転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0366話

「やった! 皆、今のうちに仕掛けて!」

 

 その声が聞こえたのは上空。純炎の涙の効果の1つである空中浮遊を使った円のものだ。そうなると当然、今俺の身体を縛っている戒めの矢を放ったのも円なのだろう。

 夏休み前はまだまだ『火よ灯れ』程度しか使えていなかった筈だが、この短時間で魔法の射手も使えるようになったか。

 

『魔法の射手 雷の5矢!』

 

 周囲に響く美砂の声と、俺へと迫ってくる雷の矢。こっちも魔法の射手を使えるようになっていたか。だが、セイレーンの瞳による歌をやめて魔法に変更したのは甘かったな。

 

『戦いの歌!』

 

 身体強化魔法である戦いの歌を使用し、身体を縛っている風の束縛を魔力も使って無理矢理引きちぎっていく。

 

「嘘っ! 千鶴、早く!」

「アクセル君を中心に半径1mに領域を指定。黄の石よ、その力を示せ」

 

 その声と同時に俺を中心とした黄色い領域が形成され、俺の魔力を徐々にだが途切れる事無く吸収していく。

 

「ちっ」

 

 短く舌打ちをするが、領域が俺の魔力を吸収していく速度はSPブーストのSP回復効果と殆ど拮抗している。それを素早く確認してから、再度瞬動を使って魔力吸収領域から抜け出す。

 

「行きますわよ! 皆、離れて下さい!」

 

 あやかの声と共に、個々に別々の軌道を描きながら俺へと迫ってくる9条の鞭。そしてその剣先から雷の矢、炎の矢、氷の矢といったものが少数ながらそれぞれ放たれる。鮮血の鞭の能力の1つである剣先に封じていた魔法の開放だ。

 

『8の影槍!』

 

 始動キーを省略して放たれた影槍の魔法により俺の影から8つの影槍が飛び出し、同時に俺を中心として網目模様のように組み上がる。次の瞬間にはあやかから放たれた各種の魔法の矢が命中。それを完封する。

 

「4人で組まれるとここまで厄介だとはな」

 

 影槍を使った盾にぶつかって爆炎を巻き上げている魔法の射手の雷や炎といった存在を目眩ましに、盾を大きく迂回するようにして移動して美砂を狙う。

 美砂へと狙いを定めたのは、幾度かの戦闘を経験してそれなりに場慣れしてきたあやかと千鶴。そしてアーティファクトである純炎の涙の効果で空を飛んでいる円。消去法で戦闘経験が少なく攻撃の届きにくい空中では無く地上にいる美砂が一番狙いやすかった為だ。

 

「はぁっ!」

 

 瞬動を使った跳躍。同時に虚空瞬動を使って既に慣れた三角跳びで美砂の背後へと回り込む。そしてそのまま首筋へと手刀を……

 

「美砂!」

「ちぃっ!」

 

 振り下ろしかけたその時。円が鋭く美砂へと声を掛け、俺と美砂の間に炎の壁……というよりは、カーテンのような薄い、しかしその分幾重にも重なっている炎を作りだして俺と美砂を分断する。

 だが……

 

「加速」

 

 精神コマンドの加速を使用し、影精を身に纏って咄嗟の防具としながらその炎の壁へと突っ込んでいく。

 

「そんな無茶な!」

 

 ネギ達が見ている方から神楽坂の悲鳴のような声が周囲に響く中、軽い火傷を負いながらも炎のカーテンを突破。目の前には炎の中から出て来た俺を見て驚愕で固まっている美砂の姿が。

 瞬動、虚空瞬動を連続して使い、今度こそその首筋へと手刀を叩き込み気絶させる。

 倒れ込む美砂を地面にぶつかる直前でそっと受け止めてから地面へと寝かせる。

 

「まず1人」

 

 呟き、こちらへと向かって振り落とされた鮮血の鞭の攻撃から逃れるようにして後方へと大きく跳躍……同時に、再度瞬動を使って千鶴へと向かう。

 

「私を中心に半径1mに領域を指定。赤の石よ、その力を示せ」

 

 自分へと向かって来る俺を確認した千鶴が、赤の領域を作り出す。

 だが、俺はそれに構わずに……いや、より速度を上げて千鶴へと接近する。

 

「直撃」

 

 精神コマンドの直撃を使い、こちらの速度に付いてこれない千鶴の背後へと回り込んで美砂と同様に首筋へと手刀を振り下ろす。

 本来なら障壁があらゆる攻撃を防ぐのだが、今の俺は精神コマンドの直撃を使用している。その為に障壁はその役目を果たす事無く俺の手刀を素通りさせたのだった。

 

「あ……」

 

 一声呟き気を失った千鶴を地面へと寝かせて小さく息を吐く。

 千鶴自身は攻撃魔法を得意としていない補助特化とも呼べる魔法使いだが、その補助というのがこの場合は非常に厄介なのだ。また、まだ全ての能力を引き出せている訳では無いとは言っても、アーティファクトである虹色領域の腕輪の多才な能力も同様に厄介極まりない。

 

「とにかくこれで2人」

 

 歌による補助を得意とする美砂と、同様に補助特化型と言ってもいい千鶴。この2人を倒した後に残るのは、あらゆる魔法を平均的に使いこなすあやかと、純炎の涙のおかげで空中砲台ともいえる攻撃特化型の魔法使いである円のみだ。

 

「円さん!」

「分かってる。長期戦はこっちに不利だから挟み撃ちで」

 

 お互いに声を掛け合いながら、あやかは鮮血の鞭の射程範囲である中距離を維持して俺を近寄らせないようにしている。同時に円もまた、俺が虚空瞬動等で自分の懐へと入らないように常に警戒をしていた。

 ……だが。

 

「そこで間合いを取ったのはミスだな」

 

 呟き、瞬動等は発動しないままに地を蹴りあやかの方へと向かっていく。

 それを確認したあやかは鮮血の鞭を振り上げ……ここだ!

 あやかへと視線を向けながら、念動力を発動。その動きを空中へと縫い付ける。

 

「なっ!?」

 

 自分の身体が動かないという驚愕の表情を浮かべるあやかだったが、残念ながら俺を前にしてその隙は致命的だった。背後へと回り込み、既に慣れた手順の如く首筋へと手刀を振り下ろす。

 

「あ……」

 

 一言だけ呟き意識を失ったあやかを抱きとめて地面に寝かせ、最後の1人へと視線を向ける。

 

「さすがアクセル君ね」

「……降伏するか?」

 

 そんな俺の問いに、円はキッパリと首を横に振る。

 

「まさか。それに自分に危機が迫ったからってあっさりと諦めるような女、アクセル君は嫌いでしょ? だから……勝てないまでも最後の最後まで足掻いてみせる!」

 

 その言葉と同時に、大きく手を振る円。その軌跡に沿ったかのように炎が現れ、それが俺へと向かって迫る。

 その炎のラインとでも言うべき攻撃。その炎を瞬動で避けて地を蹴り、空中へと移動して虚空瞬動を使い円との距離を縮めていく。

 俺が移動していく間にも必死に純炎の涙を使い炎を作り出す円だったが、その全てを虚空瞬動で小刻みに移動しながら回避し、ついには円の懐へと潜り込み……

 

「何!?」

 

 まずは地面へと降ろそうと、ズボンに包まれた右足首へと手を伸ばした。だが、その足首を掴んだと思った次の瞬間に円の姿がまるで幻だったかのように消え去っていたのだ。

 同時に背後からは何かが飛ぶ音が聞こえて来る。

 

「ちぃっ!」

 

 虚空瞬動を使い、空中を蹴ろうとするが……数瞬遅く、俺の背へと数個の火球が命中する。

 

「ぐぅっ!」

 

 背中を焼かれる痛みに眉を顰め、だがそれでも空中を踏みしめて虚空瞬動を発動。背中へと命中した火球以外の物はなんとか回避する事に成功する。

 

「それまで! 試合終了だ!」

 

 エヴァの声が響いたのは、そんな俺が地面へと着地した瞬間だった。

 その声を聞き、溜息を吐きながら戦闘態勢を解除する。そして目に入ったのは、まるで悪戯が成功したのを見届けて、してやったりというような笑顔をを浮かべているエヴァだった。

 まぁ、エヴァにしてみればまさにそういう気分だったのだろう。

 

「さて、お前が足手纏いになると判断したあいつ等はどうだった?」

「……エヴァの特訓の成果か?」

「まぁ、それもある……といった所だな」

「他にも何かあるのか?」

 

 そう尋ねた俺に先程までの笑みを消し、呆れたような視線を向けてくるエヴァ。

 

「お前な、鈍いのもいい加減にしろよ。女が自分の好きな相手が危険な場所に行くと言ってるのに、それを足手纏いだと断られたんだぞ? お前を1人で行かせずに、自分達も一緒に行く。その為だけに奴等は私の訓練を続けてきたんだ。それもこの別荘の中での時間を使ってな」

「……」

「くくっ、愛されてるじゃないか」

「ちょっ、エヴァちゃん!? 余り変な事をアクセル君に吹き込まないでよね!」

 

 いつの間にか俺の側に来ていた円がエヴァの言葉を横で聞いていたのか食ってかかる。

 だが、エヴァはニヤニヤとした笑みを浮かべて円の抗議をのらりくらりと躱すだけだった。

 そんな様子に、深く……それはもう、深く溜息を吐いてから口を開く。

 

「分かった。降参だ。確かにお前達4人は十分に俺の力になれる程の能力を持ってると認めるよ。付いてきてもいい。……いや、違うな。お前達の力を俺に貸してくれ」

「え? ほ、本当? 後で嘘とか言わない?」

 

 エヴァに食って掛かっていたのも束の間、円が確認するように尋ねてくる。

 

「ああ。実際にあれだけの戦闘力や連携を見せられればな」

 

 そんな俺の声を聞いていたのだろう。ネギパーティの方でもワイワイと盛り上がっていた。

 

「で、それはいいんだが……最後のは何をどうしたんだ? 足を掴んだと思ったら消えたが」

「あれは純炎の涙の力の1つよ。もっとも、気が付いたのはエヴァちゃんとの修行でだったけどね。まぁ、簡単に言えば私のアーティファクトには炎を操る他にも熱を操る力もあったのよ」

 

 熱。幻影。その2つを聞けばさすがにピンと来るものがあった。

 

「蜃気楼か」

「そ。……まぁ、熱を操るって言っても炎を操る力に比べたら本当に弱いものだから蜃気楼を見せるくらいしか使い道が思いつかないんだけどね」

「炎を操る能力に、蜃気楼。はっきり言って初見殺しだと思うがな」

 

 肩を竦めながらエヴァが言うと、そこに茶々丸が歩いてやってくる。

 

「マスター、アクセルさん、釘宮さん。気絶した3人はベッドの方に寝かせておきました」

「そうか、ご苦労」

「あ、茶々丸さん。ありがとう。手伝えば良かったわね」

「いえ、お気になさらず。それよりも、魔法世界への件、おめでとうございます。私はマスターの命によりネギ先生の方を手伝わないといけませんので、アクセルさんについてはくれぐれも注意をしてあげて下さい。色々と無茶をする方ですので」

「ええ、任せておいて」

「釘宮、凄いじゃない! あのアクセルに一矢ムク犬なんて!」

 

 こちらへと走ってきた神楽坂がそう言いながら円の肩をバンバンと勢いよく叩く。

 

「ちょっ、アスナ。痛い、痛いって。それに一矢ムク犬って何よ。報いるよ、報いる」

 

 何故かこんな時に限ってバカレンジャーの本領を発揮する神楽坂に円の突っ込みが冴える。

 

「ちょっ、ネギ。あの人って別に魔法学校とかにいなかったわよね」

「うん。と言うか、アクセル君は半年くらい前から魔法の勉強を始めたらしいよ」

「は、半年!? 半年でアレなの!? って言うか、良く見たらあの人って私にネギのいる海を教えてくれた人じゃない!」

 

 ネギの説明を聞き、食ってかかるアーニャ。ネギの知り合いの魔法使い見習いという事で、今回の俺達の模擬戦を見る機会をエヴァから与えられたのだった。

 

「しかも独学なんだ……うん。何回か手合わせとかはしてるけど、まだ1回も……あぁ、僕って駄目な奴……」

「ちょっ、ネギ!? なんでいきなり落ち込んでるのよ!」

「ふふふ……アーニャも戦ってみれば分かるさ。自分が頑張って強くなったとしても、必ずその先にアクセル君が壁になってるんだ……」

「あー、駄目ね。これは。アーニャちゃん、余り気にしないでいいわよ。ネギは放っておけばそのうち蘇るから」

「ちょっ、アスナ!? このままネギを放っておいてもいいの?」

 

 半ば漫才と化してるようなネギ、神楽坂、アーニャのやり取りを見ながら、先程の茶々丸の様子を思い出す。

 ……何か、最近は妙に茶々丸が俺の世話を焼くと言うか、そんな感じになってるような……

 そんな風に思いつつも、その日は過ぎ……いよいよ旅行当日がやってくるのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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