転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0368話

「皆、準備はいいわね? 宿にあったローブは着た?」

 

 朝靄の中、マクギネスの声が響く。

 周囲の霧で、朝だというのに数m先が見えないような状態だ。マクギネスのような道に詳しい者がいない限りは目的地に辿り着くのは困難だろう。

 何しろこの霧の中を手順通りに儀式をしながら進まないと、ゲートには辿り着けずに霧の中を数時間彷徨ったあげくに村の入り口に戻る事になるというのだから、恐らくこの霧も何らかの魔法の産物なのだろう。

 ドネットが率いるのは、俺、あやか、千鶴、円、美砂の4人。それとネギ、神楽坂、近衛、桜咲、朝倉(さよ付き……憑き?)、宮崎、綾瀬、早乙女、長瀬、古菲、長谷川、茶々丸の18人(幽霊、ガイノイド含む)だ。その人数はクラスの半分以上とかなり多いが、魔法世界に滞在するのは数日で、すぐにこっちへと戻って来る予定なので居残り組にはもう少しネギの村で待っててもらうとしよう。

 それにしても……

 

「アクセル君? どうかしましたの?」

 

 深い霧の中で迷わないようにと俺と手を繋いでいたあやかが尋ねてくるが、何でもないと答えるしかなかった。

 そう。確かに現在は何も起きてはいないのだが、今朝起きてから妙に嫌な予感がするのだ。それも小さな予感ではなく、非常に大きな予感。京都での騒動の時よりも……

 

「着いたわ」

 

 そんな風にどこか釈然としないものを感じつつも霧の中を歩いていると、マクギネスの声が周囲へと響き、殆ど同時に霧が晴れていく。

 晴れた視界の先に広がっていたのは巨大な石が円を描くように並べられている光景だった。その光景を俺は知っている。イギリスが世界に誇る古代遺跡。

 

「ストーンヘンジ……」

「そうよ、これが魔法世界へのゲート」

 

 俺の呟きが聞こえたのだろう。マクギネスが頷いて答える。

 

「でも、結構な人数が集まっていますわね」

 

 あやかが俺の隣でストーンヘンジへと視線を向けながら呟く。

 その視線の先には数十人程が集まっており、その殆ど全てが俺達が着ているのと同じようなローブを身に纏っていた。

 

「あれでも結構少ない方なのよ。ゲートは世界に数ヶ所しかないうえに扉が開く期間は酷く不定期で、良くて週に1度。下手をしたら月に1度なんだから」

「運が良くて週に1度。下手をしたら月に1度かぁ。それは確かにあっちの世界とこっちの世界で交流が無いのも分かるわね」

「鎖国状態なのも納得だな」

 

 マクギネスの言葉に朝倉が頷き、それに長谷川も呟く。

 その様子を見ながら、再び念動力が何らかの危険を関知したかのように俺へと知らせてくる。

 

「……何が起こっている?」

「アクセル君?」

 

 周囲の様子を警戒していると、その様子を見たネギが声を掛けてくる。

 

「ネギ、一応周囲を警戒しろ。ただし、それと知られないようにな」

「……え?」

「今朝起きてから嫌な予感がしてたんだが、どうもここに辿り着いてからその予感が強くなってきている。恐らくだが……何か起きるぞ」

「アクセルさん、ネギ先生、どうしたんですか?」

 

 俺と話していたネギが緊張したのを感じ取ったのか、少し離れた所で弁当を食べている近衛をそのままに、桜咲が近付いてくる。

 

「刹那さん、その、アクセル君が何か嫌な予感がするって言うんですけど……」

「アクセルさん?」

「ああ。何か……かなりやばそうな予感がちょっとな。ネギ、マクギネスにこの辺の危険に関して何か知ってる事があるかどうか聞いて来てくれ」

「はい」

「桜咲、近衛の側を離れずに警戒を。俺達の中で回復特化とも言える近衛はある意味で生命線だが、同時に弱点でもある」

「分かりました」

 

 ネギがマクギネスの下へ。桜咲が近衛の下へと移動するのを見送りながら周囲を警戒する。

 こうして見ている分に特に危険な要素は無い。だが、それでも念動力は危険を知らせているのだ。

 

「アクセル君!」

 

 声を掛けて来たのはネギ。その後ろにはマクギネスの姿もある。

 

「マクギネスさんに聞いたけど、この辺に危険は無いって」

 

 そんなネギの言葉に頷くマクギネス。

 

「ええ。一見して野ざらしに見えるけど、ここはその辺の空港よりチェックも警備も厳重よ。もしここに入り込める曲者がいるとしたら……それは世界最強クラスの魔法使いか、あるいは人間じゃないかもね」

 

 言外に俺の気のせいだと言ってくるマクギネス。だが、本当にそうなのか? 確かにこうして周囲を索敵しても特に危険な因子は見当たらない。表面だけを見れば確かにマクギネスの言うように俺の気のせいなのだろう。

 

「魔法世界に行くのは初めてなんだし、アクセル君も緊張してるんじゃないの?」

 

 ネギの言葉も分からないでもない。平行世界ならともかく、魔法世界には初めて足を踏み入れるのだから。だが……俺は今まで幾度となくこの念動力により危険を乗り越えてきたのだ。その警告を無視するというのは俺には取り得ない選択肢だ。

 しかし、それをこの2人に言っても納得させる事はまず無理……か。

 

「確かに俺の気のせいかもしれないな。だが、俺やネギはヘルマンとかいう悪魔に襲われた事がある。そしてそれを操っていたと思われるフェイトとかいう存在。……まず無いとは思うが、念には念を入れて周辺の警戒を頼む」

「……分かったわ。確かにネギ君を狙ってきた存在がいるのは事実なんだし、警戒するようにしましょう」

 

 取りあえずはこれが精一杯、か。

 いざという時の為に魔法発動体くらいは持っておきたい所なのだが、ゲートへの転移時の武装は御法度らしくこの場にいる面々の魔法発動体や武器といったものはマクギネスに預けてあり、受け取るのは転移した後だ。

 ちなみに、今回の魔法世界への旅行に際してあやか達4人はエヴァから指輪型の魔法発動体を受け取っている。その性能はネギが貰ったものより数段下らしいが、まだまだ魔法使いとしては初心者の4人にとっては十分な性能を持っている代物だ。

 魔法発動体は持っていかれたが、幸い俺には空間倉庫がある。あの中には初心者用の杖が数本入っているし、銃や爆弾といった火器もそれなりの数がある。……もっとも、余り多くの人の目のある場所で使いたくはない手段だが俺達の安全を考えた場合は躊躇っている暇は無いだろう。

 そんな風に考えていると、いつの間にか俺の近くへと来ていた円が首を傾げている。

 

「あれ? これって鐘の音?」

 

 確かに円の言う通り、周囲にはカラーン、カラーンという鐘の音のようなものが聞こえて来る。

 

「アクセル君、そろそろ時間だって」

「分かった。すぐに行く」

 

 呼びに来たネギにそう返事をし、食事をしていた面々もそれらを片付けてストーンサークルの中心地へと移動する。

 そして、ストーンサークルを中心として地面が光り出し……

 

「おいっ、これ本当に大丈夫なんだよな!?」

 

 長谷川のそんな声が聞こえると共に地面の光がより強く、空中に複数の魔法陣が展開され……気が付いた時には既にどこかの建物の中へと転移が完了していた。

 にしても、ストーンサークルで転移とかだとどうしてもアインストを連想させるな。

 そんな風に思いつつ、周囲を見回すと丸い円盤状のような場所が通路で繋がれているという不思議な作りの建物の中に俺達はいた。

 

「ネギ君、アクセル君。まずは貴方達の荷物の受け取りを」

 

 周囲を見回している俺やネギへとマクギネスがそう声を掛けてくる。

 

「あ、そうだね。行こう、アクセル君。もし本当に何かの危険があるんなら武器は手元にあった方がいいよ」

「だな」

 

 ネギの言葉に頷き、荷物の引き渡しを行っているカウンターへと向かう。

 ちなみに、ネギパーティや俺の従者達の大半はマクギネスから教えて貰った外が見える場所とやらに行っていたりする。

 

「……アクセル君、まだ嫌な予感は消えない?」

「ああ。と言うか、こっちに来てますます強くなってきているな」

 

 カウンターへと向かう途中の通路でネギと話ながら移動する。

 その後は無事カウンターで荷物の受け取りも完了し――まぁ、受付嬢にネギがサインや握手を頼まれたりしてたが――そのまま皆と合流しようとした時にそれは起きた。

 

「ネギ君、アクセル君! 貴方達のクラスの子達がゲートで密航してこっちに!」

 

 マクギネスが息を切らせて走ってきて、そう告げたのだった。

 ……おい、警備云々はどうした。ここに入り込めるのは世界最強クラスの魔法使いか人外の存在じゃなかったのか。

 そんな俺の思いも、マクギネスに案内された先にいた数人を目にして思わず溜息が出た。そこにいたのは、明石、和泉、大河内、佐々木の4人だった。

 

「ネギくーん! ここってどこ? 私達どこに来ちゃったの!?」

 

 佐々木が混乱した様子で叫び、それは周囲にいる3人も同様だった。

 

「アクセル君、ネギ君も……その、何がどうなってるの?」

 

 そんな4人の中でも比較的冷静さを保っていた大河内がそう話し掛けてくるが、突発的な事態に弱いのがネギの弱点だ。……いや、戦闘に関しては臨機応変に動けるんだけどな。そんなネギがあうあうしているその時。

 

「っ!?」

 

 ゾクリとした、まるで氷柱を背中に入れられたようなその危機感を念動力によって関知し、咄嗟に地を蹴る。同時に数十本の石で出来た槍が俺がいた場所へと連続して突き立てられる。

 

「くそっ、『石の槍』だと!?」

 

 この魔法を使ってくる相手で、尚且つ俺達と敵対的な相手。そんな人物に俺は心当たりがあった。

 

「ネギッ、その4人を守れ!」

「うん!」

 

 俺の言葉を聞き、どこに隠し持っていたのか初心者用の杖を取り出して明石達を背後へと庇う。

 

「ネ、ネギ君!? 一体何、何が起きてるの!?」

「まき絵さん、今は黙って僕の指示に従って下さい」

 

 そんなやり取りを聞きながら、床へと突然突き刺さった石の槍にここの警備員達が集まってきている。

 

「君、一体何が起こったんだ!?」

 

 そんな中の1人が俺へと声を掛けて来て……同時に再度の飛翔音。

 

「ちぃっ!」

 

 声を掛けて来た警備員のローブを引っ張り、瞬動。当然その警備員は急な衝撃で気を失ってはいるが、『石の槍』の攻撃に巻き込まれるよりはマシだろう。

 気を失った警備員を、お仲間と思しき連中へと押しつけて周囲が見渡しやすい場所へと移動して声を張り上げる。

 

「フェイト、いるんだろ。出てこい! それともお前はこそこそと不意打ちしか出来ないような卑怯者なのか!?」

「アクセルさん、危険です! そこでは狙い撃ちに!」

 

 桜咲の声が周囲へと響くが、それに紛れるようにして3度降り注ぐ『石の槍』の雨。それを回避しつつ、現れた気配の方へと目を向ける。

 そこにいたのはかつて京都で相見えた無表情の男。即ち。

 

「フェイト、やはりお前か」




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:655
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:380

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