転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0355話

『第2回戦の第3試合は古菲選手とネギ・スプリングフィールド選手の試合の予定でしたが、古菲選手が1回戦の怪我により棄権との事なのでネギ・スプリングフィールド選手の不戦勝となります』

 

 試合会場に朝倉の放送が響き渡る。それを聞いた観客席からは『古菲部長最高ッス』『古菲部長お大事に』『古菲部長、次は勝たせてもらうでぇ!』『古菲部長付き合ってくれぇいっ!』『なら俺と婚約を』『じゃあこっちは結婚だ』等々の声が聞こえて来た。

 

「……大人気だな」

「あははは。ちょっと複雑アル。特に最後の数人とか」

 

 そうは言ってもやはり自分を応援してくれる人がいるのは嬉しいのだろう。どこか照れた様子の古菲だった。

 

『では、第2回戦第4試合。華麗にデッキブラシで戦うメイド様、桜咲刹那選手と一見すると4人目のお子様選手にしか見えないけど実は中学3年生のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル選手です!』

「あいやー。朝倉、命いらないアルか?」

「……まぁ、ノリだろう。その辺に関しては冥福を祈っておくさ」

 

 試合会場に向かって歩いているエヴァが、朝倉の説明でピクリとしたのを目にしながら苦笑する。

 

「ちなみに、何でここに? ネギとかと一緒に見なくていいのか?」

「ネギ坊主は魔法使いの件で何か用事があるらしいアル」

「……魔法使いの用事?」

「うむ。何でも映像がどうとか言ってたけど、難しい話は分からないアルね」

 

 映像、ねぇ。2回戦が始まる前に流されていた映像の件か?

 

「それよりもアクセル坊主はこの試合、どっちが勝つと思うアルか?」

「ん? どうだろうな。普通に考えれば封印で弱まっている状態のエヴァに勝ち目は無いだろうが……」

 

 何しろ、あのエヴァだ。どんな隠し球を持っているかは全く想像が出来ない。

 

『では、第2回戦最終試合……始めっ!』

 

 そんな風に話している俺達の前で、朝倉により試合の開始が宣言される。

 そして試合開始と同時に、あっさりと俺の予想は裏切られた。何も攻撃されていない筈の桜咲がまるで何かに操られるかのように投げられ、固められる。

 

「あれは、何アルか?」

「……糸、だな」

 

 隣で不思議そうに呟いた古菲に半ば無意識に返事をする。

 

「エヴァの異名は色々とあるが、その中に人形使いというものがある。そっち関係のスキルだろう」

「さすがエヴァにゃんアルね」

 

 古菲が感心したような声を出している間にも、糸によって固められた桜咲と会話を交わすエヴァだったが、次の瞬間には桜咲の気を纏わせた両手により糸を切断。持っていたデッキブラシでエヴァの顔面を狙って叩き付ける。……否、斬り付ける。

 

「おお、これはいけるアルか!?」

 

 期待するような声を上げる古菲だったが、デッキブラシの一閃はエヴァが持っていた鉄扇で受け止められてそのまま鉄扇をテコにして投げられた。

 そこから始まったのは桜咲による必死の反撃だ。ただしその殆どをエヴァにいなされ、回避され、受け止められる。その度に投げられるのだが、さすがに神鳴流剣士と言うべきか、受け身を取る取らない以前に投げられた空中で態勢を整えて猫のように床へと着地する。

 そんな戦いが始まり数分。さすがに息を切らし始めた桜咲を再度糸で絡め取ったエヴァは桜咲を顎を掴んで強制的に自分の方へと向けてその目を覗き込む。

 

「……なんだ?」

「さぁ、私にも分からないアル。魔法関係の技術じゃないアルか?」

 

 俺の呟きに古菲が質問をしてくるが、首を振る。

 

「予想としては以前エヴァの別荘で俺やネギの記憶を覗いた時のような魔法、あるいは技術だと思うが……少なくても俺には使えないな」

「そうアルか。うーん、そうなると黙って見てるだけというのもつまらないアルな」

 

 実際、観客席の方でも目を合わせたまま沈黙しているエヴァと桜咲の様子にざわついている。

 

『これは、一体どうしたのでしょう? エヴァンジェリン選手と桜咲選手が目を合わせたかと思うとそのまま動きが止まってしまったぞ』

 

 朝倉も困惑したように実況をするが、それでも2人に動きはない。そしてそのまま30秒程が経った頃だろうか。さすがに観客席の方から徐々に野次が投げかけられ始めたその時、唐突に試合が動いた。

 何と目を合わせて動きを止めていた2人を中心にして爆発のようなものが巻き起こり、その煙を突き破って桜咲がエヴァへと鋭い踏み込みで自分の間合いまで入り込むと通り抜け様に持っていたデッキブラシを一閃したのだ。

 

「ふっ、なかなかに面白いものを見せて貰った。今回はこの辺でギブアップとしておこう」

 

 その一閃で倒されたエヴァがギブアップをして試合が終了する。

 

 『エヴァンジェリン選手、ここでギブアップ宣言! 勝者、桜咲刹那選手です。それにしてもあの空白の30秒で一体何か起こったのか。あの爆発は何だったのか。非常に謎の残る一戦でした。尚、10分の休憩を挟み、いよいよ準決勝に入ります』

 

 朝倉が桜咲の勝利を宣言し、横にいた古菲がほっと安堵の息を吐くのが見えた。

 

「何が起こったのかは分からないアルが、ともかく刹那が勝ったようで何よりアル」

「準決勝進出者4人のうち、3人が3-A関係者になったな」

「そうアルね。……ああ、私も腕が骨折してなかったらこの戦いに参加出来たのに……残念アル」

 

 そんな風に話していると、ふと後ろに人の気配を感じる。

 ちょっと前にも似たような事があったな、と苦笑しながら振り向く。

 

「アクセル……その、俺」

 

 そこにいたのはどこか落ち込んだ様子の小太郎だった。

 

「長瀬はどうした?」

「あ、何か用事があるとか言うてどっか行ったわ」

「そうか」

 

 恐らくネギの所にでも行ったんだろう。

 

「いや、そうやなくてやな」

 

 何かを言いたそうにしながらも口籠もる小太郎。その様子を見て、思わず笑みを口元に浮かべる。

 

「ちょっ、なんや。何がおかしくて笑っとるんや!?」

「いや、お前も随分俺に慣れたなと思ってな」

 

 この麻帆良に来た当初は、まるで爆発物に接する爆弾処理班といった感じで俺に接していた。それが夏美経由で強制的に俺と同じ部屋に住まわされ、そのトラウマを克服する為に俺に挑み。そして今、目の前にいる訳だ。

 

「そりゃ、幾ら何でも毎日顔を合わせていれば嫌でも慣れるわ」

「だろうな」

「って、せやからそんな話やなくてやな!」

 

 慌てて話を元に戻そうとする小太郎の肩を軽く叩く。

 

「ま、お前が負けたのはある意味しょうがない」

「……しょうがない?」

「ああ。ちょっとしたズルをしてるのを見破れなかっただろう?」

「なんやとっ! あのフード男ズルしとったんか!?」

 

 ズル、という言葉に憤る小太郎だったが、その腹に軽く拳を入れてやる。

 

「ぐっ、な、何をするんや」

「落ち着け。そもそもバレないズルはズルじゃなくて技術だ。それを見破れなかったお前が悪い」

「確かにそうかもしれんけど……」

 

 小太郎が不承不承頷いた時、試合会場の方から朝倉の声が聞こえて来る。

 

『さぁ、我々の常識を越えた戦いが行われてきたこの武道大会も残すのはいよいよ3試合のみとなりました。皆さん、観戦の準備はよろいいですね? では、準決勝を始めたいと思います!』

「さて、そろそろ時間だ。お前は俺の戦いを見て、あいつのズルを見破れるかどうかでも試してろ」

「……分かった。けどな、俺に勝ったアクセルがあんなズルするような奴に負けるのなんて絶対許さんからな!」

 

 その声と共にパァンッと背中を叩かれ、小太郎らしい激励を受け。

 

「戦いでズルをするのはちょっと許せないアルね。アクセル坊主、絶対に勝つアルよ」

 

 古菲からも応援の言葉を貰って試合会場へと進む。

 

『犬上小太郎選手に圧倒的な強さを見せつけたクウネル・サンダース選手対準決勝に勝ち進んだ4人の中の2人が子供。その1人であるアクセル・アルマー選手の試合です。では準決勝第1試合……始め!』

「では、行きますよ?」

 

 試合開始の合図を聞いたその瞬間、背筋に走ったゾクリとした危機感に突き動かされて反射的に瞬動を発動。アルビレオの真横へと回り込む。

 同時につい数瞬前まで俺が立っていた場所を中心とした一撃が放たれ試合会場が破壊される。

 

「……おや」

 

 真横にいる俺に対して意外、とでも言うように笑みを浮かべるアルビレオ。

 

『戦いの歌』

 

 無詠唱で戦いの歌を使用し……

 

「はぁっ!」

 

 そのまましゃがみ込んで目の前にある足を刈るために地を這うような回し蹴りを放つ。

 その一撃を軽く後ろへと跳躍して回避するアルビレオ。

 ちぃっ、子供の身体だとどうしても攻撃の射程が短くなるな。

 そのまま地面を蹴ってアルビレオへと突っ込み、その顔に一撃を入れ……

 

「くそっ!」

 

 顔に一撃を入れたと思ったその瞬間、手応えが全くない状態で姿が消え失せて俺の後ろへと唐突に現れる。

 ともあれ顔面へと攻撃をした勢いのまま虚空瞬動を発動。背後に回られたアルビレオとの距離を取る。

 

「素晴らしい。反射神経、咄嗟の判断力、一撃の重み、攻撃から攻撃へ移る時の連携速度。どれも超一級品と言ってもいいでしょう。惜しむらくは実戦経験が多少足りない所ですか。……まぁ、いいでしょう。アクセル君、君には私のとっておきを……」

 

 何やら勿体ぶって言いながらローブの裾へと手を入れる。……けど、何かしようとしてもそれを待ってやる程に俺は甘くはない。そしてここが勝負の時。

 

「愛、直撃」

 

 加速の効果、戦士の歌の効果、瞬動の効果。それらが集まった一撃の速度は間違い無く今日一番と言えるものだった。その一撃はグッドマンに放った攻撃よりも速度という面では勝っていただろう。そしてその速度に乗った俺の拳はアルビレオを貫き……次の瞬間には試合会場からアルビレオの姿は消え去っていた。

 

『おおっとぉっ、またもやクウネル選手の姿が消えたぞ! 次は何処に出るのか!』

 

 朝倉の放送を聞きながら、いつでも攻撃を再開出来るように態勢を整えて待つ……待つ……待つ……待つ……

 その状態のまま3分程待機してみたが、アルビレオの姿が現れる様子は無い。

 

「……朝倉?」

 

 このままいつまで待てばいいのか、というつもりで朝倉へと尋ねる。

 

『ちょっ、ちょっと待って下さい。こういう場合は……』

 

 慌ててマイクのスイッチを切り、携帯でどこかへと連絡をしている。……まぁ、超で間違い無いだろうが。

 話をする事1分程。携帯を仕舞い込んだ朝倉が再びマイクのスイッチを入れる。

 

『えー、クウネル選手の行方が不明の為にこの試合はアクセル選手の勝利とします!』

 

 俺の勝利が宣言されると、客席から微妙にブーイングがされる。とは言っても、それは俺や朝倉に対してではなくアルビレオに対してだろう。

 何しろ残り3試合のうちの1試合が選手の行方不明で不戦勝――一応戦ってはいるが――という形で終わったのだから。

 まぁ、何故こうなったのかは大体予想が付いている。コピー体に対して直撃を使った攻撃を命中させた為に、コピー体が消滅したのだろう。この場合、本体の方にダメージがいってるのかどうかは俺からは分からないが……まぁ、勝ったんだし良しとする。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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