転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0359話

「アクセル君、これをどうぞ」

 

 隣を歩いているあやかに手渡されたのは、イカ焼きだった。イカを丸々一匹使って焼き上げており、醤油の焦げたいい香りが漂う。

 

「ああ、悪いな」

 

 何だかんだで武道大会でもかなり動いた。元々燃費の悪い身としてはそろそろ腹に何かを入れておきたいというのも事実だったのでイカ焼きを受け取ろうとあやかの方へと手を伸ばす。……だが、何故かその手は空を切るのだった。

 

「あやか?」

「アクセル君、これはデートですのよ? ですから……分かるでしょう?」

 

 これは、アレか。レモン達にもやらされた。

 

「あ、あーんを……その」

 

 恥ずかしそうにイカ焼きを突きだしてくるあやか。幸い今日は麻帆良祭という関係もあり、周囲では似たような事をしているバカップルもそう珍しくはない。

 ……まぁ、もっとも中学3年と10才のカップルなんてのは存在していないが。

 ともあれ、微妙に内心で葛藤しつつも目の前の香ばしい醤油の焦げた匂いと空腹という黄金のコンビに抵抗出来る筈もなく黙って口を開けたのだった。

 

「まぁ! はい、あーんですわ」

 

 差し出されたイカを一口、二口と噛んでじっくりと味わう。

 口の中に入った瞬間、パァッと広がる醤油の香り。そしてイカの身を噛むと柔らかな食感と磯の風味が混然となり……って、俺はどこの美食評論家だ。

 ともあれ、美味であるのは間違い無いのでそれからも美味そうな屋台を見つけてはお好み焼きやら、焼きそばやら、たこ焼きやら、焼きもろこしやら、ドネルケバブやらを買い込んでは食べていく。ちょっと変わった所では鮎の塩焼きなんかも売っていた。……この麻帆良でどこから手に入れてるのやら。

 それらを食い終わった後は、デザートとして綿飴、かき氷、チョコバナナ、鯛焼き、何故かあった今川焼きなんかを買い込んで味わっていく。

 

「アクセル君、その……お腹は大丈夫ですの?」

 

 心配そうにあやかが尋ねてくるが、最後の今川焼きを食い終わってようやく腹八分といった所だ。

 

「んー、そうだな。取りあえず腹も落ち着いて来たし他の所をちょっと見て回らないか?」

「ええ。アクセル君の健康の為にもそうした方が良さそうですわね」

 

 その後は、茶道部に行って茶々丸にお茶とお茶菓子をご馳走になったり、千鶴の天文学部のプラネタリウムを楽しんだり、演劇部で夏美が出ている演劇を見たり、超包子によって肉まん、ピザまん、カレーまんの麻帆良3食まんセットを食べたり、あやかが自分の部活で馬術部に誘ってきたので、乗馬体験をしたりした。

 

「あら、アクセル君。もう5時を過ぎてますわ。そろそろ円さん達のライブの会場に向かいませんか?」

 

 あやかの声に、携帯を取り出して時刻を確認すると既にPM5:15分と表示されている。

「そうだな、じゃあ行くか。楽屋には入れるんだったか?」

「さぁ、どうでしたかしら。でも多分大丈夫だと思いますわ」

 

 そう言いながらコンサート会場へと向かう。向かったのだが……

 

「これは、ちょっと予想以上だ」

「そ、そうですわね。どなたか有名な方でも出るんでしょうか?」

「……いや、単純に麻帆良祭だから羽目を外している連中が多いんだと思うけどな」

 

 そう、俺とあやかの目の前にはコンサートホールへと向かっている大量の人、人、人。まさに人の群れだった。人数的には武道会に来ていた客の数倍はいるだろう。

 

「アクセル君?」

 

 そんな人混みに唖然としていた俺へと声が掛けられる。

 声のした方へと振り向くと、そこには20代くらいの男が2人に俺よりも小さい幼女の姿があった。

 

「……どなたですか?」

 

 見覚えのない3人に訝しげに尋ねるあやか。その様子を見ながらも、目の前にいる3人……いや、正確には赤毛の男と黒髪の男にはどこか見覚えがある。けど、その顔はやっぱり初めて見る顔な訳で……

 

「おい、やっぱりアルマーの奴もお前等の関係者なのかよ」

 

 幼女の方もまた、俺の名前を知っているらしい。

 

「いや、まぁ。確かに決勝でネギ先生に圧勝したのを考えればおかしくはないんだが」

 

 ……ネギ? そう、確かに目の前に立っている大人のうちの片方はその顔にどこかネギの面影がある。と言うか、よく見ればネギの記憶で見たナギ・スプリングフィールドにそっくりなのだ。となると、これはもしかして。

 そんな俺の疑問は、黒髪の男の言葉で証明された。

 

「アクセル、俺や俺。小太郎」

「……となるとやっぱりこっちはネギ、か?」

 

 赤毛の男の方へと視線を向けて尋ねると、コクリと頷き……そしてその肩には見覚えのある小動物の姿が。

 

「へへっ、アクセルの兄貴にあやかの姐御、どうも」

 

 そのカモの姿を見て、あやかもようやく目の前にいるのが誰か分かったらしい。口に手を当てて驚きで声が出ないようにしている。

 

「……ネギ先生、ですの? そう言えば確かにネギ先生の面影が……そしてそっちは小太郎君。じゃあそっちの子は?」

「長谷川千雨だ、いいんちょ。にしても、いいんちょまで魔法の関係者だったとはな」

「長谷川さんですの? えーっと……何がどうなっているのでしょうか?」

「魔法の道具って奴でさぁ。赤いあめ玉・青いあめ玉年齢詐称薬ってのがあるんすよ」

「なんだ、そのあからさまに怪しい道具は」

 

 ボソッと呟いた俺の言葉に何か不穏なものを感じたのか、ネギの肩の上で慌てて首を激しく左右に振るカモ。

 

「た、確かに名前は怪しいですが、まほネットの通販で買える普通の魔法道具なんすよ。名前が怪しいのは開発者の趣味と言うか、名前で効果が分かるようにっていうか……」

「いや、まぁ、非合法な品じゃないのならいいんだけどな。……で、長谷川は何でこっちの出来事に首を突っ込んでるんだ? またバレたのか?」

「あ、あう……」

「アクセルの兄貴、今回に関してはネギの兄貴は全く悪くは無い! ……とは言わないが、アクセルの兄貴にも原因はあるんですぜ」

「何?」

 

 カモの台詞に眉を顰めて事情を聞くと、どうやら麻帆良武道会での試合を見ていて自分で魔法の存在を突き止めたらしい。

 ……確かにそれだと俺にも原因が無いとは言えないな。

 何しろ武道会で優勝したという事は、俺が一番多く試合をこなした事の証明でもある。まぁ、試合数に関しては目の前にいるネギも変わらないのだが。……いや、古菲との戦いで不戦勝だった事を考えるとやっぱり俺の試合回数が一番多いのか。

 

「つまり長谷川は朝倉と同じような立場になるのか?」

「まだどうするかは聞いてませんが、恐らくは」

 

 俺の言葉に頷くネギ。

 なんつーか、えーっと……クラスの面々を頭の中で数えていく。すると、既に魔法に関して知らないという面子は10人を割っているのに気が付いた。

 いっその事、クラス全員に魔法をバラしてしまえばいいんじゃないのか?

 

「ちょっ、朝倉と同じ立場ってなんだよ」

「その点は後で説明します。それよりアクセル君といいんちょさんも釘宮さん達の応援に来たんですよね?」

 

 長谷川の話をスルーしながら話し掛けてくるネギ。その様子には麻帆良祭前に感じていた俺に対する隔意は無いように見える。まぁ、あの戦いで自分自身に対して色々と納得したのだろう。

 

「だな。お前達も行くか?」

「うん、そのつもり。担任としてやっぱり晴れ舞台にでる皆の応援はしたいしね」

 

 そう言いながらネギ達と共に控え室の方へと進んでいくと、やがて『でこぴんロケット』と書かれた紙が貼られているドアを発見する。

 

「ここみたいですね」

 

 ネギの言葉に頷き、ドアをノックする。

 

「はーい、どうぞー」

 

 中から美砂の返事が聞こえ、ドアを開ける。

 

「あ、アクセル君。どう、この格好」

 

 ステージ衣装なのだろう、着ている服を自慢気に見せてくる。

 

「ああ、よく似合ってるな」

 

 ネクタイをしているせいか、微妙にスーツっぽいイメージもあるが。

 

「でしょ? 円、アクセル君が来た……よ? あれ、そっちの3人は? あ、確か亜子の……ナギさん、でしたっけ?」

 

 大人になったネギをみながら首を傾げる。

 

「……あれ? 改めてナギさんの顔を見ると、どこかで見覚えのあるような……あぁっ!」

 

 何かに気が付いた美砂が口を開こうとしたのを、咄嗟に塞ぐ。

 

「んー、んんーっ!」

「何が言いたいか分かるけど、落ち着け。あれはネギと小太郎。それと長谷川が魔法薬で大きくなったり小さくなったりした姿だ」

 

 俺の説明にピシリと固まる美砂。その隣に来ていた円も同様だ。

 そのまま俺を引っ張って部屋の隅へと連れていこうとした所で……スタッフらしき人物が扉とネギ達の間から顔を出す。

 

「でこぴんロケットさん、そろそろ準備お願いします」

「あ、はい。分かりました。すぐにいきまーす」

 

 俺の側にいる円と美砂。ネギと何かを話している和泉。その中で1人だけ面白そうに和泉とネギの様子を見ていた桜子がそう答えている。

 

「む、色々と聞きたい事があったんだけどしょうがないわね。……いい、アクセル君。後でこの件については聞かせて貰うからね」

「あー、まぁ、機会があったらな」

 

 急いでライブの準備を始めている4人にそう誤魔化して客席へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 さすが麻帆良祭と言うべきか。かなりの客数で埋まっている中を、俺とあやかは進んでいた。……ちなみに、ネギ達とは既に人混みに流されてはぐれていたりする。まぁ、ネギと小太郎はともかく、長谷川は俺やあやかと一緒にいると居心地が悪そうだったのを考えるとはぐれたのはそう悪い事じゃないだろう。

 

『次は初参加の4人組ガールズバンド、でこぴんロケットです!』

 

 そんな放送と共にステージにスポットライトが集まり、そこには円、美砂、桜子、和泉の4人がいた。

 そして始まる演奏。

 ボーカルの美砂はさすがと言うべき美声を披露し、円と桜子、和泉の3人もテンポのいい曲で盛り上げていく。そして最初の曲を歌い終わった後に和泉がマイクでトークを始めるが……もしや告白か? と思わせる言葉の後に続いたのはメールアドレスを教えて下さい、というものだった。

 そしてマイクが美砂へと手渡される。

 

『えっと、亜子のトークはどうでしたか? なかなかに初々しかったと思いますが私にも声を掛けておきたい人がいます。その人は色々と大変な思いをしてこの麻帆良に来ました。一見完璧超人っぽく見えても色々と抜けてたり、胃袋が底無しじゃないかってくらい食べたりと欠点も多いんですが……私と彼女、円はその人の事をとっても大事に思っています! いい! 私達は負けないんだから、その辺をしっかり覚えておいてね!』

 

 美砂のトークはそれで終わり、そこからは2曲目の歌へと入っていった。

 しかし、今のは告白と受け取られてもおかしくなかったと思うんだが……世界樹の方に異変は感じられない。どの辺で区別をしてるんだろうな。

 

「負けない、か。全く男を見る目の無い奴だな」

「そうでもありませんわよ。私も、千鶴さんも、美砂さんや円さんだって。男を見る目は相当のものだと自負していますわ」

 

 隣に座っているあやかが、ギュッと俺の手を握りながらそう告げてくる。

 全く……馬鹿な奴等ばっかりだな。

 そう思いつつも、でこぴんロケットの曲を最後まで聴くのだった。

 

 

 

 

 

 麻帆良女子中の屋上。既に6月も終わりに近い初夏とも言える時期だけに、夜に屋上という場所にいてもそう寒さを感じさせない。

 でこぴんロケットのライブを全部聴き終えた俺は、あやかにちょっと外せない用事があると言って、デートはそこまでで終了にしてもらい、まだ祭りを楽しんでいる人々の声がここまで聞こえる中、約束の相手を待っていた。

 屋上から麻帆良の街並みを眺めていると、ギィッという扉を開ける音が背後から聞こえて来る。

 

「待たせたかネ?」

「いや、少し早く来ただけだ」

 

 そこにいたのは超鈴音。俺の待ち合わせの相手だった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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