」

「いや、これは恐らく……」

 

 長瀬がそう呟いた瞬間、服の背中の部分が吹き飛び龍宮はそのまま床へと倒れ込む。

 そしてそのまま10カウントが流れ……古菲の勝利が決まったのだった。

 まるで自分が勝ったとは信じられないといった様子で周囲を見回す古菲。事実、その服は腹の部分が派手に破れており、左腕の肘の辺りも同様に大きく破けている。他にも小さな傷が至る所に付いており、龍宮との戦いが激戦であったと証明していた。

 結局左腕は折れているという事で医務室へと直行。そのまま棄権という流れになったらしい。

 そして今までの試合で傷ついた試合会場の舞台の修理も終わり、いよいよ次の試合が始まる。俺にしてみればこの大会の1回戦で最も興味深い組み合わせであるネギと高畑の戦いだ。

 もちろん純粋な実力を考えればネギに勝ち目は無いだろう。だが、高畑はネギとの戦いを待ち望んでいたらしいし、その実力を十全に発揮させるような試合運びをするというのは予想出来た。

 

「で、どうなんだ? ネギの仕上がり具合は」

 

 試合会場で向き合っているネギと高畑を見ながら、何故か俺の隣へと移動してきたエヴァへと尋ねる。

 

「そうだな。まぁ、今のタカミチ相手なら面白くなるだろうな」

「それだけネギに……いや、ネギを鍛えてきた自分に自信があると?」

「ふんっ、当然だろう。私を誰だと思っているんだ」

 

 エヴァが自信満々に言い切ったその瞬間、ネギと高畑の試合が開始された。

 戦いの歌を無詠唱で唱え、瞬動で高畑へと突っ込む。その瞬間、パパパパッと無数の攻撃がネギへと襲い掛かったがネギが得意としている防御魔法風楯でそれを防ぎながら高畑の背後へと回り込む。

 

「へぇ、戦いの歌を使えるようになったのか」

「うむ。元々ぼーやが使っていた魔力の自己供給呪文は強引にも程がある術式だったからな」

 

 高畑は背後に回ったネギへとポケットから出した手で一撃を放つが、これもネギに回避されて密着状態からの中国拳法で翻弄されている。

 そしてネギの得意な魔法の矢の雷の矢をその腕に乗せて一撃を放つ!

 それを食らい、場外までまともに吹っ飛ぶ高畑。

 

「……なるほど、魔法の矢にはああいう使い方もあるのか」

「なんだ、ぼーやでも知ってるような使い方をお前ともあろう者が知らなかったのか?」

「ケケケ。最近緩ンデルンジャネエカ?」

 

 チャチャゼロのからかうような言葉に軽く肩を竦める。

 

「忘れてるのかも知れないが、基本的に俺の魔法は独学だ。ネギのように正規のカリキュラムを受けてる訳じゃない」

 

 いや、正規のカリキュラムでああいう手法を教えるとは思えないけどな。

 そんな風に言葉を交わしている間にも吹き飛ばされたはずの高畑が殆ど無傷で復活し、試合会場や場外まで使って縦横無尽に移動しながらネギと拳のやり取りをする。その速度は瞬動を使いまくっていた俺と長瀬程ではないにしろ、十分見応えのあるものだった。

 

「へぇ、ネギもなかなかやるようになってるな」

「だから言っただろう? 誰が鍛えてると思ってる、とな。だが……」

 

 そう呟き意地の悪い笑みを浮かべるエヴァ。

 

「ぼーやとタカミチではやはり地力が違うな」

 

 その言葉がエヴァの口から発せられるのと同時にネギが高畑の蹴りを食らって距離を取られ、拳の集中砲火を受ける。

 

「あの攻撃は……俺が初めて麻帆良に来た時に見た奴か? それにしては随分と威力が低いが」

「あぁ、あれは……いや、丁度いい。ほら、高畑を良く見てろ。種明かしをしてくれるぞ」

 

 エヴァの言葉に試合会場へと視線を向ける。そこでは高畑が左手に魔力。右手に気を凝縮し……それを胸の前で融合させた。

 同時に高畑を中心に轟、という風圧が吹き荒れる。

 そしてネギに向かって真上から放たれた拳が、試合会場の舞台へと大穴を開けて破壊する。

 

「なるほど、これは確かにあの夜に見た攻撃だな。それにしても魔力と気は反発するとか前に教えて貰った気がするが?」

「ああ、確かに普通はそうだな。あれは咸卦法と言って、普通なら反発するはずの魔力と気を融合させるという超高難易度の技術だ」

「まぁ、あの威力を見れば大体分かる」

「ふんっ、肉体的な能力アップだけでは無いぞ。物理防御、魔法防御、速度は通常の魔力や気を用いたものより高い性能を誇り、耐熱、耐寒、耐毒やその他諸々の効果も得られるという破格の技術だ」

 

 ……なんだ、その無敵モードは。

 俺がよく使っている戦いの歌と比べると圧倒的すぎるその性能に呆れながらも試合会場へと視線を向ける。そこでは咸卦法を使って放たれた一撃一撃を何とか回避しながら逃げ回っているネギの姿があった。

 

「このままだとやばいな」

「馬鹿めが。この程度で諦めるのか?」

 

 吐き捨てるようなエヴァの言葉が放たれた丁度その時。風の障壁を張って何とか一撃を防いだネギだったが、すぐに瞬動で後ろへと回り込まれて咸卦法による打撃を喰らってしまう。

 腹を殴られ宙に浮き、顔面を殴られ吹き飛び、上から叩き付けるような一撃で床へと沈められる。

 

「……ふん。所詮はこの程度だったか」

 

 小さく眉を顰めながらそう呟くエヴァだったが、俺はその言葉に首を振る。

 

「いや、どうやらまだ戦いは続くらしいぞ」

 

 視線の先では高畑が倒れたネギへと何か話し掛けていた。同時に俺から少し離れた所でネギの応援をしていた神楽坂が叫び、それに呼応するように周囲の面々もネギの名前を叫ぶ。

 そしてその声に呼応するかのように立ち上がるネギ。

 

「な?」

「ふんっ! 回りの声に推されて立ち上がるとか、どこの正義のヒーローだ」

「ケケケ。英雄ノ息子ダロウ?」

 

 そんな会話をしている間にも、魔法の射手を浮かべたまま高畑へと攻撃を仕掛け……逆に吹き飛ばされ、会場の周囲に張り巡らされていた水の中へと落下する。

 

「まだだろう、ネギ。こんな所でやられていては俺に自分の力を見せるなんて出来ないぞ」

「どうもお前はぼーやに甘いな」

 

 呆れたようなエヴァの声を聞きながらもその視線を試合会場からは外さない。そして次の瞬間にはネギは水中から跳ね跳び、高畑に正面からぶつかると宣言する。そしてその身に魔法の射手を宿して突っ込み……その全てを高畑へとぶつけるのだった。

 

「勝ったな」

「ああ」

 

 俺とエヴァの言葉通り、ネギの攻撃によって倒された高畑は10カウント以内に起き上がれずその戦いはネギの勝利となって終わった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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