転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0365話

 エヴァの別荘での一件から数日。俺は適当にその日の分の夏休みの宿題を片付けた後は街をぶらついていた。まさか今更夏休みの宿題とかをやる羽目になるとは思わなかったが。

 ……ちなみに、あのやり取りの後だったのであやか達とのやり取りは気まずくなるかとも思ったんだが、全くそんなことは関係なくいつも通りだったのがちょっと意外だった。

 

「こんなことならネギ達に付いていくべきだったか」

 

 まだ朝も早いというのに、強烈に自己主張してくる太陽を恨めしげに眺めながら呟く。

 ネギパーティの面々はクラブの合宿と称して海に遊びに向かい、クラスの面々で暇な連中もそれに付いていったのだ。当然俺も誘われたのだが、まさかあやか達が必死になって修行をしているというのに俺だけ遊びに行く訳にも行かず……かと言って、ああいう風に言い切ってしまった以上はその修行に付き合う訳にもいかず。

 

「こうして暇をもてあましている訳だ」

 

 自嘲気味に呟いたその時。

 

「ちょっと、そこの貴方。ネギの知り合い?」

 

 背後からそう声を掛けられる。

 振り向いた先にいるのは、いかにも魔法使いといったローブと帽子を被った一人の少女の姿があった。外見年齢的には今の俺やネギ、小太郎とそう差はないだろう。

 それだけならここは麻帆良学園なんだからそうおかしなものでは無かっただろう。だが、俺はこの目の前にいる人物に見覚えがあった。そう、ネギの記憶を体験した時に出てきた少女だ。

 とは言え、俺が一方的に相手の事を知ってるだけなのだからそう迂闊な真似も出来ない訳だが。

 

「知ってるが、お前は?」

「私はアーニャ。ネギの知り合いよ。で、ネギはどこにいるの?」

「部活の連中と海に遊びに行った筈だが……」

 

 海に遊びに行った、という話を聞いた途端ピクリと眉が不快気に歪む。

 

「へー、そう。ネカネおねーちゃんを待たせておいて自分は優雅に海でバカンスとか……ちょっと貴方!」

「アクセル」

「え?」

「アクセル・アルマーだ。俺だけ名前を教えて貰ってるのは不公平だろ?」

「そう、まぁ、いいわ。それでアクセル。そのネギが行った海にはどうやれば行けるのかしら?」

 

 アーニャの言葉に、ネギ達が合宿について話していた内容を思い出してそれを教える。乗り換え等あるが、ここまで1人で来たのだから恐らく大丈夫だろう。

 

「そう、ありがとう。これでネギをイギリスに強制連行する事が出来るわ!」

「いや、そんな真似をしなくても後2週間ちょっとでイギリスに行く予定になってるんだが」

「……2週間?」

 

 その言葉に不快気に歪んでいた眉が元に戻った。だが。

 

「そう、今日一緒に海に行ってる奴等と一緒にウェールズに戻る予定だと聞いている」

 

 俺のその言葉で、額に青筋が浮いてきたのだった。

 これは、やらかしてしまったか?

 

「へー……そう、そうなの。私やネカネお姉ちゃんが待ってるっていうのに自分は女の人に囲まれてヘラヘライチャイチャしながら海で遊んで……しかもイギリスに戻ってくる時も女の人を連れてチャラチャラ帰国? これは、ネギの性根を一度徹底的に叩き直して上げる必要が出て来たみたいね。アクセルって言ったかしら。情報ありがとう。私は早速教えて貰った通りにあの色ボケしてるネギに折檻しに行ってくるわ!」

 

 素早く頭を下げて礼を言ったかと思うと、そのまま荷物を持って俺の前から走り去っていったのだった。

 

「……あー、まぁ、同郷の幼馴染みなんだし、たまには羽目を外すって事で」

 

 暑さにうんざりとした頭で、そのままにして放っておこうかとも思ったのだが、さすがにそれは薄情だろうと思い携帯でネギへと連絡を取る……が、海で泳いでいる為か全く連絡が付かない。神楽坂や近衛、朝倉といった面々に電話しても同様だった。

 

「ま、メールくらいは送っておくか」

 

 アーニャが来たので、そっちに向かったと用件だけの文面でネギへとメールを送ったのだった。

 

「ん? アクセルやないか。部屋にいないと思ったらこんな所にいたんかい」

 

 再び背後から掛けられる声。

 振り向くと、そこにいたのは7月の太陽というある種の兵器染みた日光の下でも学ランを着た小太郎の姿。

 

「お前、この暑いのに学ランって……よく平気だな」

「へんっ、学ランは俺の戦闘服や。ただ暑いくらいで脱げるかい」

「いや、お前がそれでいいんなら構わないが……熱中症には気をつけろよ」

「夏美ねーちゃんにしっかりと言われてるから問題無いわ」

 

 そう言いながら、持っていた鞄から水筒を取り出す小太郎。

 

「で、さっきの女は誰や?」

 

 その口調から言うと、アーニャと俺が話していた所を見ていたらしい。

 

「ネギの幼馴染みだ。わざわざイギリスから迎えに来たんだとさ」

「けっ、また女かいな。アクセルといい、ネギといい。西洋魔法使いは軟派な奴ばっかりやな」

「ま、そう言うな。と言うか、お前は海に行かなかったのか?」

「海にも興味あったけど、やっぱり今は修行に集中したいんや。何しろネギ相手の模擬戦で最初は俺の方が有利やったのにここの所グングンと差を縮められてきとるからな。この機会にちょっと鍛え直しとこかと思って。……アクセルは何しとるんや?」

「何と言うか……まぁ、散歩か?」

 

 俺の言葉に呆れたように溜息を吐く小太郎。

 

「それこそ、この暑い中でよく散歩する気になれるな。それよりも特に用事無いんやったら俺の修行に付き合ってんか?」

 

 修行……ねぇ。

 

「場所は?」

「へ? 場所? それは決まってるやん。いつもの別荘や」

「そうか。なら残念だが付き合えないな」

「何でや?」

「はぁ……聞いてないか? 来月の10日に俺はあやかや千鶴達と模擬戦をする事になっている。今、エヴァの別荘ではその為の修行をしてるんだよ。そこに模擬戦相手の俺が入っていく訳にもいかないだろう?」

 

 俺との模擬戦、と聞いた小太郎が惚けたような表情でこちらを見ている。

 

「……模擬戦って誰と誰が?」

「だから、俺とあやか、千鶴、円、美砂の4人だ」

「この場合は本気か? と聞くべきなんかな。それとも正気か? と聞くべきなんか?」

「少なくてもエヴァは本気だな」

 

 俺のその言葉に何もかも理解したかのような表情を浮かべる小太郎。

 

「あー、なるほど。確かにあの人ならそのくらいの事は平気でやりそうやな。と言うか、何で急に模擬戦なんか?」

 

 どうやらその辺の事情は全く知らないらしい。あるいは、単純に自分の修行に夢中で聞いてなかっただけか。

 

「お前達が来月イギリスに行って、そこから魔法世界に渡るだろう?」

「ああ」

「で、俺もそれに付いていく予定だったんだが……」

「え? マジで?」

「とは言っても、別に俺の目的はお前達と違ってナギ・スプリングフィールドの情報とかじゃない。まぁ、有り体に言うのなら宝探しだな。もっとも、エヴァの目論見としてはお前達とはまた違うルートでナギ・スプリングフィールドの情報が入手出来ないかどうかを考えているんだろうが」

「うわっ、ネギと行くよりアクセルと一緒に行った方が面白そうやんか」

 

 宝探し、という単語に目を輝かせる小太郎。

 

「で、それにあやか達も付いてくると聞かなくてな。俺との模擬戦である程度以上の実力を見せたら、って事になった訳だ」

「そんなん、別に意地悪せんでも連れてけばえーやん」

「あのなぁ。あくまでも都市部を回るだけのお前達と違って、こっちは正真正銘迷宮やら遺跡やらに潜るんだぞ? こっちの方が余程危険度は高いんだよ」

「うーん、そんなもんか?」

「ああ。あくまでもエヴァから聞いた話だが、遺跡なんかには当然トラップがあったりモンスターの類が巣くってたりもするらしいからな。それこそそっちにいる長瀬や桜咲といった面子なら俺としても大歓迎なんだが」

 

 長瀬に桜咲。その2人共がネギパーティの中でもトップクラスの実力を誇っている。特に長瀬の忍としての能力は遺跡探索では大いに役立ってくれるだろう。桜咲もまた、翼により空を飛べるというアドバンテージを持っている。

 ……まぁ、それを言うなら俺も異形化を使えば羽が生えてくるんだが。

 

「なるほど。大体分かった。確かにそんなに危険な所に行くんなら素人兵法は逆に危険やな」

 

 小太郎も俺の言葉を理解したのかしょうがないとばかりに頷いていた。

 

「あー、にしてもあっちでネギと一緒に行動するって決める前だったら間違い無くアクセルの方に行ったんやけどなぁ。宝探しとか迷宮とかめっちゃ面白そうやん」

「そうは言うが、ネギの方を疎かにする訳にもいかないしな」

 

 ナギ・スプリングフィールドという英雄の息子。そのネームバリューは魔法世界ではかなり大きいらしい。エヴァの話によるとファンクラブまであるというのだから恐れ入る。……そういう意味では高畑も同様らしいが。

 そんなネギが魔法世界に行くのだから、面倒事の1つや2つ……どころか、20や30は平気で襲ってきそうな気がする。

 

「確かにアクセルはそれこそ地獄に放り込んでも1人なら普通に生きてけそうやけど、ネギはまだまだ頼りないからなぁ」

「それはちょっと言い過ぎだろう」

「いや、正確に表してると思うで。まぁ、とにかくここで話をしてても暑くて喉が渇くだけやからな。俺はそろそろ修行に行くわ」

「ああ、頑張れよ」

 

 軽く手を上げて去っていく小太郎の背中へと声を掛ける。

 ……修学旅行の時から考えると、随分と俺に慣れてきたよな。

 

 

 

 

 

 こうして、時は流れ8月10日。いよいよ約束の時が来た。現在外の時刻は昼前といった所か。そして戦場となるいつもの別荘の前庭にいるのは、俺、あやか、千鶴、円、美砂の当事者5人に審判のエヴァ、その保護者である茶々丸、野次馬のチャチャゼロの3人。

 

「委員長、本気でアクセルに挑むつもりなのかしら。あいつの出鱈目な力を一番近くで見た来たんでしょうに」

「皆、無事に済めばええんやけどなー。さすがにアクセル君の力で潰れたトマトみたいにクチャッとなったらウチにもどうにも手の施しようがないし」

「ちょっ、このちゃん! ブラックすぎます!」

 

 最後に、ネギパーティの面々も勢揃いしていた。

 そんな中でエヴァが前へと進み出る。

 

「では、これからアクセルと従者4人の模擬戦を行う。尚、この戦いは従者4人の方が魔法世界でやって行けるかどうかを見る為の戦いであり、勝敗はそこまで気にしなくてもいい。それと一応アクセルは異形化の使用を禁止とする。……始めっ!」

 

 エヴァの合図と同時に、瞬動を使用。前へと進み出る。同時に、つい数瞬前まで俺がいた場所を囲むように作りあげられる炎の壁。円の純炎の涙か!

 恐らく俺の機動力を封じる為に炎の壁で俺を閉じ込めようとしたのだろう。確かにその狙いは悪くなかった。だが!

 

「駄目っ、逃がした! 美砂!」

「任せて!」

 

 円の声が聞こえると同時に、周囲へと響き渡る歌声。その発生源は当然美砂だ。アーティファクトのセイレーンの涙を使っているのだろう。その歌声を耳にした途端、瞬動を使って前へと進んでいる筈の身体が重くなる。

 

「ぐぅっ!」

 

 くそっ、歌声を聞いた時点で抵抗出来ない補助魔法とか地味に厄介だな。頭では分かっていたが、実際に自分で食らってみるとより正確に理解する。

 

「加速!」

 

 精神コマンドの加速を使用し、一直線にあやかの下へと向かっていた瞬動から進撃先を美砂へと変える。だが……

 

「美砂を中心に半径1mに領域を指定。赤の石よ、その力を示せ」

 

 千鶴のそんな声が響き渡り、赤いドーム上の領域が美砂を守るように形成される。

 

「ちぃっ、間に合うか!?」

 

 速度にのったまま、美砂を気絶させるべく鳩尾を狙って拳を突き出すが……

 ガッ! という固い手応えと共に虹色領域の腕輪で形成された赤いドームに弾かれる。

 

「はぁっ!」

 

 そして聞こえて来る短い声。それが誰の声で、何を使ったのかを分かった俺は美砂に対する攻撃に拘らずに瞬動でその場から咄嗟に撤退する。

 次の瞬間には、あやかの操る鮮血の鞭が9条の軌跡を描いて俺がいた場所に降りかかってきていた。そして……

 

「何!?」

 

 俺が鮮血の鞭から回避した先。そこに着地した瞬間、魔法の射手の戒めの矢が放たれて俺を縛り上げたのだった。 




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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